Our Daily Bread@ことばぐすい

僕が特に興味があるのは,「なんでもかんでも機械で出来る」という感覚や,そういった機械を発明しようという精神,それを後押しする組織です。それは,とても怖い感覚で,無神経でもあると思います。そこでは,植物や動物も製品同様に扱われ,産業として機能させていくことが,非常に重要になっています。一番大事なことは,いかに効率よく,低コストで,動物が生み育てられ,数を保たれているかであり,新鮮で傷が付いていない状態で食肉処理場に届けられるための取り扱い方や,肉に含まれる薬品の使用量,ストレスホルモンの量が合法基準値より低いレベルに保たれているか,ということなのです。誰も自分が幸せがどうかなんて考えてはいません。ただし,それをスキャンダラスと言うなら,僕たちの暮らし方もスキャンダラスということになります。この経済的に豊かで,情け容赦ない効率化は,僕たちの社会とも密接に関わっています。「有機栽培の製品を書い,もっと少ない量の肉を食べなさい」というのは間違いではありません。でも,同時にそれは矛盾していると思います。誰もが皆,機械化に頼って国際化した産業の恩恵を受けています。そして,これは食べ物の世界に限ったことではありません。

(ニコラウス・ゲイハルター「いのちの食べ方」(原題:Our Daily Bread)2005:パンフレットに掲載)