本伝豪遊記01《豪遊∧1》博多・アイデンティティ

2008-10-25 17:19

 …って新シリーズでも結局博多なんだ。ふーん。
 い…いや成美,違うんだ信じてくれ!確かに博多なんだ。博多だけど,もっとディープかつハイタッチにだね…
 何よ!成美って誰なの!っつーか何なんだ?その昼の連ドラのノリは?!
 という訳で始まってしまいましたよ豪遊記。まあ,根がインドの貧乏旅行者出身ですので豪遊ってもタカが知れてますけど,とにかく体重半減過程で味をシメたグルメ巡りが止まらない列車!
 けどそれも,まあまだまだ駆け出しの舌ですので…味覚修行の学習帳ってとこですけど,お付き合い頂けりゃあ幸いで御座いマッスルむきむき。
 なお,章名はしばらくノメッてた映画ボーン・シリーズより。──ってことはまた3部作まで行く気なのねアナタっ!いや…違うんだ成美!僕は君だけを──って,だから連ドラは止めろっつーの!

 けど一応ね。アイデンティティってことで,つまり郷土料理のお店の話ではあるんですよ。
 人間が生き継いできた全ての土地に,ソウルフードはあったはず。人の流れが乏しい時代に食文化の営みがあれば独自の味覚は必ず生まれる。あえて過去形で書くのは,外来の食文化に押されてそれが消えちゃってる場合もあるからですね。
 博多って奇跡の街(?)では,けれどそういうソウルフードがちゃんと生き残ってる。それどころか通常の肥満リスクの高い日本食にちゃんと拮抗してるんです!
 その理由はたった1つ──この街の住民の舌が健全だからに他ならない。食文化の世界は常に完全な民主主義なんだから!

 その日の第1食目は,SIO菜のランチ。大名の有名な自然食の店。
 訳あって(ってか会社サボって)金曜にやってきだのは,何を隠そう!土日はやってないここのランチをどしても食いたかったからじゃ!(課長ゴメンナサイ…)
 でも量が少なくて上品だったけど,感動する味じゃなかった。自然食の店の典型的なパターンのオシャレなだけの店ね。わしはこの手はパス!(やっぱ自然食系でマイベストは不動!松山の草々ッス)
 口直しにそのままズンズン歩いて伝説(?)の警固交差点を過ぎて赤坂2丁目へ。レストラン牛王。
 これもかなり有名な店。1時過ぎなのに満席近い。壁を見ると,何とかって国際大会に初エントリーで優勝したんだって。わしはそれよりも…マスターの厳しい怒鳴り声に信頼感を持った。
 牛タンスープが付くのを確認してスペシャルランチをオーダー。ここの名物はとにかくコレ!
 これは…え?普通のコンソメじゃないの?…って以前の舌なら済ましてた味だと思う。
 けど!後からこみ上げて来るんじゃ!大作映画の静かにこみ上げる感動って感じで…何なんだ?この微妙で絶妙,軽やかでシンプルかつ自己主張のあるハーブと肉汁のパンチ!
 ランチ本体の炒めものにカラませてあるのも同じスープがベースみたい。わしは今の舌でこの店に来れたタイミングに感謝した!これはすげー!!次は必ずステーキ食ってやる!(2千円以上するけど食ってやる!)

 夜になって,渡辺通りをずっと南へ,平尾駅の辺りまで下った辺り。
 ぬか床の店千束(ちづか)。
 玄関入ると…え?客席がない?
 「あ…2階へどうぞ!」って?どうもぬか漬けの販売をメインに食堂もやってます!って店らしく,2階も普通の台所みたいなとこに8席位カウンターがあるだけ。
 「お一人で良かったです」と女将。「この後ずっと予約が一杯で」
 どうも最近「あるある百貨」何とかって番組で全国放送されたらしく,ここも超有名店みたい。
 「ぬか漬定食・魚」ってのを頼む。すると──流石に1800円!ソウザイ中心の小皿が並ぶこと並ぶこと!そいつらも家庭的でかなりだったんだけど…
 ぬか漬けも最高級だった。ちゃんと臭い!素晴らしいんだけど…
 何と言われても,もー止まらなくなっちゃったのは。「ご飯と一緒にドゾ!」って出てきた小さなツボ。何だ?ゲル状の黒々したブツを口に運ぶと…味噌だ。味噌なのに,誇り高い柑橘系の酸味がツーンと鼻を突く!
 ユズ味噌──この味にここしばらく惚れこんでます。何でこんな美味いモンに今まで気付かなかったんだ?高知の日曜市で食って以来,ホントに止まらん!これとご飯がありゃあ…も~何一つ要らん!僕には君だけしかいないんダ!タケシさん!ヒロミ!およよおよよ(だから連ドラは止めえっつーの!)
 それはそれとして(何がだ!)ユズの高貴な酸味が味噌の泥臭い下味から立ち上る様は,ガンジスの濁流から宙に跳ね飛ぶピンクのイルカの艶やかさ!…え?見たことねえ?じゃあさらに言おう!ラジャスタンの砂漠に巻う土煙の中に響き渡るクジャクの鳴き声…だから知らねえよ!
 とにかくそれほどまでに(どれほどだ?)ハマってしまってワンワンワワン!なのよ~ん♪出てきたツボの半分近くを食いまくる!ご飯の量とどっちが多いか分からんほど!
 帰りに見たら,ぬか漬けと並ぶ主力商品として店頭に並んでました。
 思わぬ名物にぶち当たってしまってワンワン(もういいよ…)九州の味噌は隠れた名品だし,ユズもかなりのもんなんだろな♪また高知の朝市に行きたくて止まらなくなってます。(って言うか…実は今,高知行きの列車内でケータイ打ってんだけど…)

 2日目の朝は,地下鉄祇園駅からほど近い「具雑煮せき亭」へ。島原雑煮の専門店で,これもまあ有名みたい。
 おばちゃんのお勧めで博多雑煮穴子入りをオーダー。
 わし,もちろん正月には雑煮って食ったことはある。けど「正月はコレ喰うもんだ!」って食わされたってイメージの記憶しかない。つまり仕方なく喰う季節料理で,わしの嫌いな和食の典型だったのよ。
 やってきた雑煮はモロに雑煮そのものの小鍋。餅と野菜の透明な汁。これを正月でもないのにフツーに出す感覚が九州ですな。
 さてお味は…一口目,あんまり味がしない。昔の雑煮の食感。二口目。微かに違和感が喉に湧き上がる。この軽い,でも重厚な満足感は何?三口目でやっと凄さを胃が理解し始める。何ちゅうハーモニー!何ちゅうバランス!軽やかなダシの中に具が静かに確かに存在感を主張してる!大聖堂のカテドラルに染み渡る牧師の声のごとく,胃の奥底が陶酔する。
 この店のモットーは「雑煮こそ究極の日本食にしてスローフード」。うん!実感じゃ!

 続けて川端の「大阪屋」。夜はスキヤキで有名な店だけど,昼の定食にはないんで昼御膳を注文。
 刺身類や茶碗蒸も絶品。でも感激したのは大根飯。この単語って,江戸時代の大飢饉で農民が食ってたっちゅうイメージあるじゃん?
 美味いんだ!大根の爽やかな渋みと甘みが微かな黒胡椒で踊り出して…これってフツーに家でも作れるよ?何で日本食に浸透しないの?

 夜は春吉の「なぎの木」に突入。
 鳥王鍋を頼む。前から食いたかった博多の鳥スキの1人前メニューがあるのが嬉しい。
 白濁したスープに溶けだしてる鳥と野菜の高貴な優しい味わい…メルトダウン!鶏肉ってこんなに美味かったの!
 プラス天草大王セセリ焼きといわし明太焼き。ビールで酔いしれる。…博多は味の底無し沼ッス。

放置自転車が移動?

博多の自転車は放置すると勝手に移動しちゃうらしい。