継続のための革新@ことばぐすい

江戸元禄の友禅染は最先端ファッションだった

付加価値を高めるためには,商品の持つ文化性を持つ文化性をその中に入れ込む。ところが,やっかいなのは,「文化は移ろう」ものであり,時代により変化を遂げる。たとえば,友禅染の着物は,江戸元禄の時期には,時代の最先端を行く流行のファッションだった。ところが,現在の友禅染にはこのような最先端のイメージはないし,その相対的な市場も小さい。これは,時代のセッティングが変化し,ライフスタイルの変遷があり,友禅染に対する一般の認識が変化したことを反映している。

京都の伝統産業における「革新」の意味

このような時代の変化に,文化を乗せたビジネスが対応できないと,文化と時代がミスマッチを起こしてしまう。ここで必要になるのが,「革新」である。すなわち,文化をビジネスとして成り立たせ,これを継続させるためには,商品の上にのせる文化を時代に合う形で変えていかねばならない。これが京都の伝統産業における「革新」の意味である。
ここには,一般に「革新」という言葉が持つ前向きで派手なイメージではなく,京都の職人世界では,文化をビジネスに乗せて存続させるために必要になってくるのが「革新」,すなわち,あくまでも「継続のための革新」なのである。
京都における「革新」について,菊乃井の村井は以下のように述べている。

新しく作ったときほど変わってないように見せる

「先人たちが僕らに教えてきたことは,『常に料理屋の使命を確認せよ』ということです。『時代時代に合った,人に喜んでもらえるような料理を作りなさい』ということです。『先代から作ってきたものだからずっとこれを作り続ける』といっても,100年前の人と違ってフランス料理やイタリア料理も食べている今の人に受け入れてもらうのは難しい。人の味覚というのは絶えず変化しています。しかし,味覚は絶えず変化しているけども,変わってないように見せる技術というのはあります。新しいものを作ったときほど,奇をてらわずに普通のように見せることが大事です。80歳のおばあさんが食べてみて,『こんなん,食べたことないな。でもおいしかったな』と言ってくれなら,それでいい。でも,食べる前から『これって日本料理やろか』と思ってしまうようではいけません。どこまでやると変なものになってしまうのか,いつもその線を引きながらやっています。」(村田,同前※)
村山裕三「京都型ビジネス 独創と継続の経営術」

※村田吉弘,同志社大学院講演,2005年9月29日