外伝05O・紹興其之一ヰ 安微浙江遠討編・星期五之ニ ヰ
浙江茶都杭州に遊びて角煮食ってます(写真集)

▲街路樹の覆う道
 緑の多い,大事にされてる街という印象を,中国では珍しく持てる場所でした。

▲ふとした立体交差の下から。
 地下鉄ばかりでなく,街づくりの計画性は随所に見られます。

▲ちょっと雨が降ってきた小路で。
 小雨も心地良い街でした。

▲湖畔にて。
 夜はこんな風にライトアップされて,雰囲気はなかなかのエリアになってます。

▲交差点の歩道橋より。
 交通量,車種ともほとんど日本と変わりません。杭州は中国でも所得水準の高い街らしいですし,共産主義国の街とはとても思えません。

[レポ]東坡肉

[読み]ピンイン:dongporou
日本語ではトンポーロウ,ドンポーロウと表記される。
[創始]北宋の詩人蘇軾(1036年 – 1101年)考案とされる。料理名は彼の号である「蘇東坡」に由来。
・1079年,蘇軾は政治批判の咎で逮捕され,黄州(現湖北省黄州区)に左遷される。
・配流後の蘇軾は晴耕雨読,自身の農地の地名に因んで東坡居士と号する。
・生活を続ける中で,蘇軾は黄州の豚肉に着目,東坡肉の原型となる紅焼肉(ホンシャオロウ:豚肉の醤油煮)を考案するとともに,黄州の豚肉(中国語:猪肉)を称え次の詩を残す。
黄州好猪肉
價賤等糞土
富者不肯喫
貧者不解煮
慢著火少著水
火候足時他自美
毎日起来打一碗
飽得自家君莫管
(食猪肉)
・皇帝・神宗の没後,蘇軾は中央政界に復帰。しかし再び政争に巻き込まれ,1089年に杭州へ再び左遷。
・再配流後,蘇軾は杭州で西湖の水利工事を施工。その際に工事を謝し現地人が送った豚と酒(紹興酒)を使って紅焼肉を作らせ,工事の寄付者を集めてこれを振る舞った。
・これを機会にこの料理に「東坡肉」との呼称が付けられ,次第に各料理店で作られるようになったとされる。
・他の配流先である四川や海南島でも東坡肉が名物料理とされる。
[菜系]一般には浙江料理に区分され,杭州名物として知られる。煮込み料理である焼菜に分類。
[レシピ]皮付きの豚のばら肉を一度揚げるか茹でるかして余分な油を取り,醤油と酒と砂糖で煮含める。
・杭州の東坡肉は多量の砂糖で甘く味付けされることが多い。人数の分だけ用意した壺の中に肉を入れて密閉し,蒸して供する場合も。
[バリエーション]
・扣肉(コウロウ):切り分けた東坡肉を鉢に入れて蒸し,蒸し上がった肉を皿に盛りつけて供す。
・紅焼蹄膀(ホンシャオテイパン):豚の肩肉の醤油煮。東坡肉の別部位版。
・「東坡肉」名の別形態料理
①河南省開封:筍と豚肉の料理
②江西省九江市永修周辺:藁と一緒に煮られた豚肉料理
③湖北省武漢:豚肉・冬筍・ホウレンソウ(菠菜)を材料とする料理(東と冬,坡と菠は音が通じるため)
(日本)
・東坡煮:卓袱料理の一つとして長崎県で。
・ラフテー:沖縄料理で泡盛を使ってアレンジ
・角煮:同起源または同一の日本料理と言われる。明治時代にすでに伝わっており,村井弦斎著『食道楽』にも東坡肉のレシピが掲載。

【レポ】浙江料理

・中国語別称:浙菜
[環境](自然)
・浙江省は銭塘江流域の湖水に産する淡水魚・エビ・水鳥のほか,東シナ海で獲れる魚介類,内陸の丘陵地帯の野草や野菜が豊富
(歴史)
・杭州が南宋の都だった時期に,華北から多くの料理人が移転して北方の料理法を根付かせたため,江南や華東の素材を華北の調理法で作った料理も成立。
[調理法]
・精緻で変化に富む。料理や盛り付けは鮮やか。歯ごたえはやわらかい。味付けは塩辛くさっぱり。
・カテゴリーとしては,炒めもの,炒め煮,蒸し物,あんかけ,とろ火で煮込んだもの,揚げものが多い。
[特色]
・これらにより,この地域特産の上質で新鮮な素材を選び,その持ち味やさわやかさを引き出す特徴あり。
・鮮やかで美しい盛り付けには,この地方独特の山水の美しさが反映していると言われる。
・蘇軾(蘇東坡)の名と逸話に由来する東坡肉をはじめとして、浙江地域の歴史につながる逸話がある料理も多い。
[代表的な料理]
・龍井蝦仁(エビの龍井茶炒め)
・西湖醋魚
・叫花鶏
・宋嫂魚羹
・東坡肉(ブタの角煮)
・奉化芋頭
・蜜汁火方
・蘭花春筍
・寧式?絲
・三絲敲魚
・蝦子?筋
・雙味??
[分類]
浙江省内の代表的都市のエリアごとに四分されることが多い。
・杭州料理(杭州菜)
 浙江料理を代表するもの。旬の野菜や野草やタケノコなどの素材が豊富。
・温州料理(温州菜)
 家禽や家畜のほか,東シナ海の多彩で新鮮な海産物を使用。
・紹興料理(紹興菜)
 淡水魚と水鳥,家禽の調理に優れ,柔らかい歯触りまたは濃いスープが特徴。
・寧波料理(寧波菜)
 海鮮を主とし,新鮮さと塩味が特徴。