▲日曜市と横断歩道
9番,1丁目南開店,桑尾さん。
販売品種。漬物,餅,赤飯,あん餅,いももち。
キャッチコピーが「あんもちには特にあんに注意して」で終わってる。以前からだけど,直す気ないみたい!
東山かんば砂糖 300円
ってのを見つける。見た感じ,東山と違いが分からん。おばちゃんに「東山と違うんですか?」と聞いてみたら
「東山入れてついちゅうお餅ぞね」とのこと。
宿で食ってみたら,東山と微妙に違う!ピュアってゆーか…芋味がそのまんまダイレクト。甘味は薄いけど瑞々しくて,これもこれでいい!
調べてみたら,やはり東山と違うらしく――高知西部では餅に入れる芋は主に東山。つまり,芋を茹でてから干したもの。これに対し東部では,かんばを使う。これは,芋を生のまま干したものなんだそうです。「かんば」をつかった餅が「かんばもち」で,買ったのはこれに黒糖が練りこんであるものみたい。
芋食文化,まだまだ奥があんのやな。
ついでに買ってみた
赤飯(小) 100円
も素晴らしかった!
当たり前の赤飯の当たり前の味なんだけど,やっぱりピュアなんだ。素材の小豆の味が凄いのに加え,その力を生かし切ってる。
何となく分かってきた。コレが高知の美味の方程式。
119番,2丁目北開店,渡邉さんの店。
販売品種,榊,しきび。
赤唐辛子を置いてたんで買ってみる。マッキーのスパゲティの辛さがどーも気になったからです。ダンボールの手書き表示は「すごくからい」とだけ。几帳面に紐で括ってあります。
1把たった100円。2把購入。
「これちょっとおまけな」とおばあちゃん。「こっちは辛みの薄いのやき」
どうやら3cm位の短いのが「すごくからい」のみたい。
広島に帰ってから,ペペロンチーニを出来るだけシンプルに作ってみる。味を見たいんで,唐辛子も控え目に1本だけ使用。
すごくからい!
いや,調味料としては丁度いい濃さなんだ。けれど辛味が鋭い。錐で揉むような辛味が舌を刺す。
マッキーの味の正体がぼんやり見えた。
おそらくこの唐辛子,スーパーでは嫌われるだろう。劇薬過ぎるから。料理には使いにくいし,下手に家庭で使えば家族に一人は嫌がるお子様とかがいるだろう。
でもこれが,おそらく素の唐辛子。商品として飼い慣らされてない唐辛子辛さ。
牛肉とかも,アフリカのは固くて噛めないという。日本人がスーパー買いしてるのは,あれは商品。
おそらくマッキーでは,商品化されてない高知の素の唐辛子,素の野菜を使ってる。そういう食材が,まだ高知にはある。そして,そういう食材を手間をかけて調理する技術とスタンスが,まだ高知にはある。
さらに重要なのは――そんな風にして調理された料理を好む舌が,まだ高知にはある。
そして,それらの仕組みを体現する場として,生活のための定期の市場というものが,まだ高知にはある。
▲街路樹と日曜市
池川自然農園。
フルーツトマト 200円
夜須のトマトが忘れられずに手が伸びてしまう。
この池川さんのは,どれもいつでもホントに美味い。食材本来の味覚がダイレクト。今回のトマトも,シンプルで素直な甘味がズシーンと腹に共鳴する。
ここは無農薬や有機肥料にこだわってる仁淀川の農業集団。ネットで見ると,池川さんが突出してるわけじゃない。日曜市に出してるからやや有名なだけで,同じような良心的農業者集団が高知にはいくつもあるみたい。
いくつもの,そういう農業者を支える舌を,この土地には持ち続けてほしい。
251番,4丁目南開店,平石さん。
販売品種,大判焼。
キャッチコピー――大判焼はつぶあん,しろあん,ゆずあんがあります。特にユズあんは,大豊で自家栽培をしたものを自家生産した物ですから,他の物は何も入っていないユズだけで作っています。
店の紹介――店の前を人が通るので,商品がほこらないようにガラスで前を囲って清潔にしています。
大版焼と表示の出てる今川焼き屋。
「ゆずの皮だけで作ったゆずあんですう~」
といつも連呼してるんで気にはなってたけど,購入したことはなかった。だって…今川焼きだろ?高知で食わなくたって…。
でも最後に,一回だけ味見してみよ。ってことで
ゆずあん こしあん 各100円
を買ってみました。
激しく後悔!
小麦粉生地はホットケーキ的にイケてる。けど,やっぱアンコが凄い。端正で礼儀正しい小豆。控え目だけどしっかりした香りと深みのある甘味。どう考えても,加工以前だ。素材がきちんとしてる。
後日だけど,岡山のあんぱん堂(※2020現在,なぜかHPがなくなっていたので,こちらのリンクを紹介しておきます。食べログ)の小豆がこんな味でした。今日の桑尾さんとこの赤飯も同じ路線だと感じた。
小豆って,添加物と砂糖にまみれなきゃこんなに力強い甘味なんやねえ!!
これにゆずが入ると…もう言語道断!危険域の美味です。小豆もゆずも単独で誇り高いのに,タッグを組ませてどーする?悪役レスラーが2人とも乱入してるよなもんで,それは凶悪過ぎる!
こんなん売っちゃいけんよ!
いや…次回も是非売ってください。
▲たこ焼と日曜市
417番,5丁目北開店,鍋島さん。
販売品種。農産物,きゅうり,なす,昆布。
キャッチコピー。採りたてで,新鮮な味のいいきゅうりにこだわっています。
店の紹介。我家の畑で育った,色んな形のきゅうりがかごに盛られています。どれも採れたてでおいしいですよ。
吾川郡春野町東諸木より出店。
「2本のと3本のがあるでえ!」と娘さんがオヤジにケチつけてたところで,オヤジがあたふたしてたから,何となく「その2本のほう,チョーダイ」と買ってみた。
さて,そのこだわりの胡瓜ってどないだ?
春野産きゅうり 100円
最初のころは胡瓜につけるゆず味噌とか探してたけど,最近はそのまんまモロキュウで食う。
この朝市の胡瓜は,別格なの!胡瓜って基本的にはキライだったんだが,ここの胡瓜食ってるうちに大丈夫…どころか好物に変わってきちゃってます。
とゆー流れの中でも,この鍋島さんの胡瓜。
こうなると…もう野菜ってよりフルーツと言っていい。高貴なる青臭さ,汁気たっぷりの瑞々しさ,ポクッと軽い噛み応え――こりゃあ…最高やね!
350番,5丁目南開店,川村さん。
販売品種。わさび,梅漬け,小豆,ひえ米,栃餅。
キャッチコピー。手造り無農薬 2月~4月まで葵葉漬も造っています。10月中頃から4月頃まで栃餅も造っています。
店の紹介。追手前高校の正門の前の西側にあります。旧本川村の越裏門で四国の真ん中です。お山のてっぺんから出店さしていただいておりますのでよろしくお願いします。
その山のてっぺんのわさびの葉っぱ満載の横で売ってたのが――
本川産わさび漬け 500円
辛味の中の爽やかさは分かった。意外にサラダとかに添えても合うんじゃないか?朴訥な,質実剛健な味覚。
山椒やわさび,京都でやや慣れてきたつもりだった。しかし――あの味より,遥かに貧弱。否定してるんじゃなく,田舎の山菜味ってこんな風に京都の雅さのない,シンプルで弱々しい,だからこそ静かな野生味を凄みとする味覚なんだと思う。
その味覚世界を,まだわしは分かってない。分かってないことが分かった一品。
▲花の日曜市
359番,5丁目南開店,加藤さん。
販売品種。梅,赤飯,あん餅,山菜おこわ,おはぎ。
キャッチコピー。自家生産米を原料として昔なつかしい杵つきの食味を追求しています。あんこも国産大納言を使用しています。また梅も6月には自家梅園で丹精込めて栽培したものを出します。国産にこだわり安心してお買い求め下さい。
鏡川上流からの出店だという店。以前山菜おこわ買ったかな?と思いつつ通り過ぎようとしたら,
芋銀杏おこわ 200円
ってのが目についた。既に赤飯買ってたんだけど,つい手が伸びてしまう。
東山の姿が見えなくなってきてる。芋の季節も終わりだな…と名残を惜しみつつ。
うッ。美味い!
芋と銀杏って歯応え的には打ち消し合うかなとも予想してたけど,加工方法が違うのか?芋のホクホクと銀杏のコリコリが使い分けられて,素晴らしいマリアージュ。ついでに米のネットリ感も,ちゃんと使い分けられてて。
味わいも薄いのに複雑。芋の重厚な甘味,銀杏の軽快な芳香,米の深淵な香味,これら異なる音色が織りなすハーモニーにウットリと聴き入ってしまう。
米をスイーツ使いする台湾とかなら間違いなくスイーツに分類される品です。
322番,5丁目南開店,高橋さん。
販売品種。こんにゃく,榊,しきび。
土佐山菖蒲からの出店。
のびるの酢味噌あえ 200円
のびるの…?
知らない。全く知らない。
知らないんだけど,とにかく軽妙な味覚。何て言えばいーんだ,この味?
ネットをあたると「ラッキョを爽やかにしたような味で,お腹の中を春の風が吹くような感じ」って何だそれ?でも,そうそう,まさにそんな感じ!
ユリ科の多年草だって言うから,中華スイーツで時々見かけるユリの球根の部類か?
漢字で書くと「野蒜」。野に生える蒜(ひる)って意味。そうか,「蒜」は漢語でネギだったな。
古くは五葷(ごくん)の一つとされた。この「葷」(くん)もネギの古称らしい。ちなみに他は,葱(ネギ),大蒜(ニンニク),韮(ニラ),辣韮(ラッキョウ)。
今日の品は,球根部を生のまま酢味噌で和えたものらしい。ほかに,天ぷらも美味いみたい。茎も,ニラやネギのよな使い方で調理されるとのこと。
知らん。全く知らない。
でも…?これ,全国的に採れるらしい。野原や河原の土手とかなどに自生してるんだって。岡山の「蒜山」も蒜が自生するからって説もある。
旬は4月から6月。今の時期は早稲らしい。6月頃に花咲く。花は白。ただし,花が咲かずにムカゴになってしまうことも。
朝市の西側外れ,高知城近くに,ふとコーヒー豆小売専門店を見つける。
珈琲堂。
へえ…。最終回だからひろめ広場を過ぎたこの辺りまで来てしちゃったけど,このエリアは食い物あんまりないし,ほとんど来んかったからなあ。
博多六本松の三共の珈琲飲んで以来,エスプレッソじゃない普通の珈琲に目覚めつつある昨今。一杯300円だったし,外の席ならタバコ吸えたからとにかく座ってみました。
「はあい」と普通のおばちゃんが,店先のポットからドボドボドボ。ものの30秒でコトリとカップが出る。
い…一杯だてじゃないの?
こりゃ外した。客,わし一人だし。ま,日曜市だもんな。珈琲が美味いわきゃないか。タバコ吸えるからいーや。
と,飲む前から完全に諦めてタバコ中心にくつろいでたんだけど。
意外に旨い。
イキノイイ味しとる。苦味も澄んでるし,シンプルに飲ませる。おいおい…いーよ,これ。スゴいよ!
でもだよ?そこのポットから注いだんだぞ?何で?
まてよ,この味――澄んだ味?シンプルに飲ませる?
この味覚…高知の食い物の美味に,どこか通じる性格だぞ?
何がこの味を作るかじゃない。それは料理家に任せとく問題でしょ。食文化専門(専門じゃないけど)のわしにとっては――この味覚を選んできた土佐人の舌。コレです。
この過疎地(もとい。「国民休暇県」)にあって,高知の野菜,フルーツ,魚,パンの不思議なほどの美味さ。その同列に,この珈琲も位置している。その場所の正体は――。
日常の食材をナチュラルに,大事に頂くスタンス。高級食材ではなく,特殊な調理法やカリスマシェフの技術でもなく,オシャレなカッフェでもなく。
わしがこの1年こだわり続けてきたのは,そんな,本来人間が当たり前に持ってた食の感性だったんではないか?当たり前だった――緑の革命による食料大生産時代の前には。特に日本人にとっては。
要するに。日本のチベットとかさんざん言われるこの高知って土地,当たり前の日本の味覚人がいるだけなんじゃなかろか?それだけ高知以外が,つまり我々が遠い場所に連れてかれてるだけで。
んな事を,200円の珈琲飲みながら考えましたってのが,貧乏臭くも個性的で宜しいかと。
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