外伝03-FASE18@deflag.utina/photo
あふあ~!!(続)

▲首里りうぼう前

 寒い。入ってる店はチェーン店ばっか,沖縄に来た感ゼロ。新興市街に出来つつあるのがこのタイプってのが,むしろ戦慄です。
 つまり――沖縄はヤマト化しうる。ウチナンチュの過半が拒絶反応だからヤマト化不可能ってわけじゃない。そうなるか否かは,単に彼らの選択一つ。
 そして,ナイチャーなるわしらにその選択を評価する資格は,いずれにしても無い。
▲国際市場 もっと裏の道にて

 昨日と同じく国際市場方面へ潜りました。
 このエリアほど,迷子を楽しめる沖縄はないと思う。
 壺屋一丁目のL字角に雪塩菓房って店が開店してた。ゴタゴタした界隈の中で妙に小綺麗で浮いてます。
 設置者は農業生産法人㈲パラダイスファーム。住所は宮古島市上野字野原。塩ちんすこうブームの火付け役になった会社ですね。「雪塩の部門の他にお菓子部門があるんです」とのことで,ここはお菓子の方の店。
 初めて見るのばっか。雪塩ラスク,雪塩ようかん,雪塩ふわわ,スノーボールアーモンド…。購入したのは
マンゴージャム 900円
雪塩プリン 380円
 マンゴーは普通にマンゴーでしたが,プリンは…この味はちょっとない!確実に塩辛いのに,ミネラルで複雑な味覚だから甘味と奇妙にコラボってて…何ちゅー味を作るねん!!
 刮目。
 ちんすこうには前回ゾッコンになって,内地の沖縄ショップでも必ず買ってて…なわしでしたが,その多様性に触れたのは初めてでした。
 けど,そもそも雪塩って何だったんだ?と調べてみると。
「サンゴが育つ美しい海を持つ宮古島。この島はサンゴが隆起してできたと言われており,琉球石灰岩と呼ばれる地層が島の下にあるのが特徴です。硬い岩でありながらも無数の穴があいているスポンジのような構造。天然の『ろ過装置』である琉球石灰岩を海水が通ることにより,不純物を取り除くと同時にサンゴの持つカルシウムが溶け出した地下海水となります。」
 え!?雪塩が登場しないぞ?と思いつつ読み進むと――
「雪塩は、宮古島の地下の特徴を活かした海水からでなければ生まれないお塩です。『海水の成分』をそのまま残したお塩を作りたい・・!それを目標とした雪塩には,品質のこだわりがあり,これまでになかった製法でナトリウム,マグネシウムなどの成分の種類を18種も検出することができました。」
 なるほど。精製過程で不純物をあえて残すわけやね。海水由来の雑味を旨味と捉えて逆に大切にする。
「世界食品オリンピックとも称される『モンドセレクション』では,2006年から3年連続で金賞受賞!(2006・07年は金賞,2008年は最高金賞を受賞)」
 そんな超絶的に旨いもんだったんか!?しかも評価ますます上がっとるがな!!
 ちなみに,2010年も同セレクションでは国際最高品質賞受賞。同年の日本おみやげコンテストでは銅賞受賞ってゆーから,国内より国外で評価されるってタイプ。
「雪塩は、通常の製塩法では取り除かれる『にがり』の成分まで含まれているのが特徴。海水中の成分をできるだけ残す事にこだわっています。ナトリウムをはじめ,マグネシウム,カルシウム,カリウムほか18種類の成分が検出されましたが,さらなる成分検出を目指し,母なる海そのままをお塩にする努力は今現在も続いています。」
(以上宮古島の雪塩公式サイトより)
 ごく最近まで宮古人でもその卓越性を十分理解してなかったよな書き方です。化学的な成分以前に,こうした雑味ある味覚を大事にしてきた沖縄の食感覚に育まれてきた食材と見るべきじゃないか?
 恐るべし雪塩!

▲国際市場 大栄食堂前。大栄通りの西側入り口辺り。花笠食堂と並ぶ情感タップシ純沖縄食堂だけど,こっちは奥にある分客足は少ない。味はハイレベル,狙い目。

 さらにアーケード奥へ。
 大栄食堂は4日からで今回は×。けどこの店の通り,いい!太平通りとの表示有。
 祝いモノってことで,開南側出口辺りで売られてた三枚肉(500円)を購入。
 今さらだけど。三枚肉は肉の部位としては豚バラ。赤身と脂身が交互に層になってるからこの名を付す。つまり内地でもお馴染みのこの部位を,層状に重なる異質な肉質としてをミルフィーユみたく楽しむ食感,これが内地との違い。
 もっとも,これは特段沖縄独自の感性じゃない。最近よく聞く韓国のサムギョプサルも,語彙はサム(3)-ギョプ(層)-サル(肉)。だから韓国でも沖縄でも層に対して垂直にあられ切りする。
 ただし,韓国と沖縄の違いは料理法で,サムギョプサルは通常焼肉なのに対し,沖縄は普通角煮にしてるみたい。
 あと,沖縄みたいに祝い事の際に食すって感覚も,韓国にはない。祝祭で豚を潰してた頃の,東アジアの古い感覚の名残なのかもしれない。

▲国際市場 公設市場の裏の惣菜屋前。今回は「惣菜ストリート」と勝手に呼んでます。

 国際通り側へ少し戻ると,昨日の惣菜ストリートに出た。
 昨日の店の対面の丸山さんって店を物色。
 各250円表示のを物欲しそうにしてたら「200円でいーよ!」ってんで買ってしまったのがスンシー,中身汁。
 中身はあっちこっちで嫌ってほど食ってきた内臓煮込み。香港・マカオの「牛[イ十]」や台湾の「四神湯」,それから韓国にも「スンデタン」があるけど,中身には牛[イ十]みたいな漢方スパイスの苦味や黒澄みはない。古いタイプの中華の湯と同列の味覚。内臓肉の煮込み汁の透明感が舌に美しい。
 スンシーもまさに中華由来。漢語の「筍糸」(スンシー)そのもので,「要はメンマだ」と沖縄ガイドで書いてるのもあるけど,国際市場で実際買ったパックにはコンニャクが入ってました。正確にはウチナンチュが「スンシーイリチャー」と呼ぶスンシーをメインとする炒めものなんだと思う。プリプリした食感と塩の染みた筍の香りがコンニャクの柔らかな臭みにマッチした,薄い清らかな味覚。
 この2つは,残念ながらパンに合うもんじゃない。やっぱりご飯の友やな。どっちも清純な薄味なんだけど,じいんと染み入るコクがあって…この和風のダシとは違う,沖縄の味覚の核を抽出したよな料理。しかも市場メシだから,それがベタベタに出てて。
 美しい味でした。

▲国際市場 とある横道にて
 牧志公設市場内で買い物をしたのは,この日が初めてでした。考えてみたら。
 良くも悪くも観光地。ボラれなくてもナイチャーの言葉丸出しで「安い~」とかだけでお買い物する気はなかった。
 でも。
スーチカー(ボイル) 500円
 前回から気になってたこれだけは,ナイチャーが手に入れられるとしたらここしか思いつかなかったんで。特にイタリア後,かの地のハム文化に魅せられてからはどーしても試してみたかった一品。
 肉屋の店頭に真空パックで無造作に置いてあった,この沖縄伝統の塩漬け肉。
 これはパンにぴったんこ!ヨーロッパのハムみたいな臭みがなくて,高貴な香りが…ボンジュールのパンみたいなキレイな味にスゴく合う!
「沖縄版パンチェッタ」として紹介する書籍をたくさん見かけたが…実際食った印象は,むしろ韓国のスユクを想起させます。
 語源的には「すー」は海水とか塩の意。「ちかー」は漬けものらしい。スーチキーともいう。
 肉を塩漬けする腐敗防止法は世界中にある。パンチェッタ以外にも,フランスのプティサレもそう。卑近な品ではベーコンもそうだけど,これは燻す手法も併用しててハムに近くなる。
 塩分による細菌繁殖の抑制効果を追った副産物として,水分を飛ばすことによる肉の旨味の凝縮が出来てしまって,今じゃそっちが重宝されてるという食材群です。
 伊・仏・沖の3つの食材,肉質は同じ豚バラ。違いは漬けるの熟成の時間,それと使用スパイスらしい。パンチェッタは長く漬けて,かつ熟成させる。プティサレも基本的に同じだけど,パンチェッタほどは熟成させない。この両者は,漬ける際にニンニクなど香草を塩に混ぜる。スーチカーが特徴的なのは,ヨーロッパのこの両者より漬けるの熟成も短時間で,かつスパイスを使わないこと。だから味覚的には韓国のスユクやチョッパリに近くなってるわけです。
 つまり,豚バラの浅漬け。3つの加工法の中では最もシンプルで,だからこそ仄かながら肉そのまんまの旨味が増幅される。――ただ,塩加減の微妙さは野菜の浅漬けどころじゃなく難しいらしい。ネットに作った事例は一番多くアップされてるけど,失敗談も多いみたい。
 旅行中だったんでそのまんま食ったけど,最も簡単な手法でも薄くスライスしてフライパンで軽く炒める位のことは,普通はするらしい。
 個人的に舌なめずりしたのはチャンプルー。スーチカーを1cm弱にスライスしたのをフライパンでカリッと焼いて,野菜を和えるだけみたい。
 今風…というかほとんどパンチェッタとかベーコンとしての食い方だけど,レタスとかのサラダに焼いたスーチカーの細切りを和えるというのも旨そうでした。
 と…ここまでイメージしたら,何で戦後,これだけスパムがこの島の食文化に浸透したのかよく分かります。スーチカーの位置に,安くて,より保存に強く,流通に便利なこの缶詰めが爆発的にはびこった。
 それどころか,肉食が実質異文化だった内地と違って,この代替があまりにもスムーズだったからこそ,むしろ沖縄料理のフレームは壊されずに残ったのかも知れないわけです。

 今回,市場で買い物できるのは最終日…と思わず買い過ぎた!トートバックパンパン!
 とゆーのは,この後さらに戻りながらドルチェまでゲットしてしまったから…。
 新天地市場本通りって寂しげな裏道で,これまた地味な店を見つける。ただし店名は派手で「まーさむん処 じーまーみどうふ・おにぎり・沖縄そばの店 商六」ってこりゃまた長いな~。
ジーマミー豆腐 150円
 これはもう解説不要でしょう。沖縄風ごま豆腐。
 …なんだけど,確かに店名にするだけある。ふわふわな食感に,ごまも大豆もごく薄く,冴え冴えとした月光のような清らかさ。
 沖縄豆腐って「トーフチャンプルー」の「硬い」って印象ばかり強いんだが…。
 ひょっとして?台湾に似て,豆腐という食材の変化球投手としては,沖縄って日本で一番先行しとんじゃないの?――このじーまみーの大豆使い,あの沖縄豆腐と同じ風土から出たものとはとても信じられない。
 ちなみに「まーさむん」とゆーのは「美味しいもの」の意のウチナーグチ。「まーさむん処」なる言い方もメジャーみたいで,検索すると幾つものの「まーさむん処」がヒットします。

中田食品(豊見城市字名嘉地)みき 100円
 屋台でも出店でもない。ただ単に,道路に品を並べてるだけのお婆ちゃんから買った。
 硬貨を渡すと「よく振ってかめー」と絞るような声で言われる。最初「よく降ってねえ」と聞こえたんだが,そうか,「食べる」のウチナーグチが「噛む」ってのは聞いてたけど…「飲む」のも同じ語を使うんやね。この2つのアクションを同一語で表現するのは,割と珍しいんちゃうやろか?
 それはともかく?
 この缶,内地の沖縄ショップでメジャーなタイプ,「マルマサ」のみきじゃない。――すると何か?「みき」って商品名じゃないんか?「シーチキン」じゃなく「ツナ缶」みたいな食材名なんか?
 味は,むしろ旨い。香料が舌に残らずサラサラで,その分なのかも知れんが玄米の香りが豊かに出る。
 この中田さんの缶をひっくり返してみる。表示は
原材料:白米,砂糖,さつまいも,しょうが
品名:清涼飲料水
となってる。つまり,少なくとも表示しなきゃいけないほどには添加物も保存料も使ってない。
 みきが「神酒」なのは想像がつくけど,この1本で分からなくなった。例えで古称を借りてきた現代の発明品なんじゃないのか?
 調べてくと,予感通りそうじゃないらしい。これ,沖縄や奄美の島々の各家庭で作られていた伝統飲料だという。なぜかそれ以上のコメントがない。
 ふと気付いた。検索タームを変えてみる。
「みき_沖縄_密造酒」
 途端に,非公式サイトがバンバンにヒットし始めました。ここで下手にご紹介するよりも…皆さん自らで検索してお楽しみください。
 感心したのはこの点です。内地を含めて,元々相当数の家庭において漬け物感覚で作ってた密造酒,もとい「どぶろく」が,消費社会の中で消えていった中で――沖縄では何と製品化された!この逞しさはどーよ?
 軟弱なナイチャーの1人としては嘆くしかない…あふあ~!