(@_71_@) 第三日@台湾／再六訪　青山番遥／南営路(@_71_@)

この日は多彩過ぎました。基隆，中崙，中壢──台湾の底はまだまだ深かった！

[前日日計]
支出1500/収入2240
負債 740/
[前日累計]
　　　　 /負債 340
§
→十月七日(天) [71南営路]⇒[72基隆離脱]⇒[73西門]
1052王記府城肉粽
肉粽150
1138老山東
牛筋家常麺200元400[74中崙市場]⇒
1332廣誠素食500[75中壢市内]⇒
1631丑爺爺臭豆腐200
1659壹等品覇王猪脚
脚蹄飯600[76中壢夜市]⇒[77師大夜市]⇒[78夜の西門]
[前日日計]
支出1500/収入1850
負債 340/
利益 10/
[前日累計]
利益 10/
§
→十月八日(一)

～(m–)m 本編及び次編の行程 m(–m)～
Googleマップ(経路)

▲朝の騎楼でふと南無地蔵王菩薩

目録

仁二路137巷を登る
とうと長崎へ！上から扇状の南斜面集落
謎の明玄宮と金環姨廟
■小レポ：基隆市立仁愛小学校の125年
■小レポ：コーツソン・オールドハウス

仁二路137巷を登る

昨夕の寿山路は，結果的には凄い思考の深みに至ったんだけれど──やはり基隆に「長崎」を求める思いは，未だくすぶってたようで。
　残り少ない基隆での時間，今度は南への山越えを思い立っております。
　0731，仁二路を東行。

▲基隆市仁愛国民小学校の校門脇の沿革表示

０745，基隆市仁愛国民小学校という学校に到る。上記沿革碑を撮影してます。
　現在の校名は1945からのものと記されてます。その前は「1941双葉国民学校」「1933双葉尋常小学校」──もちろんこの学校に着いたのは偶然です。でも後から調べるとこれまたハマってしまう長い歴史がありました。→巻末小レポ：基隆市立仁愛小学校の125年

▲尾根の古いマンション

昨日の山登りの再来か？
　0747，学校の向こうの仁二路137巷を右折南行して登る。
　おおっ？結構な高みです。登るにつれて家数は減る。
　な…長崎はどこ？
　0756，頂上辺りにいきなりアパート数棟現れる。古びてる。なぜこんなところに？と疑問は湧くも理解不能。住所は南営路151巷とある。
　南へ下る。昨日の南の岩山が見えてる。
　この山頂付近の謎は，後述のようやとこだと推定してます。→巻末小レポ：コーツソン・オールドハウス

とうと長崎へ！上から扇状の南斜面集落

▲下り道入口

南斜面が，これもいきなり「長崎」になりました。
　坂道の左右に不規則な，小さな平地が棚田のように連なり，方向もばらばらな平屋の家屋が並ぶ。
　あるじゃないか，やっぱり！

▲階段口で停めてあるバイク。「長崎」です。

住所表示には南営路117巷とある。
　ちなみにこの住所でググっても不動産情報しかヒットしません。何より，この住所の記載は，この斜面の家々が一つの独立した自治区ではないことを匂わせます。

▲レンガの壁も時折残ってます。

▲家の庭かと思われるような道を延々たどる。

逆をたどって登ってたら，これは間違いなく迷ったと思う。
　道は幾重にも分かれて複雑です。ただ，下向きの道はいつも一本しか選択がなかった。
　上から扇状に拡がる街区なら，逆に下った方が分岐は多いはず。山の上から拡がった街に，南から後で道を付けたように見えます。

▲所々，こんな感じに工事っぽい壁も立ってる。再開発間近？

謎の明玄宮と金環姨廟

▲パラソル。下るにつれ高層のアパートが増す。

後から地図をいじってると，どうもこの地区には明玄宮という密かに有名な社があったらしい。
　その他，いくつか食べ物屋で有名な店も見つかる。ただ，「長崎」に感激し過ぎてそれらのいずれも嗅ぎつけれてません。不覚不覚。
※ 新台湾廟宇文化平台/基隆市仁愛區/明玄宮

▲別の登りの脇道。番地の数字が二桁になった。

▲ランタン一つ

０810，凄い道を出ると当たり前だけど南栄路。番地の数字は「115」とある。
　西行。
　0813，道の北側に万善祠金環姨廟とある半地下の祠。変な向きです。おそらくは，仁愛公園の山を向いてるんですけど？

▲金環姨廟

▲南営街本道に出た。

■小レポ：基隆市立仁愛小学校の125年

　下記学校HPが誇り高く沿革専用ページを設けてます。
　創立は1897年。下関条約締結の２年後，明治30年です。「基隆國語傳習所」という校名で「教導台人子弟學習日語」，つまり実質的に日本語学校らしい。
　これが，おそらく基隆人口の拡大とともに次々と新校の母体になっていく。1924 ( 大正13) 年に基隆高等女學校(現：基隆女中)，1927(昭和２)年に基隆中學校(現：基隆中學)が一旦校内に設置されては分離していった。当然本校側も学校の体を成していったのでしょう。
　ただし，1941(昭和16)年，つまり太平洋戦争開始の年に，内地と同じく校名は「統一為國民學校」，国民学校になった。即ち「雙葉國民學校」，日本人のプログやこの時見た学校碑には「双葉」と記載されてる。
　1944(昭和19)年には「北投學園」というものが出来，「本市四所小學約150人志願疏散」，つまり疎開が行われてます。

▲双葉尋常小学校の男子クラス集合写真

「1945 民國34年(昭和20年)
8月日本戰敗，日裔師生返日。台灣光復，十月二十五日改名為『基隆市仁愛第一國民學校』，劉木生先生帶領原壽公學校師生由信義至本校。」
　終戦まで50年近く，校長は全て日本人。それが「雙葉」あるいは「双葉」の冠を無くして「仁愛」に変わり，漢人名の校長が就任する。──戦中の双葉校在校生の下記プログを見つけましたけど，ほぼ日本人学校だったらしい。つまり敗戦時に空の施設だけが残った格好になります。
「1952 民國41年
3月開辦針對失學民眾的民教班四班。
6/8 蘇淵泉先生再任本校校長（第五任）。」
　この辺りで何か方向転換が行われた書き方ですけど，ちょっとよく読み解けません。民国支配の強化が影響してると予想できますが…。
　その後，目覚ましい多角化が記録されてる。1971(民國60)年に「教育廳指定辦理『啟智實驗班』，招收本市智能不足兒童。」，つまり知的障害児学級が試行設置。一方で，1978(民國67)年に「民族舞蹈獲邀參與總統府前民藝華會演出」，総統府前で民族舞踊を行い，1991( 民國80)年に「舞蹈資優班」が出来てるのは，少数民族の文化伝承クラスが出来たということでしょう。
　日本人の卒業生との交流も続いてて，1986( 民國75)年，つまり戒厳令解除直後に「日本雙葉會師生代表八十多人」の里帰りが行われてます。
※ 基隆市立仁愛小学校HP/校史沿革
※ 吉見吉昭/昭和10年代前半の台湾の尋常小学校
「私は台湾の北端にある港町の基隆（キールン）市の双葉尋常小学校に昭和9年から15年まで（1934～1940年）通いました。1941年に小学校が国民学校に変わる直前のことです。男女別のクラスが四つあって，それぞれに60人ほどの児童がおりました。」
「小学校に通う児童の大部分は日本本土に本籍をもつ“内地人”でしたが，ごく少数の“本島人”の子供もおりました。当時は意識しませんでしたが，富裕家庭の子弟だったようです。小学校の隣には，本島人の子供の通う同じような外観の“公学校”があり，日本語による教育を行っていましたが，小学校との交流は全くなかったようです。住居や商店街についても，内地人と本島人の住み分けが行われていましたが，差別というよりは，そのほうがお互いに気楽だったからだと思います。」
「日本は朝鮮半島や台湾で学校教育の普及に努めました。その結果，台湾では1944年の時点で公学校への就学率が8割を超えていたようです。公学校で教えた内地人の先生の中に児童から慕われた方がおられたことは，成人した元児童たちが興信所まで使って先生の引揚げ先の住所を探し出して，ツアーを組んで訪ねて行ったことからも明らかです。」

　だからこの学校の最大の転機は，やはり終戦時ですけど，この時，「昭和二十一年一月四日沖縄兵及び軍属（約一、二〇〇人）、基隆市双葉国民学校に集結、基隆市の戦災復興作業に従事」という記述を見つけました。
　映画「非情城市」に描かれるように，在台日本人の状況はじわじわと悪化したようです。昭和21年の段階では，台湾人と日本人が協力して戦災復興してるような光景もあったのでしょうか？
　あとこれも知らなかったけれど，台湾からの引揚者は軍民合わせ約50万人にのぼったという。その後の歴史を考えると，確かに日本人が居続けるのは相当困難だったでしょう。そのほとんどが基隆経由で帰国したはずです。
　この時期の状況の記述は見つかりませんでした。でも，基隆の人口は現在でも37万人(2016年)。終戦引揚者数は一般に５百万人という数字が言われてますから，その１割が基隆経由だったわけです。一時期に日本人が50万人居たのではないにせよ，相当異常な状況だったことが予想されます。
　
※ 読谷村誌/３台湾での戦争体験/台湾からの引揚げ
「終戦当時の在台湾の日本人は、軍人一六万六〇〇〇余人を含めて、およそ四八万八〇〇〇余人であった。そのうち沖縄県人は、軍人・軍属、台湾疎開者の一万四〇〇〇人や敗戦により南方から引揚げてきた人も加えると約三万人にのぼるといわれる。」
「昭和二十年八月十五日
終戦、在台日本人は五〇万人」
「昭和二十一年一月四日
台湾各地の沖縄兵及び軍属（約一、二〇〇人）、基隆市双葉国民学校に集結、基隆市の戦災復興作業に従事。後日、瀧川国民学校に移駐
四月四日
日僑の第一次引揚げ者三〇万人に達する」
※ wiki/台湾からの引き揚げ
「敗戦を迎えても在台日本人のなかで本国へ引き揚げを希望する者はわずかしかいなかった。彼ら日本人のほとんどが、台湾人によって危害を加えられたり、不安にかられたことがなかったことによる。朝鮮や満州と比較して、在台日本人の敗戦認識には特異なものが見られる。」
「戦前からの紙幣であった台湾銀行券が、敗戦後も主軸通貨として流通していた。朝鮮各地で在朝日本人が日本人世話会を結成していたのと違い、在台日本人は自らを守るための組織をつくろうとしなかったが、これには敗戦前と変わらず台湾総督府が機能していたことが大きな要因であった。」
「政府に対する不信感・反感は日増しに高まり、やがてその不満は、日本人に対しても向けられるようになった。」
「連合国にとっても現地に日本軍が残留していることは、治安維持の観点でも好ましくないので、日本で不足している輸送用船舶を提供してでも、出来るだけ早く本国に帰還させようと考え始めた。」
「台湾からの引き揚げ事業で帰還した日本人は、最終的に、軍人軍属15万7,388人、民間人32万2,156人、合計47万9,544人である※※。」
※※河原功解題『編集復刻版台湾引揚者関係資料集第1巻』（2011年）不二出版　

■小レポ：コーツソン・オールドハウス

「Khóo Tsú-song old house」と英語サイトに書いてある場所が，この時越えた頂上の西側の尾根にありました(→GM.)。
　大体この尾根，なぜか名前がありません。仁愛公園という緑地が広がり，北側にこの時見たボロ・マンション，そして西端にこのオールドハウス。戦略的にも重要な場所に見えるのに？
　取っ掛かりになる情報がないから，とにかくこのオールドハウスを追ってみる。
　漢語では「許梓桑古厝」という。「古厝」は古い邸宅みたいな語感の古い言い方。「許梓桑」はその邸宅の主で，戦前の基隆の大金持ちで名士だったらしい。
　戦中，当たり前だけど米軍の空襲の目標にされたので許さんはここを離れ，以来屋敷は荒れ放題。それを最近，青年活動団体が綺麗にして，今では結婚写真の撮影地として有名になってるそうです。
▲「婚紗新景點」許梓桑古厝
※「婚紗」はウェディングドレス。これを着たら，撮りまくるのが中国人の因縁らしい。
　では，それが美談になったほどのオールドハウスのそれまでの状態は，と言えば維基の語を借りると数十年の間「三不管地帶」だったという。
　この中国語が理解できなかったんだけど，どうやら多少隠語的な語で「無法地帯」という意味らしい。
　少し拡大して推量すると，この丘陵全体がそうだったのではないか。だから仁愛公園といった白々しい名付けの「追い出し」をかけた。ということは今の公園部分が最も濃厚な「三不管」，その残滓が北の古アパートでしょう。
　イメージしにくいのは，現存する「長崎」，南斜面の集落と，この消滅した三不管との関係です。道の付方からはこの集落も残滓のように思えます。ただ，南栄路側の２つの廟は，三不管以前からの独自集落がここにあったようにも想像させる。何より，実際に歩いた感触は，トカゲのしっぽの感じじゃなくてもっと生々しい。
　だから言えそうな唯一のことは，この南斜面集落，何らかの経緯で狭間となって残存した稀有な存在，ということです。
※ 維基百科/許梓桑古厝
「正式名稱為「慶餘堂」，是日治時期曾擔任基隆街長與臺北州協議會員等職的許梓桑之故居。」
「二次大戰期間，許梓桑家族為避美軍空襲，搬離此居。許梓桑本人於戰後不久即過世。戰後，則陸續有族人與難民在此暫居。然而，1960年代左右，許家後代的產權問題逐漸惡化，以致許宅被遺棄為「三不管地帶」，荒廢數十年。」
「直至2014年八月起，由在地年輕人如基隆青年陣線於此蹲點，發起週邊區域清潔活動(略)。「許梓桑古厝」因此漸恢復其原貌，也開始受到遊客注意，鄰近婚紗業者也多次在此取景，成為婚攝景點之一。」
※ 自由時報/地方新聞〈北部〉/婚紗新景點許梓桑古宅入鏡 2015-01