西門・長虹ホテルをチェックアウトし,秘かに作戦を開始したのは6時過ぎであった。
作戦というかただの朝ご飯というか,最終日恒例の早起きさんというか,まあそんなところです。
台北車[立占]に到達したのは6時半。到達というか一駅乗っただけだけど,リュックをコインロッカーに入れるのが第一作戦目標である。
しかし!ここで早くも第一のピンチに直面する。
いい大きさのロッカーがない。デカい70元のしか見当たらず,しかもキーが怪しい。結局,地下一階の高鉄の身障者用窓口東側を使う。なお,後でその西側に日本並みの小さいサイズのも見つけた。25元。パスワード発行式。
第二目標,昨日フラレた善導寺・華[土亢]豆ジャンに再チャレンジ。時間を食ったんで勇んで早足にて突進すると──おお,今日は一階まで行列はないぞ!これはラッキー!
二階にも行列はないぞ!これは素晴らしい…あれ?
誰もおらんがなもし!開いとらんがなもし!
通りがかりの優しそうなおばあちゃんに尋ねると,にこやかに一言。
「礼拝一休息」(月曜日は休みだよ)
もう一軒当てにしてた「徳的喫去」も朝は開いてないらしい。日頃の行いの成果といえる絶不調の最終日であります。
もう7時を回った。忘れよう。
あーあよく寝た!!さて,最終日の朝ご飯だ,中山へ向かいましょう。
今にも雨が降りそうな空模様。日頃の行いが結集した最終日です。
で,中山北路。えーと,15巷23号はと?
西側の路地でした。このエリアということは…恐れてたような日本人向けカフェじゃなく,どうも金持ち台湾人の御用達モーニングっぽい。
格拉夏早餐140元
日本語訳は「キャッシュのモーニングセット」…となってる。セレブっぽい店内ながら,あえて現金払いであることを強調することで,庶民的な雰囲気を出したい…のじゃないだろから,きっとキッシュのことなんじゃないかな?
違った…。
非常に当たり前のモーニング。トーストしたパンにバターとジャム,コーンのサラダ,ローストビーフ,スクランブルエッグに珈琲。
さて!?メニューの「キャッシュ」とはどれのことなのじゃ?
珈琲ってもなあ。確かにいい豆使ってるしハンドドリップなんだけども,全然香りにもコクにも特徴がない。普通に素人が淹れた珈琲に思えます。
他もおおよそ,そんな感じみたい。モノは選んであるけど咀嚼できてない。
これは,要は日本のモーニングもどきの状態らしい。8時が近づくとかなり客が増えて席が埋まってきたから流行ってるんだろう。台湾ではレベル高いんだろうけど…ちょっと無理が多過ぎ。
でも,まあ。こういう本格的カフェが出来始めたんだな,と奇妙な歓迎を胸にトイレへ行くと,便器の四方がガラス貼り。
やはり無理が多過ぎ?
というわけで,台湾的には誠にリッチな朝ご飯を頂いたのでした。満足,満足…?
ああよく寝た!!さあ朝ご飯を食べに小南門へ出かけましょう。
リセットの押しすぎでボタンが壊れそうになってますけど,台湾で朝食と言えばやはりコレでしょう。日本と同じモーニングなんて食うのは素人である。
金峰魯肉飯
魯肉飯(中) 35元
鳳梨苦瓜湯(鶏) 50元
最終日の第一食にふさわしい大変面白いお味でした。
湯が,碗に鉄桶が嵌ったようなので出たんで,えらい高いもん頼んじまったか…と思ったら皆さんそんなもんらしい。
鶏肉の手羽が3つ入ってる。この出汁が非常に下品ながらじんわりと出てていい。注意すると苦瓜の苦味とパイナップルの芳香と酸味が複雑なアクセントになってる。これはいい湯です。
魯肉も脂身が多めで滷味が深みを帯びてるわけじゃない。決して上品な滷味じゃない。けれどこの脂とちょうどいいバランスを取ってる。
つまり肉の脂の扱いが非常に上手い店らしいんである。
南門市場脇らしい庶民的な味覚。
周囲には通勤者の朝飯屋台が嫌というほどあって,すごい行列が何本も出来てます。行列だらけでどこがいいのか逆に見当つかんぞ。
時間が中途半端なんで少し迷ったが,板南線最終駅のまで初めて行ってみることに。
板南線の車両内には──今わしを入れて5人しかいない。こんなの見たことがなかった…。
10時22分,目的地・南巷展覧館駅に到着。
…。
10時45分,南巷展覧館駅から市内へ出発。
たった20分足らずで帰るのは如何にも企画倒れだったように見えるのであるが,実に様々な収穫があった。
一。北側一帯にはおそらく国際見本市を意識したドデカい展示会場が数体並んでいる。
二。「南巷老街」はとにかく短いが,それ以上にとにかく普通。台南ならどこにでもある街並み。
三。お目当ての老張焼餅店はお休み。
四。「[木風]の谷」(ナウシカ?)と名付けられた漫画店があるが,やっぱりお休み。
五。お隣から出てる文湖線は地上を通るので気持ちよさそうでしたが,ものすごく時間がかかりそうなんで止めました。
このように実に意義深い南巷展覧館だったのだが,なぜか短時間で終わってしまった。
突如,前回行きそびれてた蓼記牛肉麺を思い出した。またまた中山記念堂まで戻って下車。小南門の隣なのでやや効率はよろしくないとか,南巷展覧館なんか行かなきゃ良かったんじゃないかとかいった意見も一部の委員から出されたが,人間苦労をしてこそ一人前になるというものである。
さて蓼記牛肉麺に着いたぞ。何か紙が貼ってあるぞ。
「星期一定休」(月曜日定休日)
…。
リセットボタンを押すがどうやら壊れてしまった。
「老張牛肉麺」?
蓼記の近くに小店を発見する。永康街の同名店との関係は知らないが,客足は多そうだし…何より最早牛肉麺を食べるモードになってしまってたので入る。
牛肉麺(小)120元
小菜(赤肉)30元
なるほど。台湾風四川料理を求めるなら,まさにこの牛肉麺の紅焼の味覚がそれに当たるんだろな。
汁は真っ赤だけど,意外にこらえきれない辛さじゃない。麻も辣もちゃんと使ってある。けれど滷味が前面に出て麻辣は脇から支えてる。そのままでは柔らかい滷味にインパクトを与える形で,この牛肉麺の汁は出来てる。その証拠に肉そのものは全然辛くなくて滷味だけが染みてる。おそらく麻辣は調理の最後に加えてあるだけだと思う。
小菜の赤肉。大根かと思った。紅白の鮮やかな見かけ。味付けはほとんどなくて素材の脂気の他は塩漬け肉そのものと言っていい。けれどこれがいいダシ出してる。ベトナムでフランスパンの間に入ってた脂身を思い出した。
にしても,さすがはわしである。予想外の閉店にもめげず,通りすがりのこういう店を発見できた。日頃の行いというのはやはり大切と言える。というか今朝,何店フラレたのかもう分からなくなってきました。
人間,こうなると強い。無敵である。ヤケクソとも言うが,まあいいじゃないか無敵なんだから放っといてくれ!
こいつは,老張から小南門へ歩いてる途中に見つけました。
三角地のオープンスペースでドデカい…けど手書きの汚い看板掲げてて,威勢の良さそないい味出してたんで…何となく買った。
味も威勢がいい!
士林のと違って,ここのはほぼ胡椒だけで押しまくる味みたい。麻も入ってると思うがごく僅か。
ただこの辣椒と五香粉の支えがあって初めて成立する旨さだと思う。かなり沢山入ってるネギの下味として,五香粉が多用されてるようです。
いいねえ。最終日,いよいよ運がノッてきた気配がある。よっしゃ,それなら一つ,久しぶりに公館へ出かけてみるか!!
最強モード全開である。もう何も考えてない。
昼飯時が近づいた公館は飯屋もかなりあって迷うほどでした。
ただ,この辺りにはセンスのいいカフェも沢山出来てると聞いてたんで,こちらにしました。日本語訳すると「海辺のカフカ」。今日ママンが死んだ。
義式濃縮珈琲(Doble)100元
マフィン(オートミール)70元
ホームメイドケーキやらなんやら,うまそうなのもメニューにあったけど──。
「都売完了」(全部売り切れましたよ)
12時開店だろ?そんなに流行ってんのか?でも今は店内3人だけだぞ?やはり日頃の行いか?
天井に緩く回るデッカい扇風機。広い窓。壁に一見ハチャメチャな人物写真,絵画,風景写真。かなり凝った感じのロックの選曲。
広い。外見からはちょっと予想できないような,外界から切り離されたような別世界感があります。
エスプレッソはもちろん本格的。酸味もこなれたいい機械みたい。
マフィンも驚くほどアメリカン。帰国者が作ってんだろか?台湾的なものはないけど,日本ではなかなかない。いい味出してる。
オーナーらしき男の態度に威風がある。いい自信です。
いいカフェだ。こういうちゃんとした空間を作ってるカフェは,日本にも数えるほどしかない。いいカフェのある街はいい街だ。
公館。また迂闊にも見逃していた街を一つ,見つけてしまった。
ここは師大と同じく,いやおそらくあそこ以上に,本当にとりとめのない街です。次に来たとしても真価を見いだせる自信はない。けれど通りがかりの雰囲気が面白い店は幾つか既に見つけてしまった。
この街の奥深さは,年々変化し続けるこの「青年期」ぶりにあるのは確かなんだが。香港とは違うたおやかな逞しさが,この島にはある。それには,日本人としては激しいジェラシーを感じる。
ついでにCoco都可茶飲で紅豆可可を一服。40元。
「可可」は店名「Coco」の訳で,つまりCocoスペシャルみたいなもんかと思って注文した。待つ間に他のを見てたら,他のにも「可可」の文字はある。英訳には,なぜかどれにも「chocolate」の文字があるけど…まさかね。いくら台湾でもそれはね。
が!!台湾恐るべし!
ホットチョコレートの下に小豆がゴロゴロ転がってる。砂糖の量を選べたから「無糖」にしといたから,ホットチョコレートをストローで吸うと無糖のココアに混ざって数粒の小豆が管を登ってくる!
小豆のチョコレートまぶし飲料?何ちゅうもん売っとんねん?美味いのか不味いのか自分でも分からない珍妙な味に,最強モードは今やメーターぶち切れそうになってきました。
はいはい。帰国時間が近づいてますよ。もうヤバいですよ…と声がするけど,何か止まらなくなってます。
「猫[糸覧]之眼・帯[イワ/小/心]体験台北最美的山線」
猫の視点──台北で一番美しい山の乗り物を体験しようぜ!!
地下鉄に貼り出されてた猫空の宣伝ポスター。また行きたいなあ,高所恐怖が克服できた頃に。
ところで?ロッカーはどこだ?
見つからん!いやロッカーは見つかるんだが,あの見なかったことにした25元ロッカーばかり!
一度一階に出て潜った場所を探して…あ!?あった!やっと見つけた!
6桁のパスワードを打つ。ん…何か表示が出てエラー音!?
表示:OVER TIME
あと,「140」の電光表示も出ましたけど?――これは!?もう140元払えと!?
3時間を過ぎると1時間ずつ加算される仕組みらしい。聞いてないぞ!!でもよく見たら…中国語で書いてあるぞ!!
そんなんしてたら,ヤバい!空港到着も完全にタイムオーバーだぞ!!
駅の北側にデッカいバスターミナルビルが出来てましたが,国光客運のバス停は以前と同じ場所だったんですんなりと…行けるはずでした。
完全に逆方向に歩きに歩いてあやうく中山に着きそうになっただけで,それ以外はすんなりと事は運びました。
ふうっ疲れた…てゆーか,これは…わしは飛行機に間に合うのかあ?
この,大体知ってるのに微妙に勝手が違う感じ,なかなか曲者ですよね。
──てゆーか,落ち着くなよ!!
リムジンバスが台北汽車[立占]を発車したのは14時48分。
駅北側一帯の再開発,スゴいピッチで進んでおります。次の2年が経つと全然違う風景が現れそう。
てゆーか?この状況でもタクシーを使わないのか!?いいのか,わし!!
(結果的に乗れなかった記憶はない。これまでで最も滑り込みで,空港を死に物狂いで走ってヘッドスライディング的に間に合いました。さすがにこれ以降の当日の記録はありません。
皆さん,旅は計画的にね。)
※後日談:ホントに乗り遅れたのもこの後すぐの頃でした。恥ずかしいのでリンクは貼らないけど,乗り遅れると(当たり前だけど)大変です。
皆さん,旅は計画的にね。