外伝09♪~θ(^6^ )第六次香港
最後天新幹線珈琲に[土申]記[米ソ/王/心]品を添えん

[前期累計]
消費1800/収入2200
負債 400/
[前期累計]
    /負債 2
§
5月10日(日)
0800名都酒楼
ソーメイ
水晶鮮蛯餃 海老蒸し餃子
北[サ/姑]綿花[渓-シ+オオドリ] 鶏肉・キノコ・魚の浮き袋の蒸し
95HK$,300
0945ロンドン粥麺店
皮蛋痩肉粥36HK$,250
1000和栄清[]粥麺店
金版及弟粥38HK$,250
1250~機内食×2 1000
2300[土申]記[米ソ/王/心]品
馬来[米ソ/王/心]150
[前期累計]
消費1800/収入1950
負債 2/
利益 148/
[前期累計]
利益 148/
§
→5月11日(月)

 遅くなってしまった。7時半。
 テイクオフは12時50分。10時過ぎには宿を出るのがベターとすれば──残り2時間半。
 ただし,今回はほぼ後腐れはない。脱マンネリ気分だし…蓮香をカットするか?
 チェン湾線から金鐘乗換で湾[イ子],快楽餅屋へ。と思ってたけどこれもカット。統一中心4階,名都酒楼へ。
 忙しいのか入り口チェックは甘いようですので,ちょっと快便でも致して数分間時間調整。ここは地鉄の結節点ですしトイレ使いにも便利そうです。
 とか物心共に汚いことを考えた(致した)上で8時ジャスト入店。

▲名都酒楼の水晶鮮蛯餃

ソーメイ
鼓汁蒸排骨 豚のスペアリブの蒸し
水晶鮮蛯餃 海老蒸し餃子
北[サ/姑]綿花[渓-シ+オオドリ] 鶏肉・キノコ・魚の浮き袋の蒸し
 うーむ。眺めは良かったしノンビリは出来るがなあ…。
 あと,ソーメイは美味かったです。ソーメイの高級茶葉ってのを何とか確保したいなあ。
 日本から帰って来た方の開店と聴くのですが,確かにガバナンスは効いてるらしくて,美味いんですよ,美味いんですけど…これは日本的な味わいのライン内です。いわば観光客に安全な飲茶。その意味で,逆説的に面白くはありました。
 水晶鮮蛯餃は,具が海老と思えない重くニンニクの効いた味わい…ってゆうかこれでは海老を入れてる意味がほぼない。皮にもプリプリ感がない。つまり広東らしさがまるでない。日本の餃子としてはまずまずでしょうけど,これで「特」だとは…つまり包の思想そのものが全く違う。皮を如何に美味に食えるか,というスタンスではなくて,具が美味しいかどうかというのが日本餃子。
北[サ/姑]綿花[渓-シ+オオドリ]は「大」。本当にもう和食の煮物です。とくに鶏肉がこんなにホクホクに…つまり水炊きとして丁度良く出来上がってるのを初めて見ました。思想的には魚のハラワタに一番良く出てます。ハラワタに出汁が十分に染みてるんです。広東ではこの歯応えで食わすのを含めて,素材をここまでは殺さないはずです。
(※写真重複につきカット)▲名都酒楼の鼓汁蒸排骨 豚のスペアリブの蒸し

 あれ?
 こう書くと結局──素材の力を殺さないかどうか。それだけなのか?
そしてそれは2つのタイプの反論を予期します。一つには──中華の中でも広東ほど,素材より技術に傾倒した料理体系はないのじゃないか?もしかすると,それは逆なのか?
 二つ。──和食ほど四季とその素材を尊ぶ体系はないではないか?広東と尊び方が違うとでも?
 つまり。和食の特徴と一般に言われてる物言いが,単純には広東についても言えるような,しかし深いところで全然袂を分かってるような──そんな謎に捕らえられてしまったんでした。

▲ロンドン粥麺店の皮蛋痩肉粥

 ロンドン粥麺店。9時45分。
皮蛋痩肉粥36HK$,250
 塩辛い…!?
 一口目でこんな感想を覚えたのは初めてだぞ?何となく最後に取っておいたこの店で…?
「サームシップハー」と定員の声が耳をかすめる。38ね…えっ!?タイ語かよ!!
 タイ語の増えた店内,最高106HK$のメニュー,祭●常去食●的150間に掲載された認定証。
 出汁の味もあまりバッと感じられない…のは,最初のように微妙だからではないようです。これは…人気に味を乱されたパターンか,それとも今日のが特別マズいのか?何となく…前者の臭いを感じる。だからこそ,これだけ油条を入れて調度よくなるんである。
 祭●版ってのも,何か「株式上場」みたいなカラーの存在に変わってきてしまってないか?
 もう一つの可能性…香港の広東粥自体の地盤沈下の有無を確かめたくて,時間はないけどもう一軒。

▲和味生[褒]粥の金版及弟粥

 和味生[褒]粥。10時ちょうど。
金版及弟粥38HK$,250
 やたら誘って来る怪しい「魅力十足」の対面。
 実際機能は粥店ではないらしいが,一応「金牌」だったこちらを注文。
 胸をなで下ろしました。──広東粥の健在を実証して余りあるふくよかな出汁。味精ではなく数種の臓物肉から自然に染み出させたものと,元々の上湯とがてらいなく融合した落ち着きある味覚です。
 こういう普通の繁盛店にはやはり普通の…つまり最上の香港メシがちゃんとあるのです。
 それは逆に,特に大陸からの観光客が増えるにつれ,マスコミに食いものにされる名店がいかに増えてるかを意味しているわけです。
 このジャミングは,香港をどう変えていくものか?大陸に呑まれるのか,それともかつて大英帝国相手にやって見せたようにそれをも呑みこんでさらに文化の幅を広げていくのか?
 にしてもこの店は通りがかりの店にしては意外な程に居心地がいい。女将さんがチャキチャキっぽく笑いを絶やすことなく行き来し,常連客が半分,観光客を含む一見が半分という客層がうまく空気の活性に繋がってる気配。
 西貢街から対面へは,地下トンネルがあるのを発見しました。4泊した間毎日歩いたこの辺りの下町のような観光地のような不思議な活力が気に入り始めてます。

 宿を出る。10時40分,これはかなりヤバい時間じゃね?
 11時ちょうど。地下2階から機場快線[立占]台行きエレベーター。2時間前。この遅さは前例無くね(泣くね)?
 バックの整理をこの列車中でやるのが習慣になってきました。
 青衣を過ぎた入江に巨木数本が突き出てるのがいつもやけに気になる。
 屯門のビル群がまたデカくなった上に,けの辺りと対岸の開発がやけに激しい気配。海に物凄い数の作業船が出とります。かなり広い埋め立てと住宅建設が進んでる。大陸人口を吸収するわけでもないでしょうが,今の大陸と同程度の開発ということかもしれません…。
 雲が厚い。
 機場着。11時25分。まあ何とかなったかな?

 I am born to explore(何かのカメラのポスター。農村の棚田にカメラを向ける青年の図)
**ex・plore
v 探検する, 調べる.ex・plor・er
n 調査者; 探検家; (E-)エクスプローラー(米国の人工衛星).

 いつもの福[サ/名]堂で「ソーメイの良いお茶は?」と探すと真面目そうなお姉さまが「白豪銀針」と「白牡丹」を勧めてきた。この下がいわゆるソーメイ(寿眉)らしい。前者は480HK$と見たことのない高値。飲ませて貰ったけど…白牡丹と味には大差ない気がしたんで白牡丹130HK$にしといた。

 501脇の喫煙所。12時20分。外だけど滑走路サイド。屯門の工場の対岸。ある意味ムチャクチャに豪華な喫煙所です。500番代の滑走路は新たに海岸線を埋め立てたものらしい。
 帰路。名都問題に答えを出してみましょう。──和食の巨匠が聴いたら激昂しそうな論旨になりますが。
 えーと?
一 中華の中でも広東ほど,素材より技術に傾倒した料理体系はないのじゃないか?もしかすると,それは逆なのか?
二 和食ほど四季とその素材を尊ぶ体系はないではないか?広東と尊び方が違うとでも?──でした。
 一つ目:広東料理,なかんずく順徳料理は,技術と素材のバランスを取っている。素材の力を引き出すための技術に特化しているとも言っていい。その証拠に,四川の麻辣,北京のシェン(塩辛さ),上海の[舌甘]に該当する味のメインストリームが,広東料理にはない。
 二つ目:和食が尊ぶのは「季節」や「旬」といった概念に傾く傾向があるが,広東の尊ぶ素材とはまさに素材そのものである。すなわち米魚至尊。それ以上でもそれ以下でもない,掛け値なしの素材である。
 中国大陸には稀な豊かな素材と,他からすれば超のつく合理(主義ですらないと思う)。そういう一種の地歴上の奇跡が,少なくとも今現在のあの土地に,この料理,そしてあの人間集団を成立させてるんでしょう。

▲ [土申]記[米ソ/王/心]品の馬来[米ソ/王/心]を新幹線のコーヒーで頂く。

馬来[米ソ/王/心]150
 何とか間に合った広島行き最終新幹線のパーサーが回ってきて,[土申]記[米ソ/王/心]品のマーライカオをまだリュックに残してたのに気づきました。22時半。
 かなり潰れて(だけじゃなく千切れて)ましたがコーヒーと一緒に頂きます。
 このマーライカオは,苦くて酸っぱい。ポロポロの口溶けと淡い甘さが,それでいて強調されてるこのバランスは,どこからやってくるんでしょう?
 小麦の低発酵の臭みは,おそらく小麦の最も原初的な旨味。黒糖の苦味は,甘さを抽出する前の原初的な素の味。
 それらのそのままの力を生かし切って,進水ポの駅前街頭で売られてる味が,揉まれて壊れた新幹線でまだ生きて働いている不思議。

 こいつと飲まれてる一杯260円(割引券使用後)のコーヒーが幸福に思えるほどです。