[前日日計]
支出1500/収入1650
負債 150/
[前日累計]
/負債 441
§
5月3日(火)
1306 清暉苑
ポーレイ
伝統叉焼包(頂)
香芋天[我鳥][酉+ノギヘン](超) 250
1700西関嘉豪金爺餅屋
シエン餅
ピータン餅300
1730龍林(康王中路・龍津東路交差点北東角)
香茄蛋8元
茹類※8元 ※マイタケとセロリの麻辣炒め
酸菜魚9元 ※白身魚とからし菜の唐辛子煮
550
[前日日計]
支出1500/収入1100
負債 400/
[前日累計]
/負債 841
§
順徳2泊目の朝を,二部屋目のベッドで迎える。
気絶したような眠りだったんだけど,もう順徳では何かする気にはならない。それより何より,ここにいて何かまた弁償うんぬんの話に巻き込まれたくもない。
するっとチェックアウトする。当然,詫びの言葉も粗品もないけど,早く離れられたらそれでよしという気分しかない。
清暉園のバス停に行くと,即座に禅城行きのバスがすぐに入ってきました。こんなとこでは運が良いとは。9時乗車。9元。
同済路で地下鉄仏広線に乗り換え。10時。羊城[上/下]の残量をチェックすると45元ほどあるのでそのまま乗車。
スマホを色々いじる。まだ緊急電力モードでしか動かない。この記録はアプリのメモ帳で書いてます。
禅城で地下鉄・仏山線に乗り換える。西郎まで11駅。
10時半,地下鉄1号線に乗り換える。 陳家廟まで動く。
今日の宿は,幸いにも昨夜のスプリンクラー事件直前に予約を済ませてた。
陳家祠の七天に入る。まだ五一のラッシュは続いてるらしく,部屋は取りにくかった。ここも人気的には余り物なんだけど,わしにとってはベストスポット。なぜって…老街が徒歩圏ですから。
と思って実際たどり着いてみたら,徒歩圏どころか玄関出たら龍津街でした。11時15分,入居。
大型の湯沸し器有。やや高めだった部屋は広いだけだけど,とりあえず濡れモノは乾きやすい。乾き度合いによってあちこちに衣類を再配置。
…ここのスプリンクラーは大丈夫だよな?天井最上部,手が届かない場所にあるので,損傷してない可能性が高い。──順徳のは側面の壁に突き出てて,背伸びすれば届く場所にありました。
▲ 「[網-糸][口巴]」 。ネットカフェの意。
こんなアパートの中にあるの?という写真ではない。発音は「ガンバ」。思わず目頭が熱くなる看板でした。
さて早く動けたし,本日は昼飲茶をキメるしかない!
11時55分。陳家祠より再乗車。懐かしき公園前で2号乗り換え,4駅で火車[立占]。5号で一駅,小北。
12時40分。環市東路 亜洲国際大酒店40階でエレベータを降りる。満席,番号2号で待ち。
外は小雨が段々本降りになってきた。ほとほと水のツキに見放されてるけれど…初日にありつけそうです,三度目の清暉苑!
清暉苑の茶器がテーブルに置かれたのは13時06分。
ポーレイ
伝統叉焼包(頂)
香芋天[我鳥][酉+ノギヘン](超) 250
まず御光臨を賜るは伝統叉焼包(頂)。
え?と来た瞬間には思った。ん~?どう見ても…普通のマントウじゃないのか?
いやいや,清暉苑に限ってそんなことは…と口にしてあんぐり。やっぱり普通のマントウじゃないか?
マントウにチャーシューが入ってる。マントウじゃなくても,ただの包子じゃないか?長崎の角煮饅頭だろ?という,ただそれだけの菜でした。
それだけです。それだけなのに…やはりこれが凄まじい!
いや,無理に言ってるわけじゃない。
まず理解できたのは,叉焼の魯味の味覚の深さ。甘いという言葉では足りないほどの,漢方味が深々と果てしない。ほとんと肉の歯応えが感じられませんから,何が元の中華スパイスかがそもそも想像もつきませんが,要するにその位に煮込んで煮込み抜いてほとんどソースになってるような叉焼。
おそらく御飯にかけると,一口目は確かに旨いかもですが,クドくて食べれなくなるはず。この究極的に「あじくーたー」な味を,しかしながら見事に受け止め切ってるのがこの究極の包子。
おそらくこの品で本当にスゴいのは,最初に感じたとこです。つまり,ただのマントウだってこと,それそのもの。この包子の粉もんとしての素っ気ないほどのシンプルな小麦香,これが技巧も調味も感じさせず,ただ素材だけの味ですっくと野生児のごとく立っている。その粗雑さこそが,叉焼のくどくどしさを受け止めている──ということに,ほとんど最期ころになって気づけました。
本当に豊かな味わいと,本当の滑らかな舌触りを持った包です。調味料は全くない。いや要りません。そこに,叉焼が,量的にはかなりわずかに作用することで,包を最高に美しく彩ります。熱死しそうな苛烈な日射しの下で野生児の肌がなめし革のごとく輝くように。
究極の叉焼とマントウ,そのただ二者で構成する美味。角煮饅頭に似ながらも,完全に次元の異なるその凄さを理解し得る一品でした。
一品目がそういう高倉健みたいな無骨な男の味だったもんだから,二品目の香芋天[我鳥][酉+ノギヘン](超)のきゃりーぱみゅぱみゅぶりというか何というか,そのギャップはそりゃ酷いものでした。
か…かわゆい!?
胸キュンというより,こんなもん頼んじまった恥ずかしさの方が先立って,思わず隣席が笑ってないかとキョロ見してしまった一品でしたが。
この恥ずい状況を解決するためにも,とにかく食べなきゃいかん。けれどこれ,まず首をもがないと食べれない。可愛いんですが,首を根本からバキバキッ…とはしなくてもあっさり抜けました。ヨリヨリみたいなものみたい。
ならばもう遠慮は要るまい(?)!で,胴体にかぶりつく。
外側はパイ生地。羽毛に偽せるようにバサバサに作ってありますが,このバサバサさがかなりいい味を出してます。食感としても面白い。多少脂っこいですが。
そして肉は…これが芋でできてます。しかし…何の芋だ?紫芋のような甘みと小芋のようぬ滑らかさを併せ持ち,かつ何かしら妖艶なこの味って?
菊芋を想起しましたが,どうも何種類かを混ぜて作った柔らかい芋団子みたいです。甘味の広がり方が尋常ではありません。耽美的といっていいスイーツです。
この芋肉部分が外を覆うやや脂っこいパイ生地と一緒になることで,また奇妙な効果を産み出してます。芋味の高尚な雰囲気の滋味豊かさが,パイのやや俗っぽい味覚と並ぶことで,技巧的に幅広な甘味が親しみ易そうに勘違いされるような化粧を施されてる。
そして何より,芋のねっとり感にパイのサクサク感──しかも羽毛に偽するたものバサバサさあるあの食感,芋の素朴で淡い甘みと脂っこいパイ生地の砂糖甘さが,それぞれに美しいコントラストを構成してます。──つまり,外観としての味覚の景観を作ったように見えて,実は中身としての味わいの風致をも構成している。いやどちらが実でもない,両義性を持つ素材使いが,この人を喰ったようなアヒル菓子に詰まってる。この巧みさとイケズぶりはどうでしょう
と,そこまで食べて気づきました。
これ…どうやって作ってるんだ?
芋団子にパイ生地を纏わせてから焼いたら,中の芋がこの滑らかさを失うだろうし,パイ生地を貼り付けたらこう円くはならんだろ?何より,首になるヨリヨリを突き刺せなくなるはずです。
ならどうやってこの形が作れるんだ?
※ この「動物点心」,一部の飲茶店ではえらくウケがいいらしく,分野として確立されつつあるらしい。嬉しげなガイジンに,とも予想されるが…二品目にみたように,確かに技巧としては凄そうですが…どう考えても邪道みたいに感じちゃうのは男性的視点なんでしょか?
香港への国際列車の切符購入。
「明後日」という日本語がこびりついててつい「明明天」と言ってしまうと,明日の切符を平気で投げてよこす。いや明後日ですよ?と言えば,「隣のカウンターにもう一回並んで予約変更してね」と(ホントの語感はもっと乱暴)ご説明してくださるオバサン。幸いあんまり長い列じゃなかったのですが,隣にはうら若い実習生(と名札に有)。さっきのオバサンが隣から怒鳴る。実習生,慌てて「錯的改変是唯一次」(間違いの変更は一回だけ)と親切にご説明。「ツッ…錯?!」と怒声が口を突きかけたけれども,ここは切符のゲットを優先しようと言葉を飲み込む。わしもこの2年の横逆非道を経て大人になったものよのう,おほほほほほ。
今次の旅行運はかくも最高ランクらしい。
とゆーのは──実はさっき小北でも,立ち寄った銀行のATMでカードを入れた際,突然機械が完全に沈黙してしまいました。
大声を何度か出すとやっと係員が来てのたまうには「あらあなた。明日にならないと中は開けられないのよ。明日一時にまた来てね。うっふん」(脚色有)。デップリしたお姉さん,さすがに非道と、感じたものか「不好意思」(ごめんね)と漢民族が普段は吐かない一語を付け加える。
さてさて問題です──カードは本当に帰ってくるんでしょーか?パスポートで名前の照合は可能なわけだけど…中国だからな。
なかなか予想もつかない紆余曲折の事件が連なって,も~何もかもうまくいきません。
そういう訳で,史上最高レベルのとても好い旅行になっております。
17時。西関嘉豪金爺餅屋という,龍津東路にある饅頭屋の中でも最も貧弱な風情にして最も勢いよく売れてる店。通りがかりですが,勢いにつられて立ち寄ってしまいました。
シエン餅
ピータン餅200
持ち帰って食べてみると…ピータン餅は,旨い。旨いけどこれはさすがに距離感を感じます。ピータンの発酵度がかなりこの臭みとこの饅頭生地を,広州の皆さんの味蕾はちゃんと処理できてるんだろうか?その方がスゴいと思う。
で,何とか処理可能なシエン餅は,これははっきりと旨い!くっきりと塩辛いのですが,これが甘みと絶妙にマッチしてきます。塩辛さが何かしら複雑味を帯びてるのは何なのか分かりませんが,この複雑さゆえにスイーツとして味わえる。
広州伝統菓子の深さというか…正直な感覚で言うと,想像を絶するヘンテコさに,わしは未だに十分ついていけてないみたいですが。
▲龍林(康王中路・龍津東路交差点北東角)の香茄蛋,茹類と酸菜魚
以前から何度か気になってはいたこの店に,色々あって(≒安易に入ろうとしてた銀記でカウンターの姉ちゃんが長電話してて離脱),ついに入ってみました。17時半。龍林。ちなみに自分のために詳しく場所を記録すると──康王中路・龍津東路交差点北東角。
香茄蛋8元
茹類※8元 ※マイタケとセロリの麻辣炒め
酸菜魚9元 ※白身魚とからし菜の唐辛子煮
550 27元
とんでもない店でした。基本は指差しでトレーからチョイスする店なんですが,それなりの値段がするだけあって…本当に旨かった。
香茄蛋
大陸で言う「西柿西和鶏蛋」です。
トマトの生々しさはそのままに卵が煎り過ぎず生過ぎず,実に絶妙に絡まってます。大した調味はなされてないのに,それだけでホントに驚きの美味。
茹類※ ※マイタケとセロリの麻辣炒め
辛いマイタケ,というだけじゃなくて,セロリが非常に高貴な味わいを醸してます。キノコの香り,おそらく小ぶりなタイプの唐辛子のキリリとした辣,セロリの独特の青臭さ──この3種を組み合わせようという構想はどこから来るんでしょう?
酸菜魚9元 ※白身魚とからし菜の唐辛子煮
これ…スゴいです。白身魚は台湾によくあるあの魚ですが,ここに唐辛子というのもイキです。辣の効かせ方も実に軽やかというか爽やかというか。こちらには大振りの唐辛子を使ってるみたいで,唐辛子のバリエーションにもうなります。
そしてここに,さらにヒタヒタにしたからし菜を加えてるのです。辛味の変化というのか,非常に独特の香草使いだと思う。
もちろんからし菜に唐辛子ってだけだと料理にならないと思うけど,これで白身魚を食すと途端に…えもいわれぬ美味さ!これだけ複合的な辛さで,しかもいずれもが白身の淡白な旨味を殺していない。
改めて魔法の広東を思い知らされた。絶妙!
台北の晴光市場と同じように,広州のこの龍津路はしんしんと心に染みつつあります。