本伝豪遊記10+《豪遊∧10+@》高知,神戸,大阪,ある旅の終わり

2009年04月26日(日)


▲福島町の看板,虎vs相撲取り。
なんでそんな無謀な戦いを!?牙が痛いよ!

 ほんでもって後編突入!断固として突入なんですわ!
 なんせこの大阪は,刺激が多様過ぎました。神戸の中華,平尾のウチナー,なんばの大阪,そして2日目に訪れた鶴橋の韓国。恐らく大阪の食文化は京都や博多ほど尖っちゃいない。でも,ここには生の人間集団が暮らしてる。だからどこにも増して原色がギラギラなんよ。
 これまでのワン・エリアにワン・テーマのタイプでは,わしの食を巡る旅行が収まりきらなくなってきた。それだけ舌が多様な味を覚えてしまったわけでしょね。
 それに合わせて,この豪遊記も今のスタイルを終える時が来たと思うわけよ。


▲定番の蓬莱 焼売

 さて話を戻すと――未練を残しつつ止むなく赤垣屋を脱出。ホテルに落ち着き戦利品に酔いしれる…前にカロリーを精算しとこうか?
 計2800
 +410?ええっ,まだそんなに余ってんのお!?
 やっぱ赤垣屋でおかわりすりゃ良かった~!くそおッ,左の3人組と右のカップルめ~!!今度会った日にはッ…こ…今度会っても殺さずに楽しく飲んで下さいねっ!!
 さあ気を取り直して…戦利品じゃあ!!


▲4月25日戦利品

 ① ② ③
 ④ ⑤ ⑥
①ゴーヤドリンク
②ミキ
③大阪寿司
④島豆腐
⑤ミミガー和え物
⑥ナーベラー

 初体験はゴーヤドリンクとミキ。
 ゴーヤは外れでした。苦味をたっぷりの砂糖で打ち消してるだけ。どうせなら苦くてたまらん味を生かしてほしいけど,まあ無理があるか。
 ミキ。これは,面白い味!原料は米で,なるほどドブロクにも似てるけどヨーグルト系の発酵した酸味もする。前から聞いてはいたけど,何にも例え難い独創的な味覚でした。これはハマると抜けられんだろな。

 島豆腐,ミミガー,ナーベラーは本島通りの味!さすがリトル・ウチナーの味!堪能いたしました…


▲心斎橋本福寿司 断面どアップ

 でも感激したのは大阪寿司。以前食った時の感想は「魚の味がしねえじゃん!」でした。確かにしない。ほとんど寿司飯そのもの。
 そう――大阪寿司が一般の江戸前寿司と決定的な違うのは,このネタと飯の比率。つまり大阪寿司はあくまで飯が主役なの。
 でもこの寿司飯が…絶妙に美味い!以前はこれが感じとれる舌を持ってなかったんだなあ…。
 今味わうと。この絶品寿司飯の味わいの中に微妙に香るネタがたまらないアクセント!京料理よりもっと薄い。高知の田舎寿司につながるような朴訥でさりげない食事の形です。
 コテコテと言われる大阪の基底に,こんな素朴な味覚が隠れてるなんて…!見直すと言うより,素直に驚きだったわけですわ。


▲黒門市場

 日本橋で一夜を過ごした翌日。
 すぐ目の前の黒門市場を散策してみる。たまたまやってたのか,沖縄セールがあったんで,もうすっかりハマってしまった雪塩ちんすこうを購入。
 しかしここも元気な市場です。魚が中心だけどシャッター街の空気は微塵も感じさせない。これだけ大型店舗の真っ只中にあって,こーゆー商店街が生き延びてるのはやっぱりスゴいと言わざるを得ない。


▲サンガリア「大阪生まれのフリフリみっくちゅじゅーちゅ」


▲みっくちゅじゅーちゅ裏面の小うるさい飲み方解説

 コーヒーブレイクの習慣がなかったこれまではまるで気づかなかったんだけど…大阪って喫茶店が異常に多いんだね。それも歴史が匂ってきそうな香ばしい店がたくさんあるみたい。
 この点も四国の田舎と共通する。大阪の基底部分を注意深く見てくと,意外に西日本の原型みたいなのが見えてくるのかもしれない。つまり…近代の西日本は大阪で作られたわけで…
 環状線で向かった鶴橋でも,まずロックヴィラという喫茶店に入ってみた。
 20人は入れない店内をギョロギョロしたオヤジの目玉が始終舐めまわしてる。客層も渋くて,香ばしい疲れ顔の初老の方々。結構いるんだろか,我々観光客もちらほらしてて,元の客層がこれだから一発で見分けがつく位浮いてます。
 大阪の茶店じゃ,何も言わないと砂糖を元から入れ来る店があるみたい。それと,濃さを売りにしてるケースが多くて「ストロング」としてメニュー化してるとこも。このロックヴィラでもストロングを注文。
 あと,もう一見ってのはバレてんだからと開き直って有名どころを頼んだ。
キムチサンド 450
 まあ記念にって気持ちだったけど,これがなかなかだったのよ!――アイデアだけかと思って後日自分でも作ってみたけど,あの感じは出せんかった。
 パンは普通の食パン。かと言って具もキムチばっかってわけじゃなく,普通の野菜,ハム,玉子が中心で,キムチは脇役程度に入ってるだけ。
 そのキムチが絶妙にキイてる。単に辛いだけじゃなく,酸味が他の具とベストなバランスなんだわさ。
 鶴橋まで来てサンドイッチかあ?って気もしてちょっと時間調整のつもりだったのに,これは思わぬ収穫でした。


▲鶴橋ロックヴィラのキムチサンド

 ロックヴィラを出ると,そこは鶴橋商店街のド真ん中。
 JRと近鉄の鶴橋駅の高架下に迷路のように広がる暗い露店の集合体。かなりの客足がある。真っ赤な各種キムチの山,韓流ファン狙いのアイテムショップ,そして韓国料理の大衆食堂が軒を連ねる。リトル韓国…ってゆーより,こんな濃いとこ韓国にも珍しくね?
 グルメ本にあった豊田商店を探してみる。ここは他にも増して人だかりが濃い。試食も出来たんでつまんでみると…

 あッ!!この味だ!
 この酸味とディープな辛さは,さっきのロックヴィラのキムチサンドの核心にあった味に間違いない。この店と断定できるほど経験値はないけど,スーパーのキムチとは別次元のこのレベルのキムチを,あの絶妙バランスで作らなきゃ,あのサンドは出来んらしい。
 とりあえず2品購入したけど,どっちもたっぷり1週間楽しませて頂きました!タコキムチも超がつく美味だったけども,意外に白菜キムチにがっぽりハマりました。直球的に爽やかな唐辛子がニンニクのオーラをまとって,酸っぱい後味に絡みついて喉を離れない。も~ごっつあんです!
豊田商店
白菜キムチ 100
タコキムチ 100


▲茹で豚屋と赤旗看板の微妙な相関

 時間調整をしたのはこの店目当て!高架下をちょっと外れた小綺麗な定食屋,プサン屋。
ソルロンタン 500
を久しぶりに頂いてみましたら…少なし釜山のソルロンタンとはかなり違うのが出た。肉はかなり少量で薄切り,にゅうめんみたいなのがたっぷり入ってる。
 ただし,「どーも薄味で食いごたえないな…」と食べ進めるうちに,密かにキイてるニンニクが腹に応えてきて,箸を置く頃には素晴らしい満腹感に満たされるあの感じは同じでした。釜山以上とは言わないが,日本の韓国料理屋ではなぜか食えない薄味コリアンをこのレベルで食わせる店は貴重です。
 プサン屋を出た鉄道沿線には茹で豚屋が並ぶ。日本人の蔑称でもある「チョッパリ」(豚足)も軒を埋めてる。この料理と言い,その上に掲げられた赤旗の広告と言い…どうもこのエリアは北朝鮮系のエリアらしい。この狭い鶴橋商店街でも棲み分けがある臭いね。
 ってことは。プサン屋のソルロンタンとわしが知ってるそれとの差は,南北の差なんだろか?でも店名は「プサン」だけど?
 う~ん謎は深まるばかり!もっと小汚い大衆食堂にも入って,細かく探検してみたいエリアです。


▲鶴橋駅のなぜか改札のあるBook off

 環状線で玉造へ。
 今は亡き鶴瓶と上岡のパペポTV。芸能人にもドラフトがあったらってハナシで,鶴橋商店街と玉造商店街が鶴瓶を取り合うネタがあった。「どーしてもウチに来て頂きたい!」「鶴橋は…一体なんぼ出す言うてはったんや!?」みたいな。
 こんだけ隣り合ってりゃライバル意識は確かに強いやろね。でも玉造商店街の方は,ややシャッター街化が進んでる感じか?韓流ブームの追い風が吹く鶴橋がリードしてるのは否めない。
 鶴見緑地線で西大橋下車。少し北へ向かう。
 この辺のはずなんだけど…見つからないな。いや,絶対このブロックのはずやけど。この角にあるはず!
 ふと見ると,店先に20cm角位の小さな表示「日月餅」。…分かんねーよ!!もっと目だつ看板出してくれよ!
 コンクリート剥き出しのブティックめいた殺風景な店。ホントに和菓子屋なんか?…と迷うほどだけど,見ると目的の菓子がちゃんと並んでました。
くるみ餅(枝豆)
       150
新町しぐれ  150
 このくるみ餅!丸い安そうなプラスチックに入ってんだけど,震えるほど最上の甘味!!豆本来の複雑な甘味がねっとりとうねる鶯色のあんの中に,程よいぷよぷよ感の水餅が埋没してる。
 これも大阪旧来の味覚らしい。やはりこの大阪の基底にある食文化,侮り難い!
 新町しぐれはまあまあ。けど,羊羹でもきんつばでもないこの「しぐれ」ってスイーツは初めて食った。小豆の元の姿に一番近い形態だと思う。つまり,ここでも料理のコンセプトは素朴さなんだわ。


▲本福寿司「大阪」アップ

 ここまで来たらもう一度食べたくなった。再び心斎橋の本福寿司の軒をくぐる。
大阪     450
を二回目はチョイス。海老の友は海老と穴子だったが,大阪は1巻ずつ別ネタを10種詰めたアラカルト構成。
 味のキツいサバなどは別にして,やはりどれも何がネタか分かりにくいほど飯の比率が高い。これまでバッテラに目がなかったわしですけど,この大阪寿司は味の薄い白身魚の方がむしろ美味く感じた。ダシをしっかりきかせた寿司飯の独唱かと思わせといて,よく聴くとネタの香りが美しいソプラノのバックコーラスとなって風のように流れるんであるよ。

 しかも「大阪」の場合は,これが1巻ずつ別のフレーバーなんだから,こんなに楽しい,美しい食べ物ってチョットないぜよ!


▲占いの家アタール
ウケない割に…客足は遠のくと思うよ。

 なんばに戻って,最後に「びわとも」でシメることに。
八百屋の野菜炒め
       550
 ここは正月に寄った店で,今回2回目。やはり美味い。進化し続ける我が味覚君,野菜についてはあんまり変化してないらしい。
 新大阪駅で,先月の京都で味をシメた
よもぎ八つ橋 150
を購入し,新幹線に飛び乗りました。
 難波の食い倒れとは言え,ここまで食って
計2600(▲90)
と…やっと残高を使い切ることができました。
 もちろんリバウンドは起きてません。何でかねえ!?本人,死ぬ気で食ってんだけどねえ!?


▲なんばの焼き肉屋看板:赤セン,おっぱい,ち●ぽ…何よりも「名物 闇ハラミ」ってのが気になって夜も眠れません…

 さて,突然ですが。この回で豪遊記は最終回です。じゃッさよなら!

ってんじゃ訳分からんじゃろけど…解説も含めて「お食事ノート」を参照してね!
 要は――今回の大阪が証明したように,食い道楽のベクトルがあっちにもこっちにも向き始めた。つまり,悪く言えば食欲が浮気症になった。良く言えば偏食傾向を脱する程度に好物が増えたってことなのよ。
 だけどその分,文章にするとテーマが飛び過ぎて訳分かんないでしょ?いやあ~自分でもそう思いながら…敢えて書いてみましたら案の定!
 昨日,豚インフルがフェーズ5に移行したけど,我が食道楽旅行も別のフェーズに入ったんでありますよ。


▲かす うどん・そば入り
 か…かすってゆーな!(被害妄想?)