外伝06@(@_06_@) パイナップルケーキ (@_06_@)

 前章中華スイーツ編の特出し編でございますが,その前に尻切れちゃった前章をまとめときます。
 台湾スイーツの神々は,わしには今回が初体験の味覚が多過ぎました。きっとこれまで食べ過ごしてきたことはあるんだろけど,ちゃんと真剣に味わって来なかった味覚も含めて。
 正直,降参です!味覚の理解力を超えてます!勉強して出直させてください!
 そーゆー状態でさらに恥を上塗りするよな妄想なんですが――この図太い甘味の文化の圏域のことです。
 この食文化圏ってのは,恐らく南はタイなど東南アジア,タロイモ文化圏のミクロネシアから,北は東山・わっぱ餅・かんころ餅などの干芋文化が残る西日本まで広がってる。非・砂糖甘味食の圏域であり,そう言い過ごすには多彩過ぎるけど,いわば「芋類甘味食文化圏」です。
 それは,エリア的に中世までの海人族の活動領域と重なる。
 とすれば――元々ミクロネシアにあった芋類を単純に食べる慣習を,彼ら,かつての倭寇を含む海人族が精緻な加工食文化として完成させた。それは主食としては米やパン,甘味料としては砂糖に圧倒されてマイナー化はしたけど,それが東アジアから南太平洋まで各地に残ってる。その一つが「中華スイーツ」と言われる広東料理や台湾料理の一領域となったとは考えられないか?
 高知の東山の甘さ。台湾の愛玉の甘さ。非砂糖系の図太い甘さって点で,どうも共通した食感覚がある気がしてならないわけさあ。

 さて。えーかげんにして次へ進まにゃね。
 パイナップルケーキです。
 2日目,武晶街の明星面包店。
 ロシアケーキの店です。2階にカフェもあって午餐も出してるみたい。昼に特出しするケーキも是非食ってみたかったけど,結局今回は果たせませんでした。
 ビックリなのは,いかに人通りの多いこの地区にしても,常に店内は客で一杯だってこと!
 白い,見かけは北海道のバター飴そっくりの菓子が売れ筋らしい。店の奥手の壁側ほとんどをこれを並べたプレートが埋めてます。欠片を試食させてもらうと,以外にふんわりしててちょっと他には例えようがない,優しい満足感に満たされる。ただこれも,今回は買い求める機会を持てなかった。
 初心者として,やや無難に手を伸ばしてしまったのは鳳梨[酉未]。発音は「フォンリース」って普通に言えば通じると思う。
 日本のガイドブックにはパイナップルケーキとして表記されることが多いし,パブリーズって洗剤もあって紛らわしいし,少しは世の中に迎合しないといかんよキミって上司に言われるし,以下「パイナップルケーキ」と略します。
 まあコレ,掛け値なしに今や台湾土産の超定番ですよね。ですけども。そんじょそこらの土産物屋のと明星のを一緒にしてもらっちゃ困るぜチッチッチ!(してねえよお)


▲明星西点館のスイーツ群。右手がパイナップルケーキの大,手前右側が同じく小。正確にはそれぞれ漢字の品名があったけど…忘れた。

 元々明星にはパイナップルケーキを買いにきたわけじゃない。だから色々手を出してみたんだけど,パイナップルケーキが最高だったのね。後日再訪すると,ここのパイナップルケーキは何とかって大会で優勝してるらしいし。
 パインのピュアな酸味を帯びた華やかな香りが,割と固めにしっかりしたパン生地とベストマッチ。それらが渾然一体に溶けて口の中に広がると,小麦粉のどっしりした重みとパインの華やぎと,重層の味覚が和音のよにシンクロして花開くんだば。
 大変申し訳ないんだけど。民権東路の連全[米麻][米暑]食品ってゆー割と自信あり気な町の通りがかりの菓子屋を「当社比」的な当て馬とさせていただいた。買って帰って宿で食すと期待通り――パインの香りのみがキツくて,それだけじゃパン生地とマッチしないから砂糖をどっぷり使った「パインのアンパン」。空港や土産屋で試食する限り,この類いが通常日本土産になるレベルみたい。
 やはりパインってゆーのは相当に個性的な食材。他とそう簡単にはコラボれないらしい。特にパン生地のような地味な味覚とのカップリングは,なかなか至難の技だと思う。単に黄金比を求めるとか計量をチャンとやるってんじゃ解決しないだろね。皆さんも経験上ご存知でしょう。パインなんて種類でも産地でもブドウ並みにバラバラな味になるし,小麦粉だって千差万別。
 となると,素材を知り尽くした勘でしかベストマッチを作り出せないはずよ。
 この点は――時々,日本国内でもこのパイナップルケーキの名店があります。ただ,わしの周囲ではそれらの名品の評判は非常に短命です。
 つまり,一時的に(恐らく偶然に)ベストマッチが実現できても,移り気な素材の変化に翻弄されてしまう。市場の変化で入荷するパインを変えざるを得なくなる。それだけで一発で崩れちゃう微妙なマッチングなんだと予想する。
 素材への勘と入荷ルートの固定上は,パイン生産地が圧倒的に有利。実際,東広や香港もそうかもしれんけど,台湾には「鳳梨」って漢字表記が有り,食材として多用してきた歴史がある。
 この島で名店を探すことにはそれなりの意義があるわけよ。

 2日目の夜,観光客の多い林北南路で李梨餅家って繁盛店を見つけたんで少量を購入。
 宿で食ってみる。
 かなり控え目な甘味ががっちりした皮とコラボしてるけど,皮の甘味がやや強くてパインの純粋な香りを否定してる。
 土産にはなるレベルだけど,やっぱ明星のもんだね。

 5日目,長安東路の台北[利/牛]記。
 ほどほどの規模の店だけど,商品は多様でかなり迷わされました。
 入り口脇にパイナップルケーキの贈答用ケースがうずたかく積まれてるけど,陳列のパイナップルケーキのプレートはそう多くはない。ふーん…パイナップルケーキを騒いでるのは観光客だけで,台湾人の馴染み客は別のを買ってるってパターンか?客は台湾人がほとんどだけど,彼らあんまパイナップルケーキは買っていかない…
 結局。パイナップルケーキ,棗泥松子[酉未],養生緑豆皇をみみっちく1つずつ買う。
 パイナップルケーキがはアンパンとまでは言わないが,明星のバランスには及ばない。
 養生緑豆皇もまあまあ。「養生」って言葉に惹かれたんだけど,かなり油ぎってもいたし何がどう養生なのか分からなかったなあ…。
 ただ,棗泥松子[酉未]は妙に旨かった。妙に…ってゆーのは,未体験のスイーツの味覚だったから。名前から,棗と松の実が入ってんのは分かるけど,「泥」は何だろ?「棗泥」で棗のジャムか何かを意味するんだろか!?
 松の実は珍味的に煎った状態で何度か食べた。ひどく頼りないポリポリと貧弱な味わいだった印象。でもこの貧弱な青年が,棗というほろ苦く官能的な伴侶を得て,妙~に軽快な存在感を出してるんですね。
 大体――松の実を生かしたスイーツって,わしは聞いたことがなかったなあ…。やはり恐るべし中華スイーツ!

 8日目,仁愛路四段から南側,耶里西点(仁愛店)。
 完全に西洋菓子の店だけど,歩き方に人気が高いと載ってたんで一応寄ってみた。
 忠孝敦化の南だから日本人村内の内輪人気って可能性もあったけど,行ってみると台湾人も多かった。
 一見,日本のどこにでもありそうな小綺麗なお店。だけど品揃えは,パン屋と中国菓子屋と西洋菓子屋が合体したような多様振りで,これは日本にも西洋にもちょっとない。
 パイナップルケーキらしきものもあったんで購入。
 かなりイケた。十分にパインを個性的なまま活用しつくしてる。しかし…これはパン生地が美味いみたいみたいです。パインの活用の仕方も完全に西洋風。「[酉未]」じゃなくてケーキ,パインもジャムに近い。
 小型のハードパンも買ってみたけど,これも上質でした。客の一部は食パンとかを買い求めてたけど,この店はそっちが正解なのかな?つまり,パン屋として利用するのが賢いかも…。

 結局。国内土産に買って帰ったのは明星面包店のパイナップルケーキでした。
 国内で改めて食って――やっぱし明星のは最高!!
 でも,意外にあんま日本人ウケはしなかったな…砂糖文化に慣れ親しんでる舌からすると,地味に抑えてあるパインのアンが物足りなく感じられるらしいのね。あの華やかな素材をこの地味さで使うとこが,パイナップルケーキの妙味なんだけどな~!
 あと。今回行けなかった名店がある。
 李[告鳥]餅店。基隆の夜市の近くにある店で,台北には出店してないから,台北から出る気がしなかった今回は手に入れられなかった。
 台湾人にも相当人気の店らしい。パイナップルケーキと言えばこの店を言う台湾人が多かったほど。
 台湾の各主要都市は大抵足を運んでるけど,実は基隆はまだ歩いたことがない。夜市も有名だし泊まりがけで行かなきゃなあ。
 次回の心だア~!