外伝03-FASE25@鼓動の響きは 光のように世界に満ちていくの close your eyes and pray

▲毎日リブステーキ150円!安い!さすがに沖縄…ってそんなわけない!!?

 7時半。朝も早よからおもろまちにまた来てます。
 ONE OR EIGHT。
 高等学校のまん前。広い駐車場。ランドリーも併設,ここだけで生活できそうな多機能施設。空間センスはほとんどアメリカです。
 この辺りで朝一番から開いてる「島菜」とどっちに行こうか,すぐ近くだからあわよくば両方と思ってたら,この2軒ともう1軒「茶花」(これもすぐ近く)は同系列らしく,共通ポイントカードを使ってた。このエリアで成功してる早朝オープンのバイキング・チェーンってことらしい。
朝食モーニング 500円
 本棚裏の棚からバイキングでピックアップしたパンは,普通の小さいロールパンと紅芋パン。独自に焼いてる手作り味。小麦の香りがたまらない系のハードな旨さは全然ないが,牛乳香たっぷりの,日常に食えるフレンドリーなパン。
 バターと苺ジャムが付く。食べるとジャムも手作り味。
 この他,サラダが一種。材料はコーンとドレッシングという程度。デザート系はなかったけど,ここは無くなるとどんどん掲示を引いてくみたいだから全メニューがどうなってるのか確信は持てない。
 おかずには,とうがんのあっさり煮,キャベツと鶏肉のオイスターソース煮を取ってみる。これが…どちらもかなりのもの。とうがんは汁の染み方,強さ,崩し方ともちゃんとしてる。オイスターソースは,味の構成はよくあるパターンだろけど,お代わりしそうになったほどバランスがいい。
 コーヒー,これも煎れ置きだし感動を呼ぶ味じゃないが…関西系のパンチの効いた渋みのある旨さで,日常のモーニングコーヒーとしてはなかなか。おかわりしてしまった。
 今度,ちゃんと時間を取って島菜にも行ってみよう。かなり期待出来そう。
 なお,あまりに合理的なシステムに本土系列じゃないかと疑ったけど,入り口の表示に「絶対沖縄系だ」と確信した。
「カフェ飯 サンドイッチ」
「新聞 全9紙
本土新聞 スポーツ紙 日経流通 宮古毎日」
「本/雑誌
ベストセラー
経済誌~ファッション誌」
 本土新聞でいわゆる五紙を総称したり,経済誌と並列で「ベストセラー」と掲げるセンス――絶対沖縄だ!
「夢育プレート」というものが情報掲示板対面に設置されてた。200ほどのカードが貼られてる。将来の夢からみみっちい願望まで種々多様な内容。
 ミニコミ誌2紙に掲載された旨,掲示板に貼りだし。
 うん,いいカフェだ!創意が溢れて,しかも手堅い。おもろまちの新設店,やっぱ捨てたもんじゃない!

 南風。
 泊交差点すぐにある民家っぽい場所を通りかかると「レンタサイクル」の文字。
 激安宿だろ?と見て入ったら,最初に会ったのはスーツ姿の男。「あ,管理人さん呼んできましょうね」と奥へ行く。ウチナンチュの長期滞在者らしいが…何者だ?
 トイレを借りに内部もうろついたんだけど,トルコ辺りの民家みたいな風情ののんびりした宿。一泊2千円以下,個室でも3千円行かないが…どーゆー客層なんだ?ステラほどマニアックな疎外感も感じないし…一度お邪魔してみたい。ただゆいレールからは遠いんだよなあ,牧志からは早足でも15分強かかった。
 待望のレンタサイクル。一泊二2日1800円,少し高めだけどチャリの質はまずまず。

▲まぐろ食堂の軒先にて

 泊いゆまち,那覇地区漁業共同組合へ。
 パヤオ→えんがん→…の流れで沖縄のサカナに執着してしまってる。鮮魚市場を一回りしてから「まぐろ食堂」へ。
まぐろ中落ち丼 650円
「まぐろ食堂定食 1250円」にも惹かれたけど,初回のお試しスタンスで一番安いのにしとく。刺身は市場の刺身が十分旨そうなんで買って帰ることにしよう。
 そもそもここへの来店は,迷ってた。実は…わしはマグロが好きじゃないからだが。
 美味っ!
 やって来た丼は,中落ちに卵黄,わけぎ,針生姜,ご飯。それにわさび醤油をかけただけ。これが…ホントとろける美味さ!
 よくわからんが,卵がいつものと全然違うマッタリ味らしい。中落ちのプリプリ感とこれがベストマッチして素晴らしい味を構成しとる。食い慣れてないからあんまり言葉を尽くせないけど,何か凄まじい!
 ただ,パヤオや「えんがん」ほどの沖縄っぽさはあんまり…というかほとんどないかな?
 鮮魚市場では,明日は9時から「泊いゆまち勤労感謝祭」があるらしい。秋ビンチョウまぐろの刺身が4千人分食い放題!?
 手前のこの建物,売り物はかなりいい。内地なら4人前位の盛り合わせが700円とかで売られとる。何と試食もできたんであちこちで摘みまくる。
 おお,どれもハイレベル!

▲「しむじょう」の三枚肉そば(中)。「ゆしどうふ」をトッピング

 壷川まで自転車で移動。
 正月から悲願だった那覇市内ツーリングです。
 ただ次の目的地,市立病院は高低差がある。壷川駅に自転車を停めて「ゆいレール」で移動。
 えーと?首里末吉町二丁目?ゆいレール市立病院前駅から徒歩約10分,バス停の市立病院前駅からだと300m。この首里への丘陵地はどうも方向感覚を失いがちですが――前から行って見たかった「沖縄そばの店 しむじょう」に,ついにお伺いできました。
「ゆいレール」の走る尾根から谷一つ隔てた山際に当たる。正月に亀甲墓だらけに見えた,ちょうどあのラインです。探してる最中には幾つかの墓のそばを通過。現代ウチナーを見下ろす高台の民家にて,ウチナーメロディーのオルゴールを聞きながら品を待つ。
三枚肉そば(中)620円
ゆしどうふ(トッピング)50円
 セットメニューは950円でしたが,初回の今回は止めておく。これだと2品小鉢とジューシーが付くらしい。
 一口。
 ものすごく薄い!
 いや,薄さの中に深みがある!味覚の層が,和風のダシよりもう一つ下の層の重振動。
 と思って味わえば――ゆし豆腐の味覚もやはり深遠な豆香があって,でも「これがうちの味だけど物足りない人はコレかけなさいね」的に生姜が丸一瓶付いて来る。
 あれ?これって…どこかで見た味覚風景だぞ!?
 広東の味――。
 イメージが膨れ上がった。中華の食の伝統が,歴史事情から共産中国の濁流に飲み込まれるのを逃れてガラパゴス的に取り残されて残ったのが,香港。同じく大国のハザマという歴史事情から残った,沖縄。
 この2つのエリアに類似の味覚風景があるとしたら,それしか説明のしようがないんではないか!?
 つまりここにあるのは――現代食文化ないしは現代そのものによる「退化」を免れ得た,それ以前の水準にある東アジアの食文化の風景なんではないか。工業と逆に,あの水準から滑り落ちたところに,現代東アジアはあり,滑り落ちつつある場所にヤマトはあり,かろうじて滑落を逃れている位置に香港・沖縄はあり,滑落の勢い余って逆に一定の高みに至った状態に韓国はあり――だとすれば東アジアってやっぱりすごく面白い光景の中にあるんだなあと思う。

▲「にーちぇ」のケーキセット

 与儀十字路から自転車で入ると意外なほどに分かりにくかった。
 まあ昨日もあれだけ迷ったこの店。次もすんなりたどり着ける自信は全くない。
 古波藏,「にーちぇ」。
ケーキセット600円
(にーちぇ手作りチーズケーキ。コーヒーはにーちぇブレンド)
 や…やっと開いてたあ…!
 2時前,他の客が帰り一人になっていた。
 ここのコーヒー,やはり凄い!「やはり」と言っても二度目だけど。
 ドイツ以後だからだと思うが…凄さがやっともう一皮だけ深く分かったかも?という程度。
 他で飲むどのコーヒーとも違う。タイプ的に似てると言えば,香港のインヤン。紅茶の香りとコーヒーの苦味のダブルパンチ。
 でも正確には,ここのはそれとも違う。香り,苦味,酸味,どれもが…何と言うか,「止まる」んである。普通,スーと尾を引く苦味が,ぽっと赤色灯のように灯ってそのまま緩やかに薄らいでいく。そして味覚の後ろに残される豊かな余韻。おかげで一口ごとに,一分位呆然と呆けてしまう。
 最後頃には,この苦味と酸味の余韻の奥にあるフルーティーな味わいにも気づく。モカ系の豆のクオリティゆえか,コーヒーとは思えないワインのようなふくよかさに震撼させられる。
 チーズケーキは,ムチャクチャに小さい。一口で頬張ることも出来るほどの塊に,ミルクと練乳の間みたいな滑らかさのソースが挟まる。上部にはベリーが3粒。
 生地は,チーズの質が違うのか量が少ないのか,もっちりというより絹のように滑らかさ。口に含むと見る見るほどけて星のように霧散してく。挟まってたナッツが香りを散らしつつ砕けて行った後に,小麦の微細粒がちらちらと煌めくように喉に落ちていく。その味覚の美しさは筆舌に尽くし難いものがあった。
 静かな空間。確か去年の大晦日にも来てたおばちゃんが,確か同じミックスサンドを頬張ってる。クラッシックが緩やかに奏でられる。ドイツ南部っぽいキッチンを模したカウンターで,呆然と舌の上に意を任せる至福。

 国際市場アーケードの路上屋台でお茶を3つ買った。
 1500円ナリ。屋台で使う金額としてはマックスレベルかもです。
 売り子…という語感が全く似合わない,何かユタ的なオーラを帯びた美しい白髪のおばあに,売りつけられた。もとい,騙された。じゃなくて購入させて頂きました。
 えらく勧める「レイシ何とか茶」を騙されたと思って(7割がた)買ってみた。疑わしげなわしに自信たっぷりに曰く――
「ふっ(嘲)。『月の宮』で検索してごらんなさい。凄さがお分かりになりましてよ」
とそこだけお嬢様言葉で言ったわけじゃないが,ここまで言うならサイトくらいあるかな,と後でGoogleで検索してみた。すると!!…何もヒットしない。沖縄だなあ。
 こんな胡散臭い状況下で既に説得力も何もないけど,去り際に「あんたは奥さんと子供を連れてまたここに来るさあ」と言われた。なぜか異様にズキンとする。昨日「沖縄のうわさ話」読んでて,どうもこの島の怖さを感じてしまってる…からなんだろか!?
 沖縄恐るべし!色んな意味で…。

 公設第一市場裏の惣菜通りに寄る。
 丸正そうざい。
なすの味噌煮 250円
田芋の水煮 300円
 対面は丸山という別の店。なぜ「丸」が必ずつく?でもここも捨てがたいんだよなあ。
 お味も,いかにも沖縄の巷。まあ,少し濃い味なのは売り方の性格上仕方ない。ただそれも,ナイチャー向けではある。

 アーケードの奥へ。「サンライズなは」の開南入口辺りに,いかにも喫茶店な外観の店「poem」を見つける。
 入ってみよう。
 一応自家焙煎珈琲を名乗る店です。ただ,客はスパゲティ食ってるおばちゃん一人。
ジャーマンロースト 530円
 意外!――と驚いては失礼だけど。マスター夫婦のストイックな雰囲気が何か本格派っぽいオーラを醸してはいたんだが…かなり掘り出し物でした。
 ピュアな苦味と香り。酸味と渋みはほとんどなく,丁寧な豆の選別が伺える。紅茶的なアメリカンじゃなく,ちゃんと苦味はあるのに透き通ってる。フレーバーは薄く,男性的な苦味直球勝負の図太い味。なのに強引じゃない。端正な木訥味。
 今回の那覇コーヒー巡り,正月には探し当てた感覚を持ってた「沖縄コーヒー」みたいなのが大分ぼやけて来た。この街のコーヒーは,かなり多様です。アメリカンな紅茶タイプが主流ではあるけど,分化が著しい。
 いや,と言うよりも――今,まさに沖縄の味覚が進化してるからなのか?
 いずれにしても…面白いコーヒーです。

 熱いくにの残照は妖気を帯びる。
 宿からひっつかんで来たバスタオルを手に那覇セントラルホテル内,「りっかりっかの湯」へ。ちなみに「りっかりっか」は「「みんなで一緒に行こう」みたいな意味のウチナーグチ。
平日大人(タオル持参)950円
 初めて行ったけど,設備はまあまあ。高いし,天然温泉じゃないし…と文句を言えばキリがないんが,まあ沖縄で温泉気分は得がたいものではある。
 なお,地学的には火山島弧の沖縄。ほぼ埋め立て地の那覇中心部以外なら天然温泉もいくつかあるらしい。ただどこも観光客向けなのか一湯1500円ランク。宜野湾市のアロマ,北谷の「テルメヴィラ ちゅらーゆ」,南城市の「さしきの猿人の湯」…湯質は知らんが,何なのじゃそのネーミングセンスは!?とツッコミたくなる施設名ばっかで笑わせる。次回行ってみよう。
 沖映通りの宿へ帰る前に,隣の喫茶店「cozy」に立ち寄ってみる。標準の沖縄コーヒーを確めてみたくなった。
コーヒー 350円
 一見何てことはない味に思えるが,やはり沖縄のコーヒー。ここのは特にその標準に思える。アメリカンっぽい冴えた苦味と渋み,抑えられた微かな酸味,香りだけが濁りなく続く紅茶タイプのコーヒー。
 おっと忘れてた。もう今次最終夜だ。美栄橋駅近く,地下のコープへ。
 地下に潜る前に一階のジュンク堂で「うわさ話」の残りの巻を全部購入。これ面白いのよ。
 地下では沖縄麩を購入。持ち帰りやすい圧縮麩は,3種類はある。商品表示上は「焼き麩」に分類されるようで,本土ものにはなかなかなさそうなので。
 塩漬け肉も千円ほどで売られてる。ただし,明らかに腐らせてしまいそうなキロ単位の量。持ち帰りは諦めざるをえまい。
 魚介コーナーではいつもの通り迷う。アーガイという赤色の皮の白身魚に惹かれたが,結局「今が旬」表示のあった炙りセーイカ(→情報)と取り替えた。
 内地のよりしこしことした分厚い味わい。ううむ,本日も満喫たり。

▲そーきそばのネオンのある路地裏