順徳を背に押し渡れ南シナ
移動でも色々あったけど順徳から香港に帰ってまいりました。
11時45分,美麗都大厦の7階A棟…だったかいな,美林ホテル?香港に入るとエレベーター表示が6Fになってくる。え~い分かりにくい!
とかで迷ってウロウロしてるうち,廊下で洗濯干してるオバチャンに「部屋か?」と声をかけられる。
条件もいいし,オバチャンの雰囲気も良さそう。決めた。
福建賓館,1泊300HK$也。鍵のデポジット20HK$。
デカい窓のある7号室を割り当ててくれる。一番奥だし,なるほど条件は一番よさそう。開水がポットで使えるのもすっかり茶飲みになってしまった今はかなりラッキーと言えそうです。
結果的には,前に美林で入った階違いのF1の突き当たりの場所でした。
さてと。時は日曜日,しかも飯どきに入ってしまってる。
どう食い初めるか?
しばし考えてから,前回中途半端に終わってた香港島・堅尼地区へ向かう。
西環と言われる香港大学のエリア。2014年には地下鉄が伸びてしまうらしいから今回しか見れないかもしれない。
中環から「堅尼地城」とあるトラムに乗る。「地域」の間違いじゃなくて確かに「地城」らしい。太子大厦前。
何と!次の駅表示とアナウンスが入ってた!下車駅に何の手がかりも与えられなかった従来のトラムで,この点が改善されたのはかなり画期的だと思う。
2階建てトラムの前から2つ目の席で,ゆっくり過ぎてく上環の猥雑でありながらどこかレトロな街並みに見惚れる。
しばし恍惚。ああ香港だあ…。これぞ香港だあ…。
トラムの直前を追い越してく自転車の痩せオヤジ。前カゴにグラつくプロパンガスのタンクを載せてヨタヨタ走っとる。なかなかアクロバティックで勇敢だけど…捕まる理由が3つはあるぜよ。
去年歩いた水街を過ぎる。「山道」なる駅で,名前とは逆に海に再び出る。
徳[車甫]道という道路を西行。そのうち吉席街という道を走るはずだけど?
道端に腰掛けて日向ぼっこをする眼虚ろな爺様の耳にごっついヘッドホン。補聴器ではなさそうだが…密かにナウいのか?
終点まで行くつもりだったけど,思いつきで士美[サ/非]路というとこで下車。
この辺りにあると聞いてた「新興食家」という有名店を急遽狙うことに。
厚和路に発見できたものの…超満席。昼過ぎだしひょっとして,という期待は裏切られてしまいました。
補欠で情報を持ってた近くの[ネ羊]香楼茶餐廳へ。
卑路乍街という不思議な地名表示。――「卑しい道でありながらも街」?どーゆー由来があればこんな地名が出来る?
まあ多少卑しくても座れりゃいいぞ,この際。一席だけ空いてた2階の奥に殺到。
[女乃]茶13
鮮油菠蘿飽6
ズズッ。
ああ~香港だあ…。
ムチャクチャうまかった…。1年振りの[女乃]茶だからか?
苦味ががっしりと舌に残った上下に,紅茶の香りとミルクの甘味が一体的に抜けていく感じ。インパクトという意味ではコーヒー並みに感じられた。
菠蘿飽も…今更だけど日本のコッペパンはもちろん大陸のとも全然違う!がっちりサクサクなクッキー質が残した甘味にパン本体のミルキーさが絡まって…腹が減ってたからだろうか,こちらもまたムチャクチャ美味かった。
久しぶりに震撼する美味さ。サービスもかなり良いぞ!こりゃもう全然,補欠感は無いぞ!!(それはアンタの勝手)
トラム停(ってゆーのか?)に引き上げる道行き,未練げに新興食家を通り過ぎる。
え!?少し席が空いとる?
こういうディープげな店は満席状況で入ると色々面倒が起こるんだが…ここまで来たら迷ってる場合じゃない。
陣取る。6人掛け丸テーブルの片隅の一席。
この座席の感覚は飲茶的だったから,とりあえずポーレイ茶のポットを頼んどくか?と注文はしたものの…点心は!?皆さんが食ってるあれらはどうやってゲットするんだ?
混雑してる席の間は到底ワゴンは通れない。事実,回る気配もない。仕方ないから支払いレジ横から2つ蒸篭を取るが…よかったのか!?
鶏皮みたいなの
水餅の焼売みたいなの
計35HK$でした。
味は濃い!順徳帰りだからか?塩と胡椒がいずれもムチャクチャ口に残る。
鶏肉はかなり柔らかでいい味は出してる。けど違和感ある。飲茶の感覚にしてはハチャメチャなんである。
周りを見回すと,飲茶してる人も半分はいるけど,後の半分は普通に飯を喰ってる。壁のメニューも定食系ばっか?
これはおそらく…飲茶に分化する前の古い形態の飯屋みたいだぞ?
味うんぬんよりフォークロアとして楽しむ場所だな。
洗茶用にはちゃんと盆が出される。5人位だと洗面器みたいなのが出てきてた。
隣にオバハンが突っ立ってる。「早く席空けろよ」オーラがビンビン。とにかくせわしないムード満点です。
始終,売り子が怒鳴る。客の注文を持ってきてる時もあれば,ワゴン代わりに新たに出来たのを売り歩く時もあるみたい。稲荷みたいに見えたゴワゴワした皮付きのが名物らしき鶏脚か?
とにかくハチャメチャです。これは一見には手に負えんな。こっちの雑誌にも掲載されたみたいで日曜日のグルメ客もいるみたいだけど観光客はまだ少なそう。
香港らしいと言えばこんな香港らしい空気はない。しかし喰った気が全然しないのも確か。表現し難いほど香港チックな場所なんでした。
お?隣立ちのオバハン,貧乏揺すり発動か!?オーラも益々剣呑さを増しておりますここ堅尼は平和な昼下がり。
なお,この堅尼という地名は,阿片戦争直後に実在した尼さんがそれはもうお堅くて,というのは嘘でケネディの漢訳だそうで,つまりダラスに散ったあのJFK大統領が青春を謳歌した地だとのこと(嘘)。
北街からトラムでセントラルに帰る。このトラムは木製の旧式。このタイプには駅名の電光表示はない。一部の新型だけらしい。
堅尼地城は見た目より平坦な地勢で,奥に数ブロックの広がりを持ってます。MRTが伸びたら確かに新しい観光地になっちゃう場所でしょう。未だ原石の香港がここにある。
ただまあ原石過ぎてまだ私めなどにはアクが強過ぎました…。
[ネ喜]利街が上環駅の真ん前。中環駅はそこから3駅。
トラム料金は2.3元に値上げになったらしい。
中環前のニューヨークから来た「JustSalad」って店,潰れてた。まあそりゃあそーか。健康指向は広がってるだろけどベクトルが違い過ぎ。
地下鉄車内にバスケットボールを抱えた刈り上げ男。シューズから何から広告から飛び出してきた風情。片足を踏み出して決めてる辺り,やっぱりファッション系なのか?
本日の健康工房
鮮[木己]子桑[木甚]汁
効能:養肝明目,滋陰安神
佐敦へ。
ここから油麻地辺りの雑踏はやっぱり堪らなく面白い。
とりあえず心思思へ立ち寄ろう。
木[米康]草莓布丁
藍[口卑][利/十](ブルーベリータルト)
鶏尾飽 10元ちょっと
順徳人に入ろうかと思ったけど,料理リストを見るとやはり本場にかなり開きがある。もどきに変わりはなさそう。新たに午茶餐を作ったりかなり営業努力の跡は窺える。ただそれでも,この半端な時間にポツポツは人がいるのは,それをアイデンティティにしてる一定数の「順徳人」がいることの証しか。
香港島・北角に方向転換。[シ査]華道の小辣椒を目指してみる。
6時まで麻婆のセットがあるとの情報あり。ギリギリの時間だけどトライしてみた。注文するとお姉さんからタイムアップの宣告。昼だけだそうです。
さて…どうしましょ?
今回持ってきた「裏グルメ」にはこの北角から天后までのエリアにスイーツ店が増殖中と伝える。天后から山手に上がった大坑というエリアも捨てがたいらしいけど,今夜は出始めとして。
それでは…一番近場の翠園[舌甘]品専家へ。
芝麻糊[火敦]鮮[女乃]16元 刮目。
順徳の中信のと全く違う!やっぱ広東スイーツは芸術です!!――芸術なんですが…紙面が尽きた!詳細は上記リンクから!
うーん。ここまで来たついでに表通り,三徳素食館(北角店)へも寄っとこうか。
牡丹[酉ノ木]
葡萄[糸糸][酉ノ木]餅
其子餅
計13.5元
でもって再び九龍,油麻地へ引き返す。既にお気に入り,何度目かの[火火/栄]発餐廳へ。
手前の[大大/栄]華で蓮[サ/容]棋子餅16HK$を購入。今夜のお茶うけ。
永星里の「YOKOZUNA」って店に長蛇の列。「日本湯麺店」とある。大変和風な店内風景。雑誌に載ったか?
さあ[火火/栄]発。
入口ケース内にKowloon dairy(漢語名・維記牛乳)という表示あり。
アメリカン・ダイナー風の程よく広々した店構え。不動の安息感。
アメリカン・ダイナー風の程よく広々した店構え。不動の安息感です。
さて。壁の定食メニューを見やる。本日のチョイスは――
西湯 白菌腿茸湯
3 錦江海鮮豆腐[保/火] 50HK$
ちなみに中湯は栗米[竹/伊-イ]猪骨湯。3番以外の菜は
1鉄板黒椒牛[テヘン+八]腸[イ子]
2鮮茄紅杉魚
4京葱炒肥牛
5姜葱覇王鶏
記録を済ませたころに膳が来る。
ここへ来て――自分が前回後半に何にこだわってたのか,やっと分かった気がした。
ここのは順徳的なセンスだと感じた。
まず。
飯がちゃんと美味い!
きっちり炊き上げてます。タイ米をこんなにおいしく作れるのは広東ならでは!!!…ってのは陸記で確認済み。ここもそれをちゃんと大事にしてる。
でもって油菜が最高!
そんなに大した調理はしてないはずだけど,これだけは窓際のガラスの中のオッサンが作ってるらしい。何かしらこだわりのある作りなんでしょね。程よくシャキシャキ,程よくしなってて,オイスターソースの付け合わせだけで,こりゃご飯がなんぼでも進む。
広東の野菜が絶品ってわけじゃなかろう。香りがとんでもないわけでもない。でもちょうどいい。何だろう,これ。
メインの豆腐の鍋。イカで出汁を取って,後は生姜と唐辛子と僅かに五香粉か?豆腐は厚揚げ。いかにも日本にもありそうなのに,いざ思い出そうとすると…こんな味はない。韓国にはあったけどニョクマムまみれだった。こうあっさり仕上げてしなやかな味わいを残せるのは,やはり微妙なセンで広東である。
生姜が重要な役割をしてるみたいだけど生姜のみじん切りの姿はないから,ひょっとしたらこれがスーパーにあった姜〇という調味料の威力なのか?
さらには[女乃]茶。この一体感も…何だろう。化学的に融合してるとしか思えないほど,ミルクでも紅茶でもなく[女乃]茶である。
この系統の香港飯は,決してガイドブックで有名にはならない。
今回の「裏グルメ」にだって載らないだろう。載るのはやはり「ヨコヅナ」なんだから。
つまり香港人にとって当たり前すぎる生活の味わいを,ポスト消費社会という意味では日本より先に行ってるかもしれない香港メディアが捉えれるはずがない。最近はレトロブームらしいけどそれとも違うし。
そういう香港飯を,もっと食いたい。
尖沙[ロ且]に帰り立ったものの,定食をさらに突っ込みたい衝動抑え難く…さらにもう一軒のお気に入り定食屋・陳誠記茶餐廳へ。
4回目です。
聞けば営業時間は7時半から10時半。
北角で食い損ねた執念でつい広東以外へ。
中式晩餐(乙)回鍋肉茄子[保/火]
ものすごい量の鍋が来た。湯を[女乃]茶にしとけばよかったと後悔するが既に遅し!
湯は例湯によくあるへたった味か?ご飯もおこわっぽい。レベルは栄華より劣ると思う。
けど誠実さがここの売り。広東の性格がよく分かってよい。
回鍋肉は,最初出来損ないに思えた。全然辛くない。麻がない。
けども味わってるうち,ちゃんと麻辣が効いてることに気付く。
茄子です。
茄子が本当に素材の味を留めてる。元の味わいを殺さない,ギリギリのところで麻辣をコントロールしてる。
そうだ。
広東の感覚からしたら当然そうなるわけです。調味料は素材の裏方。この場合,麻辣は茄子の裏方に徹さなきゃ嘘。
広東風四川料理が本場四川と異なる微妙な点がまさにここ。
本場では麻辣の香りを重視する。辛いか痺れるかは二の次。
けれど広東では,全ての尺度で麻辣は素材の後ろに隠れるべきもの。必然的にコントロールされた麻辣になる。結果,同じ辛さでも凶暴さを削いだ丸い麻辣になる。
そういう広東四川としては――この回鍋肉は,完成された美味さを持ってるわけです。
期待する麻辣の質を舌の方で捉えなおす必要があるわけで――そうすると,ムチャクチャ美味いやんけ!
ところで食いながら気になってたことがもう一つ。――斜め向かいのテーブル。一辺には,何かしら異様に自失した挙動の日本人らしき女の子。対面するは,松葉杖の香港人の男。言動の全てが胡散臭げなオヤジです。こいつが女の子に「香港は怖い。でも私が付いていれば安心だ」とかありとあらゆる手管で延々洗脳され中。もちろん流暢な日本語です。
この図は何度となく見てきたけど…明らかに素っ裸に巻き上げられかけとるなあ。
ちらちら警報のアイコンタクトを試みてはみたけど,女の子の眼はもう半分イッてしまっててとても反応しそうにない。
諦めて席を立つ。
まあ殺さりゃせんやろ。ええ経験せえよ,日本人の家畜系若者たち!世界はしたたかやで!!
宿で翡翠台テレビを見てたら10時の番組に「三個女人一個嘘」。
しかしエグいタイトルやな~。