油煳干青∈外伝12∈辣辣辣辣∋貴州編@二次最后天:.Color= 其の鍛煉を受けざれば即ち身心交も損す 貴陽Ⅱ∋糟酸麻蒜

[今期累計]
支出1800/収入2300
負債 500/
[今期累計]
    /負債 264
§
7月18日(土)
1000高架下
自助2軒1100
1930 喜之味
椰[シンニョウ+大]7.5元,200
1950現[火考]蛋餅
カステラ7元,200
2000 [火乍]醤バン麺11元,300
[今期累計]
支出1800/収入1800
[今期累計]
    /負債 264
§→香港6.5復路
→7月19日(日)

 最終日の朝一を川歩きで始めてみました。8時前。
 昨日,いつか歩くべしと思った川沿いを翌日に早くも歩いてしまいました。結構近くてそう時間はかかりませんでしたが,結構清々しい。この川沿いは夜のネオンの時間ばかり歩いてしまいましたが,当然ながら朝のもんです。
 便宜上目的地にしてた再訪のCOCO商業歩行街は──何と朝こそ大賑わい。あるいは朝メシをと期待したんだけども全然座れず諦めざるを得ませんでした。
「米皮」という麺が最後まで気になったんだけど…やむを得ぬ。次への課題といたしましょう。
 火車[立占]へバスに乗る。9時50分,曇天。目的はもちろん高架下十元飯屋街なんですが,ちょっと遅れてると思う。11時には貴陽北に着いていたいんだけど…。

▲高架下([立占]側一軒目)の[ロ乞]飽到

 高架下にあるのはもちろん十元飯屋だけじゃない。ドヤドヤした衣料品の屋台,ドヤドヤした金物屋,まあ大抵があんまり金持ちの寄り付かない店です。
 おおよその平面図としては,[立占]側と反対側の2本の路地が長く伸び,この間に梯子状に横道が通ってます。ひょっとしたらかつての線路の両側なんでしょうか?
 9時。[立占]側一軒目。
①②③④⑤
⑥⑦⑧ ⑨

①骨汁
②ハンペンの焦がし唐辛子炒め
③西柿西和鶏蛋
④小豆の焦がし唐辛子煮
⑤ゴーヤと唐辛子の漬け唐辛子煮
⑥コンニャクの唐辛子和え
⑦ミョウガみたいなのの千切り唐辛子漬け
⑧胡瓜の唐辛子漬け
⑨白米

①骨汁 これにこんなとこで出会すとは──最初,かぶりついてもかぶりついても骨,としか思えなかったんですが,わずかにこびれついた肉を舐めとるように食す。つまり,まさに沖縄のアレでした。
 これってやっぱり,古い中華料理の一ジャンルなんでしょうか?
②ハンペンの焦がし唐辛子炒め ハンペンが…やや生々しいですが,基本,日本のそれにそっくりそのままです。味わいも辛味も程よく染みて,地味としてもクリアなのでなかなかに食わせます。
③西柿西和鶏蛋 トマトと玉子。やはり唐辛子が効いてますが,太平街よりなめらかでより裏方に引っ込んでます。
④小豆の焦がし唐辛子煮 やはり豆の地味主体。辛味が深い。弱いのではなくて,豆の中に染み込んでる。煮込み過ぎという説もありうるけど,これはコントロールの一種だと思う。
⑤ゴーヤと唐辛子の漬け唐辛子煮 辛味の浅深が絶妙なこの店で一番感じ入ったのがこのゴーヤ。地味としての苦味に,トマトの酸味,唐辛子の辛味,これらが非常にバランス良くセットされてます。
 ゴーヤとトマト,これだけでマッチするとは思えないのに,一種の触媒として唐辛子を作用させてるらしいのですが…ちょっと想像がつかない調理思想です。
⑥コンニャクの唐辛子和え こんにゃくがふにょふにょで,蕨粉を思わせぶりですが,これはこれでかなり美味。ただし,その美味を味わえば味わうほどに臓腑を掻き回して来る激辛味は,もはや恐怖を覚えるほどであります。
⑦ミョウガみたいなのの千切り唐辛子漬け 最も謎が深かったのはこの…日本のどんな野菜とも明らかに違う。何か固いものの千切り。最初はモヤシかと思ったほどなんだけど,ミョウガをさらに漢方臭くしたような味わい。漬け物のコーナーにあったから唐辛子漬けだとは思う。思うけど,なぜか身構えるほどには唐辛子も感じない。
⑧胡瓜の唐辛子漬け 身構えると言えば昨日の一品の経験上,こいつには完全に身構えてましたが,ほどほどの唐辛子辛さ。安心して口に出来ました。淋しいような。
⑨白米

▲高架下の[ロ乞]飽到2軒目

 1軒目とは反対側,[立占]から遠い側の路地の店に続けて入ってしまいます。

①②③
④⑤ ⑥⑦

①まっ黒きのこの唐辛子煮
②麻辣豆腐
③骨汁
④爆弾コンニャクとろとろ煮
⑤ピーナッツの唐辛子煮
⑥胡瓜の唐辛子漬
⑦白米

①まっ黒きのこの唐辛子煮 これが旨かった。思わず見返すほど美味かった!
 素材は…これは何なんだ?得体の知れないキノコです。けども,こいつから滲み出るえもいわれぬ軽やかな旨味,シコシコとした歯応え。もちろん辛味はあるのだけれど,貴州料理には稀有なことに,あくまで脇役として美しく袖に控えてる。最後までそう。恐らくは粒唐辛子を煮しませたタイプの辛さです。この形で使うと,唐辛子も辛さより香りとしての機能が強い。ベーコンのような役割の唐辛子。
 遠い昔に地球の反対側からやってきたこの調味料を,ここまで多様に使いきるこの土地って一体何なんだろう。
②麻辣豆腐 カミソリのような鋭い辛味。沖縄並みに硬い豆腐を使ってて,これとかの辛味が惚れ惚れするほどマッチしてる。さらに程よく絡んだラー油が,この鋭さと固豆腐の滋味を繋いでる。唐辛子使いとしては基本形ながら,その使い方の鮮やかさ,仕上がりの美しさに酔眼朦朧となる。
③骨汁 えっ?また骨汁があるじゃん?
 しかしながらこちらは先の店と異なり,どっちが進化形かは知らないけども,沖縄骨汁の骨を砕いたような肉塊です。ほとんど骨。骨なんだけど僅かに,ほんとに僅かだけこびりついた肉──これがムチャクチャに美味い!
 いや,この旨味の形式は沖縄と同じですね。だけど,違うのはやはり唐辛子。煮込みの段階で使ってるのか,姿は全く見当たらないのにこれがよく効いてる。それも背骨肉の幽艶な味わいを損なわない層に,するりとはまり込むような至極のコントロールです。
④爆弾コンニャクとろとろ煮 こんにゃくの地味が素晴らしい。芋の香もだけど,その生々しい柔らかさが酔いに例えたくなるほどの心地好さを誘う歯応え,舌触りなんである。辛さもやはりこの脇に控えてる。決して出っ張らない。
⑤ピーナッツの唐辛子煮 えっ?あ…甘い!今回の滞在で初めてとも言える甘やかさです。
 豆本来の地味が主体だから,ピーナッツを甘煮してるのか?
 では唐辛子はどこへ使ってあるのかと言えば,これは一目瞭然,きちんと赤赤とした輪切りが混ざってる。でも甘さに隠れてしまってて,味覚としての唐辛子辛さは完全に身を隠してる。背景化してるというのだろうか?
 つまり甘煮の甘さを唐辛子で引き立てるわけで…その理屈は確かに理解は出来る。逆に辛さを引き立てる甘味というのはよくある戦術です。しかしその逆が,実際にどうやったらそんな調理が出来るのか──その辺りには完全に頭を抱えてしまう離れ業を,しかし現にやってのけてる一品であるのでした。
⑥胡瓜の唐辛子漬 昨日の店の唐辛子使いに近いのに,辛さは今日の1軒目に近い。胡瓜の味覚は鮮やかだけど辛さはすっかり隠れてる。変色の度合いはあるから,唐辛子の量を控え目にしたタイプなのか?──と思ったけど,これはひょっとしたら,唐辛子辛さが胡瓜の地味の中へ完全に溶け込んでしまうような漬け方ってことなんでしょうか?
⑦普通の白米
 こうして書くと──この店は本当に凄ワザの一軒だったことに,これは改めて驚かされます。殊に,唐辛子を単純な辛味として使わない──それは変化球というより,投げる方向が違うとか,ゲームのルールそのものが違うとかいう差違ですが──思想の自由度は圧倒的。
 ここまで来ると,最早,四川料理の一分派としての域を越えてます。と書いて,自ら反論の仮説も沸いています。いやいや。四川そのものが,先住の少数民族の味覚に由来するものだとすれば,そも四川とはこういう奔放な体系だったのではないか。貴州にはその原初の味覚センスが,いわば食文化の生きた化石として存するだけで──。
 とまあ,滞在時間が終わりに近づけば近づくほどにこの(端的に言えば)マイナーな料理体系へののめり込み度はいや増すばかりでございますが,近づくどころか既にタイムリミット。口惜しさと名残をこめまして「十元飯屋」フォト3連発と参ります。

▲駅前十元飯屋の軒先

▲駅前十元飯屋の世界

▲駅前十元飯屋の鳥瞰

 結局タクシーで貴陽北[立占]へ。10時半。運ちゃん,しきりに案内板を確認してます。この[立占],まだタクシーも場所を知らないような場所みたい。
 10時45分着。「この[立占]は比較的〇〇だろ?始めて来るのか?」と運ちゃんに聞かれた。当然始めてですけど…。どうも…今回は中国人と思われたまま終わってしまうパターンが多いのー。

 乗車。12時ちょうど、隣に3人,姉妹がゲームをしてる。まあ盗難は恐れなくてよさそうだけど…頼むから大人しくしといてね。
 D2811貴陽北1216発広州南行。定刻発。
 発車直後の貴陽のこの辺りは,ビルと小山だらけの開発真っ只中のエリア。日本の山間によくある石灰岩の掘り出し場にマンションが生えてきてるような奇妙な谷があちこちにある。入居もまだ少なそう。ただ街歩きには面白そうやね。まだまだこの街の楽しみどころは尽きないと予感されます。
 次の駅は三江南。
 一分おき位でトンネルに入る。うーん,これは…あんまり風光明媚な車窓ではないのかもね。
 ただ,そのトンネルとトンネルの間には,とてつもなく美しい谷間の風景が広がり始めた。12時55分。写真も撮れないほどの短い時間だけど──うねるような小道の連なる河辺の段丘地に古めかしい民家が数軒を,小規模ながら豊かに実った丘の畑や果樹園と不格好に波打つ山並みが見下ろす。
 あるいは──空漠と草地が広がる谷間に,墳墓が数基,供えられた赤い華が日照に輝いてる。
 13時15分位から,いきなりトンネルの中でもアンテナ3本立ちになりました。wifiを備える新しいトンネルになったということですが,その境目とはどういうラインだったんだろう?
 他と同じく前方に速度計の数字がリアルタイムで出てる。大体240~270km/h。ところどころスピードを落としてるのが逆に怖いんですけど。
 三江南発。14時を回る。周りはほぼ原野…とまではいかんが紙一重。しかしなぜかそれでも何人かは乗って来る。地域経済的にメリットはあったんだろうか。
 トンネル内がまた「圏外」になった。というより,この辺りではトンネルを出ても圏外。
 そして桂林北に着く。

 賀州[立占]で,ついに山水画めいた屹立した山並みの風景が見れた。
 それ以外はなかなかに思い出したくもない情景なんで,思い出さない。とにかく中国のガキはやっかいだということだ。
 隣に座った(と言ってもそもそも座っていてくれないから厄介だったんだけど)ガキの服装がまた…少数民族のお祭りの服でも買ったのか,あちこちに鈴がついて常にチャランチャランと…誰かわしを眠らせまいと雇ったんじゃないかと思えて来たほどでした。
 とにかく最高に疲れた。宿を取っておいてよかった。
 西門口へ。明日は6時起き,とっとと眠らねば!!

 疲れたので,夜の御食事内容だけ列挙しときます。
1930 喜之味
椰[シンニョウ+大]7.5元,200
1950現[火考]蛋餅
カステラ7元,200
2000 [火乍]醤バン麺11元,300

二次貴陽復路/広州光孝路