[前日日計]
支出1500/収入2300
負債 800/
[前日累計]
/負債 41
§
5月5日(木)
0715栗品香(長途汽車[立占])
招牌叉焼包2.5元
豆ジャン3.0元 200
1136順徳人
魚3 鼓汁豆ト蒸烏頭(眼飯,[女乃]茶)45元 550
1350恒香老餅家
老婆餅50
1407大栄華酒楼
元朗小龍包
鮮蝦韮菜餃250
1620生記清湯 第十二分店(元朗)
咖喱安格斯牛[月南]飯42元 550×0.9=495
[前日日計]
支出1500/収入1545
負債 41/
利益 4/
[前日累計]
利益 4/
§
広九直通に乗る際,ここへ寄り道するのがホントに恒例になってしまった。
現在7時15分。栗品香(長途汽車[立占])。
招牌叉焼包2.5元
豆ジャン3.0元 250
間違いない。ここの叉焼包は素晴らしい。日本円だと40円なんだけど…清暉苑の叉焼包並みだと認めるのは悔しいんだけど,どうしたってそうです。
清暉苑のと同じく,やはり肉の歯応えが無くなるほどトロトロに煮込んだ茶色いソース。こいつが,包の中からトロリとこぼれてくる。やっぱり滷味はキツすぎず甘すぎず,包の小麦香と甘みを殺さずにむしろ加速させるほどに。
包も…これは技術というより蒸したてを頂ける美味さだと思う。ねっとりとして香りたつ小麦の妙味。
豆ジャン。容器からジャーっと注いだだけ。そういう,いかにも安っぽい紙コップなのに──やはり出来立てだからなのか?(だとしたら,この朝イチに飲んでるという時間帯が大事なのかもですが)本当にふくよかで底からふつふつと立ち上るような豆味です。
欠点は──このタイミングなんであまりのんびりはしてられないんだよな~。ここ,放っといたら30分位はまったりしちゃう雰囲気なんだけどな。
8時15分,お?列車がもう動き出した?予定時間の8時19分より早いんですけど…いーのか?まあ大抵遅れるからのー。
隣のお姉さんが「香港の〇〇にはどう行ったらいいの?」みたいな話を振ってくる。「ごめんよ,外国人だから知らないのさ,ふふっ」(多少脚色)
てゆーか,デカいバックパック提げてるのに間違うか?
にしても地元の人に間違われること,めっちゃ増えてきたよな。そんなに馴染んじゃったかね…馴染んじゃったかもね,今回は。
すごい宿っぽい。トロントモーテルグループの経営とあったけど,ホントにモーテル使いもされてる宿みたい。佐敦の呉松路だから位置は最高。
Temple Street Hotel – Toronto Motel Group
廟街賓館 – 多倫多汽車旅館集團 1/F, 98 Woosung Street, Jordan, Hong Kong
呉松街96-98號, 佐敦, 香港
まだ部屋には入れないってんで荷物だけを預け,リュックから汚れ物を選っておいたナイロン袋を提げて出発。
とりあえずこの洗濯物をランドリーに出す。潔宜洗衣店,宿から100m(以前使った富士洗衣店の2軒隣)。夜7時には仕上がるという。香港の洗衣店の迅速さには目を疑う。
いきなり飲茶とも思ったけど…やはり食い力。今回の流れで,この近辺で向かうならやはり──。
宿から南へ3ブロック,順徳人 魚米至尊。11時36分。
魚3 鼓汁豆ト蒸烏頭(眼飯,[女乃]茶)45元 550
順徳の二次,そのゴールならやっぱりここでしょ?
黒豆の煮汁とそれ自体がたっぷり吸わせてある白身魚のお頭付きとお揚げサン。考えたことなかったけど,黒豆と魚ってこんなに相性がいいのか?他に使われてる香料は,アサツキとあまり辛くない唐辛子の千切りがわずかのみ。
あまり多種を使って味を濁さず,素材の味を歓ずることができるほどに留める。この点は京都と順徳,二つの食の聖地に通ずるのかもしれない。
味わいとしては──白身魚は,台湾のあの魚よりもう少し青みがかっててそれだけでも結構旨い。蒸す際には黒豆が既にかかってたんだろう,全体にブラックビーンズの深々とした香りがしっとりと染み付いてます。黒豆もふっくらした状態で汁をすってるようで,魚の身にちょいと黒豆を摘まめば醤油をはるかに超える滋味が口一杯に広がる。
帰ってからやってみたとして,おそらく一番難しいのはこの黒豆の処置だろうと思う。炒めたらこう柔らかくはならんだろうし,煮たら汁を出しきってしまうだろう。
そういう程好い蒸し具合を,魚に香りをつけながらきちんとした仕上げに至らしめるというのは,宇宙基地に補給物資を届けるようなマクロとミクロの経験が必要…と想像はするんだけど,やっぱりよくは分からない。
久しぶりに元朗まで出っ張ってみることにした。
佐敦から元朗へは,美[ノ/ツ/子]まで[サ/全]湾線,西鉄線に乗り換えて,香港とは思えない閑散たる平坦地をまたいだ,北岸の街です。平坦地はここから西へ拡がってて,元朗はこのエリアに網を延ばす軽鉄という路線の中心。だから,東の大[土甫]に比べると建物も人工もインフラもかなり大きい。香港の隣の都市に来たみたいな風情ですが,街の手触りはやはり香港。第二の香港というところです。
忘れかけた街の構造を,駅のマップをしばし睨んで頭に入れ直す。
歩き出す。
13時50分,軽鉄の通る大通りに出る。通りかかった店がえらく盛況です。恒香老餅家。寄ってみよう。
老婆餅50
宿で頂いてみると──こ…これは?
確かに旨い!確実に他のと違うぞ!
歯応えは餅っぽい。いや…老婆餅だからじゃなくて,カスカス中華饅頭生地の中に日本的な意味での餅が入ってるという構造。この餅が…くにゅくにゅのふるふるで口に蕩けて…あれ?これ京都升形商店街の阿闍梨餅に食感似てないか?
阿闍梨餅との違いは,この餅の味がココナッツじみた白餡をまぶしてあるってとこかな?
いかん,これは止まらんぞ?
まずは恐るべし元朗!であります。
店自体はとても小さくて,売り場はもっと小さい。小さいんですが,奥のキャッシャーでまず金を払ってレシートを持っていかないと餅をくれない仕組みになっております。まあこれは,中国だけじゃなく…例えばイタリアにもよくあったなあ。共産主義の配給制度の名残なんだろか?そのまま売った方がお互い楽なのに…。
大栄華酒楼。中心部以外での飲茶としては瑞記以来の開拓かもしれません。14時7分。
土地勘のきかない元朗で,かなり遠回りしてしまったぞ?しかもやっと見つけたら…完全に広東語オンリーで話しかけて来るぞ?それで全然分からんふりしてたら(てゆーか分からん)次にはいきなり英語に切り替えてきたぞ?ローカル色強すぎだぞ?
ちょっと自信を失って,非常に素人めいたのをチョイスしてしまったぞ?
元朗小龍包
鮮蝦韮菜餃250
まあこーゆーの頼むとレベルは分かりやすいだろけど…にしてもすごい騒音。同席は車椅子の爺さんと娘さんが始めての外人との同席でエライこと緊張してるぞ?なかなかスゴい濃厚な空気だぞ?
全く未知数にして不可級数のレベルに震撼する。
小龍は,ぎりぎり理解力の射程内でした。ただし肉にまとい付く濃密な塩気が何から来てるのかさっぱり見当がつきません。
韮餃子。これになると,しかし残念ながら全く未知数。韮と蝦だけでどうやってここまでの旨味が出るのか???
韮から沸き上がる独特の香気がくっきりと一方にあり,もう一方に蝦を蒸した時の酔いを感じるような香り,この両者が,むちむちの皮の中で絡まってえもいわれぬシンプルな旨味を形作ります。
調味料はほとんど感じないんである。ニンニクすら感じない。じんわりと素材の力が浮き出てきて,それ自体が核融合してるような本質的に強い料理です。潮州料理の発想を感じますが──。
下ごしらえの力だとしか思えない。しかし何をどう下ごしらえしたらこういうことに出来るのか?
こういうレベルの飲茶もあるのか──。
というか,ここはレベルもだけど何か違う飲茶だぞ?極・潮州系なのかもしれんが,それすら自信を持っては言えないのですけども…。
そろそろ飽きてきたかな?と思いかけてた香港飲茶,その奥底はまだまだ深く深く続いてる。そういうパンチを両頬に受けたような一席になりました。
▲生記清湯 第十二分店(元朗)の[ロ加][ロ理]安格斯牛[月南]飯
生記清湯 第十二分店(元朗)。ここも通りがかりでした。16時20分。
[ロ加][ロ理]安格斯牛[月南]飯42元 650
長く続いてまいりました本香港カレーシリーズもついに本命を探し当てたようである。とゆーか,香港がその早い変化の中に,ついに「変なカレー」から「世界でここにしかないカレー」に成長しつつある,その確証をというべきか。
店内のメニューには英語が付してあった。「安格斯」というのは,何とUSのAngasとされてる。アンガス牛の[月南]飯なのである(よく知らんが)。
そして!このカレーは,メニュー上「巴基斯坦[王加][王理]」というカテゴリーになってる。こ…これは…パキスタンと読むのではないか?
これは如何に言っても吹いてる。世界一旨いと定評のある(そしてわしも実食の上で確信する)パキスタンカレーを,言っては申し訳ないが元々清湯の店が出せるわけがないでしょ?どんな吹かしなのか確かめてやろうじゃないか?どうだどうだ?
10分後。
参りました…。
信じがたいことに──きっちりと指を揃えたホンマモンなんである。まさにパキスタンカレー!
スパイス主体のサラサラカレーで,英国式や日本風に小麦粉での誤魔かしは一切ない。スパイスのバランスもターメリックを表に出した亜大陸風。
パキスタンカレーがなぜ旨いかと言えば,それだけで完成してるスパイス体系の上にさらに肉味が加えてあるからでしょう。中華も同じ──と思いかけたけど?
いや,ここ。ここが違うぞ?
元々肉食を忌む文化圏だった南インドでは肉料理の底は意外に薄い。
一方,数千年来の肉食民である漢人には,いまこの料理名に付されてるように細かい肉使いと調理の文化がある。
今この[王加][王理]飯には,肉を受け入れるパキスタンカレーの上に,元々漢人好みの牛[月南]が被されて,それにアンガス牛(繰り返すが知らん)を使ってまで肉の背景として構成し直されてる。
それは半ば成功し,半ば失敗してる。つまり,大陸中国のように日本由来のカレーの移入ではなく,元々インドの本場カレーを直接咀嚼した新パキスタンカレーが産み出されつつある。──そう,失敗というのは香港カレーとして創造された部分があるということ。
この生記,確か以前どこかで入ったことがある。その時は「[王加][王理]専門店」なんてサブタイトルが付されてはいなかった。日本の喫茶店によくあるみたいに,ほんのサブメニューだったカレーが人気になったもんだから調子に乗ったのだろう。だって「清湯」が元々の売りだったわけだから。
待てよ?ひょっとしたら,あるいは一部の香港人は,今もこの香港カレーをまさに肉湯の一種として捉えてるんだろか?
毎年展開していく香港カレー文化。今後も見失わないでいよう。元朗には他にもかなりたくさんの茶餐廳でメニューに組み込まれてる。…のみならず,一カテゴリーを構成してる店も多いようです。おそらくこういうのは軸足の自由度が高い郊外のベッドタウンほど進行していきやすいと予感します。
ここで予言しておきたい。10年後にはこの香港カレーには何かの名前が付いて,日本にも入って来てるぞ。
宿は結局,呉松街じゃなくて佐敦の交差点北東角のビルの2階の部屋。何も書いてない部屋なんでちょっと分かりにくいというかわしが忘れそうというか。
ただし設備は整ってる。テレビ(4チャンネルだけだけど)も湯沸かし(さっき水入れたらなぜか沸かないけと)もバスタオル配給もあり,少なくとも南京虫の心配はなさそうです。