本伝01章ステップ4 カレー好きはデブばかり

というイメージだけど,何を言うか!(あんたが言ったんだろ?)
 大威張りで宣言するけど,わしは毎日カレーでもいい人!
 ラーメンの比ではない。カレーの旨い店を聞くと難波の自由軒だろと上野のデリーだろと,のこのこ食いに行くのである。──だって,この世にこんな旨い食いもんありまっか?
 なもんで,減量に際して一番悩んだのが「で…カレーは食えるんか?」という大命題。「食えない」と結論されりゃ,その瞬間にわしはダイエットを断固放棄する!だって…カレーやどカレー!
 かくも大問題だったから,カレーに関しちゃあ特に掘り下げて調べ,考えたのじゃ!
 結論的に,カレーは太らない食いもんだった。

 インド旅行から帰った頃,何人かに投げられた質問がある。「カレーばかり食べてるのに,インド人は何で痩せてるの?」
 今になってそれが大問題になったので調べてみたの。
 カレー粉 大さじ1杯25kcal
 えっ…全然低いじゃん?調味料の中では中程度だが,カレー粉なんてそんなにガバガバ使わなくても結構量が作れる。
 本当にカレーって高カロリーなの?今度は製品を調べてみた。
 カツカレー851
 ポークカレー822
 ビーフカレー677
 …やっばり高っ!
 直後,その並びにあったマイナーな料理のカロリーに訳わかんなくなった。
 グリーンカレー432
 レッドカレー425
 スープカレー235
 この格差に,インド人の秘密が隠されているに違いない!(インド人の人,ごめんなさい…)

 レシピを見ればすぐに分かった。
 日本のカレーは,多量の小麦粉でカレー粉本来の刺激をまろやかに和らげている。小麦粉は,同量のカレー粉よりカロリーがある。大さじ1杯29kcal。小麦粉が入っても入らなくても一定量のカレーに必要なカレー粉は同量だから,小麦粉を加えることでカレーのカロリー水準は倍以上になり,高カロリー食品の座を勝ち得ているのだ。カツカレーやビーフカレーは,これにさらにトンカツやビーフのカロリーが追加。コンビニの手のこんだカレーだと,さらに色々入って中には1000を超えるものまで出現する始末。
 …前から,カレーの具ってのは嫌いだった。カレーはヒンドゥー神シヴァの大いなる混沌を体現する食いもん!(そうなのか?)カレーならルーだけで勝負せんかい!「季節の野菜具だくさんカレー」なんてお子様ランチじゃね~んだ!野菜も肉もドロドロに融合して初めてカレーじゃ!
 日本で僕らの周囲にあるカレーがデブる食いもんなのは,本来インドのカレーには入っていない余計なものが高カロリーだからなんじゃねえか!
 そして,再度嘆くんである。こんなもんのために太ったんかい!

 カレーのこの状況は,実は僕らを取り巻く食文化の典型らしい。
 日本のカレーの歴史は古く,西暦538年に仏教とともに渡来人の手で伝えられた。聖徳太子が食したカレー粉が,正倉院に伝えられており,織田信長が朝廷の圧力を得てこれを強奪したのは有名。(長い嘘話やな~)
 こういう伝播してたなら,カレーは低カロリー食品だったはずなのよ。
 現実には,東インド会社がインドを支配した18世紀に,インドから世界的にも食文化レベルが極めて低いイギリス本国に帰って来た人々が,あの味恋しさの余り真似事で作ったのが現在の偽カレー。1747年出版の初めてのカレーのレシピでは,鶏肉をターメリック(ウコン)・生姜・胡椒で料理しただけ。そこまで退化した形態が原型なのね。
 おそらくイギリス人は,ヨーロッパのスープの作り方でカレーを発展させた。どんな料理にも胡椒かければ旨くなる,という食文化の国だ。小麦粉のベースにカレー粉で味つけたイメージ。
 白人の高カロリーな食生活に合うスープは肉汁主体。菜食主義のインドではあり得ない「ビーフカレー」がこうして誕生する。これが「英印料理」と呼ばれるジャンル。
 日本では,明治36年出版の新聞小説で初めて紹介された。国民料理になったのは,軍で常食されたのが最大の理由。特に,イギリス式で養成された海軍。
 大正時代の始めにカレールーが売り出され,カレーは今の形で家庭に入ってくる。
 ちなみに,カレールーというものはインドにはない。小麦粉でつないでいないカレー粉は,固形化しにくいのだろう。

 つまり,低カロリーなカレーは作れる。日本の種類で一番近いのはスープカレー。1食400kcalとされている。
 それには,カレールーを使わないことだ。
 永谷園が「カレー鍋」というのを出していた。具なしの段階で4人前238kcal。豚バラとかを多量に入れたらともかく,500程度で4人前が簡単に作れる。
 最もインドの原型で作るなら,カレー粉をそのまま使えばいい。もっと低カロリーで小麦粉にごまかされてないワイルドなカレーが出来る。
 カロリーの高い料理は旨い確率が高い。しかし,低カロリーで作れる旨いものは,本当に旨いのだ。

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▲おまけ 長崎の「スナックサバイバル」