本伝02章Step12.旨いもんは旨い!

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 Weight:117.0kg
 (△19.0kg)

って笑福亭鶴瓶が叫んでるだけの焼肉屋のCMが大阪であったけど,所変わって鹿児島のラーメンって何であんなに旨いんでしょーか?
 今,鹿児島からの帰り,リレーつばめの車内で余韻に浸っちゃっておるのです。
 ラーメンマップ上は味噌トンコツのエリアだろけど,あの土地にしかないダシ系の味がある。おそらく,カツオベースの濃厚なダシにサッと湯がいたキャベツの甘味がマッチした陶酔のスープ。有名店なら「こむらさき」があるけど,店舗を増やして少し味が落ちたかも。わし的には「海之屋」に星5つ★☆★☆★
 この店は,路面電車の終点・谷山から歩いてすぐ。席は20くらいしかない飾り気のない店で,長渕剛が高校時代に通ってた店だそうで,長渕のでかいポスターが壁にある。
 ぶっきらぼうなオヤジがドンと置いてく丼からは,理性を奪うような甘い匂いが立ち上り,その時点で夢見の気分。これを口に入れるとアンタ…ホントに何か幻覚性の食材でも入ってるんじゃないの?!と疑いたくなる旨さ!ポリが入る前に(?)急ぐのじゃ!
 準優勝は天文館から10分ほど歓楽街に入った「のりー」という店。麺とスープだけのシンプルな作り。味は薄いのに素晴らしく華やか。確か350円ととんでもない安さでこの場所だから,時間に関わらず常に超満員。
 「確か」と書いたのは…グスン。のりーには今回行きそびれたのです。夕方から明け方までという歓楽街時間の営業なので,閉店してて唇を噛むことが多いのよ。
 食いものから離れるけど,鹿児島には本屋が多い。最近の繁華街で最も駆逐されがちな本屋の多さは,その土地の文化度のバロメーターです。海之屋やのりーの味が沖縄の「アジクーター」(濃い味)に通じるかもしれないように,鹿児島には土地の独自性が誇り高く堅持されてる。
 そんなことを考えながら余韻に浸りつつうたた寝してる,九州新幹線の車内でありました。

 我が生地は瀬戸内海に面した遠浅の湾を,江戸期に埋め立てて作った小さな町で,海辺には大きなパルプ工場が建設されてる。
 この工場が異臭を放つと,違う町の人から聞いてた。子供の頃は分からないでいたけれど,数年離れて暮らすとやっと臭いが分かるようになった。そこで暮らしてうちは臭いに慣れてしまって分からなかったみたい。
 この減量トライアルを始めて,分かってきたことがある。いくらか美食家ぶっていた割には…本当の食いものの旨さというものを,わしは全然知らなかったんじゃないの?ということです。
 ガキの頃から鍵っ子だったんで,ラーメンを自分で作ったり,ご飯だけ炊いて缶詰め食べたり卵ご飯作ったりする食事が多かった。そういうもので満足してた。ご飯にバターをドロドロに溶かして食べるのにハマったこともある。
 記憶の中に,食卓で旨いもの食ったなあ~ってゆー思い出がないのです!友達の家でお呼ばれして「こ…こんな旨いものがあるのか!」と歓喜したことは思い出すけど…。
 つまり,わしは子供の頃,食べることの感動を「美味かった!」という形じゃなく「たらふく食った!」という形でしか認識できずに育ってしまったんじゃないのかな…。
 味噌汁やメロンやカニが嫌いだ。味が薄いものは食った気がしない。…これも食いものを「食いごたえ」でしか評価しない感覚に起因するみたい。
 それから,飲み物もこの減量に入るまでは炭酸中心だった。炭酸のない飲料は「飲みごたえ」がなくて損した気分になる。お茶なんて金払って飲んでたまるか!という…これも同じ性の感覚ですねん。
 つまり,脳ではなく腹で飲食して満腹するって感覚。
 減量に入って食べることに関する本を徹底して読んでると,満腹中枢というのは快感のセンサーの一種だから,強い快感を感じ過ぎてると感度が鈍っていく。満腹のみに食事の価値を置いてると,当然満腹するラインは上昇する。
 こういう話をすると「だから腹八分目が一番なんだ」という人がいるが,ストイックぶっても,所詮生物というものは快感と欲望を羅針盤にしてるから,進行を遅らせるだけのこと。
 満腹ラインを上昇させずに食欲を満たす方法はただ一つ。美味いものに敏感に満足できるようになることだと思うんです。
 「ワイルド・ソウル」の垣根涼介が繰り返し使ってる表現の一つにこんなのがある。──日本人は貧乏ではない。貧乏臭いのだ。
 「カリオストロの城」で悪者の伯爵の食事シーンがある。テーブル狭しと並んだ料理を前に,伯爵は半熟卵の上部をゆったりとスプーンで取り去り,黄味だけを口にして目を閉じ噛みしめるように咀嚼する。あのスピード感ある映画の中で,その部分は実に10秒位時間を取ってる。「伯爵は一食に何時間かけてるの?」というギャグがマニアの話題になるほどだったけど。
 宮崎駿が「食べ物なんてガソリンと同じ」とどこかで言ってた。アニメの神を恐れず書くけど,そーゆー感覚がまさに日本人の食文化の貧乏臭さなんではないですか?
 王族や貴族の食事は本当にカリオストロ伯爵の食いかたと同じらしい。「時間が」というのも問題はなくて,つまり並んだ料理を全部は食べないの。残すのよ。
 そう言えば…わしも超のつく早食いで,しかも絶対食いものを残さない…。

 いわゆるジャンクフードも,若い人にウケがいいのは「食いごたえ」で売ってるからでしょ?
 栄養学では,日本人はタンパク質の少ない米・野菜・魚中心の食生活を続けてきたため,米だけはたらふく食いたい「胃拡張型」の食文化なんだって。そんな感覚で高カロリーのジャンクフードを食べたら太るのは当然なんですね。マックのチーズバーガーが平日90円になった途端,晩飯に6つ位一気食いしてたわしのよに…。
 あらら…一番時代に絡めとられてたのはわしじゃねーか!
 とにかく,量じゃなく質で,満腹じゃなくて味で満足する食欲を育てましょ。そう反省する現在のわしです。減量目的以前に――
 その方が本当に食欲は満足するし,何よりはるかに豊かな生活感覚だと思わない?
 反省ついでに,悔しいので批判しておくと…今やたら食育が言われてるけど,今書いたように,ガキの時分にホントに美味い食いもんの感動経験を持つってのは一番の健康対策だと思う。そういう意味での食育なら賛成。目標像はカリオストロ伯爵でなきゃいけないの。給食残す子どもを叱るな!逆に「給食不味くて残すなんて,君の食に対する姿勢は適切だね!」と誉めるべき。「何でも食べるよゐこ」育てってメタボの最大原因なんじゃない?叱ってるヒマあるなら,もっと本当に美味い食いもので給食残す子どもを感動させてやれよ!
 ま…予算不足の学校教育には現実的じゃないにしても…せめて家庭ではそうしてあげてね…月に一度は家族で町一番のレストランへ!

 仕事納めに職場で弁当をとる慣習があるが,今年ちょい驚きました。
 普通に食べてたら…あれ?ご飯が半分以上残ったぞ?
 カロリー制限すると,自然にご飯の割合が減り,おかず中心になったから,それに慣れちゃったみたい。
 そういえば…韓国では出てくるご飯の量が日本よりかなり少ない。日本食は,油モノとかの高カロ食が定番になってもご飯の量が以前のままなんだ。
 貧乏臭い食生活感覚からの脱却。まず必要なのはコレ!

おまけ沖縄市ラブホ街入口の看板「ホテル街盛業中」