本伝02章Step16.カロリーだってどうでもいいぞ!


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 (△22.5kg)

って前回からヤケクソになってま~す!…ってわけじゃない。
 たださ~。最近つい栄養学とか食文化の本を山ほど買っちゃうけど,こちとら減量を開始する3ヶ月前まで関心のかけらもないシロートさんなもんで,初めて聞く話ばっか。でもただ1つだけ,しみじみ理解できたことがある。
 それは──「食べる」という人間にとって最も基本的な行動。これって科学的にはほとんど解明されちゃいないんだな~ってこと。
 これだけダイエットや健康の情報氾濫させてるくせに,何が健康で正常な食生活なのか定説すらない。
 まして,どうすりゃ痩せるのかなんて,世界中の誰も見当がつかないらしいんです!

 わしの減量はほぼカロリーのみをモノサシにしてるわけだけど,これすら大変いい加減なものみたい。
 1kcalという単位は,水1リットルを1℃上げる熱量だけど,どうやって計ってるのか?
 「測定するときは,ポンプ・カロリーメーターを用い,測定する食品を酸素室の中央の白金台の上に置き,電気点火でそれを完全に燃やします。
 その際,酸素室の周囲の水槽の温度がどれだけ上昇したかによって,その中で発生する熱量を計ります。」(幕内秀夫[体によい食事ダメな食事]知的生きかた文庫,2004)
 う~ん…かなり客観的で,嘘がつきにくい測定単位だってことは分かるけど…人間は蒸気機関車じゃないんだから…発熱のパワーを計ったからって,体内のエネルギー変換の大小を測定したことになるもんなの?
 という単純な疑問にすら異論反論はつきないみたい。ダイエットの中にはカロリーなんか全く当てにならんと一刀両断するのまである。
 代わりに炭水化物とタンパク質,塩分,ファイバー,ミネラルやビタミンなどの微量栄養素の量を基準に栄養を論じる立場もたくさんある。でもどれも話が複雑な割に,それだけでOKじゃなくて結局バランスが大事という結論。ミネラルに至っては判明している種類が全部かどうかすら分かってない。
 「人間にどんな栄養素が必要で,その中のなにが不足しているのか,そんなことはいまだに誰にもわからないということです。」(幕内秀夫[40歳からの元気食「何を食べないか」]講談社+α文庫,2002)
 何じゃそれはあ!?じゃあ…どうせーちゅうねん!
 幕内秀夫という管理栄養士をわしは信用できる。「結局何も分かってない」という事実をハッキリ認めてるからです。
 「〇〇は△△が豊富だから絶対食べよう!」と確信を持って主張する「あ〇あ〇大事典」みたいな論は,まずマユツバか詐欺だと思って間違いない。

 幕内秀夫もそうだが,だから伝統食を食べよう!という主張もある。
 実はわしはこれにも疑問を感じる。
 そもそも現代人が栄養過多で悩んでるのは,伝統的な食文化がジャンクフードや外来の食文化の流入で崩壊したからだ。
 崩壊した理由は,産業上の効率が優先されたせいもあるけど,もっと本質的には単純なことだと思う。
 つまり,米と魚の伝統食よりも,マックのバーガーなんかのジャンクフードやカレーやキムチとかの外来食のほうが,断然美味いからですわ!
 日本食は味で負けたのじゃ!日本の伝統文化ってのはすぐ「道」になっちゃって,自己陶酔してしまう。──でも寿司は世界中で,なんて言わないで。あれも江戸時代に未開の地だった関東の新興料理。天ぷらも戦国時代のポルトガル料理のアレンジ。要するに,日本食は外来食に侵略される過程で初めて美味しくなり,それが世界に認められてきてるのです。
 なのに,日本の伝統食論者は「米中心の食事が一番日本人に合ってる」と譲らない。いいヨ,外来食に侵略される前の貧しく不味い日本の伝統食を一生食べたいならそうしてくださいませ。ご飯と味噌汁と漬け物。質素だからそりゃ痩せるでしょ~よ。
 だけど,それはハッキリ歴史が見捨ててきた食生活だろ?これほど多種の外来食が氾濫する中でストイック過ぎない?わしはご遠慮致します。
 民俗学でも安易な保守思想で「古い伝統を守れ!」と金きり声で主張する奴がいる。けど,生活を改善しようとする意欲を否定したら人間に発展なんかありませんぜ。
 それに,何で外来食が悪いの?おフランス料理や満漢全席みたいな宮廷料理はともかく,外国の日常食だって結構よく出来てまっせ。前の章で触れたように,中国の豆乳,南インドのヨーグルト,ヨーロッパの全粒粉のパン…日本人の体はそんなに特殊なの?好きなもん食えばいいじゃん!
 食の世界は絶対的に民主主義です。結果的に日本食が滅びても,それは仕方ないでしょうよ。不味かったんだから。
 栄養の問題は,安易な食材の生産・流通システム。本来の問題から目をそらして,回顧主義に黄昏れるのは解決法じゃない。
 前へ進もう!
 ここまで書いといて何だけど…栄養学もダイエット法もあてにはならんとなると,結局頼れるのは,経験主義的に実証されてきた各国の伝統食になると思う。
 何もご飯中心の室町時代以前の日本食に帰る必要はないのです。パンでも豆乳でもいい。自分が好きな国のでいい。
 3食ハンバーガー食べてる民族は今のところいないでしょ?現在の学問としての完成度を考えると,栄養学より文化人類学の方がどうやらあてにできそうなのです。
 何だ,それならわしの専門分野じゃないか!
 それなりにいろんな土地で飯を食ってきたわしの感想では,本当に美味いものは歴史に磨かれなた各国の伝統食。特に街中で庶民が食ってる,端目にはいかにも貧しそうな朝飯です。それらの美味さってのは,マックのバーガーや吉野家の牛丼と全く違う次元の美味さなんだわ。
 つまり,減量中の食いもので質的に心がけるべきは,これまでよりさらに,そしてホントの意味で美味にこだわること。迷ったら,その食いもんがどこかの民族の伝統食かどうか,またはそれに近いかどうか検証する。──この2点で十分!
 結局分からんものは分からん。栄養学的にド真ん中じゃなくていい,ワイルドボールじゃなきゃいい。
 わしは栄養学の大理論を構築したいんじゃない。減量の実戦用の戦略と戦術だけでいい。現実に痩せさえすればいいのじゃ。

 質的にはそゆこと。で,メインの量的な管理手法だが──理屈はともかく,実戦的にはやはりカロリーしかない。
 えっ,あれだけけなしといて?!…ではありますけど,正確性はともかく,燃やして何度上がるかっちゅう即物的な方法は,何十種類ものビタミンやらミネラルやらで脳味噌ウニにするよりよっぽど客観的。第一,わしら素人にも扱えるのは,現在のところカロリーだけ。学問的には80点でも,安定した指標を選ぶべきです。
 必要以上に厳密に計算する必要は全くない。カロリーの概念の有効性自体があやふやなんだから。
 わしは,計量スプーンだけは買った。油や調味料の量を正確に捉えてカロリー計算するためです。
 でも食材用の計りは買うのを止めた。「ニンジン1本」程度のアバウトさでカウントしてる。
 外食のカロリーも一品ずつ積算してない。例えば中華なら,バーミヤンのメニューを検索して似たメニューのカロリーを使う。
 恐らく100kcal位の誤差はあるだろね。でも,家庭科の試験じゃないんだから,痩せりゃそれでいいの!!

おまけ京都の「監獄食堂」