本伝03STEP27:史上最もしょーもない太り方

 123日目 
▲30.5kg(100+5.5kg)
▲30kg

が今のわしら日本人の太り方なんじゃないの?…って思えてならんのです。
 全盛期のローマ市民は,パンと見せ物は無制限に帝国から与えられた。市民は宴会でたらふく食い,嘔吐してはまた食ってたってさ。
 こんなローマ市民だからデブもいたろう。今の先進国のデブと比べると健康だったかどうか,それはわからん。確実に言えるのは,今のデブ──つまりわしらはローマのデブの1割も美食してない。デブった代償として得るもんが少な過ぎ。
 減量の過程で骨の髄まで分かった。こんなしょーもない太り方なんかやっとられるか!
 わしの減量はごく当然の栄養管理。特徴があるとすれば──このしょーもなさの認識だろね。「アホらしくて痩せるダイエット」みたいな。

 まずはカロリー管理する上での食品の性格で,4つのカテゴリーをイメージしてみよう。

区分

高カロリー 低カロリー
必須 [1類]肉,穀物,油脂,糖分 [2類]魚,大豆,野菜,キノコ,海藻
必要薄 [3類]揚物の衣,とろみ,水溶性添加物 [4類]辛味調味料,茶,コーヒー


 必須か必要性が薄いかは栄養学的にそう言われてるかどうかで適当に区分してる。その区分は,今の栄養学の成熟度からしていい加減なものです。
 逆に言うと,3類と4類はいかなる意味でも栄養的に優れてるとは言われてないもの。
 1・2類と3・4類はある程度の精度で検証もできる。文化人類学的にです。前者はいずれかの民族が常食してきたけど,後者はそれなしでも人間がこれまで生存してきた,あるいは最近になって作られたり広まったりした食品。
 今度は横に見て見よう。1・3類は高カロリーで,そればかり食べてたらすぐ3000kcalくらい行ってしまう食品群。このうち,1類は近代以前に支配階級か富豪が食べてたもの。ローマ市民の食卓にもこれらが並んでたろう。
 これに対して,2・4類は庶民の食卓に並んでたであろう食品群。高カロリーの食品は加工法に関わらず美味な傾向があるだろから,食品として珍重され高価になり,庶民から遠ざかったであろうから。
 米は日本の庶民の食べ物じゃないのって?冗談じゃないッスよ!沖縄も含めて,明治までの日本の庶民の主食は麦・アワ・ヒエ・ソバ・イモなどの多様な雑穀。明治後期の女工の食事は米3:麦7が普通でした。
 女工の食事は劣悪な栄養事情の例として「職工事情」(明治36)に報告されたものだけど,雑穀食自体は今じゃ健康食扱いだよね?貧しかったってより,そういう文化だったのです。──それが何で米ばかり食べるようになったか?
 併合した朝鮮・台湾や実質的に統治した満州で,日本人全てが米食できるように産米増殖計画が進められた。さらに,米食信仰から兵隊食に米が採用された。だから,太平洋戦争当時の日本人は米食中心になってたってわけ。
 米食の伝統性を根拠に復古を主張する人は,また日本が軍国化する頃になってからにしてほしい。

 わしら現代人が太りやすいのはなぜか?あるいは,痩せてても隠れ肥満で体調崩したりムクミが出たりしてるのはなぜか?
 ①3類の食品を摂取してること,②1類の食品を多量摂取してることが原因だとしか考えられない。
 ここで気をつけて欲しいのは,同じ肥満の原因でも①と②は全く別の性格の社会現象だってこと。結果的に減量時の対処方法も分けて考えないと,健康を害して減量の挫折を招いてしまう。
 ②のは1類の多量摂取は,経済的な豊さによる。近代以前の富豪と同レベルの物質的豊かさを誰もが享受できる。だから高カロリー食でも手軽に摂取できる。
 これについては,減量時には単に減らせばいい。しかし決してゼロにしちゃいけない。肉のアレルギーならともかく,手の届くところにある肉を全く食べないなんて,欲求を過度に抑圧してるだけ。続くわけがない。
 栄養的にも有利だ。これらを摂ることで,現代人の長寿は実現してることは統計が証明済。ゼロにしたらそれ以前の短命な栄養状態に逆戻りです。
 何より,肉や油脂は明らかに美味い。ホントの意味で美味い料理になりうる。食品を美味いと感じることは,精神衛生上も身体機能上も有利な条件です。
 しかしこの1類に対して,3類は全く性格を異にする。精神衛生や栄養的に必要だから摂ってるものじゃないのです。需要側の必要じゃなくて,専ら供給側の必要から「摂らされてる」もの。──供給側,つまり増え過ぎた人口分の食品を大量生産・大量輸送するためのシステムの必要です。
 具体的な必要性としては,流通の間の腐敗を防いだり,商品価値を高めるためにキレイに見える状態を継続させたり,あるいは口当たりをよくしたり。
 こういう食品を全く摂らないことは,工業化社会に生活する以上不可能です。しかし,できる限り摂取しないよう警戒してるのとしてないのとでは実害の度合いが違う。
 決定的な違いは,こんなもんを食べたい奴なんていないってこと。精神もカラダも満足しやしない。「安く買える」「ファーストフードとして手軽に食べれる」というメリットだけ。
 忙しい現代人には,そのメリットは大事かもしれない。でもそういう,美食より安さ・速さを優先する食生活,つまり食をないがしろにする姿勢が現代型の肥満の本質であるわけです。

 摂取カロリーを目標体重並みにマネジメントするためには,ブレーキとアクセルが必要です。
 ブレーキは,1・3類を控えて2・4類中心の食事をすること。
 アクセルは,1類を上限内でギリギリまで摂ること。
 今の時代の多くの人は,ブレーキ踏んだままか,アクセル踏んだままか,どちらかなんだと思います。どちらも食生活をマネジメントできてないという意味では同じこと。
 食の安全性が言われてるけど,ホントに危険なのはこのマネジメント力が失われてることだと思う。それは,食という行為をマジメに捉えない姿勢から来てます。
 マジメに食べる。結局この単純なことが減量の王道だと思うわけです。

 美味い肉でならともかく,「とろみ」や「揚げものの衣」で太って,あなたホントに納得できまっか?仕事で忙しいとしてもですよ,いくら何でもそんなんしょーも無さ過ぎだと思いません?
 何よりも,こんなにも無防備に,システムに太らされるのって…いくら何でも悔しくない?