本伝05章[Step43]味覚の石器時代は終わった

 181日目 
▲46.8kg(半減+21.2kg)
▲1/3通過

その先をさらに突き進む我が減量特急!
 ついに全工程▲68kgの2/3ポイントを通過。体重は80kg代に入り,あと20kgを残すのみとなりました(20kgだって普通は大変みたいだけど)。ちなみに体脂肪率も25%を切り始めてる。
 とりあえず衣替えをせんといかん。限界までダボダボになってきた。ズボンなんかまるでハカマ状態。今度はちょっとキツメのを揃えとこう。
 さて,今回書いとかにゃならんのは,舌の変化です。実はヤモリのよにハエを捕まえられるのである!…ってことじゃなくて,形状は同じだけどね。
 感度とレンジがハッキリと変化してきたのです!美味さの感動は減量前の3倍増しだけど,味わえる味覚の種類は実に5倍を超えた(当社比)。

 味覚を感じる器官である味蕾は,ゲル状のものしか味わえない。この知識を得てから減量前の3倍はよく噛んで食べるようになりました。
 快感は感じた経験値に応じて感度を増すもの。インプットと感度が同じでも,脳の側に快感を感じやすい回路が出来てくる。
 この変化をわしなりに整理してみると,こんな感じッス。

 現代食が持ってる味は4層くらいに分かれると感じる。
 まずはもちろん,食材そのものの味。これが1層目。
 その上に,調理法によって加えられる味がある。簡単なものではあえる,練るから始まって,焼く,煮込む,炒める,揚げる,手のこんだものでは漬ける,燻す,発酵させる。これらの過程で発生するダシや煮汁も含む。厳密には食材加工により加えられる変化が2層目。
 3層目が,仕込み時や調理の過程,食前に加える調味料。塩,砂糖,醤油,胡椒,唐辛子,山椒。海外ならトウバンジャン,コチジャン,XO醤,ナンプラー。ターメリックやナツメグなどのスパイス,バクチーやミントなどのハーブ,ラー油やオリーブ油などの香油もこの類い。
 最後の4層目は多くが現代に入って登場した,いわゆる添加物。今「コカ・コーラゼロ」の原材料表示を見てみると
──カラメル色素,酸味料,甘味料(アスパルテーム・L-フエニルアラニン化合物,アセスルファムK,スクラロース),香料,保存料(安息香酸Na),カフェイン。少量なものなどは表示しなくていいらしいから他にも入ってんだろし,味に関係なく純粋に流通の便宜上の物質もあるけど,こういうもんで出来てるらしい。この類いの「美味しい化学物質」。
 以上の4つの層で味覚は構成されてるよに感じるのです。つまり,
1層 食材そのもの
2層 調理による加工
3層 近代以前の調味料
4層 現代の添加物
 もちろんこの4群は完全には排他的じゃない。味の素は4層の添加物だけど2層のダシを抽出したもの。特に3層と4層のいずれに入るか分類しにくいものもある。これは味覚の理念型のイメージです。

 現在のわしらの食べものの味は,たいてい1層から4層までの味覚全てのオーケストラ。1層目がない食事は有り得ないけど,4層目が皆無のものも今や珍しい。4層目だけ避けるのも難しい。
 結論的に言うと,1層目の味がなかったり3層目や4層目の味が勝ってる食事や食材──これがいわゆるジャンクフードと重なる──が,不味いと感じられるようになってきたってこと。
 本当に美味い食べ物は,各層のバランスがいい。しかも味覚の種類が多くて複合的。
 例えば先ほど挙げたように,コカ・コーラゼロは完全に4層目だけで出来てる。減量には効果的だし,よくここまで化学合成できるもんだと感心する味だから時々飲むけど…日に日に満足度が低下してる。変わってお茶,特に多種から成るブレンド茶による満足感の方が徐々に上昇中。
 食べ物でも同じ変化が起きてる。カロリーを苦面して菓子パンとかチェーン店のハンバーガーや牛丼を食べてもピンと来ない。
 じゃあどんな物で満足感が得られるか?それがまさに前章で書いたソウルフードと不思議なほど重なるのです!
 ──と言っても種明かしは簡単。4層目の化学物質でまだ変調してない味覚を持った昔の人たちが,日常的に満足して食べてたほどの根源的な美味さなんである!それが「ハズレ」ってことがあり得ると思いますか?
 無論個人の好みはあるから全部が全部止められなくなるわけじゃないけど…少なくともこの線で当たって不味いのに出くわした経験はない。
 ハッキリ変化したのは,野菜の味が止められなくなってきたこと。減量前は損した気分になってた野菜を,今は食べずにはいられない。