本伝06章[Step58]カロリー管理のホントのパワー

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▲52.0kg(半減+16.0kg)
▲4割真近!

は,インプットの制御じゃない!
 特にリバウンドを防ぐ段階では,全く別の意味で効果を生むんじゃないか?
 それは,STEP57で書いた十牛図の9つ目の「返本還源」──この「源」の意味でもあると思います。
 最終的には,わしはそこにたどり着かないといけない。というより,この食卓を巡る旅行はホントの意味で終わらん。
 「源」──人間の歴史上食べ物って何だったんだ?ってことね。

 19と20歳の夏,各2ヵ月かけインドを歩いた。
 今のような経済発展の兆しがない時代。道にゴロゴロと死にかけた人体が,皮膚の崩れかけた病人が物乞いの手を割と誇り高く突き出してくる。
 わし自身,その次の年には,パキスタンでA型肝炎をもらって入院した。

 現代日本が例外なのよ。あれが歴史上の人間の日常。
 前漢が滅んだ時,中国の人口は約6千万人。その後,後漢が再統一するまでの十数年の間に人口は1500万人に減少。王朝交代の混乱で4人中1人しか生き残れなかったわけ。
 さらに200年後,この後漢が滅ぶの劉備の活躍する三国志の時代。後漢末期に5千万人いた人口は,この三国時代を通じて6百万人に減少する。
 中国って国はずっとこんな状態だったらしい。日本の米文化は今の福建省辺りから伝わったらしいけど,これも,要は戦国時代の大混乱から東シナ海を越えてでも逃れたい人々が多くいたということらしい。
 もちろん,最悪に残虐な支配者だってこんなには殺せない。総人口の3/4を殺せる組織なんて存在しえないっしょ?──食糧生産の体制がクラッシュして,大部分は飢死したんでしょう。
 4分の1の確率でしか生き残れないほどの飢え。それがどんな状況なのか,わしは想像出来ない。多くの日本人もそうだろう。──戦後の混乱期だって,日本の人口が半減しはしなかった。
 けれど,ホモ・サピエンスが数万年の歴史を通じて食文化を創造してきた通常の状態というのは,こんなレベルのサバイバルな状態。
 そういう中で,何とかして食っていきたい!──安くて,簡単で,安定して獲得でき,満足感のある食いもんを!そんなあがきの果てに,現代に残る食文化が生まれてきた。例えば,あの絶妙な中華料理が創造されてきたわけッスよね。

 さて,ではカロリー管理とは何だったか?(やっと戻るんかい!)
 人為的に飢えること──そもそもカロリーを管理するなんて贅沢な遊戯だから連想しにくいけど,最貧国の食生活は圧倒的に低カロリーが問題にされることからすりゃ,まさに飢え以外の何者でもない。1500kcalって今の北朝鮮や大躍進時の中国のカロリー水準だってことは,既に書いた。
 そういう状況に置かれたら,人間は食べることを工夫するのです。カラダの欲求が強くなるから,工夫せざるを得ない。──この工夫の蓄積の上に,食文化が創造されてきたわけね。
 けども,現代消費社会ではその工夫をする代わりに,金銭を支払って済ませてしまうことが出来る。──食事にかける時間は前の世代に比べて半分になる,という法則があるそうだが,まさにそういうことになる。
 カロリー管理ってのは,金銭の支払いで問題が解決できない状況を人為的に作ってるわけ。それはつまり,
昔と同じ工夫をせざるを得ない状況,つまり人類史上普遍的な状況に自分をリセットする。問題ってのは,設定カロリーの条件とカラダの欲求を同時に満たすこと。金銭で食べ物を買うんじゃなく,カロリーで買うって感覚。どれだけ金払っだって,食っちまった200kcalは減らせないんだから!──高価なダイエット食品でそういう幻想を纏った商品はあるけどね。
 食文化を創造してきた故人たちと同じだけの「食べる力」があれば,肥満のリスクくらい簡単に回避できるわけッス。
 だから,同じカロリー管理でも,カラダの欲求を抑えるのは完全に間違い。ゲームの条件は,カラダの欲求とカロリー数条件を同時に満たすことなんだから。
 どうやって?──と聞かれても…カラダの欲求は人それぞれっしょ?基本的には,手前の頭で工夫するしかない!そして,この工夫の過程自体が,そもそも目的の食育課程なのよ!
 日本食は世界的には確かに美味い。でも肥満リスクに対して工夫する努力はイマイチな状態。だから工夫する余地はいくらでもある。
 肉・油・砂糖などのリスクのある食材を工夫して食う。工夫した食事だから,自然によく噛んで味わう。
 そんな当たり前の感覚を取り戻すことだ!