本伝07章[Step69]デブは世界のどこに居る?

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▲58.6kg(半減+9.4kg)
残り10kgライン通過

って…ここだよここ!
 いや…そういう話じゃなくて,政治的位置っていうかさ。
 前のグロい章と併せて,こういうデブの位置を正確に把握しとく方が,小手先のダイエット技術なんかより遥かに有効だと思うわけよ。近視眼だと,ガセネタだらけのダイエット情報の海で永遠に迷子になる。
 太洋に迷わないために不可欠なのは,地図とコンパス。
 そういう意味での大状況を知るなら,前章で引用した丸元淑生さんの「何を食べるべきか」は本物の名著。この人は栄養学の権威だけど,「納豆はイソフラボンで体に優しい!」チックな漫談は一切なし。「栄養政治学」とでも言うべき深みよ。
 そんだけ根深い現代の食文化事情に,ぶん殴られちゃう本でもあるけどね。

 
 「僕にはまだ帰れるところがあるんだ」というアムロの呟きでファーストガンダムは終わるのだが,「もし我々がそれを知ってさえいたら…」と悲痛な声を残して,ヒューバート・ハンフリーは他界した。
 ハンフリーは誰やねん?!アメリカ最高の栄養学書と言われる,マクガバン・レポートの作成委員の1人で,ガンで余命を宣告されながら最後の情熱をレポートにつぎ込んだ人。
 肥満が文明病だって事実は,もう誰も疑いはしない。では──
①現代人の食生活はどう変化してるか?
②それはなぜか?
③どう改善すべきか?
 …それがハッキリ分かりゃ苦労しねえよ!!って思いますか?実はわしも思ってた。
 ところが!丸元さんによると,これらは1980年までの段階で既に「証明」されてると言うのよ!──ただそれらの証明は,食品業界に都合が悪かったから,現在に至るまで一般人の常識になってない。日本では特に黙殺されてるんだって。
 ①②は1969年のペリセ・レポートで,③は1977年のマクガバン・レポートで,研究課題としては完全に議論は終わってしまってる。
 だからね。もしあなたがこの文明の中でさらされる食のリスクを正確に知りたいなら,この2つを読むだけ!
 ってもわしは読む気はない。その論理は実に明快で単純だからです!

 ペリセ・レポートが証明したのは,経済的な豊かさがa)高脂肪,b)低食物繊維,c)低ビタミン・ミネラルの方向に食生活を変える傾向。
 そういうイメージは珍しくないだろけど,それが統計的に証明されたんです。85か国の国家統計による栄養データが,1人当たりGNPと完全な相関を示したって意味!
 わしらは経済的に豊かだという唯一の理由で肥満するのです!
 では,なぜそうなるか?ペリセ・レポートでは,1人当たりGNPが低い国の食事──豊かさにより食生活が現代的に変化する前のプロトタイプは,白くないご飯やパンの比重が高い。つまり「高無精製複合炭水化物」という特徴を持つ。雑穀入りのご飯が中心だったホントの意味での伝統的日本食もこの類い。
 1975年にパーキット他の研究者は,これが「西欧病」を遠ざける食事だと結論づけた。西欧病とは10の疾病の総称で,心臓病・大腸ガン・糖尿病などの他,「肥満」も入れられてる。
 単純な理屈です。豊かな社会では女性を含めて皆忙しい。炊事時間を削らなきゃいけない。しかし,高無精製複合炭水化物の炊事には手間がかかるのです。
 手間がかからずに充実感を得る食材が肉です。手間がかからない料理法が炒めや焼き料理で,それは油を使う。
 だから無精製の穀物は減り,肉と油中心の食事になる。脂肪がもともと高カロリーな上,ミネラル・ビタミンが少ない精製穀物は満腹感を得にくいため食べ過ぎやすい。当然総カロリーは高くなる。
 要は──豊かな社会のファーストフード感覚。明らかにこれが肥満の原因。

 この手の病んだ食事の典型を食うアメリカでは,流石に危機感を感じて,政府じゃなく上院が特別委員会を設け,「合衆国の食事の目標」なる指針を出す。これが世界で最も広く読まれた栄養学書,いわゆるマクガバン・レポート。
 5千頁にも及ぶ大著だけど概要は──総カロリー中の脂肪:タンパク質:炭水化物の比は3:1:6であるべき。
 アメリカの場合,脂肪の摂取量の25%カット,炭水化物の20%アップを意味した。当然食品業界は大反発。なぜか医師会まで反論した。
 けど国民へのアナウンス効果はあった。従来の食生活の欠陥が自覚させた。

 繰り返すけど,これらは既に学術的に常識。
 食育ってんなら子どもに教えろよ!「それさえ知ってたら…」と死んでく奴をまだ増やすのか?