本伝09章[Step84]究極のスパイスは時間

 305日目 
▲62.0kg(半減+6.0kg)
半減まで▲6kg!

なんだべな…っても牧歌的な話じゃないよ。
 それどころか──世の料理人を敵に回すかもしれんけど。でも本質的なデブ防止策だから,ちょっと恐る恐る書いときます。
 Step82で博多6発6中だった日の最後の店のことです。薬院のCafeTeco。ミランのある薬院六ツ角から警固交差点方向へ少し入った,土地勘のない者には非常に分かりにくい場所。看板もちっちゃい。わしも15分位徘徊して,他の客が店名を喋ってたからやっと分かった始末。
 2階にあるログハウス風の店内は,2時近いのに5分待ち状態。ランチタイムもギリギリだったのに…そんな人通りのあるエリアでもないのに超満員。
 メインが選べるスタイルだったんでアジ煮付けを選択して,待つ。
 厨房が丸見え。若い女の子4人位の他はコックらしき人がいない。ちょっと期待が薄れる。雰囲気だけで一時的に流行ってる店の類いか?
 しかし──警固-薬院ベルトはそんな甘いもんじゃなかった!
 それほど待たさずに来たプレートには魚,野菜煮付け,漬け物の他に味噌汁にご飯。1汁3菜の正統派スタイル。
 味はどれも標準以上。さっき見たよに修行したコックが技巧を凝らした味じゃないけどごく丁寧で素材もちゃんとしてる。
 メインのアジを口にしてビックリ!何なんだこの味(駄洒落)!食べたことのない味なんだ(駄洒落…もういいって)!煮魚なのにピチピチした味?確かにベースは生酔の醤油なんだけど微かにハモってるこの味は何?
 食べ終わってから,煮汁に浮かぶ小さなカイワレ大根みたいなハーブを口にしてみて分かった。バクチーだ!インド料理のスパイスで言うカルダモン。東南アジア独特の刺激的ハーブ。これを嫌みがない微量で加えてる。
 CafeTecoの料理は,言っちゃ悪いけど素人の丁寧さ。けれども…それが十分に美味いんだ!で,その味を理解し支持してる若い連中がこれだけいる!
 マクロビオテックや自然食のカフェは,単なるファッションじゃない。
 肥満リスクに汚濁した食文化に対抗するマトモな食いもんを,若い奴らはサブカルチャーの中でちゃんと生み出そうとしてる。マクドや焼き肉しか用意してくれないわしら上の世代の失敗をちゃんと本能的に認識し,ペリエの法則によるファーストフード化に反攻するツールを自分たちで生み出しつつある。
 って楽観していいのかな?舌の肥えた博多っ子だけなのか?

 ともかく…恐らくCafeTecoは料理が多少得意な若い女の子が集まって出した店です。修行したコックがいないこういう店は結構増えてて,それなりに成功してる店もあるみたい。
 つまり,こういうことなんだ。現代肥満食文化に対抗するライトで美味い料理に必須なのは,今の料理界が育てたコックたち,そして彼らが持つ技巧ではない!なぜなら…逆に彼らこそ現代肥満食文化を作ってきた直接の関係者だから。
 ペリエの法則で経済的豊かさが肥満食を生み出す仕組みは,ズバリ,ファーストフード感覚。食事に時間を惜しむ態度でした。
 だから──肥満食を避けるポイントは一つしかない!時間を惜しまず丁寧に作られた料理。そして,そういう人が身近にいることです。
 わしは男女平等論者だから,それが女房とは言わん。
 そういう飯なら,老舗の料理店と同じ位食う者を感動させれるはずなのよ!で…そんな風に感動させられた奴はもう太れなくなるはず。ホントに美味い飯を知ってしまった奴は,決して人を感動させないファーストフードにはもう二度と戻れないから!

 て訳で…百日間食感完成プロジェクト(Step64)も2ヵ月を過ぎようとしてる現段階ですけど,食いもんに対する態度自体まで全く変化してしまったとこ。
 博多味巡りにしても,当初選んだ店のリストが今もう使えない。嗜好が全く別次元になってしまってるのが自覚できる。
 同時に──魚や野菜についての知識を自分がろくに知らないことにも驚いてる。博多の町の食堂では,フランス料理みたいに「じゃあ今日はイサキで」「旬ですから美味しいですよ」「塩焼きがいいかな?」「今日入ったのは焼きがいいですね」とか普通に話すんだわ!急いで勉強せんと恥ずかしくて注文もできん!
 義務教育的に言えば,珍しい体験はしたから生きる力はついてるけど,基礎基本の学力がないってとこ。