外伝02-2전라도:《第二次初日》ソルロンタンの日


▲韓国新幹線KTX車内

 Let it be和琴ヴァージョン,繰り返し鳴り響いてます。
 KTX車内で…何で?しかも?途絶えることなく何度も?もう…他の曲にしていーよ…。
 15時51分大田着予定。前から回ってみたかった京畿道に初入域です。
 14時ジャストに釜山発。釜山駅5番ホームより。
 釜山港に上陸したのが12時25分。博多港発9時半。
 ちなみに国境越のチケットは──
T616998 12/29(TUE) JF107 博多港発 09:30 釜山港着 12:25 済 普通席
T616999 01/03(SUN) JF224 釜山港発 13:30 博多港着 16:25 済 普通席
 何度目の訪韓かは自分でもよく分かりまへん…大体10回目位か?減量開始後3回目,半減後2回目のコリア。ほんでまた──かなり確実にこれまでで最もハードな旅行になるでしょう。完璧に最も強い情動に突き動かされてます。
 情動ってのは──勿論!食欲ですけど。
 動き始めたKTX。6日間の旅の始動です。

 何だか…美味いぞ!かしわめし!
 昨夜,博多での夕食。宿に入る前に目についた中洲のダイエー24時間ストアーで買っただけのもんなのに…。
 噛み締めてくと。お握りの甘味が弾ける段,見事なほど同じタイミングで,かしわの軽やかな肉汁としっとり醤油味が拡散する。
 …だけどよ~。かしわめしなんて博多に最初に来たときからずっと食ってんぞ?もう20年は食ってるはずなのに──こんなにウマかったっけ?
 どーも…米の舌がぐいぐいと出来つつある。いず重の鯖寿司。中央米穀の赤飯。京都参禅の最後の成果物だと思う。気のせいでも感傷でもないみたい。否定しよーもなく本格的に米の味覚が形成されつつある!
 大田は全羅道じゃないけど,KTXで最速で入れる全羅道の入口。このエリアを真っ直ぐ目指してる理由はただ一つ。
 そこが,韓国で最も米の美味い土地だから!

 朝から馬鹿みたいにイケてたのがトースト!
 大田着までコリアン飯は食えないから…博多港で軽い朝飯をとる。いつも通り過ぎてた一階右手の雑っぽい喫茶店。一品ものの皿が選べるほか,和食の朝飯セットとかもある。
 少し迷って,トーストとコーヒーにした。
 ここでトースト食う必然性は全くないけど──これも京都の後遺症。西陣ほんやら洞のモーニングのトーストが忘れられんかったのね。
 どーも…これもかしわ飯と同じみたい。この店のがそんなに特上なトーストってことはねーだろ?トースト自体の味が美味く感じられる舌になってしまってるみたい。コーヒーは普通。
 ただ,この店のどさどさした乱雑な雰囲気。何か居心地良かった。モーニングは総合点です。次も寄ると思う。
 でも,釜山駅で買ったブリオッシュ。KTX車内の弁当にしたけど,あれはパン自体が本物でした。
 どうやら日本のほど卵が使われてないんだと思われる。小麦の穀物臭が弾けた後に,メリンゲ的なフンワカした味覚なしにいきなり砂糖の甘味が来る。砂糖は日本のよりやや強いけど。
 それと,この国の穀物茶はやっぱ最高。コンビニのペットボトルだから添加物バリバリなはずだけど,トウモロコシ茶のこの香りは…くそ~何で日本で出さんのだ!?


▲大田(テジョン) ハンパッシッタンのソルロンタン

 来た~コリア飯,第一食目!
 リュック担いだまんま直行した大田駅前ハンパッシッタン。
 ソルロンタンW7000(2009年末現在W1000≒80円)。
 おお懐かしのオンドル床!テーブル席10ほどのほか,奥に個室も幾つかあるらしい中規模店。
 ゴロゴロと音。見るとオンドル床の上を給仕カート転がして料理運んで来る…。──世界的には日本人の浄不浄感の方がナイーヴ過ぎるんやろな。焼き肉やキムチをハサミで切るのに眉しかめるのと同じで。
 さてお膳は──キムチ2種にパブ(ご飯),それにソルロンタンの土鍋の4皿構成。
 キムチ,とくに白菜がムッチャクチャ瑞々しくてパクパク行ってしまう。キムチって野菜的にはクタクタのイメージなのに…。
 さらに!やっぱ今どのご飯も美味いんかな?でも3日前に京都の中央米穀で食たばっか。標準器は持ててるはず?
 自信が今イチ持てんけど──何か爆発的にウマい!
 米の質のレベルか?じゃなくて炊き方が違うよな気がする。ふっくらホクホクした甘味がトロける!
 このご飯を味わうことで──ソルロンタンの薄味が初めて理解できた気がしました。
 確かに,減量前から韓国牛スープにはハマってはいました。唐辛子味なんて韓国飯の表層に過ぎん!
 けどよ~。粋がってみても貧弱な舌には…何だ!こんなん海水やんけ!としか感じられませんでした。トガニやソコギよりははるかに薄口のソルロンタン,そのまんまでとても食えず,胡椒をどばどばに入れてたな。
 でも今食うと!「海水」に染み出た,軽妙な肉の旨味ってゆーか…ホントに牛肉のスープか,これ?下拵えで湯通しして余分な臭みを抜くんだろけど,西洋でも日本でもスープにすべきとされる部分まで惜しげなく茹で汁として捨ててしまったその先に出てくる最後の味覚みたいなのを食わすらしい。
 そんな所に残ってる微かな味覚を愛でる食感が普及してるとこは──やはり肉を食い込んだ国の歴史の産物だな…と思ってました。
 でも今回気づいたのは。
 和食が野菜中心なのは,米には肉より野菜が合うからとされる。肉の強い味は,淡白な米の旨味を損ねちゃうと。
 確かに,ステーキやフライドチキンとか肉そのものの味はそうですよね。生姜焼きやすき焼きといった和風カスタマイズは醤油でご飯に合わせてるわけだけど,肉味自体が合うわけじゃない。
 けどこのソルロンタンの肉汁,米にピッタリ合う!!ご飯のマッタリした甘味に,この核心だけを薄く深く残した肉汁は絶妙にちょうどいい。だからクッパにすると──最高の渾然一体味!
 韓国肉汁の何に惚れてたんか,自分でやっと納得できました。


▲大田 サンアジャンモーテル温泉のフロントに人が帰るのを待ちつつ月を見る

 韓国の温泉,意外に気に入ってます。
 大田には儒城温泉(ユソンオンチョン)ってのがあるんで,宿はここに行ってみました。アクセスもよくて大田駅から地下鉄で直結。
 地下鉄乗り場を探してひとしきり右往左往した…地下鉄ってハングルで何て言うんだっけ?結局鉄道駅の地下二階にあったんだけど。
 今回は外人だらけのソウルや釜山じゃない。サバイバル会話並みんとこまでは勉強しなきゃな,言葉。
 しかしまあ,新政府と新知事の下での予算要求がいつも以上にハチャメチャでとてもゆっくり語学できんかったし…そもそも日本を出れるんかどーか全く予断を許さへんかったし…てゆーかホントは海外行けん状況なんすけどね…。
 いつも通り,目に入ったハングル文字を片っ端から音読して必死にハングル文字慣れしてる初日です。
 儒城温泉駅北東のサンアジャンモーテルに部屋が取れました。W3万。
 韓国語のモーテル表示の宿って,基本的な用途は日本のモーテルと同じ。だけど普通に泊まっても,少なし変態扱いはされないみたいで韓国人の旅行者も見かける。2500円位の格安クラス,一度泊まるとも~倍以上の値段の一般ホテルには泊まる気しなくて。
 ただ,テレビは映らんほか設備は酷い。でもオンドル床だし,何より──無料で入れる元湯の天然温泉付。
 韓国では温泉って昼間に入るもんらしく,夜は20時閉店と意外に早い。朝は4時半開店。夜と朝の2回,たっぷり温まりました。
 ただ,男女の表示がハングルだったんで──女湯のドアを開けかけて慌ててストップかけられた。男湯は韓国語で「ナンタン」らしい。言葉,勉強しなきゃな…。


▲温泉街道端のビニール屋台

 路面が何かジャリジャリします。残り雪?
 一風呂浴びてから夜の町へ。いわゆる温泉街的なひなびた感じはなく,かなりの都会。それも計画都市めいた無機的な冷たさを感じる整然たる街造りです。
 宿近くで客の入りの多かったケリョンシッタンって店へ入ってみる。大通り脇のドライブインめいた造りのお店。
 看板メニューらしきソンジヘジャンククを注文してみる。W5000。
 土鍋にグツグツで出て来たんは…!?
 これは…げげっ!中国や台湾で最も忌み嫌ってた牛の血液ゼリーやんけ!!喧嘩売っとんのかワレえ!?
 思わずグッと睨むと給仕のおばちゃんニコニコ笑顔。
 喧嘩売っちゃいまへんえ。頼んだからお出ししたんですけど。


▲儒城温泉 ケリョンシッタンのソンジヘジャンクク

 赤茶色い,見るからにドス辛そーな汁中に浮かぶ黒くプルプルした固形物。
 喧嘩しません。しませんから…これだけは…これだけは勘弁してクレヨン…。
 と思いつつ,まあ来たもんは,とにかく食おやないかっ!決意を固めて口に運ぶ。
 ブワッと広がる生臭い血液臭。
 これだよ…この独特の強烈な臭みがたまらんねんな~。もー許して…許し…いや…あらら?
 この唐辛子スープ,強い辛みとニンニク臭が,血液ゼリーの生臭さを丁度良く緩和してて…これはこれで…これは食えるか?食えるってゆーか!これは美味くね?ムッチャ美味いやん!
 それと,やはりご飯がウマい!そのご飯の甘味が,ヘジャンククの訳のわからん強烈な味に上手~くコラボってる。──さっきのソルロンタンとは全く違うコラボり方なんです。ソルロンタンvsパブが同色系のコラボだとすりゃ,ヘジャンククvsパブは対照色のコラボなんだわ。
 さらに──クッパにしてから驚いた!これ絶妙!ヘジャンククの中にパブの甘味が好対照に引き出され,その甘味を味わう中でヘジャンククの渋い臭みが際立って…。
 副菜のナムルがまた凄い!からし菜かニガナだろか?瑞々しい野菜の苦味がごま油によってノーブルに変貌してる。パブともヘジャンククとも異質なこの苦味がまた好アクセント!
 スゴいお膳じゃ。


▲儒城温泉 ケリョンシッタン界隈のネオン

 上からはギラギラのネオン,下からは残り雪の雪明かり。
 寒~。
 プルプル震えつつ街歩き。
 大減量後のいわば生まれたてボディ,冬に日本より北へ行くのはまだ無謀みたいです。
 韓国人,コサックダンス踊り出しそな防寒帽とごわごわコートでぶくぶくしてる方もおる反面,Tシャツにちょっとジャンバー羽織ってみましたアハハみたいな凄まじい薄着の脂っこいオヤジもおる。
 つくづく思うけど…こーゆー脂絞って飲んだら10kmほど全力疾走できそうなギンギン男,韓国にゃまだあっちこっちにいるんだよな~。昔の日本軍とかこんなんだったんだろな~。やっぱり徴兵制の賜物かな~。
 今戦争したら…この国には絶対負けるな。ぬおおお~って来そうだもんな。
 ただ,白兵戦じゃなくビジネスでも恐らく同じ。例えば今の韓国大統領とか,見るからに物凄い実務的な遣り手っぽいじゃん?
 少し前には「頑張ってる弟分」みたいに微笑ましく見えてたこの国だけど…今は正直怖いね,わしは。


▲儒城温泉 日式料理 南や。なんやねんその中途半端な日本語!あえて平仮名使うのが日本的ってセンスか?