外伝09♪~θ(^7^ )第一日_久しき香港に結構狼狽す@第7次香港

[前日日計]
支出1500/収入1110
     /負債 390
[前日累計]
     /負債 576
§
4月29日(金)
0740 CafeVeloce(川端)
アメリカン
1200Cl機内食500
2030野葛水
2100香港[イ子]魚蚤粉
鮮茄猪軟骨[火局]飯750
義順牛ナイ公司
馳名[火敦]雙皮250
[前日日計]
支出1500/収入1500
     /負債
[前日累計]
     /負債 576
§
4月30日(土)

「断片的なものの社会学」という,岸政彦という人の奇妙なフィールドノートを持って来てしまった。
 非常に変な本です。フィールドワークで出会った「無意味な出来事」をいつか本にしたかった,という動機もだけど,それが本当に本になったものは…どうしていいのか分からないほど奇妙な読後感に引きずり込む磁場を持ってます。
 この本を通じて,ヘンリー・ダーガーという作家にも出会ってしまった。この人こそ真の,何と言うか…変人です。ダーガーという名前すら本名かどうか分からないこの引きこもり爺さんのストーリーと画は,巧くも美しくもないのに──キテレツな官能に引きずり込む重量感を有す。
 ついに第7次になる。香港に着いた後の旅程はまだ何も,本当にイメージすら決めてません。ませんが──最高に奇妙な旅になる予感だけが前途を覆い尽くしてる。暗雲のようで光沢を有すその物塊が何なのか,今のわしはまだ知りません。巨大な不可知だけが,目の前に有ります。
 そんな旅立ちです。てゆーか──旅立ちの本質はそういうもんでしょうよ?

 どうやら,初回以後,初めて八達通を忘れて来たらしい。香港ドルもない。到着後,一から手配することになる。
 これもまた佳し。初手から始める。
 ますます中国人民の消費熱が高まる中で,メーデー(五月天)の真っ只中の旅行となる。宿の確保は能うのか?
 ただこれも恥ずかしながら──今回はスマホを持っての初の旅行となる。宿の検索が確実に出来るから,あれだけの安宿物件の量を誇る(?)香港でなら何とかはなろう。とんでもない場所になるかもしれないが──それもまた佳し。
 つまり行きさえすれば何とかはなろう。いつもと同じくガイドブックすら持ってきてないんですが,幸いここ何度か持って歩いてる香港街中の詳細地図だけはある。
 えーと?そのくらいしか今考えることはないな…。こんなんでいーのかいな?
 国際空港行き無料バス車内。中国人のお婆さんと幼児が乗ってきたので,隣の日本人の青年が席を譲ると,「サンキューサンキュー」とお婆さんが幼児の方を座らせたもんだから,青年が情けないような驚いたような笑顔をひきつらせてる。
 それはともかく流石はニッポン国最大のシーズンオフたるGWです。車内は出国ラッシュのツーリストで満席。国際線ターミナルに着いたけど,乗降ドアが開かない。運ちゃんが何度も「黄色い線の後ろまで下がって下さい!」と叫んでる。ドアの外からは別の係員も必死でゼスチャーしてるのに──
 ドアの前のイヤホンマイク装着の中国人民の青年が完全無欠に自分の世界に入ってる。ようやく気付いた男,悪びれるでも慌てるでもなくダルそうに半歩下がる。
 いやあ,ニッポンニッポン。

 出国機はCI111。
 かなり早く来たつもりだけど──さすがに長い行列に並んでると,後ろの中国人民おば様軍団がおしゃべりに興ずる気配を装いつつ我が前に割り込んで来ようとする。ほう。しかし相手が悪かったな。おば様のうち最も強硬な割り込み役をチラチラと睨みつつ,両足を大きく広げてこれを阻止し続けたれば,強硬おば様もついに屈した模様。
 というか…やはり昔ほどには人民の皆様,無法行為の強硬度は激しくははなくなってるのかな。衣服足りて礼節を知る。
 幸いまだイミグレの混雑はいつもの休日程度。
 空は明るい曇天。

 台北トランジットの喫煙所にて。13時。
 ふう,繋がった!スマホのWeb接続!
 恥ずかしながらスマホ・デビュー後初めての海外だったのであります。なのに全然設定方法を教わったり調べたりしてなくて──しばらく接続できなくていじり回してたら,設定→その他の設定→モバイルネットワーク→データローミング[ON]…でウィーン…とネットの画面が出た時の安堵は大きかった!
 ローミングの料金は別途必要。WIFIが使えるとこは小まめに繋いでいきましょう。

 エクスプレスが走り出す。16時20分。
 初めてこれに乗る前にタバコが吸えた(これまでは街中に出て初めて一服してた)。空港建物から地下鉄方向に向かって地下に入ると,セブンイレブン有。で?えっと?その辺りで吸ったんだけど…どこだったか記録できてません。
 八達通も簡単に買えた。空港のカスタムを通る前のカウンターが空いてて買いやすいようです。
 本日の夜だけは予約済。重慶は避けて旺角にした。
 サン イン ホテル Flat 617, 6/F, Sincere House, 83 Argyle Street, Hong Kong, , 香港 。漢語表記では亞皆老街83號先施大廈6樓617。
 確か…以前3泊したアパートだと思う。なぜか旺角は室内喫煙にうるさい。タバコは吸えないかもです。
 しかしエクスプレスの席,えらい満席です。──と記録してますが,この時点ではまだ香港がこれほどこの時期に混み合うことを理解できてませんでした。GWだからではなかったのです。メーデーだからです。
 現レート:1万円≒6百HK$

 [サ/全](以下「全」と表記する)湾線の人となる。17時。
 座れた!金鐘の乗車客で満員となるもまだ本格的なラッシュじゃないようです。
 香港というところの良いような悪いようなところは,こんな風に──懐かしさに浸る余裕もなく,周りと同じほどには神経を逆立てることを,生まれてずっとこの街をかいくぐってきた逞しい老人だろうと到着直後の観光客だろうと子どもだろうと犬だろうと,等しく要求してくるところです。それはある意味インド的だとも言える。
 ここに着いたら,誰もがこの街の巨大システムの一部として体温を上げざるを得なくなる。そうしないと生きていけないというか…怖さを感じてしまう。
 それはそうと…あれ?何かこの地下鉄の中ってwifiになったのか?アンテナがずっと3本立ちです。スマホだからか?

▲野葛水とその屋台。パチンコ屋の台みたいな撮し方になったけど,まあ野葛水とその屋台です。

 こんなものに懐かしさを感じるのってかなりハマっちゃってるな。野葛水。20時半。
 う~ん!このやるせない甘苦さは何だろう?
 ネットをひくとこんな記述がある。「葛菜水(又稱野葛菜水或野葛菜湯)是中國廣東涼茶之一,在一般涼茶舖有售。葛菜水的主要材料是塘葛菜(又名〇〇,山芥菜)」──つまり「塘葛菜」というのが正式名。英語名Rorippa indica。漢語では「名〇〇;」「山芥菜」ともいうもので,広東涼茶の一つ。おそらく広東漢方茶の不気味さの代表格だと思う。「一般佐以海鹽調味。塘葛菜性涼,味帶草香而甘,有清熱下火,生津止〇,潤肺排毒之食療效。塘葛菜可加龍利葉、羅漢果,蜜棗,陳皮等〇製葛菜水,或加生魚可〇生魚葛菜湯。」

▲香港[イ子]魚蚤粉(王子)の鮮茄猪軟骨[火局]飯

 とか寄り道してしまったので香港[イ子]魚蚤粉を見つけて入ったのは21時を回ってしまいました。王子。
鮮茄猪軟骨[火局]飯750
 これには驚いた。やはり,この全然有名じゃない広東洋食って,香港でしか絶対に食べれないぞ!
 まずは…このおこわ風になった米!イベリアのピラフを,インディカ米で作ったらこうなるんだろか?戦国期の干飯を彷彿とさせます(きっと)。噛み締めると粉としての米の味がする米です。
 つまり[火局]飯というのは洋食のように見えてれっきとした香港料理だとしか思えない。
 チーズとトマトの使い方は確かにポルトガルなんでしょう。けれどこの核心はハッキリと──軟骨の旨みです。この店の他のメニューにも出て来てて,明らかにこの店の得意分野の一つみたい。

▲義順牛ナイ公司の馳名[火敦]雙皮[女乃]

 その並びにあります義順牛[女乃]公司にも寄っておきましょう。
馳名[火敦]雙皮[女乃]
 いつも通り旨い!
 昔から,風邪ひいた時の特効薬と信じてホットミルクをのんでるけれど,熱いのを頼むとこれが実感されます。滋養たっぷしにして雑味ゼロのクリアな味覚。

▲義順牛ナイ公司の夜の店頭にて

▲旺角のある街角にて