外伝09♪~θ(^3^ )第三次×第四日之二

 読んでお分かりの通り,三度目の正直の香港ミニ滞在初日は,物凄い充実度で飛ばしました。
 翌日そのリアクションが襲ってくることになりますけども…それは後日談として,はみ出しちゃった四編のミニレポと併せて本編第二部としてご笑覧ください。

▲三徳素食館(北角店)で購入した牡丹[酉ノ木],葡萄[糸糸][酉ノ木]餅,其子餅
 結構スイーツ的なのもあるんだなあ。これまで台湾粗食のイメージで見逃してしまってた。

■メモ:漢族エリアでの食べ歩き指南
(大陸・香港・台湾一般則)

◎大原則◎ 他より遥かに,食べ手自身の観察力しか頼るものなきを知るべし

①グルメ情報,特に有名店舗の情報は,あくまで眉唾で。
[現象]
・メディア情報と実生活の乖離は日本を遥かに上回る。味覚的には見る影もないブランド店,という類が,日本に輪をかけて多い。
・マスコミの誘導は日本より遥かに過激に働いてると心得るべし。
[対策]
・実見して雰囲気が悪ければ有名店だというだけで入らない。
・異様に賑わってる店に注意。むしろそれによってこそ低質化してる可能性が高い。

②鄙びたメディア掲載店は要判断
[現象]
・逆に,実力派だからこそメディアが無視できなくなったらしきパターンもある。
・メディアがただ新奇をてらって載せただけの店とか,ガセも多いので注意
[対策]
・判断が難しいが,恒常的に地元客が入ってる店にはトライしてみる価値がある。

③ローカルチェーンはむしろ要チェック。
[現象]
・大資本に抗して地方で支持を集めるチェーンにはそれなりのセールスポイントがある場合がある。
[対策]
・判別はやはり難易度が高いが,広告文から会社の文化を見透かせることがある。
・ただし,全国展開のチェーン店には避けるべき。この区別も難しいが。

④最も重視すべきは全くメディア評価のない実力店の発見
[利点]
・地元にしっかり根を下ろした店の味は確実。かつ土地の味覚がようやく分かる。
・舌を磨いた人間集団がこれだけ永く食生活してきてるんだから,そういう店は必ずある。
[難点]
・確実な事前情報は有り得ない。

⑤最終的には,食文化勘を磨くのみ
[広域]
・事前情報と現地の見聞から外食度合いや生活臭の深さを分析しエリアを絞る。
[店選び]
・次の諸点からクオリティを推測
 場所,客足,客層,理念(店名・菜単)

▲ 地下鉄駅のキオスクにて購入した香港李衆勝堂 保済丸。 能書き:主治…[火阿]嘔[月土]痛,四時感冒症状,身熱頭痛,気喘痰多…

▲翠園[舌甘]品専家の芝麻糊[火敦]鮮[女乃]16元
■同レポ
 全てのテーブルが埋まってる。この夕食時に,信じらんないスイーツ屋です。 皆さんの注文を見るとどうも芝麻糊が狙い目だったみたいだけど…わしはわしで刮目してました。鮮[女乃]…ってことはミルクプリンなんですが,これが順徳の中信のと全く違う!
 口中でワッと広がるミルクの香,ってとこまでは同じ。中信ならこれがどこまでも反響して唸り続ける感じのところで,この翠園のはシュッと萎んでしまう。 力を失う,というんではない。低空飛行に入った巡航ミサイル――と言うとマニアックだけど,鐘の音が消えた跡に低い唸りだけが尾を引いてくように,幽玄な形態に化した甘さに転じていくんであります。
 この転生したミルクの甘味の軌跡が――味わったことのない美しさを見せる。
 [女乃]茶のミルク香にも共通する,本来荒々しく力強いミルクの味覚をコントロールし尽くした後に生まれる芸術的な甘い爽やかさ。
 考えてみたら,普通はミルクプリンとゴマシェイクなんて合うはずない。だから芝麻糊は通常単独で出る。単独でも愛されるここのなんかはもちろん典型的だけど,芝麻の甘味が微妙過ぎるからです。
 けれどここの鮮[女乃]は,芝麻糊とぴったり寄り添える。そんな一種奇跡のような邂逅を,さりげなく作り出す。

▲順徳:漁郷米坊の店頭風景

油麻地へ引き返す。既にお気に入り,何度目かの[火火/栄]発餐廳へ。

■補稿:順徳から香港へ

 順徳港に着けば,そこは無人くんであった。
 7時15分。来た時の結構かかった記憶から,早く出過ぎた模様であります。
 昨夜,地図を広げて検討したところ,総[立占]でお姉ちゃんが調べてくれた307路線は,停留所が港から離れてた。かかっても歩いて30分程度と思われたけど,道が入り組んで複雑っぽい。どうも行程に不安感が拭えず,朝起きたら頭はタクシーに決めてしまってました。
 かかったタクシー代は45元。朝だからか豪速。昨日2時間は歩いて到達したイーオンの前を5分もせずに通り過ぎ,そのまんま直進したら15分ほどで着いてしまった。
 港構内は,まだ切符売り場が開いていない。いやそれどころじゃなくて,明かりもついてない。鍵が開いてるのが不思議なほどです。

 仕方ない。ここまでで得た諸情報を記録しとこう。…次回のために。
 順徳港最寄りのバス停は,さっきのタクシーで通過する際に見たところ「順徳職院」と読めた。昨日お姉ちゃんが教えてくれた大学名の略称っぽい。
 場所は港から北へ一直線に伸びる出口道路を突き当たりまで約500m,そこから道なりに西へ左折して約500m。路線は少なくとも307と301は通ってる。307なら大潤発や客運総[立占]へ直通。
 未知数なのは,このバス停まで歩くしんどさと発着の頻度だけど…。

 昨夜は美食広場が開くまで…と一時的に部屋に帰ったつもりだったけど疲れがドッと出て熟睡。起きたら夜11時を回ってた。わざわざ美食広場の近くに宿泊した意味が…とか,しかも2泊もして全然生かされなかった…とか色々悔しい気もするんだけども,まあそれだけ昼間が充実してしまったわけで,しかも初めて中国バスを乗りこなす環境も与えられたわけで,総合的に元は十分取れたとして満足しとこう。

 とか思いを逡巡してるうち,7時半,唐突に電気がつく。
33分,ダルそうに出勤してきたお姉ちゃんが売り場の鍵を開けて端末のスイッチオン。
 35分,放送設備のスイッチが入る音が流れる。何が案内されるのかと思ったら,最初にアナウンスされたのはウィンドウズの立ち上げ音。
 なんでそんなんを館内放送する?
 おそらく放送を管理してるシステムから流れてしまうんだろうけど,別に流れてもいいや,というセンスが共産中国の公共施設めいててよろしいかと。
 40分,イミグレの係員らしき軍人様御一行がヴァンで到着。紛れて聴いてみたら,イミグレは8時から開くらしい。
 で8時。客はたっぷり待ってるが,イミグレのホールが開く気配はゼロ。
 ゼロだったのに…8時5分,唐突にイミグレがスタンバイされた。あんまり殺到する勢いがないのは流石に衣食足りてというところか,それとも不人気航路ゆえか。中国辺検のいかめしい文字と軍服お姉ちゃんの厳しい眼を通り過ぎ,10分,海の見える待合室へ。
 でも乗船カウンターはこれまた完璧な無人くん。全てがバタバタの大陸モード。

 ところで今夜はどこに泊まるかなあ…。
 やっと乗船手続きが始まり,船の座席を確保しつつ思い巡らせる。
 基本に帰って尖沙[ロ且]の,重慶か美士都で探してみるか…。
 8時半を過ぎた。もう完全に予想通りだけど,係員は登場したものの,船にかかった足場も外れず,係員も無駄話でにこやかに談笑中。
 責任者らしい軍人が来て35分,いきなり発進!――こいつを待ってるだけだったらしい。
 今日の便は8割がた席が埋まってる。始発便だからか?

 右手,順徳港から大きな橋を隔てた中洲に大きなマンション…というかこっちで言う「花園」ができつつある。
 昨日客運総[立占]のブロックにも見たように,要は居住のために周囲を囲った城です。ワイのシステムを持ってきた香港人には突飛なものでもないのかもしれんが…わしには中国各地に生まれつつあるこの城はどうも不気味に見える。

 10時45分,香港中港城着。
 10時55分,イミグレの行列のまだまだ後ろ。
 出国までは残り48時間強か?気は焦るんだけど,そんなんでは共産中国は動じるはずもない。ま,いつか入国できればいーや。大人しく待ちましょ。

▲香港駅中の公共インターネットコーナー
 亞洲四小龍,いずれも電脳への官民上げての投資感覚は凄まじい。次代をしっかり見据えて生き残りに賭けてる。目にする度に空恐ろしくなる。

レポ:堅尼地城(Kennedy Town)

・香港にありがちな総督の名前からの由来
・第7代総督Authur Kennedy(アーサー・ケネディ:在任期間1872~1877年)
・未開発だったこのエリアを開発した総督
・この総督の他の業績には,香港ドルの創設がある。
・ケネディ総督は“総督のプロ”の別称を持つ植民地統治のプロフェッショナル。
 総督歴:ガンビア、西オーストラリア、バンクーバー島、クイーンズランドなど(総督経験年数計25年以上)
・彼の後任はJohn Pope Hennessy(ジョン・ポーペ・ヘネシー)。香港島を東西に走る軒尼詩道(Hennessy Road)を建設し,その名を残す。
・同様の由来に,第13代総督サー・マシュー・ネイザンが建設した現九龍半島の最重要幹線道路,ネイザンロードがある。

[気付]
・これらと比較した時に気付くのは,旧日本植民地だった台湾・朝鮮・樺太に,全く同種の地名が残っていないこと。
・開発実績は明らかにある。台北・高雄・基隆・ソウル・釜山・ユジノサハリンスク(旧豊原)と,都市の基本構造を日本が建設した例は後を絶たない。
・自己顕示欲の低さゆえか,「公務」「滅私」感覚の強さゆえか,あるいは何かで禁じられていたのか?
・若しくは,わしの知らない事例があるとか,旧くは「児玉源太郎ロード」とかあったけど改称されてるとか?