外伝09♪~θ(^5^ )第五次香港
広州二泊目(往)

Festival Wolk真暗に 百日紅

 見事に静まり返った地下の闇。
 なのにあちこちのベンチに朝飯の麺を啜る物音。なまめかしい祭りの後。
 朝7時過ぎ退房(チェックアウト)して,地鉄に乗ろうと体育西路の地下街を通ってます。
 このエリアは通常,体育西というより「天河」として認識される繁華街らしい。あちこちの店がこの地名を冠する。まあそりゃそうか…「体育西」の語感はさすがにダセえわなあ。
 広州一の繁華街扱いゆえか,既に地上には「逆立ち自転車男」など大道芸人が出没し初めてます。例えばこいつは,逆立ちのまま足で持ち上げた自転車を宙でこいでます。やってみろと言われたら出来ないワザではあるけども,だからどうしたいんだ?というワザでもある。
 公園前[立占]で羊城カードにそろそろチャージをしようと,カードを買った「天天洗衣」に行くとやたらイライラされたお姉様に「チーシーイーに行け!」と怒鳴られました。あまりの剣幕に引き下がってから考える。チーシーイー…?七十一?窓口ナンバーか?
「セブンイレブン」のことだと気付くのにしばらく時間がかかりました。
 8時15分,公園前の如家に荷を置けとく。デポジット200元。
 再度地鉄一号線の人となり黄沙[立占]へ。かなりの乗客です。日曜だぞ?通勤ラッシュがなくてもこんななのか?
 今日のうちに手配しとく必要のある件がいくつかある。まず旅行社。──狙ってた長沙から香港へのエアはキャセイ。長沙では購入場所が限られそうです。出来れば広州で押さえときたい。
 あと薬屋。足が豆だらけ!既にバンドエイドが不足してる。購入せねばならんが多量に買える場所は?
 しかし本当に…和やかな顔の多い街ですね。会話は相変わらずわからないけど,人情ある素っ気なさみたいなものを帯びる。
 黄沙は西に馬頭,東に高層ビル街を持つ街。地下鉄駅は前回来た摩登新天地 mopark の真下。
 8時40分,陶陶居酒屋入店。

▲陶陶居酒屋のチンゲン菜水餃子とかす巻き

 混んどるなあ!
 一階席はない。相席は原則なしらしく,一組から断られてやむなく二階へ。三階まであるみたいだけど,一番いい席は二階の階段を回りこんだ窓際っぽい。
 前の客の食器がようよう片付けられた便所脇の席を何とか確保。
 しかし…これだけの需要があるってことは,やはり飲茶文化の原型は大陸の習慣なのか?蓮香楼はこの前の店が本店らしいし。
 おそらく,飲茶の発祥そのものは広州なんでしょう。ただ,器具は揃ってるけどあまり本気で洗茶してる人は老若問わずあまりいない。広州生まれ香港育ちというところなのか?
ポーレイ
チンゲン菜水餃子
かす巻きみたいなの
36元
 餃子。青梗菜の香りがムチャクチャ生き生きしとる!水餃子の皮も,ほとんど腸粉と間違うほどのプルプルさです。これに青梗菜,昨日の銀記のパターンだけど,ここにさらに微量の豚肉と人参が絶妙に効いてます。なかなかの味!
 香港より技巧的でなく生々しい味覚だと思えた。規模の割に品数は少ないけど大陸らしい飲茶です。
 かす巻きが…これがまた大当たり!まあ…かす巻き※ではあるんだけど,上側の焼き焦げのクリスピーさと回りのカステラ生地の,漢民族お得意の豊かな卵味は――これは見事です。定番らしく,席に帰ると相席の目つき悪い婆さんも同じのを取ってきてて互いにニンマリ。
 半藤さんの「昭和史」が原爆投下のクライマックスだったんで読んでたら[注!中国や韓国ではこの行為は庶民感情的に非常に危険です!宿でひっそり読むこと!!]「日本人?日本人なのか?」「何で普通語喋るんだ?」と婆さんやら師夫(おばはんだらけだったけど)やらからわんさか質問された。そんなに珍しいのか,日本人が?あるいは文庫本読んでるのがか?
 便所脇だし相席は繰り返すけど目つき悪い婆さんだけど,結構居心地良くて,結局ポット(茶碗のみはないらしい)2杯も行ってしまった。ポーレイもかなり生々しく美味い。だからいーんだけど,まだ一軒目なんだがなあ…尿意がなあ…。
 それで帰りにトイレへ寄ると,隠れてタバコ吹かすオヤジだらけ。トイレにすら行かずに卓で隠して吸ってる奴までいたぞ?
 恐るべし無法中国!

※かず巻き:…って何だ?と,特に東日本の人は思うかもしれんけど,詳しくは調べてちょーだい。カステラで餡を巻いたもの。長崎や島原が本場,対馬の「かすまき」や愛媛の「タルト」もこの派生と思えるが,これが香港にもあるのは食文化的に一興。

 さて時間です。
 2号,5号と乗り換えて1030過ぎ,小北へ。前回の雪辱,清[日軍]園──今回の広州最大のターゲットであります。
 亜州国際飯店。40階なのですが…少し込み入った経路になります。正直来る人が増えてほしくないので,自力でたどり着いてくらはい。とにかく少し戸惑うルートで入店に至りますと…。
 広州を見下ろす大パノラマ!まずこの絶景に酔うべし!

▲清[日軍]苑の清[日軍][虫下]餃皇(超)
 清[日軍]苑。
 立地はほんの導入部。味はそれをはるかに凌いだのである!!
ポーレイ
清[日軍][虫下]餃皇(超)
至尊鮮葡蛋[テヘン+達](頂)
 オーダー式飲茶。リストにチェックする形式なので難しさはないですが,品数は50近くもある。おおっどれもムチャクチャ魅力的…に,期待的にもシチュエーション的にも見えて来ます。
 迷うこと嵐の如し。──その間にも,写真のように上品な茶器がセットされます。継ぎ足し用の開水(沸いた湯)の温度を保つ蝋燭なんざ,日本の料亭じゃあ一人用鍋料理でしか出んだろ,これ。
 たっぷり間を保たせて点心,来た来た来たあ!
 餃子。
 このフルフルの皮,というのを何回か繰り返し書いてるような気もするんだけど,ここのはまた特段に素晴らしい!
 中は生煎かと見紛うばかりに豊かな肉汁。肉と言っても海老が主体,だけどよく味わえば微妙な豚肉の出汁がアクセントになってるようです。
 しかし…この味わいの軽妙さは何だ?
 何も出っ張りがない。強く主張する食材が見当たらない。どこまでも円やかに,延々とクリアにまとまっていく味覚です。しかも,だからと言って調味料を技巧的に使ってるわけでもなく,あくまでナチュラルに素材の生々しさを残してく。…この円い絶妙さは何だろう。
 後味もまた…人参と?この赤い粒々はイクラなのか?円い味わいの果てに,苦味を湛えた甘味が万華鏡めいた後味になって味覚を締めていきます。
 エッグタルトは──。
 あえて広東定番も頼んでみるか,と選んだんですが,この路線も間違ってなかったらしい。さらに凄まじいものがありました。
 えっ?箸で掴もうとしても…つかめない?
 ──ほろりと崩れる繊細なタルト生地に,トロトロの卵クリームが乗っかってる。食べにくさ的には明石焼きに近いか?見かけが全く普通のエッグタルトだけに,まず驚きでした。
 その驚きが驚愕に転じるのは,それを舌に乗せたとき。
 卵味が──全然強くはないんだけど,圧倒的な存在感で幅広く口中を占拠する。この力強さは何だ?太極拳的というか…何も強い味はないのに痺れる感動味。
 この魔術的な力は,一体,どこから来る何なんだ?
 砂糖の甘味はほとんど感じない。卵の黄身の味が,スクッと自然に立ってるだけ…に思える。
 …なのに?味蕾に染み入いる虫の声じゃなくて卵黄の甘やかさ,これが絶えることなくじわじわと続く。どうなってる?何をどうしたらこの味になる?
 いや,想像以上です。美味いかどうかといった得点面もハイスコアですが,味覚構成の方法論として…想定外というか未体験ゾーンというか,少なくともわしの味覚経験をぶっちぎった一食です。
 締めて56元だったか?この味わいを800円で供してくれるこの名店は…確証しました。お値打ちです。
 既に常連・固定客は多いようだけど,もうこれ以上は有名にはなってほしくないな。一見が言うこっちゃないけど。
 まあ,エレベーターの複雑な経路の防壁もあるから…もう何回かは通う余地はありそうです。

▲清[日軍]苑の至尊鮮葡蛋[テヘン+達](頂)

 金鷹酒店 JINYING に頼んでおいたチケット(長沙→香港)をゲットしてから,小北より地下鉄乗車。
 うーんこのeチケット…には見えるが何か紙がそこらの白紙で,何回か印刷失敗してたし,どうにも不信が残るんだよな…とチェックしてたら,いきなり50元サービスしてくれた。それで済ますか?てゆーか,さらに怪しいんですけど?
 それと,何かこのホテル,アラブ人だらけです。ワタシは石油成金でーす,みたいなデップリ親父が始終出入りしてます。この辺りってどーゆーエリアなんだ?
 さて…残る半日の広州,どう過ごすかな?

▲蓮香楼の招牌牛[月南][保/火][イ子]粉(頂)と[シ半][土唐]馬蹄[米ソ/王/心](中)

 香港島では世話になっとるし,やはり一度は確認しとくか‥。
 上下路に折り返して15時過ぎ,広州の蓮香楼に初入店。
プーアル茶
招牌牛[月南][保/火][イ子]粉(頂)
[シ半][土唐]馬蹄[米ソ/王/心](中)
 ひ?人少な!
 日曜日だぞ?入れんかと思ったのに…!?これは不吉な形態です。地元では人気ない,逆輸入店パターンか?
 まあ角の席だしゆっくりはできそうやね。
 ――。
 結論としては,何というか,予感通りというか,かなり鉄板で,なかなかにして‥鬼のようなハズレでありました。
 おでん(牛[イ十]のつもりか?)みたいなのはドロドロに濃ゆく,繊細さもなければ鋭敏さもない。
 馬蹄[米ソ/王/心]は,ゼリーに見えて割としっかりした餅で面白さはあったしお茶にも合ったけど,味に濁りを感じる。そのうちどうにも飽きがきます。
 お茶も,これはー。茶器は滅法大層なのが出たんだけど,肝心の味は…う~ん,あんまり深みも冴えもないぞ?これなら自分で作れるぞ?
 上環の名店・蓮香は,やはり香港人の舌が育んだ店らしい。まあ,ブランチを出したってことはこの本店も客がいなかったわけじゃないだろけど…。
 不思議な出自の店です。

▲香港表[可/可]茶餐庁 粥麺専家のF餐(又焼[テヘン+弁]焼肉飯)

 体力尽きて一度宿に入るも広州最終夜,名残惜しさに北京路まで歩く。
 想像はできたが,夜の北京路こそ観光地。まともな食い物屋はないよな。周辺を当たってるうちに見つけたチェーン店に入る。
2000 香港表[可/可]茶餐庁 粥麺専家 Cousin Cousin Cafe
F餐(又焼[テヘン+弁]焼肉飯)38
 調べてみると,「香港」を冠してるけど,30ほどの支店の半分は大陸側にあるチェーンらしい。
 定食屋に見えたが,自分の膳を見ても臨席のをチェックしても…丼屋という風情だな。
 店頭に肉切り場があることから察するに焼味屋の発展型か?
 来た丼には青梗菜のほか焼き豚2種。一つは赤く色づくチャーシュー,もう一つはクリスピーな皮付きの三枚肉。
 食すと──意外にいい。前者もかなりいいが,後者の皮の香がたまらない逸品でした。
 ライスもきちんと美味い。なかなか良質な店です。
 これに[女乃]茶が付いて38元は…うん,確かに良心的だと言えます。
 最終夜の広州の味覚風景としては面白い店に出くわすことができました。

[今期累計]
    /負債1117

9月14日(金)
0840 陶陶居酒屋
ポーレイ
チンゲン菜水餃子
かす巻きみたいなの
36元400
1145 清[日軍]苑
ポーレイ
清[日軍][虫下]餃皇(超)
至尊鮮葡蛋[テヘン+達](頂)400
2000 表[可/可]茶餐庁 粥麺専家 Cousin Cousin Cafe
F餐(又焼[テヘン+弁]焼肉飯)600
[今期累計]
消費1800/収入1800
[今期累計]
    /負債1142
長沙編