油煳干青∈外伝12∈辣辣辣∋Dim 長沙編.Title:初日  街談巷語を聴くは樵歌牧詠を聞くにしかず 長沙再訪∋糟酸麻蒜

 長沙指す車窓 曙光にストケシア

 広州公園前[立占]より,二号線で初めて南行す。7時40分。
 目指す目的地は12駅先の終点・広州南。
 立ち客の少しある程の混雑。減る気配がないどころか江泰路でまた増えた。広州南火車[立占]を目指すらしきデカい荷の客も多いから,人の数より混んでる。にしてもそれほど南部も通勤先になってるのか?恐るべきは広州のこの拡大ぶりです。
 それにです。広州南[立占]は西南方向行きの高速動車専用駅。この広州-長沙という路線のニーズが今一つ飲み込めてないけど…そんなに人が移動するベクトルなのか?だとすれば,長沙は広州経済圏にその遠郊として組み入れられつつあるということか?――単に政策的な内陸発展施策の一つかとイメージしてたけど,政策立案側の頭にはどういうイメージがあるんだろか?
 25年ぶりの長沙になる。
 前回のイメージは砂ぼこりの中を汗だくで歩きまくった…というものですが,全く違う貌を覚悟した方が良さそうですね。

南[立占]や土煙挙げクレーン車
 地鉄乗客のほとんどは,結局,南[立占]で降りました。つまり新幹線の乗車客。
 新幹線[立占]を,蘇州北の閑散,成都東の作りかけ模様と見て来ましたけど,この広州南はその先の段階らしい。──利用客は既に待合室を埋める規模です。行き先も武漢から仙頭まで南部一円,遠くは西安まで表示されてます。(ここも南西方向に入るのでしょか?)
 わしのプラットフォームは1A。20番台まであるが…これ全部,動車用なのか?日本のは上野でも10程度だったと記憶するが…横に新幹線一本分ほどはゆうにある。
 8時50分,乗車開始。荷物のX線検査はあるしほとんど飛行機乗機続きのノリです。
 列車は7両,中は横5席で,10センチほど背もたれが高い以外は日本の新幹線…というか本当にそのまんまなんだけど。
 隣に赤ん坊を抱えたお母ちゃんが「席を代われ」だの「背もたれ倒すな」だの周囲に要求しまくった挙げ句,激しい貧乏ゆすりを続けてる。
 まさにまさに!…さあ!楽しい中国列車旅行の始まりだ!

 10時50分過ぎ,2つ目の駅。この町も…というか村としか思えない駅でっせ?
 山がちな地形と長い長いトンネルが,延々2時間続く。
 この2駅を作る意味が疑わしい。確かにそれなりに乗降はあるけど,1時間に1駅止まらなきゃいかんと思ってでもいるのか!?
 ただし,今のところケータイのアンテナは立ちっ放しです。
 それはいいんだけど…余りにも車窓がつまらん。トンネルとほぼ無人の谷間の繰り返しで疾走感も爽快感もない。
 曇りで見通しも悪い。
 今「下[立占]長沙」と放送がありました。盛り上がりのないまま着いてしまう模様。
 もしかしてとんでもない辺境へ行こうとしとるんか,わしは?中国の発展は沿岸部のみ,という見解は少し前にはよく聞かれた。長沙は25年前のあの砂ぼこりの街のままなんじゃないか?

長沙着 超さびしいか? 調査中
 11時55分,動き始めた長沙の地下鉄の中にいます。
 まだ客も多くはない,空調の効いた…まさに象徴的な現代空間。
 案内板の表示を見てすぐ慌ててガイドブックをめくるけど,そんな記述はない。まあ地下鉄は今,中国の省都クラス以上の街ならどこでも検討中みたいだから,大したニュースバリューではないからな。
 ただ中国の街はでかい。地下鉄かトラムみたいなインフラのあるなしは相当に旅行形態を左右するので,先に確かめに行く。
 確かに,ある。
 発券機前でルートを確認すると…「H」字をイメージしましょう。左の縦棒が,長沙の市内西部を南北に縦断する川。右の縦棒は鉄道線路。
 横棒は五一路。右縦棒の鉄道駅(長沙火車[立占])と,左縦棒の川にかかる橋(湘江一橋)を結ぶ幹線道です。地下鉄ルートはこの下を通って,「H」の両横棒を突き抜けて「└H┐」みたいに伸びてます。「┐」の下側の端が,さっき後にした長沙南[立占](新幹線駅)。
 目星の宿や散策エリアの位置をチェックすると,ほぼこの地下鉄ルートで近くまで行ける。
 プリペイドや一日フリーのカード類はまだないらしい。今手にしてる切符は,窓口に(適当に)4元突き出して,(適当な)「迎賓路口」という駅名を言ってみたら買えました。
 この駅は9駅目。7駅目が「長沙火車[立占]」だから…大体この辺じゃないかなってとこで。
 と?──車内,いきなり大声で歩いて来る爺様あり。物売り?…でもなさそうだし,単に変な人?…なぜ?なぜにわしの前で止まる?誰かお願い,連れてってくれよう!?
 しかし──そこはそれ,漢人麻辣ワールドにそんな甘さは有り得ない!日本人なら目を合わさないように視線を泳がせる所で,全員が全員,貪欲な好奇心丸出しの視線をマジマジと注いでいまして…助けなど期待値ゼロ。
 それはそうと。「光達」の次の「南[立占]」を経て計19駅の路線です。川を潜れたんだろうか?それとも橋上を渡るのか?
 あと「…広場」駅が4つ,公園が2つ。何か変わった印象の地下鉄です。
 結局,20分かかった。長沙火車[立占]でやっと
立ち客が出る。──立ち客に押されても爺さんは目の前から動かんけど。
 次からの「袁家[山令]」「迎[ウ/兵]路口」「芙蓉広場」「五一広場」辺りが使える駅だろうか?
 爺さんの陰から覗く人の顔が…丸い!特に女子?南方系の顔つき?
 爺さんを逃れて(じゃないけど)「迎賓路口」で下車。方向の見当がつかんので適当な出口から地上に出る。
 その途端,元気な小学生の大軍が歓声を上げながら押し寄せてきた。
 さすがワシだ。いきなり大人気である。
 …んなわけはなく,昼飯から引き上げておそらく学校に戻るのであろうガキどもの群れでした。大通りの道端。彼らの流れに逆流して歩くと,その源泉に路端の飯屋が現れます。学生の店っぽいけどとにかく繁盛店でちょうど空いて来た頃合いらしい。──宿も見つけてない状況ながら,とにかく長沙第一食としましょう。

▲麒麟蓋馬飯量販自助快餐の初回長沙飯

 しかし…この大通りが五一路と思われるんだが,これが…25年前の記憶にある,あの埃っぽい道なんだろか?
 もう全く,まるで別の街に変貌してます。
 片側3車線,路肩を広く取った百米道路風の五一路に自家用車がビュンビュン行き交う。整然たる街路樹に縁取られ,電光表示付きの公共バスに粛々と乗降する人々。両側に布陣する高層…とまでは言わないけれど数階建てのビルディング群は,少なくとも日本の地方都市並み。
 学生軍団に置いて行かれたわしは,露天のテーブルからそんな景観を呆けたように眺めるのみ。
 12時半を回った自助快餐。記録する店名かは疑問だけど「麒麟蓋馬飯量販自助快餐」
 一飯16元也。
 ①②③
  ④

①魚頭の唐辛子煮
②インゲンの赤唐辛子炒
③ナスの紅油炒
④ピーマンとベーコンの大蒜炒
 初手からなかなか強烈!しかも初手から難物と思われた①刹椒魚頭を食えた。唐辛子のみじん切りに埋もれとるコレがそうなんだろ?
 ①は大蒜で甘酸っぱ辛く煮た魚頭。淡白ながらいい甘酸っぱさです。しかしこれ自体,隠れた唐辛子がジワジワ効いてきます。
 ②は辣子鶏のインゲン版というところ。赤唐辛子がダイレクトに辛い。
 ③は辣油でがつんと来る。いいナス料理です。
 ④は,ベーコンってのが意味不明ながら,唯一唐辛子辛くないな…と安心してたら,これがじわじわと大蒜辛い。その後ろにはやはり唐辛子の辛さが控えててこれまたじわじわと…ヒーッ!
 違う辛さに気を許してるうちに口が燃え上がってる。あの四川の常道を,きちんと抑えた辛味使いなわけでした。
 最初から魅せてくれるやんけ,長沙!というか,一食目にして口の中は大火事です。
 それから予定通りに7天連鎖に入居。地鉄[立占]からもそう遠くはない。滞在3日間分,3連泊を入れましてと。

曇天の濃ゆき湖南や留紅草
 この宿では洗濯はしてくれんらしい。かと言って熱湯も出ない(熱湯消毒での洗濯もどきが出来ない)みたいだし…とりあえず五一広場から歩行街に行ってみよう。3日間過ごせる街なのか…未だ心配は残る。
 室外温度でも少し寒い。昼はいいとして,夜は寝巻きの替えにも長袖をわねばならんか?
 もう一つ駅に近い最寄り駅,袁家玲から乗車してみる。やはりこちらは少し遠い。3駅乗る。
 地下鉄は席なし。隣には,両腕を失ったお爺さんが立つ。長沙作戦という歴史もあったんだったなあ。とか思ってたら,目の前のお姉さんがさすがに席を譲る。そこへおばはんが飛んできて座り込みかけるも…さすがに席を譲る。うーんこれは問題です。中国人も礼儀とか良心とかに侵されつつある模様。
 車内アナウンスは中国語と英語の2種。もちろんケータイは3本立ち。切符はプラスチックのトークン。
 総じて,成都に似た新興の大改造直後の空気です。内陸部の遅れて始まった都市改造はこんな感じなんでしょうか?長沙の場合に特に感じたのは,独自の商業群を生み出すところまでは行っておらず,昔ながらの小店舗と外から入ってきた資本が奇妙にモザイクを成してる。
 いい店の当たりを付けるのみならず,街歩きの勘がどうも働かず,最初はやや戸惑いました。その意味では合肥に似た肌触りの街です。
 おそらく中国各地に筍の如く生まれてるこのタイプの街は,これからどう姿を整えていくのでしょうか?

▲長沙豆皮店の臭豆腐と豆皮

 旧市街。先ほどの「H」の左下部分に当たる。五一広場から南に伸びる黄興歩行者へ。
 16時,まずは長沙豆皮店に入る。
臭豆腐150
豆皮 150
 まずまず正解だったと思う。
 観光客は少ないし,メニューも完全に地元志向。というかかなり汚い…もとい!庶民派のお店です。なんでここがネットに載ってたんだ?
 臭豆腐は真っ黒な炭のような見かけで…というのは聞いてた通りだけど,中は意外に普通な白。そこを味わえば微かに臭み,微かにヌルリ感があるんだけど,黒焦げとその味覚がどう繋がるのは分からない。ただ,台湾の臭豆腐と大分感性が異なる。
 豆皮は,つまり厚揚げの外側だけみたいなもの…なのか?固くてゴツゴツで,どうも味わいにくかったんで…何かよく分からんかったってのが本音。

▲成師伝臭豆腐
臭豆腐

 その近所に,やっぱりネットで見つけてた店の前を通りかかってしまった。
 大きな造りの木材建築で,つくりもえらく古風。えらく豪華チックな雰囲気にも見えるけど,中国本土では結構大衆的なとこの事もある。勘としては後者か?
 16時半,店名:向群鍋餃。
鮮肉鍋餃
冷菜 500
 利用はし易い。角地だし,地元民は餃子をごっそり袋につめて持って帰る。豪華チックな雰囲気の割に,やはり日常使いのお店…を行き過ぎて餃子配給センターみたいなんですけど!? 
 と思ったんだが──これが実際かなり美味いんである。
 餃子は鍋餃。中国では実はかなり珍しい焼き餃子です。このカリカリしたクリスピー感は,ほとんどスナック感覚か?けれどその後ろから,大蒜辛さ満点の豚肉具材が強烈に自己主張して来る。これが良い。
 地元民らしき人たちは,この餃子を食いながら何かの汁を啜ってる。メニューにどうしても見つけられんかったんだけど,あれは一体何だろう?
 と,こんな感じに,長沙再訪初日はえらく謎に謎を重ねたような歩みになりました。うーん,こりゃあ…あと2日わしはどうするんだろう?全く目処が立たないまま帰路についたんでした。

1230 麒麟蓋馬飯量販自助快餐
16元600
1600 長沙豆皮店
臭豆腐150
豆皮 150
1630 向群鍋餃
鮮肉鍋餃
冷菜 500
1645成師伝臭豆腐
臭豆腐200
1700起司蛋[米ソ/王/心]
宮廷桃[/木酉]200
[今期累計]
消費1800/収入1800
[今期累計]
    /負債1142

▲実は初日は「蒸菜」を見つけられなかった。2日目にこいつに出会ってからが,実は──いよいよ長沙本番となったんであります。