[前日日計]
支出1500/収入1335
/負債 165
[前日累計]
/負債 591
§
5月2日(月)
0741東城酒楼
ポーレイ
筋肉煮
腸粉
リンゴ饅頭 250 60元
0923盈建酒楼(4楼)
ポーレイ
力康鶏蛋[テヘン+達](特)
家郷煎辣椒(特)
盈建蝦餃皇250 53元
1400坊米郷漁(清暉園)
営餐A 鼓汁排骨飯+虫草花[火屯]痩肉湯550 33元
1800仁信牛[女乃]老舗
双皮[女乃]100 8.5元(1150)
1830牛魔王牛雑
牛雑100
1850老四川西舘
肥腸麺+四川炒手400 前日日計]
支出1500/収入1650
負債 150/
[前日累計]
/負債 441
§
かくして我が中国旅行史上,最大級の災厄を見た日がやって参りました。ばんざーい!ばんざーい!
ようやく恐怖感を克服した…と言うと大袈裟ですが,鼓楼から軽やかにバスに乗りまして7時41分。東城酒楼へ。
ポーレイ
筋肉煮
腸粉
リンゴ饅頭 250
筋肉煮。
最期まで,何で煮てあるのかわからなかった。
何か,非常にありきたりで,しかし鶏肉そのものから香るはずのない香なのだけれども──?
一つには,唐辛子を想像しました。実は痛覚で感覚してるという辣を削り取って,その下に普通は隠れてる独特の青臭さみたいなカプサイシンの本当の味覚だけを取り出したら──こんな感じなんではないか?とも思わせる味覚だったんですけど,実は全然自信がない。
鶏筋の味覚がとてつもなく軽快なんである。
で,その結果なのか何なのか,やっぱり分からんのだけど,重みを感じさせる部分が見事に失せてます。ここまでさっぱりさせたら,作り手の心情としては何かプラスさせたくなるものですが,敢えて足さずに軽く出す。
あれ?こう書くと京都辺りのストイックな料理道にも思えて来ます。来ますが,それをああいう端正な味でじゃなくて,筋のコテコテの肉でやってしまう辺り,その辺こそが順徳的と言えるかもしれません。
腸粉。
はみ出してる葉っぱは,何とゴマの葉でした。これって…中華料理で使うものなのか?
ただし,最初は,ゴマの葉と分からないほど物静かな香りの出し方です。大葉か,知らない種類のセロリでは,と誤認したほど。下茹でを長くするとかして荒味を取ってあるのかと思ったけど,どうも違う。
鶏の筋肉らしきものが,ゴマの葉の間に挟まってる。これが歯応えとしても味覚としてもそのままでは高貴過ぎるゴマの葉を,私服で街を歩ける程度にカジュアルにしてる。
この例えでもう一つ言うなら──ゴマの葉のそのままではストレート過ぎる殺気を帯びた眼光を,鶏筋の軽快な出汁がサングラスとなって,人混みに紛れるくらいには庶民的な当たりの良さを醸してる。
つまり,そのままでは高貴にお澄まししてしまいそうな味を,あえて市井に和ませるために大きな努力を払ってるように見えるのです。何のために?とも思いますし,そういう遊びだとも思えますけれど,いずれにしても珍妙なアプローチです。
リンゴ饅頭。
生クリームを煮詰めたリンゴが覆い,それがさらに柔らか餅に詰まってます!──何とゴージャスな設計!
前2品より安心して,かつリンゴ・ホリックを驚喜させる一品。いわばリンゴ大福です※。てゆーか,何でこーゆーシンプルな品が,前掲の凝りに凝ったのの中に混ぜてあるんだ?
こういうのもいいですね。 うん,こーゆーのもいい!
※と手放しに喜んでましたけど,日本ではまだあまりない(事例:大彌のりんご大福)。レシピを見ると大抵はリンゴのジャム入りの大福みたいで,この東城のみたいなりんご果実の形のままレアレアで入ってるのは珍しいようでした。技術的には凄みのあるものなんかも?と後から思った次第です。
日差しがきつくなってきた。東城花園から305路で環市北路を一路北上,福盈酒店へ向かう。
何でこんなに公車を乗りこなせてるかというと,一度触れたスマホのマップのアプリにバス停表示,それをクリックすると出て来る乗降路線の使い方がほぼマスター出来てきたからです(早く慣れろよ)!これは中国のバス乗りにとっては夢のような機能で──何度も書いて恐縮ですが,ホント地図と格闘してた昔が嘘のようです。
公車は路地裏を通り抜けていきます。今新基路に入った。ここの市場も大きそうです。
9時15分,環市北路を西行。混んでさえいなけりゃ結構かからないものです。
▲盈建酒楼(4楼)のポーレイと力康鶏蛋[テヘン+達](特),家郷煎辣椒(特),盈建蝦餃皇 →盈建酒楼スペシャル写真集(個別写真)
9時23分,混み混みの一階に番号待ちの方々が並んでる。
ああやっぱり遅すぎたな…と番号のお札を貰おうとすると,札配りのお姉様より「一箇人?去四楼!」とのこと。なるほど,ラッシュ慣れしてるから東城より楽なのかも?
4楼まで上がりますと豪華なワンボックスが独占できました。給事のお姉さんたちも大陸とは思えないフレンドリーさです。これはひょっとして…バカ高いんじゃないか?財布は大丈夫なのか?
とにかく注文する。
ポーレイ
力康鶏蛋[テヘン+達](特)
家郷煎辣椒(特)
盈建蝦餃皇250
広州の清暉苑と同じ炭の下火付きのガラスポットでポーレイが出る。滋味豊かな茶葉です。いいお茶だぞ?…財布は?
しかもオーダー制。…おそらく百元は行かないだろうが,とやはり財布が気になります。我ながら,ほとほと貧乏性ですのう。
一品目,力康鶏蛋[テヘン+達](特)。
一口目でまず驚いた。ここはいい!東城並かそれ以上と確信して,即座に3品目を注文しました。
スゴいぞ!ネットでも順徳一と言う人が複数いましたが…聞きしに勝るぞ!!
このダンダーのレベルは,まだわしの不可知領域です。清暉苑のダンダーの高みを更新したと思う。
卵味が,卵味のままに完璧な満月として輝いてるのです。
単に焼くことで生臭さの層を打ち消してるだけじゃない。いや逆に,打ち消していないと言ってもいい。何を言ってるのか分かりにくかろうけど,何かの作用で卵の味覚が円まってる,という感じなんである。
卵味そのものは強く存在感を保ったままなんである。しかしクドミや臭みはなぜか消えて,柔らかい卵味が,初めからそうだった様のままにそこに立ち続けてる。
そういう,ちょっと理解しがたい卵の味覚の像が作られてる。
層自体を消さず,卵の香りも深みもそのままに,別の品種の卵になったような輪郭の転換を行う。って?そんなことがどうやって可能になるものなのやら。
魔性の完成度をひしひしと実感する,おののくべきスイーツだったのでした。
二品目,家郷煎辣椒(特)。
外観としては,よくママンがお弁当に入れてくれるピーマンの肉巻きにしか見えません。皆様もそうではないでしょうか?
だから,一口目で襲われる味は──卑怯と罵りたくなるほどの完全な奇襲攻撃。
青臭い辛さがドンと突き上げる。
辣というにはあまりに粗削りな辛味,広東には有難い青臭い野菜味が口中に飛び交う。爆竹を焚いたような賑やかな食感です。
これ本当に順徳料理か?
しかし──一瞬後に気付かされるのは,これらの暴徒たる味覚の中心に,静まり返った魚肉の淡白な味覚の鎮座。
ズバッと,剣豪が斬った男がモノも言わずにどっと倒れ伏すような,小気味よい図太い味覚です。
三品目,盈建蝦餃皇(精) 。
蝦味が強固に自我を主張する。
これが一番安心できる分かりやすさに最初は思えたけれど,味わっていくと,これはこれで決してありふれた料理に収めてあるわけではないようです。
塩麹か?
あるいは油漬けか?
とにかく何かしら,深い形で漬けてあると思う。
ただ漬けてあるのが唐辛子なのか肉なのか,どうも見当がつかない。ひょっとしたら腐乳が変わった形式で使ってあるのかもしれませんが,わしの知ってる腐乳の味覚には少なくとも合致しません。
これら頭を悩ませるばかりの難解な品々に,ある程度覚悟を決めてカウンターへ向かった。これは…高いだろ?カードが要るんじゃないか?
「イーゴン,ウーシーサンクワイ」。え──53元?
東城より安いのか?
牛展。
順徳の名高い釜飯の店として,その名がネット上に出没していました。
新桂北路と丹桂路の交差点南東角。開店時間と聞く12時近くに,何度も迷いつつたどり着く。人だかり?正午開店を待つ客の波ということか?
けれども,人だかりはあるのに12時を回っても一向,店のシャッターには変化が見られません。
通りがかりのオバサンが一言「休息一箇月!」
ええ~っ!わしも含めて人だかりがどよめく。去る者,しばし留まる者,しかし12時半が近づいてもシャッターはびくともせず灯りも煙も動かない。
無念!今回も仔飯に縁がない順徳なのか?
919路で一気に南東郊外のAEONへ直行。
どう行ってるんだ?あ,新桂路をまっすぐ進んでるだけか?今,大良路を跨いだ。
市内あちこちに「花園」が出来てる。シンガポールのみたいなのの巨大アパート版というところか。
初回にあれだけ歩いて行き着いた場所へ15分で着いた。あーあ。
持ってくるのを忘れてた垢擦りタオルをゲット。「擦(チャー:こする)的毛巾」(タオル)と言ったら店員さんが案内してくれました。
以前食べた順徳料理の店は満席。昼時だからな。
帰路につこうと外へ出ると,この周囲にニョキニョキと生え始めたもマンションに改めて目がいく。そうか,以前は工事現場だらけだったよな。凄まじい建設ラッシュぶりです。
AEONの西門からは311か319路が清暉園行き。道順は例によって分からんが。
昨日から公共自転車が借りれないかとあれこれ調べてたけど,いずれにせよあんまりうまく動いてはいないらしい。カードをかざして動かないから立ち去る人の姿を何人も見た。バス路線が分かればまあ無理して探すこともないやね。
しかし…日差しが凄まじい。日焼けでやや疲れを覚え始めてます。一度宿に戻るか?朝からマップアプリをフル稼働なんでスマホの電池も4割を切った。
でももう一度,ダメ元で…。
319が来た。乗車。三度目の正直,陸記を目指す。
▲ちょっと小粋な花束通り。実は陸記への通り道で,後から見れば酸っぱい通り。
14時ちょうど,坊米郷漁(風山店)。
この店の事を書いてるのは,その間に目指した店には入れなかったわけである。なぜ食えない,順徳釜飯!
それはともかく──転んだのが幸いしたのである。
営餐A 鼓汁排骨飯+虫草花[火屯]痩肉湯550 →写真
AEONの店は場所柄あんまり味に重きを置いてなかったんだろか?外しまくったのでブラブラ歩いてるうちに,あれ?こんなとこにあるじゃないか坊米郷漁?という感じでふらりと入ったのに──以前も同じようなのを頼んだ記憶があるが…全然衝撃度が違った。
無茶苦茶スゴいじゃないか!
湯。
ちょっと例えがたい味です。四神湯を脂っこくしたような,野菜,多分ごぼうか朝鮮人参みたいなのに鶏の痩肉の出汁をブレンドした感じの摩訶不思議な味わい。こんなのを十元ちょいで出してていいのか?
湯の肉団子がまた…初めはシーチキンみたいな味を感じたけど,味わううちに肉の味覚に転じてきた。一体何で出来てるんだろ?痩肉は別途入ってるから…何なんだろう?
排骨の滑らかな味わい。この軽い,爽やかな感じが,スペアリブでどうやって作れるんだ?いやでもスペアリブでしか出せない味覚ではあるな。
半年後,この年の秋に福州など中国南東海岸で湯文化の衝撃に打たれることになるのですが,坊米郷漁の湯は内容もですが食器の形や給仕法がすごく福建的でした。南東海岸の古い食法には広く共通項がある…というようなことがあるんだろうか?
18時。牛乳プリンの有名店のうちマイナーな方にも行ってみました。仁信牛[女乃]老舗。
双皮[女乃]100 8.5元→写真
おおおおお!口の中でヘビメタがギュイ~ンと来てるような心地!圧倒的な重低音のミルク臭!!
民信のプリンは土産物屋でも売られ始めてますが,ここはやや黄昏たれた雰囲気で落ち着いて食べれます。店員さんもごく普通,民信みたいに得てして人間扱いされないってこともない。居心地も雰囲気も抜群。窓からは木洩れ日が心地好い。
それが味までも──明らかに民信より旨い!
人気店のレベルの劣化現象でしょうか?それともわしの舌が甘いんでしょうか?ただ自分的には,次に行くとしたら断然こちらです。
この街はまだまだ探せばいい店が出そうなのになあ…と鵜の目鷹の目で歩いた18時半。この店にも妙に人が入ってるぞ?と飛び込んでみた牛魔王牛雑。
牛雑100
同じく18時50分。ほう,こんなところで?よもや広東四川の名店か?と乱入した老四川西舘。
肥腸麺+四川炒手(要辣)400
仁信で受けた衝撃からでしょう,ちょっと 無断弾を撃ち過ぎました。あるいはこの辺から旅行運が急降下に入ったということなんだろか?
牛雑は香港やマカオの街角レベル。大陸では珍しいんでしょうか?
老四川は,外からはそうは見えなかったんだけど,チェーン店らしい。良からざる意味で本場の味で,広東四川の気配は微塵も。
どちらも旨いんですよ。ただこれ順徳で喰わねばならんか?という…もやもや感に流されるうち,国際的爆発事件勃発の時は刻一刻と近づいていたのでした。
我が旅行歴中でもなかなかに衝撃的な夜でした。
何時だったのかも覚えておりませぬ。派手に市内をうろついた疲れから,ベッドの上でうとうとしておりますると──
異音も異臭も,何らの前触れもなくそれは始まりました。前触れがあったらなおイヤだけども。
突然!!
ねわわわ~と,部屋に天井から膨大な水流が注ぎ落ちてきたのであります。農作物だったら大喜びの豪雨でございます。されど我は農作物にぞなかりかり。
一瞬茫然としましたが,そんな暇はない。うおおお~と荷物をまとめて廊下に出でたりて,とにかくフロントに連絡して…という動きが我ながら流れるようによく出来たもんだと感心いたしまする。
部屋にとって返した頃には廊下まで水まみれ。当然ですが部屋には何点か忘れ物もしたようで,その中に充電中のスマホも含まれてたようで…とにかく,わーわー騒いでたら別の部屋をあてがってもらいました。
新しい部屋の静寂がかえって耳に響く。ドアを閉めるとさすがに…不覚ながらしばらく自失というか震えが止まらない状態でございました。
しかしながら,うちひしがれてる場合じゃない。タバコを2~3本吸ってから,現状把握に着手。
なぜって──当然こういう時のケアが十分に行って頂ける国では御座いませぬから,この中国という場所は。
それどころか,この後,日本語の片言が出来る人が来て,本当に部屋で何か妙なことしなかったか?スプリンクラーに負荷をかけるようなことは?と職務質問をかけられる。これはなかなか恐怖の答弁でした。この国でこの手の弱みを見せたら,それこそとんでもないドツボにはまりますので──最後の一滴まで気力を絞りまして「断じて何もしていない」と慎重に言葉を選んで主張。あれやこれやと質問が続きました後,とにかく帰って頂けました。
よし。まずは身体。
かなり寒気がしてる。空調を切り,バスタオルとバスローブの全てを装着。湯を沸かして茶をたっぷり飲む。人心地がやっと湧いてきた。
次にびしょ濡れの所持品。衣類──部屋一面に展開させて乾かそう。酷い状態のものにはドライヤーを当てよう。特に靴は,行動時の疲労感に直結する。入念に。あと,避難行動時に着ていたジーンズがたっぷり水を吸ってる。この水をとにかく落とそう。手で絞ってから,風通しの極力良さそうな場所へ吊るす。
あとは機械類。こちらはまず被害チェック。ほとんどは防水の袋の中で被害なし。ただ,充電中だったスマホが──
ドライヤーとかあてて,とにかく乾かす。何度起動させても,なぜか音楽が自動で鳴り出す。何だこ(以下怒りのあまり?移行時に破損)