外伝01-3மதுரை【Crazy for Meals Fase-2】Last day:まだまだマドゥライ滞留

[前日累計]
    /負債 653
[日計]
消費1800/収益2000
負債 200/
[本日累計]
    /負債 453

▲ミナクシを回る度にひっかけてたコーヒーショップ

 マドゥライ滞留最終日,到着から4日目になります。
 前回も変な呵責を感じつつ長居してしまった街ですが,ここは…少なし日本の観光客の皆様にとって決して居心地のいい街じゃありません。たゆたえるカフェも何もない,猥雑な雑踏だらけの街です。
 けれど個人的には…どうにも離れがたい気分になる,この引力は一体何なんでしょう?
 ミナクシに入り浸るのは東門からにしました。その前に…と腹ごしらえに適当な食堂に入る。
 8時半。NEW MANORAMA VEG.(東門前)。
TIFFIN 400(50Rs.)
TIFFINのお点前
「ミルス・レディ」という看板と同じ雰囲気で「ティフィン・レディ」という表示があちこちにあるので,前から気になってた。何が出るのか,とりあえず頼んでみます。精一杯当たり前そうに「エーク ティフィン!」という感じで…。
 すぐさまテーブルに置かれたのは,やっぱりバナナの葉っぱ。
 そしてドーサとヴァダイがドン。さらにサンバルがドバッ。それをバナナの葉っぱのうえで…こねるの,これ?
 皆さんそうされてます。インド風クレープとドーナツと信じ込んでたドーサとヴァダイ。せっかくパンみたいな形状になってるこれらを…結局こねてグチャグチャにしちゃうのか!?それならあのクリスピーさなりパン香なりは何のため?
 という戸惑いは置いて,とにかく同じようにコネてみます。
 ほう?ほうほう?
 サンバルがクレープに染みて,うどんの上の天ぷらみたいな情けなさを帯びた状態は…まあそれはそれで確かに旨い。旨いんだけど──それでいーのか君たち?
 東門からミナクシ突入。3回目にして初めて50Rs.外人チケット購入。
 入場料がかかる千柱堂に入ってみる。10時丁度,Villar Mandapam。まあまあかな。確かに荘厳で,Hero(中国映画の方)の始皇帝の戦いの場面みたいではある。
 そして御本尊,ミナクシ神殿 Meenakshi Amman Shrineへ。まだ比較的空いてると思ったら,結局1時間半並んだ。余程途中で帰ろうかと思ったけど…要は,神殿は方形の石棺の中にあり,さらにその中の石棺に行列が入って行き,さらにその中の石棺の中の女神の前のオヤジが流れ作業的に額に赤いのを塗ってくれます。はい終わり。
 うーん…。なぜ並ぶんだインド人?
 そんなに霊剣あらたかなんだろか?まあ宗教ってそんなもんなんだろけど。
 並んだことよりインド人の割り込み抜かし小突き合いと戦った方で疲れて,サブの位置付けらしきスンダレーシュワラ神殿の後ろ側の回廊でしばし休む。
 この辺りには小さな祠がいっぱいあって,人々が静かに祈りを捧げてる。ヒンドゥーの神様たちは暗い洞窟の奥にひっそり安置されてなんぼのもんらしい。ただ,こういう場でその洞窟の奥に向き合ってると,宇宙空間にいるような不可思議な浮遊感に誘われる。
 時折,祭神の前に牛の像が置かれてあることがある。あのふてぶてしくも平成な動物の眼がそんな空間を睨んでる。
 それをヒトが見て,というより倣って,宇宙空間への視線にしばし同体化する。
 そういう意味では,ミナクシの三重ボックスの中心なんてのは,例えば原子核の中に連れて行かれたり,ビッグバンの瞬間とかに居合わせさせられたり,そういうようなあり得ないんだけど非常にリアルな「視点」に立たされてたような気にもなる。
「マンディル カハン?カハン キ マンディル」という最初の旅行で覚えた歌を思い出してました。──お寺はどこですか?いえ,どこでもがお寺です──
 寺院というのはその文化の原風景を,生々しく切り取って封じ込める装置。その切り取り方が,インドの寺は,危険なほどリアルなんだと感じる。危険なほどに生々しく抽出された闇を封じた筐。──3300体のギラギラ極彩色の神像が,何重にも連なる筐の,その中心にあるのも,ただこの闇一つ。
 これだけの俗の外界とは別に,こういう聖界を持ち,それを何千年と──それはドラヴィダの神がアーリア人の神と無理やり結婚させられたり,そういう有形の物語がいくら変容し果てようともようと,とにかく脈々と祭祀の核心に揺るがず座り込んで動かない。その存在は,実体というよりも,この土地が途方もない彼方に向けた視線そのものであるのでしょう。
 小さな祠の前に胡座をかいて,祈り続ける青年。
 その脇で,記念写真のポーズをとるこしゃまくれたお嬢様。
 そしてそれらを棒漠と見やりつつ立ち尽くす極東人。
 そうした合切を収めたハコは,この土地の神様たち3300体の乱舞にヒトを惑わせつつ,常に街のどこからでも見えている。そしてその核心の深みへの一歩を人々を挑発し続けてる。
 それで好い。それだから好いんだ,と思えた大晦日の朝でした。

 JIGARTHANDA はよく探すと,西参道沿いにもちらほら有りました。
 この最終日,そういう発見が何度となくありました。え?こんなところにこんなものが?という。慣れて来て,二次三次の情報を脳が欲しがって来るとそうなる?というだけじゃなく,この初見では猥雑なだけの街の波動に同化して初めて観ずるものがあるということのような気がします。
 BHIMAの筋の先まで歩く。正午前。SARAFATH JIGARTHANDA 。50Rs.。
 これも,POTHYSを再度探検した後,近くで見つけた店でした。POTHYSと言えば──気づけば街の相当の人々がここのロゴ入りの手提げ袋を愛用してるみたい。
 この一杯では,アーモンドミルクが明瞭に認識できました。この中に何か…八朔みたいなカスカスした柑橘味が玄妙に溶け出した味。でも八朔よりはるかに,肉々しいというかジューシー。
 やっぱり不思議な味覚には変わりありません。味わえば味わうほどに。

 正午のHOTEL GOWRI GANGGA VEG.(駅前)を再訪。
MEALS 550(1050,70Rs.)
 本店支店を合わせれば4度目。この駅前店は2回目。
 こちらはLIMITじゃない分,ほんの少し豪華みたいです。
 おかず3種は芋カレー,おからみたいなのの他に,スパイスの薄いシチューみたいなのが付きました。付け合わせはアチャールのほか,豆の炒ったようなもの。
 このシチューがまず面白い!白い色だし見かけはまさにシチューで,バナナの葉に乗ってるのがムチャクチャ違和感なんですが,味わえば…なるほど決して洋風じゃない。クミンやコリアンダーを入れた立派なカリーで,サンバルにもよく合います。…メジャーなものなんだろうか?それともシチューのつもりで作ったもんでしょうか?
 絶品サンバルの後の迷いが大きくなった。向かいのオヤジが頼んだ黄色いヨーグルトみたいなのをかけてもらうと水っぽくなり過ぎて,慌ててライスを追加。しかし…旨い!
 このオヤジ,このステージの後半戦で小皿のダヒをかけたぞ?ヨーグルト×ヨーグルトの波状攻撃か?旨そうだぞ?マネするぞ?
 うん!ダヒとこの黄色いのは確かに合う!ヨーグルト味が強まるだけじゃなく,何かが交錯してものすごく重厚な味覚になってるぞ?
 しかし…これは水っぽさに拍車がかかったぞ?手では掬えないしこのままじゃバナナの皿から垂れちゃうぞ?
 再度手を上げてライスを追加してしまったわしは,まだまだミルス食い一年生(正確には4日)でありました。

 一寝入りしてミルス2食目。──今回はこのパターンを取ってるからか,新しい靴で来たからか,今回はこれだけ歩いて足裏の豆が出来てません。宮田タマキングの言う通り,豆対策の初歩はまず頻繁に乾燥させることなんでしょうか?
 15時。Hotel Sree Sabarees PURE VEG。
Meals 50
 おかず3種は芋だらけ。されどどれも美味い!煮っ転がし,カレー煮,芋カレーという感じの違いなんですが…やっぱり同じに聞こえるか。
「ロッサム」はやはり汁のことを指すらしい。じゃああの薄黄色いヨーグルトスープは何て言うんだろか?
 とにかく…サンバルと芋が美味い!なんで,どうしても最後のダヒのステージにライスが足りなくなってしまう!ああ~これはまたしても一年生的な展開だあ!
 原因はただ一つ。サンバルが旨過ぎるんじゃ!何なんだこの液体は!!
でもこの一食でミルスはしばし食い収めになります。また会う日まで。

 そのまま一路東へ。何度か迷ってたどり着けなかったパレス(Thirunalai Nayakkar Palace)を今度は本気で目指してみました。
 東側の大きな道に出て南行すれば行けるはずなんですが…。
 とか言って,結局この日も迷ってしまいましたが──半ばで白人団体様がサイクルリクシャの群れをなしてすれ違って行ったので方向に確信を持てて,とうとう行き着きましたパレス!
 で着いて何したかって言えば,門の前でタバコ吸って帰ったんだけどね。あんま中には興味なくて…。

▲路傍に何か傘地蔵

 そんなこんなでミナクシから遠く離れてしまったので,元々通るはずだった東側環状道路まで戻って北行。その途中,第三のジガルタンダ店を発見。
 その名もFamous jigarthanda- Be healty!Drink healthy!!分かりやす!時は16時。
 ジガルタンダ 50(1650,25Rs.)
 さらに安い!
 かなり大衆的な設定の店らしく,通りがかりの皆さんが(場所的にも巡礼が通るとこじゃないから)紙コップでガンガン飲んでく。
 確かに──普通に飲める軽快な甘味。あのカスカス感もやはりありますが,何となく,ここのには沖縄のげんまいを思い出しました。
 この店のサブコピーはそういう意味でしょう…か?

▲玉ねぎロード

 東側道路をしばらく行くと,玉ねぎの山がヌボウッと連なるエリアになりました。何で?
 この玉ねぎロードを延々歩いていると,ふと気づけば東門に続く市場道に出てました。どこをどう歩いたことになるのか,やっと本来のルートに戻れて嬉しいような淋しいような。  
 西へ進みましょう。黄色いテカテカ山が並ぶ交差点へ。こちらはターメリックの専門店のならぶ通りみたいです。このう〇こ十字路…もとい,うこん十字路を気紛れで北へ折れました。
 すると,傘を差したガネーシャが並ぶ小径を過ぎました。傘ガネーシャ小路と命名。
 この東門外画は,そんなこんなでなかなか楽しめるエリアでした。
 ミナクシの配置は正方形ですが,この東側には市場になってる遺構が突き出た形で伸びてます。つまりこの部分も含むと,ミナクシは東側に突き出たホームベース型の区画を持っている(いた)と言えるわけで,普通そういう方向性のある筆は何らかのベクトルを持ちます。要するに,ミナクシの古来の参道はこの東側だったということ可能性があるようでして──言わば,日の出に向かう宗教戦艦という形象イメージが浮かび上がるわけです。
 そうだとすれば,この東側方向の三角形部分が濃ゆい街であることは当然。──おそらくその反対側に駅があるのは,人家が少ないから鉄道を通しやすかったんだと思います。
 なんでこれに最終日になって気付くかなあ…。まだ青いねえ。

▲うこん十字路にて。お供え物らしいけと,どうもマンガに出てくるう〇ちに見えてしまう物件

 16時45分,北東角そばのスイーツ屋にたどり着きまして,瞬間的に今日のミタイをここに決めました。
 英語表示のない店で店名は読めません。ドリンク,豆菓子,ミタイ,洋菓子の4コーナーがある店。
ミタイワンボックス250(1900,120Rs.位)
オレンジ輪っか
ブラウン揚げ
ごまオレンジ
黄色いキューブ
白いキューブ
 何度か通ってその都度いっぱいだった店ですが,最終日だし,4コーナー中,とりわけミタイのケース前が混み合ってるし,とても指差し注文出来る雰囲気ではないので,ガラスケースの上に積んである箱を勘で買いました。
 スリクリシュナといい,こういうブランド店があちこちに出来てるんでしょうか?
 英語名のないこういう店の出現はインドの草の根資本主義が相当進んだ証査なのかもです。
 美味かった。ただ,非常に庶民的に美味いんであります。
 スリクリシュナの上品さ,ケーキセンターの厳かさとも違う,生活者のためのスイーツ。
 オレンジ輪っか,ブラウン揚は,屋台でよく売られてるあの嫌らしい甘味を,ギリギリのところで味わい深さも持たせるコントロールが絶妙でした。そういう微妙な所で,まだ食べたことのないミタイだったんです。
 圧巻は…白と黄色の基層部に使われてたややグレイの部分。白のようにシンプルでなく,おそらく黒糖を混ぜてあるんでしょう,ものすごい複雑で,かつしっとりした味わいがありました。
 シナモンすら感じとれません。ザラつかずスッキリしたサラサラの食感。
 それでいて見事に奥ゆかしく形成されてるこの甘味を…何て言えばいいんだろう?
 インドの食は変貌しつつあります。かつて「禁諭の薄いパキスタンの方が旨い」と思ってたインド料理は,禁諭を持ったまま資本主義化することで,どこかへ向かおうとしてる。
 ミルスにしても,大衆食堂的なゴウリガンガの味からスナック感覚のスリサバレスの味へ,おそらく人々の嗜好は移りつつある。
 ミナクシの戦艦イメージがダブります。この国の巨体は,碇を上げた今,どこを目指そうとしてるんでしょうか?

 宿への帰り道,Bhimaの通りの途中。大鍋に白いものを満たした小店を見つけた。懐かしい佇いにハッとしてメニュー表示を見ると…あるじゃないか,ラッシー専門店!
1730 J.B.CHOUDHARY
ラッシー100(2000,30Rs.)
 初回ころに惚れた荒々しいミルキーさではなく,かなり洗練された味わいでした。ただし酸味は日本のより遥かに尖ってる。キツいというより瞬間的にピリッと際立つ。高知のひまわり牛乳タイプのヨーグルトです。
 一店なので自信はないんですが,ヨーグルト(醍醐)の嗜好もまた根っこの所で変わりつつあるのかもしれません。
 ラッシー屋の路傍に大晦日の残照。

▲ 街中に立呑コーヒーバー。飲んでるオヤジたちの風情が何か小粋でよろしいかと。