防府という街は,街並みで有名という訳ではない。
なのにここは,角を曲がると「えっ?」と背筋を正したくなる佇まいに時折出会す。
駅の観光案内所のレンタサイクルを駆ってたまたま通った──「こんがりパン工房」から直接「ロアール」へ抜けようとした道すがら──はっとする界隈を通った。それで「シェモム」からの帰路,同じ辺りをうろついてみることにした。
防府の元になった古い港町,三田尻でした。
先に挙げた括弧の名称は全て食べる店です(特にシェモムは隠れた名店!)。グルメのポイントを攻める利点はここにもあって,つまり観光客が普通通らないか,情報からでは浮き上がって来ない場所を偶然に通れる。その通過時に鼻さえ効けば,その未知の場所に入っていける。
桑山中学校交差点から185号線をまたいで東行。
市街地のあるJR防府駅と海の間には,桑山の低い丘陵地がある。交差点はその南西の山裾に当たります。
1531,東北角に法界と書かれた方形石と地蔵。
1534,県指定史跡「野村望東尼終焉の宅跡」及び墓の表示。桑山の南山裾にあるらしい。──後日調べると幕末の勤王党の尼僧だったそうで,高杉晋作を匿い,その後流刑になった姫島から晋作に救出されている。
※ 山口県史跡かわらばん指定文化財[防長風土注進会]/野村望東尼終焉の宅及び宅跡並びに墓
桑山の南麓はなぜか地蔵だらけです。
1535,いつも山裾を越えてた地蔵だらけの道をまたぐ。写真は南の入口,大師堂西辺りですけど,防府駅側へ抜ける細い道にはおびただしい像が並んでます。稜線に位置する場所には大楽寺という寺があり,ここの参道に当たるようです。水子供養のものもありますけど,それだけとはどうも思えない。
でも今回は東へ。
1538,松原町2,平野機工前。この辺りにしよう。南東に右折。
1541,スーパー川口屋。南へ右折。
▲華浦一丁目辺り
◇ポイント:GM.
空気が変わってきた。
華やかさはない。うらぶれてるのに生々しく生気がある。
東に明覚寺。
南に煙突。
▲十字路の古い標識
◇ポイント:GM.
小泉歯科医院南西の十字路に古い標識。左右に××とあるけど読めない。華浦一丁目と住所表示。
──Googleマップではこの十字路から北西にも北東にも道に「萩往還」と書かれてる。旧道の屈折点,ということはかつての盛り場だった公算が高い。
でも今は,極めて閑散とした十字路です。この碑がなければ通過してしまいそうな場所。
十字路を右の「かみかき」と読める方へ。道路にも萩往還と表示がある。住所表示は三田尻本町8。
不思議な街です。オーラはあるのに見た目はしごく普通の商店の並び。
ふじもと前辺りで北へ折れる。
すると老松神社とあるT’字の突き当たりでぶつかる。参道につながると言ってもいい形です。1553。
近寄りがたい神気です。
ここはどういう場所だろう?
老松神社自体は南と東を堀で取り巻かれている。筆の形からして西と北にも堀があり,城塞のような構造だったと想定される。
T字手前右手,つまり東側には西法寺。奥手西側には曹洞宗正福寺。その西は先程の明覚寺がある。
東側には毛利藩公館だった御茶屋※。つまり江戸期には官庁街だったわけです。
ただこの配置は,老松神社を政治的に封じ込めるような形状です。
※ やまぐちビューナビ/三田尻御茶屋旧構内 英雲荘
「老松神社御由緒」という看板表記を次のサイト※から引く。「飛鳥時代の白雉三年(六五二)の創建。当初は須佐神社と称し,沙婆氏がこれを祀ったと伝える。平安時代の貞観十五年(八七二),社前に松の老樹が繁茂するにより老松神社と改称した。三田尻地区の産土神である。承安三年(一一七三),筑後守秀助が菅原道真公ほか二柱を配祀し,社殿を改築,社田を寄進した。」
飛鳥時代??三田尻は江戸期の港で,それ以前は塩田として重要拠点だった,とは認識してましたけど…そんな大昔からの土地なの?
※ amebaプログ/九州下町おやじの珍道中/老松神社~山口県防府市の神社 2018-01-06
1555,少し東を北へ左折。まっすぐにAEONが見えてます。
もう帰路についたつもりでしたけど…途中にお茶屋町との地名。道の右にどぶ川があります。ここも何か妙な気配だぞ?
東に,そんなに大きくはないけれど変に艶かしい感じの鳥居が見えます。
──後で見つけました。この地点のすぐ東には天御中主神社という社があります。住所は防府市車塚町5。
ここの別名(正名?)らしいのが車塚妙見社。何と前方後円墳を有す(というかおそらくそれが御神体の)社で,625年創建という。
◇ポイント: GM.
※ gooプログ/まちなか見てある記/三田尻‥萩往還道の終着地が町化(山口県防府市)
飛鳥時代が2つ出た。間違いなく,この桑山南麓は古代からの土地で,三田尻港としての栄華すら千年目頃の「中興」なのである。
ここは想像以上に古い土地らしい。ツボは分かってきた。ポイントを絞ってもっと踏み込んでみたい。