判斗「ちょっと冷静になって。
僕がいる間はこの診療所は成立するかもしれないけれど
いなくなったらどうするの?
また他の医師を探すの?
永遠にそんな綱渡りを繰り返すわけですか?
これ
根本的な仕組みに問題があるんじゃないんですか?
医師の来手がない離島に無理やり医師を呼び
その医師の良心と自己犠牲に島民全体が寄りかかるこの構造自体に問題が……」
正一「もちろんそんなことはよく分かってます。
けど
実際どうにもならんのです。
これまでさんざん苦労してこの島の医者を探し続けてきたんだ。
それでようやくコトー先生が……」
判斗「たまたま、
たまたま五島先生みたいな人がいたからこの20年間
この島の医療は成り立っていた。
でも先生がいなくなったら……」
重蔵「てめえ!
コトーが死ぬ前提みたいに言いやがってこの野郎!」
判斗「そうは言ってません。
そんなこと言ってるわけじゃないけど
五島先生一人にみんなが頼りすぎて
先生は疲れ果てちゃったんじゃないんですか?
病気ってそういうもんですよ。
ねえ和田さん
そう思いませんか?」
(和田、背を向けたまま、無言)
(激しい雨音)
〔映画『Dr.コトー診療所』2003〕