外伝03-FAZE2 ビーチパーリーでヒージャーじるが出てくるって,かなりシブイね。

[単語帳]
ビーチパーリー:ビーチパーティー
ヒージャー:山羊

 インド料理屋は数あれど,定食を「ミルス」と呼ぶ店を初めて見つけました。
 これがまた,えらく辺鄙なとこにある。読谷村の波平。今回は丁度原チャを借りてたんで,目指してみる気になりました。沖縄市から嘉手納へ広い米軍基地を横切る道路を突っ切り,読谷村役場のある半島部へ。かなり迷ったけど…。スーパー「かねひで」読谷店の目の前って覚えれば簡単だったみたい。
 店名はシマウマカレー。20席に満たない小さなお店でした。


▲シマウマカレー。このネーミングセンスが好き!

 迷わずミルスを注文。840円也。ライスとチャパティ(1枚)にカレーが3種(シマウマカレー,レンズ豆とチキンのカレー,フィッシュカレー)ついてくる。感激したのはこれらが,夏の南インド旅行以来,夢にまで見たあのミルス用の丸い金属盆に収まって出てくること!おお!!そこまで来るんなら,右手3本指の華麗なグチャグチャ技を見せてやってもいいぜ!!見たい?ねえ見たい?ねえってば!?
って尋ねようとしたけど,2番目の客が来店――危ないとこだったぜ‥かろうじて思い止まりました。
 で肝心のお味の方は…まあまってとこ。南インド風のカレー気分をそこそこ回顧できる程度。それでも確かに南インド的なヴェジ系カレーのテイスト。穏やかだけど何か芯の強そうな若いご夫婦が経営されてて,雰囲気もしごく良い。

 基地をまたいでまた沖縄市側へ。
 うるま市,旧具志川市中心に近いエリア。ウチナー大食い定食ツアーを繰り返してた頃に「大工さんサイズ」と呼ばれる南国食堂のAランチ目当てによく出向いた辺りだけど,今回は…
 上州屋。旧具志川市役所のすぐ裏にあった。広い座敷が落ち着ける地域の憩い的なお店。
 名物「ソーキの味噌煮定食」を頼む。


▲上州屋のソーキの味噌煮込定食

 来た。予想を上回る大皿にドス茶色いソースにまみれた大ぶりのソーキがゴロゴロしてる、食いごたえは――当然ガッツリズドドドンで(?),あれ?確かに肉汁ギトギトなんだけど…妙な口当たりのアッサリ感?
 唐揚げやトンカツの油ギトギト感とは全く違う。これは何?
 奈良時代に仏教が国教化されてからヴェジ化したナイチと違い,ウチナーは現日本唯一,肉食の伝統を持つ食文化エリア。これがウチナーが長寿県だった最大要因の1つともされてる。
 体重半減の1年間カロリーの数字と戯れてみて肉食について感じたのは,肉そのものはさしてメタボな食材じゃない。もちろん低カロリー食材じゃありまへんけど,食いごたえから言えばせいぜい中カロリー。高タンパク食ってのは栄養的には明らかに優れた食事で,減量法の一つでもあるほど。そうじゃなくて肉食によって食卓の構成,特に米食とのバランスが崩れて,トータルとしてのカロリー量が増加しやすいってことが肥満リスクに繋がってるわけ。つまり,食の全体バランスを崩しやすい,扱いにくい食材なのね。
 そのバランスが歴史を通じて確保された,非常に稀有な肉食文化。それがウチナー食文化なんじゃないか?その証明が,かつての長寿県沖縄だったんじゃない?

 そんな問題意識から,今回どうしてもハズしたくなかったお店。――実はこれまでも気になってたんだけど,前評判から最後の段で敬遠してきたんだけど。
 夕暮れ迫る沖縄市から南へ。国道330号線が北中城村(きたなかぐすくそん)に入ると左手に「PLAZA HOUSE」の看板が見えた先がライカム交差点。ここから左手に曲がって米軍専用ゴルフ場の中を通った先に,何時か通ったステーキ専門店「エメラルド」とタコスの「キングタコス」がある。
 ここから東側の海(泡瀬方面)に抜ける道を左に曲がるだけだった。島袋小学校前。
 山羊料理専門店「南山」。――かなり久しぶりにビビッて扉を押しましたね。
 「あの…山羊汁定食の大をお願いします…」大にしたのは必死に通ぶっただけ。
 「ハ~イ。油は?」
 「え?」
 既におばちゃん,この客がナイチャーと見抜いたみたい。
 「油は…抜きますか?」
 何のことか分からんまま必死に(無駄に)知ったかぶりで「そうですねえ…はい,抜いてください」
 おばちゃんの二次攻撃「ヨモギは入れて大丈夫ですか」
 「…はい」って,え?ヨモギってどゆこと?もう泣きそーッス…。
 窓外の光が徐々に影っていきまする。油?ヨモギ?一体何が出てくるんだよ~!?
 無駄なBGMが頭から離れませ~ん…白山羊さんからお手紙着いた,黒山羊さんたら読まずに食べた,仕方がないからお手紙書いた,さっきの手紙のご用事なあに?…あの歌の一番は白山羊さん?黒山羊さん?

 「おまちどー」おばあが持ってきたデカい椀にドロドロの汁と肉片。
 白山羊さんなの?それとも黒山羊さん?
 箸をとっておずおずと…一口目!
 ぐおお!毒々しい臭いだぞぉ!?白山羊さん許してえ~!!黒山羊さんでもいいよ~!!
 口直しのつもりで一緒に入ってる菜っ葉を摘む。あ…苦いじゃないかあ!?これがヨモギなのね!!こいつは…こいつは逃げ場がないぞぉ!!
 けど,体重半減中に尖っちゃった舌は,この恐怖の異味に感覚を閉ざしてはくれん。山羊さんの白人ワキガみたいな鼻つく臭い~アーンド!!ヨモギから溶け出した薬っぽい苦々しさ!かつてない味覚パニックで口の中はちょっとしたブラックマンデー状態!!
 けど。こーゆー新しい味覚がある時パッと開けるって経験は,体重半減期以来何度も重ねてきました。
 気がつくと。何だか絶妙だぞ!?羊肉そのものはインドやイスラム世界の旅行でかなり好きな味の1つ。この山羊ってのはもっと強い癖のある味覚だけど…これはこれでハマる味じゃないか!?
 それにこのヨモギの漢方臭さが,上手く山羊の個性とマッチしちゃってる。この個性派同士のカップリングは…これはスゴいんじゃないか!?スゴく美味くないか!?プサンのアグチムの,ドジョウと山椒のカップリング並みのスゴさじゃないか!?どうだどうだ!!
 最後にはお椀を抱えて最後の1滴まで飲み干してました。色々あったけど白山羊さんア~ンド黒山羊さんよ!!結論。最高。また絶対来るぞ!!


▲らっしゃい!今日はどの山羊にしやすか旦那?…じゃなくて…

 この後,泡瀬のお店を1軒回る。
 テビチ煮付を食ってると,板前と定員がデキてるらしくイチャつきまくりで料理なんかそっちのけ。まあいいや…ヒューヒュー!!