▲全州 雪のクムアム広場バス停
雪…どっちゃり積もってまいました。
早朝。眩い照り返しに目を細めつつ,またまた市内へ。
▲全州 雪の市内(看板前にて)
サミルグアン。
って?昨日は客おらんから入らん言うたやんけ!?
いや,それがあんた(誰があんたやねん)今朝通ったらサムベクチブよりこっちの店に客足が多いんですわ。恐らく…朝と夜の分担が何となく出来てるんちゃう?
コンナムルクッパブはW4500。ここもソンジクッパブがW5000である。けどコンナムルの注文客が多い。…やっぱりね。朝はあっさりコンナムル,夜はどっしりソンジって感覚?
▲サミルグアンのコンナムルクッパブ
しゅんしゅん湯気をたてる土鍋。
コンナムルが来ました。
キムチとナムルは5種のパックに入って出て来る。好きなだけ取って食え形式らしい。
全羅道のキムチってどこもそーなんだろか?あんま辛くなくて,辛みがクリアで爽快。野菜が漬け物と思えない瑞々しさを保っててプリプリしてる。ここのは特に素晴らしく,日本人が一番食べ慣れてるはずの白菜キムチが──別次元。ほとんど浅漬け,ってよりサラダだわ!!ニンニクすら控え目にして野菜の地味を生かしてる。つまり…それだけ野菜が良質で自信ありって事だろか。
それが,メインのコンナムルではもー絶対的事実になる!
もやしスープです。日本で誰がそんな貧相なもん欲しがるか?しかも他の調味料も概して薄味使い。ソルロンタンみたいな肉汁もない。純粋にもやしのスープです。
最初の一口は正直物足りんかった。以前の舌ならそれ以上食えんかったかもしれん。
当たり前だけど…豆もやしの味が純粋に味覚されてきます。それしかほとんどない。それが,よく味わうと…マジで美味い。
なるほど──もやしって豆の穀物味と茎の野菜味を兼ね備えた味覚ですわな。それが最上のものなら,十分に複合味を演出できる。
限に口の中では,その演出が実現されてるわけです。
この汁のクッパは,だから穀物をもう一種加える作業。ここでは既に土鍋に米が入って出てきました。ビシッとハモる味。
まるで,初めから一品の食材だったかのようです。
ただし,これだけ良質のコンナムルに合うには,米も厳選されてる必要があるわけで──
▲全州 雪の市内(教会前にて)
昨夜のセブンイレブンで,おにぎりを買ってみました。
何でそんな添加物まみれの米をわざわざ…?ってゆーと,いずこも変わらぬ商業主義だからこそ運送しやすくて購買者の舌に合う地の安い米,つまり一番普通の米を使ってるはずで…その味を確認したくなったからです。
──やはり。米が違う!
甘くほんのり拡散の日本の米と違い,硬質に香ばしくたゆたうご飯。
日本と韓国は米の位置が微妙に違う。植民地時代に日本的な主食観念が入っただけで,韓国では基本的に具の一つだと思う。コンナムルクッパブはそれを体現してる。
では韓国では何が主食なのか?コンナムルやキビや麦を含む雑穀一般なんだと思う。だから穀物茶に長け,米の焼き味にこだわる。クッパブに対する「犬メシ」的な抵抗感も,日本的な「ご飯はご飯」感覚から来るんであって,穀物の一つと感じるならごく自然な食法。
主食で世界地図を割ると4色になる。──米,麦,芋,雑穀。
雑穀食の食文化は存在するどころかかなりメジャーだし,日本の古い食文化の形でもある。日本人も囲炉裏を囲んでた時代には,米も含めて鍋でドロドロにして食ってたわけでしょ?中国の粥の文化も似た感覚だと思う。
文化は,二次元的には単色で塗り分けられても,三次元的には違う色が重層化してる。
韓国の食の風景は,日本ほど米食中心主義に移行しきってない。日の丸弁当的な「米だけでも食える」感覚は薄いんだと思う。
食文化の都・全羅道ではそれが顕著なんだろう。
つまり,コンナムルクッパブを韓国人感覚で言えば──豆もやしと米の混合粥。
▲ハンクッチブのビビンバブおかず
ハンクッチブって店でもビビンバブを食ってみた。
やはりW10000と馬鹿高い。
8種の皿。ビビンバブには8種のナムル。
ナムルは韓国の祝い膳・九折板に似せて放射状に並べてある。コンナムル,人参,しめじ,胡瓜系2種,ぎんなん,寒てん,ニンニク。
キレイなのはキレイだけど…美味くないっす。この店の広さと隣のバカでかい駐車場,地元客の少なさからして…観光ルート用のお店臭い。特に日本人観光客は…韓定食とか皿数が多いとか見かけだけで満足しちゃうからな~。
唯一旨かったのは,おこげ。
ここのビビンバブは石焼きタイプ。石焼きの器の底にがっつりこびりついてる部分をスプーンでこそげて食うと…なんつー香ばしさ!噛んで噛んで噛み尽くすほどに沸き起こってくるあの軽やかで誇り高い芳香は…お焦げ飴なんか所詮レプリカだったんだなと実感しました。
焼いて旨い韓国米の本領発揮!
ただ…美味くない以上に不満感がつのる。何だろ?
──配列です。家族会館に比べて,キムチ系ばかりで面白くない。
▲ハンクッチブのビビンバブ
韓国の副菜を並べる時,給仕するおばちゃんたちの並べ方はいつも一定の決まりがある。
そのことに,今更ながら気づいたわけです。
そして,昨日の家族会館のおかずの配列の妙に思い至りました。
再掲になるけど皿の配置は,
① ② ③ ④
⑤ ⑥ ⑦ ⑧
⑨ ⑩ ⑪ ⑫
⑬ ⑭
これを大ざっぱに以下の4群に類型化してみました。
(凡例)
唐:唐辛子辛いもの
塩:塩辛いもの
香:香り主体のもの
酸:甘いもの(又は酢のもの)
唐 塩 唐 香
塩 甘 香 甘
甘 香 甘 塩
香 塩
まず,普通のコリアンの副菜だと「唐 唐 唐…」とウルトラマンの戦闘中みたいになるはずが,割と満遍なく散ってる。キムチが少ないからです。全羅道の伝統的にか?
次に,似た味が横には並ばない。縦に見ると,意図的に斜めに置いてるようにも見える。
横にも単純な四色問題で配置してるんじゃないみたい。上から三列目,食う者から見て最前列に,素材で食わすタイプが並べてる感じ。
総じて,飽きが来ない,多彩さを強調する配置になってます。
面白いんでも一丁,今度は素材のタイプ別。
(凡例)
根:根野菜主体
葉:葉野菜主体
魚:魚介類主体
根 葉 葉 根
魚 根 根 加工品
根 葉 根 葉+魚
飯(複合) 根
やはり散らしてある。単に皿数が多いだけじゃなく,見た目の美しさや派手さだけじゃなく,思想性がある。
日本の料亭料理みたいに体系化されたものは聞いたことないから,平たく言えば「色んなものをバランス良く食う」ってだけなんだけど…ここまで具現化して見せられるとスゴいね。
▲光州ユースクエアのコイン式端末
青空から降る日差し,輝きながら溶けてく雪景色。
11時10分に市内バスに乗り,11時25分モーテルに帰着。11時40分高速バスターミナルでチケット購入。11時50分光州行きバス発車。
有り得ないラッキーな接続に恵まれてシュガータウンな全州を後にしました。
何か…程良く田舎で色々多彩で飯旨い,全羅道いーね!かなり気に入りつつあります。
▲光州ユースクエア内 RedMangoのヨーグルト
指が凍ってケータイ使えません…。
13時10分,5階建位の大型複合ビルに到着。
光州の新都心,U-SQUARE(ユースクエア)。かなりドデカいバスターミナル。飲食店や書店もわんさか入居してる複合施設。出口に迷う程でした。
その中に?何か懐かしい緑と白のツートンカラー。
き,君は…滅びたと思ってたRed Mamgoじゃーないか!釜山の南ポ洞と西面から撤退しただけだったの!?
リュックもしょったままだけど…しかもフローズンヨーグルトなんて冬に食うもんじゃねーんだけど!引力から逃れることが出来ません。
W5500,トッピング5種。ベリーやピーナッツ中心に行ってみた。
おお!
イタリアのヨーグルトみたいなふくよかなミルク臭はないけど,とことん爽やか系。全然甘くないのに食えちゃうこの爽快な味は…やっぱRed Mango独自だよな~!一体何をどーやってる味なんだろ!?
▲光州 錦南路四街近くの小景
足元ガチガチに凍ってます。滑る滑る!
ユースクエア対面のモーテル街の細い路地に入ると,にやついた爺さんが手招きしてくる。
…怪しー!
と思ったけど,普通に泊まれた。モーテルって早い時間からでもチェックインできるのもいいっす。
地下鉄で光州駅近く,錦南路四街へ。
このエリア,やや雑然としたからかエラく迷った。──訳もなく迷いまくる土地って時々ある。そーゆー魔性が旅行のエキス。
目的の店・無等山チュオタンも,たどり着いてみれば地下鉄出口のすぐ脇でした。
結果的にW5000。
入店すると──ガバッ。寝てたばーさんがびっくりしたよーに起き上がる。
席につこうとすると「こっちだ」って感じでストーブのそばを示される。
で。無言でいきなり厨房に立つばーさん。
え?注文は…?
ばーさん,何か目を閉じたまま立ってます。壁にメニューすらないし…ひええん,どーすりゃいーの?
きょときょとしてたら,突然ばーさんズカズカ近づいて来て…いきなりお膳ドン!
そんで──やっぱり無言で去る。新聞読み始めました。
なるほど。チュオタンしかない,黙って食えってわけね。ほじゃあまあ──。
▲光州 無等山チュオタンのチュオタン
泥鰌の文字通り,泥水みたいな見た目最悪なスープ。
唐辛子が入ってないから彩りのアクセントもない。ひたすら泥水色。
チュオタン。
お膳は,このスープの土鍋とパブ,キムチ3皿にナムル2皿と大根スープ。あと薬味2皿。
前回釜山で食ったから,今回は割と落ち着いて味わえた。
この味…泥味とでも言うしかない独自のテイストは,京都,正確には近江系の川魚に共通する。錦や桃山で売られてた鮒の甘煮とか川魚のテイストと似る。
ただ,ここまで泥味直球勝負の料理は,今んとこ韓国のチュオタンしか知らない。
骨骨したジャリジャリ感,油で誤魔化されてないストレートな内蔵臭さ,泥鰌の身に絡みついた野菜のドロドロした口当たり。
薬味はネギとコチュジャン。特にコチュジャンは自家製らしく,それ自体でおかずになるほど香ばしい。ただ,どちらも少し入れると泥味が和らいじゃう。ピュアな泥味を楽しみたかったんでそのまんま味わいました。…って完全にハマってますね。
しかし,つくづく思う──スゴいバランスじゃのー。
この泥味,恐らくかなり危険な味覚です。これ以上強くても弱くても食えなくなるはず。元から入ってる微量のコチュジャンとこのドロドロの何かの野菜が,ギリギリのバランス感覚でうま~く泥味を高貴に仕立ててるんだろう。
それと副菜。ナムルの一つのエリンギと人参,これが馬鹿にウマかった。エリンギも人参も何かほくほくしてマイルドで食感もちょうどいい。キムチもコチュジャンがいいのかすげえ瑞々しさ。ほうれん草のキムチを初めて食ったと思うけど地の野菜味を上手く引き出してる。
ご飯は…老舗だけに最高!やはり噛み続けるほどに香ばしい韓国のご飯。後半,チュオタンとクッパにすると,この香ばしさと泥味との二重奏で…ホント唸った!
▲光州ユースクエア前のハングル電光看板群
ハングルのネオンってむっちゃ怪しい気がするのはわしだけ?
全席ソファ席,レースのカーテンで個室風に仕切られてます。
とっても女子的…オッサン一人で座る空間じゃねーやな…。
CoffeeStory。エスプレソW4000。
タバコも吸えるから,開き直ってしまえば…落ち着けることこの上なし。今回感じたのは──韓国のカフェって工夫しとるとこ多くてどの店も驚かしてくれますわ。
エスプレソも良いまろやかさ。イタリアンじゃないけど,ふくよかな韓国テイスト。
▲光州の焼芋
芋が粘る!ほとんどクリーム!
四国でも九州でもこのトルコアイスみたいな食感はなかった。甘味は薄くてスゴくスムージーな味覚。
宿に持ち帰って食った,ただの焼き芋です。なぜか大当たり!
でも──ただの街角でオッサンが売ってた芋だぞ!?しかも古典的な,いかにも安そーなドラム缶の,お世辞にも衛生上問題ありそな…。
20年前には中国にもあちこちに出てた焼き芋屋。日本では30年前か。いずれも撲滅されてしまった傍らで,韓国にのみ残ってるのは?
穀物のホントの旨味を知ってる国民だからなんでしょーか?