外伝02-3진주&대구:《第三次初日》ナクチコプチャンの日

 釜山地下鉄車内。初回の乗車から,名物物売りの口上に遭遇。
 しかも2人同時!
 顔を合わしたお二人,しばし小声でご相談。
 結果,どうやら韓国らしく年長者が先攻と決したらしい。先に声を張り上げてる先輩の終わるのを,若い物売りは殊勝な面もちで待ってるって図になってます。
 これで先輩より後輩の売上げが良かったらどうなるんだ?とか心配してたが,そこは年の甲,明らかに先攻の年長物売りの品に客は財布を開き(まあ当たり前だが)事なきを得たんでありました(何がだ?)。


▲凡一ハルメチプジョンバンナッチのナクチ+コプチャン+バブ

 所変わって凡一(ベオイル)。
 昼休みのサラリーマンで賑わうハルメチプジョンバンナッチ,2階座敷席。
 地下鉄で移動中,ふいに思いついて下車してしまいましたが,1時前の昼飯時。1階が満席で2階に案内されました。
 右隣にオバチャン2人がわめくようにお話し中。左隣では数人のワイシャツ姿,上司っぽい脂ぎった顔のオヤジが一人まくしたてとりましたが――日本と同じくサラリーマン風の姿は1時が近づくとササッと姿を消し,待ち構えてたかのように一般客が席を占めていきます。やっぱ入店は1時を過ぎた方がベターみたい。
 さて注文はもちろん
ナクチ+コプチャン+バブ 7000W
 この味,記憶以上…。辛い記憶だったんだが,今の舌にはムチャクチャ甘い!辛いからこそ甘いっていうあの味覚。玉ねぎとホルモンの相乗効果だと思うが,まったりと甘い!
 特に最後,鍋底に煮詰まったヨンニャムの甘さと来たら…。
 この混濁した味覚の中で,さらに驚いたのは――このタコの歯ごたえの良さ,この信じらんないプリプリ感はどーよ!
 まだ宿も決めてない。どころか,宿泊地に入ってもいない移動中,リュック担いだまんまの状況で,早くも感激に打ち震える韓国短期旅行。
 今回の行程は全4日間。

 西面で地下鉄を乗り換えて沙上へ。
 まだ日本語アナウンスが続いてる。「…ヤーサン」え?「ヤーサン行きの列車が参ります」
 確かにヤーサンって言ってるぞ?怖いのか?
 終点の駅名らしい。
 列車は満席。まだ昼時なんだけど,この路線っていつもこんななの?
 目が冴えてきた。ナクチコプチャンかキムチかニンニクの効果なのか,海外の緊迫感か?
「次はササンです」まだ続いてる日本語アナウンス。それでは歌って頂きましょう,歌はチャコの海岸物語!
 …なわけない。続くアナウンスは「西部市外バスターミナルはこちらでお降りください」――沙上らしい。
 ここは初めて降りる駅。地上に出てもターミナルは見当たらなかったけれど,屋台の軒並みと人の流れに導かれて適当に歩くと大体見当がついた。分かりにくいのは,隣のショッピングセンターと中途半端に一体化してるからみたい。2階がチケット売り場で1階が待合室と乗り場,韓国ではよくある構造。
 便は頻繁にあるみたい。片道7500W(2011年2月現在1万円=16万W,一桁下げて2/3)。2時10分発に乗車。
 西へ。
 高速道を爆走。丘陵地が続いた後,1時間強で第一目的地の晋州に到着。
 この街も,行きのビートル内で適当に決めた。前から何か気になってた釜山近郊の街です。

▲チョンハンシッタン ビビンバブ

 何か,えらくゴミゴミした街に思えたのが晋州だったが…大都市近郊の中規模衛星都市ってのはこんなもんなのか?
 いや誉め言葉だ。いかにも下町っぽいとこが一見で気に入った。
 バス停と市場が事実上,街の基幹部を占めてる。例によって駅の周りはモーテルだらけだったんで,適当なのに荷を降ろす。最近このパターンが定着した。ロッテモーテル。
 前回,麗水でマイってしまったジャンオも目当てだったんで探してみた。川沿いに幾つか専門店はあったが,ここらのジャンオは夜の酒の肴がメインらしい。ジャンオタンとして食事を出すとこがない。
 諦めて市場に分け入る。
 この街の市場,ぱっと見より遥かに広かった。街の規模からして…こんなに要るのか?ってくらい延々と,しかもゴミゴミゴミゴミと…いや誉め言葉です!嬉しいぞ!
 あんまり嬉しがって1時間以上うろついてたら…日が暮れてきとるじゃないか!肝心の,目的の店が見つからんじゃないか!こっちも空振りかあ?
 と思ったら,ふいに駐車場表示だけ発見。周囲2ブロックほどのエリアをグルグル3週くらい回ったか?約30分もうろうろして…ダメだ,やっぱ諦めるか。
 とぼとぼ帰路についたとこで,これも思いがけず店の看板に遭遇。全然駐車場から遠い!頭クラクラ,つくづくもったい付ける店やな。
 まあ――ここまで来たら入店しかない,チョンハンシッタン。
ビビンバブ 7000W
 そこまで苦労してなぜにビビンバブッ!?…と自分自身ちょっと脱力したけど,まあ仕方ない,
 壁にメニュー表示はない。しばらくして注文取りに来たオバチャン「ビビンバブでいーかい?」。どーもそれしかないっぽい。
 4時過ぎの一番少ない時間だろうに,満席近い。他の客の仕草を見るに,コリアンではあるみたいだけど,噂を聞いて御来店らしきグルメさんが半分はいるみたいで,要は有名店っぽい。「他にないの!?」的なこと尋ねてる雰囲気(多分)だけど,結局ビビンバブにしてるからやはりコレしかないんだろう。後は早めの酔っ払いモードに入ってる勤め人らしきオヤジたちもちらほら。
 ここ,入り口からして昭和の食堂そのものだけど,中に入るともっとソレ。木造の壁に囲まれた土間に安っぽいテーブル,上がりこんだ奥には座敷もある。
 いい店だ。
 ちなみに後で理解したが…「シッタン」は「食堂」の読みらしい。この名の食い物屋は,日本領時代,少なし漢字使用時代の名残を留めるほど伝統的な来歴を持つってことみたい。北京語にはあまりない表記だけど,読みは「シーダン」で日本語読みより近い。

▲チョンハンシッタンの風格ある外観

 膳が来た。
 キムチとナムルが3皿,そろとビビンバブに2汁。
 シンプルだ。
 ユルい,完成されたセンスを食う前から感じた。
 箸をつける。
 ――美味い!
 この小皿,何だろう?ナムルが最高に旨い上に海苔と高菜みたうな野菜がビンビン新鮮に生きてる。
 ビビンバブの碗もいい。大田みたいなパブで食わせるビビンバブじゃなく,具の,地味×地味のユルいコンビネーションでまったり食わせてくる。もちろんご飯も美味いんだが,美しい背景画として働いてる。このバランス感覚は老舗のビビンバブならではかのう。
 汁は大根スープとヘジャンクク。――大根スープ,大抵水代わりに飲む程度だったんだけど,これは初めて旨いと思った。入ってるのは唐辛子と大根だけなのに…唐辛子は万願寺みたいな青臭さで押すタイプで直接噛んでも辛くない。
 ヘジャンククもこれ…最高やん!まったりと複雑な旨味。モヤシと牛の血なんて,言っちゃあ何だけど安っぽいベタな食材が,マッチさせるとこんな深遠な味になるものなんかいな?血なまぐささと生々しい大豆味…と書くとウエッて感じの味覚が絶妙にコントロールされてる。
 酔いしれてたら5時を回ってしまった。
 でもこれだけ満足すると…もう今日はごちそうさま,って感覚になってしまいまして――すっかり満足満足で帰路についてしまいました。

PARIS BAGUETTE
ベーグルプレーン
トースト
 モーテル手前で購入。店は言わずもがな韓国の超有名チェーンです。直近は…そうだニューヨークで見たんだったな。日本ではまだ見かけないが。
 でもこの店でベーグル買うのは初めて。
 宿にて食す。
 ユダヤ本場のみたいに臭くない,アメリカの軽いタッチの味。その部類としてはかなり上質。硬めで淡い低発酵臭がいい。
「トースト」名の商品は,韓国で普及してるフレンチトーストの独特な奴です。甘ったるいのにトーストのパン臭さは香りが立ってる奇妙な美味さ。
 話は飛ぶが――博多の国際フェリーターミナルの飯屋で,出国前にトーストを食うのが恒例になりつつある。異様に美味いんである。気分の問題かと思ってたが…何がなのかどうもわからんが,韓国のトーストって意外にスゴいんちゃう?

▲通りの光景

 続きまして,同じくモーテル近くのコンビニを探索してみました。LGだったかな?
 買ったもの。
Vegemil B
BUSAN MILK
 前者はいつもの穀物系ミロみたいな奴。やはり粉粉しさが心地いい。
 が――後者は?釜山のミルク?何じゃそりゃ?あんな港町に乳牛いねーだろ?…とか冷やかし的に購入したんだが,結構美味い。ちゃんと乳臭い。
 阿蘇の牛乳とか飲むよになって最近思い始めてたことを再認識した。これは,プサンミルクが特に美味いってより,日本のメジャーな牛乳の方が特殊なんじゃね?あの異様な脱臭感,スベスベ感が…何か不気味に感じられてきた。
▲宿はオンドルバンでした。冬はやっぱりコレ!ホカホカ~!
…日本にも作ってくれたら,冬は毎月行くぞ!