外伝09♪~θ(^2^ )HK-File15:点心再一次

▲義順牛[女乃]公司の馳名隻皮[火敦][女乃]

[初日]義順牛[女乃]公司(佐敦)
 香港第一食目を満喫したあとのデザートに,1年振りに入りました。
馳名隻皮[火敦][女乃](これぞ有名な皮載せ固めミルク) 22HK$
 スゴいのは…これ牛乳味なんである。
 いや,日本のガイドブックに言うミルクプリンですんで当たり前なんすけど,モロに牛乳の香りが薫るんである。
 なのに,何だこの舌触りの重さ,そしてバイブレーションの深さ!かと言ってくどくもない!
 一体どーやったらミルクがこんな深遠な味わいになるんだ?
 わざわざ名前に冠してある「隻皮」(ホントの漢字は上のオオトリが2つ),つまり牛乳を煮たら上に張る薄皮ですが,これがまたこの上ない舌触りのアクセントになってます。
 最初マカオの本店で見つけたこの店,何回訪れても飽きるってことがない。

[2日目]老婆餅(屯門駅構内)
老婆餅2つ 5HK$/個
 通りがかりに何となく買ったんだが…外皮はパサパサの月餅タイプ。なのに,あんは豆の香りが爽やかな白あんで,その中に混ぜこまれたほのかなココナッツがジワッと香り立って――何とも言えない軽快で複雑な甘やかさに震える。
「老婆」の文字の不気味さが何となく笑えたんだけど,日本語の語感の「ニヤリと笑う魔法使いのお婆さん」的なイメージと違って家庭的な,「アント・ステラのクッキー」とか言う時のが漢語の語感に近いみたい。

▲石磨坊の椰汁芋泥西米露(熱)

[2日目]石磨坊(旺角)
椰汁芋泥西米露(熱)(ココナッツと芋アメとタピオカの熱いスープ) 22HK$
 やっぱりここ,いーわあ!
 適度に有名らしく,そんなに客は多くない。観光客はもちろんいない。大繁盛ってわけじゃないけど,固定客に長く愛されてる店っぽい。この店の底力を物語ってる。場所も旺角道から少し入った閑静な場所。
 技術を匂わさずに,深みで勝負してるスタンスが好ましい。
 今回のタピオカ自体初めてだったけど,台湾スイーツのジュース系よりも,地味な糊(ねっとりしたアメ状スープ)とか泥(同じくサラッとしたの)とかの方がしっとり食わせる。香港スイーツに和風テイストが入ってるみたいな感触。今回の芋泥も素晴らしい!
「新推介」として「心の愛慕」というのが掲げてあった。新商品の紹介みたい。他には――
芋[サ/容][火局]西米布句
日式焦糖鮮[女乃][火敦]蛋
 こんな風に旺盛に開発してる結果なんでしょう,この店のメニューは今や膨大な数になってます。やなせたかし風の桃と栗のキャラクターも可愛い名店です。

[3日目
真正豆腐坊 [米唐]水道分店
豆腐花5HK$
 これも香港のガイドに載ってた店。
 ウマかった…ってゆーより,やっと香港本来の「まんま豆腐やんけ!」的な豆花の旨さが分かってきた気がした。
 例の赤茶色の砂糖は,豆花の上でしばらく放っとくと,シロップに似たものになるらしい。けれどそれさえ邪魔に感じられるほど。
 大豆の味を澄まして,苦汁も何も加えない。それだけで美味い。その大豆本来の味の豊さに気付いてさえいれば,大豆そのもの。それだけで立派なスイーツになってしまう。
 そこをわしの中で邪魔してたのは,日本的な「醤油かけなきゃ」的なおかずとして捉える感覚だったらしい。
 味覚を清純にするだけでスイーツになる!この味覚が,香港なのか?

4日目
公和豆品廠
豆花7
 店名からしてそれっぽいが,土間に壊れそうな折り畳みテーブルと丸椅子。典型的な中華食堂です。
 とん,とテーブルに置かれる碗一つ。
 一匙,口へ。
 何という儚さ。それでいて…何というふくよかな甘味。
 まさに大豆そのもの。広東粥と同じ発想で,大豆の旨味そのものを限りなくピュアにした,逆に言えば豆腐でしかない味で…だからこそ至高のスイーツたりえてる,そんな美味。
 これに苦汁を加えた上で醤油をかけたり煮たり焼いたりしてる和食の技巧と努力を高々と飛び越して,大豆,はいそれだけです。と澄ましてみせるこの土地の面構えがニクい。

▲公和豆品廠の豆花

[4日目][土申]記[米ソ/王/心]品(進水[土歩],北河購物中心)
 例によってトイレを探しに入ったのが不運にもゴチャゴチャのITビル地下で…刻一刻と膨れ上がる尿意を抱えて長らくさ迷ってしまい,スッキリして地上に出て来た時には既に正午過ぎ,進水[土歩]の雑踏はごった返し始めてました。
 と?地下鉄入口の角の店に人が押し寄せてますが!?
 食い物らしい…っていう以外何も分からないまんま列に混ざって買ってみた。
餅みたいなの白と茶 各1つ5HK$
黒い羊羹みたいなの 7HK$
 白いのは,見た目普通にパンケーキだったんで,油断して味わい足りずに喉に落としてしまったが――茶を食ってから,あんだけ売れてたのに納得。ブランデーケーキみたいに,ケーキ生地が酒蒸しのような香りを纏ってる!?ただその酒は,ブランデーでもワインでもないっぽい。紹興酒かコウリャン酒かの,シナ酒の一種か?
 生地は中華蒸しパンのような洋風ケーキのような,国籍不能の何物かです。それが先述の酒の香りを纏って…食ったことのない食感でした。――正直,本稿でも点心か麺包か,区分に困ったほど。
 黒いのは黒胡麻糊。これもまた,ほっぺた落ちそうなほどウマかった…。中華スイーツの胡麻使いっていうのは,どこまで奥行きがあるんだ?

▲大良八記の八記芝麻糊

[4日目]大良八記(佐敦)
八記芝麻糊 18HK$
 前回食ったのと同じを選んでしまった。
 ここのの胡麻の香り方は,スゴいと思う。胡麻ってのはそんなに強い甘味にはなりえない。ジワッと,暗く仄かに香るのみ。その,いわば静寂の甘味が,ここの糊にはストレートに生きてる。

5日目
松記糖水店(油麻地分店)
六宝湯園16→写真
 全湾でフラレた店を見つけたんで立ち寄りました。
 全6店舗あるらしい。進水[土歩],元郎,銅鑼湾,大ホ。壁に貼り出された誌面によると――
「本店有生湯園[集-木/口]買
紅豆餡湯園
緑茶[女乃]皇湯園
紫米[女乃]皇湯園
[女乃]皇餡湯園
花生餡湯園
芝麻餡湯園
毎[合/皿]10粒$10」
 もう一つの名物「幻彩明珠」も試したい店ですが。
 六宝は,生姜湯に6種類の団子が入ってる。上記から察するに紅豆餡,緑茶[女乃]皇,紫米[女乃]皇,[女乃]皇餡,花生餡,芝麻餡らしい。順に小豆あん,ミルクあん(芋泥が入ってるように感じた)が2つ,ピーナッツあん,黒ごまあんらしい。ミルクあんは入ってる饅頭の生地がヨモギと紫米の2種類だったみたい。
 どれもフワフワの食感と薄いあんがたまらない!殊にミルクあんは,うっすら濃厚な牛乳香が応えられません。
 左前席にカップル。隣の女子高生風の娘がウマソウに碗を啜ってます。隣の男子は恋人未満か,話が弾まないが…どうなる,若い二人?

[6日目]人和豆品第八分店(旺角)
香芋豆腐花(紅芋入り豆腐) 18HK$→写真
 小便が近い!九龍城へ行くバスを待ってたんだが…たまらずトイレ借りに飛びこんでしまいましたた。
 口実に頼んだのがこれ。
 芋は紅芋(色は紅と言うより紫に近い)が,味覚的にはあんまり豆花に溶けて来ない。豆花自体はまろやかで深みがあるけれど,シロップが甘過ぎて大豆味を殺してる。日本人的にはもちろんかなり十分な深みですが…香港豆花と日本の豆花の間にあるような中途半端さが気になる。
 日本人から初めて来た時食ったら,分かりやすい味かもしれない。チェーン店だからある程度地元の味だとは思う。

[6日目]合成糖水
腐竹雪耳柿餅 25HK$
 九龍城の外れの店だけど意外にも日本語メニューあり。けど,とりあえず突っ込んどくが――その店名は日本語的にはもの凄くいかがわしい語感だぞ!?
 それはともかく,メニューの訳だと「湯葉と白キクラゲ,柿のスープ」ということでした。日本人的には驚く語感だけど湯葉は「腐竹」,キクラゲは「雪耳」。
 柿は干し柿で,メニュー名にはないけど蓮の実も入ってる。
 柿以外は日本でも西欧でもきちんとしたお食事の素材としか思えない。この何でもスイーツにしてしまう発想は,潮州が源流なのか?
 味全般に,広東一般以上に薄くて深くて複雑なものに感じた。特にファーストフードの食感持った人の味覚には,これはもの凄く分かりにくい領域かも。
 ひょっとしたら,潮州その他の特異な原型料理を,都会人用に翻訳したのが広東料理であったり香港の食であったりするのかもしれんけど。

▲合成糖水の腐竹雪耳柿餅

[6日目]栄華(尖沙[ロ且])
蓮蓉棋子3つ
 日本の普通のあんにない落ち着いた甘さと,薬っぽい感じ…これ慣れてくると確かにハマる味。特にお茶に合う。舌に馴染むほどに,より高貴な味わいに思えてきた。
 ガイドにも書いてある店だけど,ただ…お土産にしても日本人に分かるか?香港だから育まれてる味わいかも?
 プーアル茶もかなり種類を置いてたんで一緒に購入しました。場所的にも使いやすい店ではある。

[8日目龍律美食(尖沙[ロ且])
秘製馬蹄露7HK$
 楽道と海防道のT字角,常に人が群れてる小食屋に,ついに手をつけてしまいました。
 英語訳が「Water Chestnut with Grass Jelly」と貼りだしてある。日本語だと何だ?青汁?
 口に含んでなお混乱する。――何の味だ?シャリシャリするナッツ感はあるが,液体としてはオレンジ色で,酸味としては柑橘系を思わせて…!!?
 メインの「Water Chestnut」が何物か分からんのだから,もう全くワケワカランのだが…否定しがたく美味い!
 最早レポートにも何にもなってないことも分かってるが,理解不能なものは理解不能!誰か原材料「馬蹄」の正体,特定してくれ!!!
※後日注釈:「黒くわい」というものらしい。正確にはオオグロクワイというクログワイの栽培種と思われる。

食用とされる種の基本変種はシログワイ(別名イヌクログワイ)(E. dulcis (Burm. fil.)Trinius)という。クログワイに似るがより大型で1mを越える。また、穂が白っぽくなる。日本南西部や中国南部から太平洋諸島、オーストラリアまで、またマレーシア、インドを経てアフリカにまで産する。日本では本州南岸の一部から九州、琉球列島に産するが、栽培からの逸出であるとも言われる。栽培種であるオオクログワイは芋が大きくて直径2-3cmに達する。

※wiki/クログワイ(黒慈姑、荸薺、Eleocharis kuroguwai Ohwi)
馬蹄(まーたい) : 香港スープの日々@Tokyo