外伝09♪~θ(^7+^ )Range(“広州滞在”).Activate Category:サウスイーストコート編(7.5次) Phaze:七日目

[前日日計]
支出1500/収入1400
     /負債 100
[前日累計]
     /負債 226
§
→9月22日(木)
1002清暉園
プーアル茶
雪中送炭(頂)
養生准山包 370(特)
1211西関人家
西関艇[イ子]粥 14元
銀記鼓油皇牛腸 14元 370
1716六記腸粉
鼓汁排骨飯 12元
冬虫夏草鶏糸湯 10元 550
[前日日計]
支出1500/収入1290
     /負債 210
[前日累計]
     /負債 436
§
→9月23日(金)

 朝は遅くした。
 開店直後の南方洗衣(宿隣のクリーニング店)に,今着てるものと夜用以外の衣類を全部出す。仕上がりは今日じゃなく明日の午後になるというが,明日の14時には列車に乗ってる予定です。折衝すると11時に上がる(恐らく午後は脂の乗った時間?)というので,危なさを感じつつ,頼む。
 さて出撃。地下鉄1号で2駅,公園前乗換で2号乗換で3駅,火車站でさらに5号に接続し文[ン中]方向へ1駅。小北。
 無精髭を剃ろうかと昨夜リュックの中を探したけれど,何と剃刀がゼロということに気付く。どこかで買いたいな?
 駅ヴァージョンのセブンにはなかった。 小北の地上に上がってスーパー([月生]佳超市)を見つけたんで購入。11元でした。
 何てことはないんですが,広州最高の飲茶へは身なりを整えて上がりたくて。
 亜州国際大飯店の一階のトイレは右手エレベーターから回り込んだとこ。ここまでは覚えてたので,洗面場で鼻歌混じりっぽく髭を剃る。
 40階へ。
 エレベーターは48かそのくらいの階行きの表示の方で,乗り込むと39階までしかボタンがない。39階階であと1:階分別のエレベーターに乗る。ここをいつも忘れてて戸惑ってしまう…ので主に自分用に備忘で書いておきます。

▲清暉園のプーアル茶と雪中送済(頂)

 10時2分。まさにベストタイミングの清暉園来訪です。
プーアル茶
雪中送済(頂)
養生准山包(特) 370
 4回目です。そろそろ少し冒険してみる気で,今まで頼んで来なかった,いわばブラインドサイドを突くようなメニューを2つ選んでみた。

 雪中送炭。
 これが「ブラインドサイド」という意味ではまさに,という異次元生物でした。
 マンゴーのかりん糖巻きとでも言おうか。マンゴーの瑞々しい果肉が,ごつごつと硬い黒いかりん糖──それしか似たものを思い付けなかったけど,弾力ある皮だから何なのか実は不明──の歯触りと混じり,口中に溶け合い,思いもかけない味覚を作り出す。
 ──分からんですね,これじゃ。
 うーん。黒棒っていう黒糖を固めに焼いた駄菓子をご存知でしょうか?あれを,さらにゴツゴツに固くしたものの中にマンゴーが入ってる。状態としてはそういうことなんですけど?
 ──理解は出来ても味が想像出来んでしょ?
 試しに日本の黒棒とマンゴーを一緒に口に入れてみると,近い味覚体験は出来るかもしれません。ただ,問題はそんな状態に,どうやってマンゴーを押し込んだのか?ってこと。
 そこまで来れば,定番ですが書いときましょう。さらに問題なのは,こんな取り合わせを広東人はどうしめ思い付けたのかってこと。

▲清暉園のプーアル茶と養生准山包(特)

 養生准山包。
 やっばり西日本の駄菓子に類似を求めて書いてみましょう。
 タロ芋のいきなり饅頭。
  最初,かぶりついても白いままだから素の饅頭なのかと思ってしまった。そのくらいに,包みは滑らかでふっくらと蒸しあがっており,中の餡たるタロ芋はヌメりある温厚なふくよかさ。
 この両者が並走するような包なんです。
 それにしても,このタロ芋の,遥かに遠くを見つめるような甘さが,この中華饅頭という並走者を得ることでどれほど加速せられていることか。
 よく考えたら両者はいつでもどんな種でも和音を作れるとは思えない。 包だけをひとかじりしてみると,ミルクかココナッツのような少し異質な調理跡も見つかる。ここもお互いを潰し合わずに並走させうるには,何らかの精妙な調整がなされていると思う。

 クラクラしてきた。
 清暉園で珍妙なものを食べ過ぎた,と言えばなかなかゴージャスですが,おそらく──熱はないのだが,病み上がりの症状だと思う。ただ,新しい波の可能性も?予震か初期微動かで対処方法は違って来るが。
 前者と見る。粥を喰っとこう。広州で粥といえば──。
 11時39分。長寿路。

▲西関人家の銀記鼓油皇牛腸

 12時11分とランチタイムのど真ん中ですが,西関人家に何とか席がありました。
 さあ粥だ!粥を喰うのだ!既に目的なんか忘れて粥を待ったのですが──。
西関艇[イ子]粥 (→写真)14元
銀記鼓油皇牛腸 10元 370
 先に腸が来た。粥だよ,粥喰わせろよ──ほほう?
  この腸もまたいーじゃないか?ぷよぷよでふるふるだし,肉も程よく入ってて,お味もブラックビーンズがきりりと効いてます。まるで銀記のようじゃないか!──とメニューをも一度見直すと,銀記じゃないか!
 ただ?飲茶屋が銀記のを素直に出すか?これは「銀記並みに旨い!」という意味なのか?それとも「銀記を生んだ広州がお送りするスペシャルな腸!」という意気込みなのか?
 とか穿って考えを巡らせつつ,腸はガッツガッツと胃に滑り込んでいきました。銀記がどう関わっていようと,体がこのフルフルを欲してる。やはりこれは,病後快復期には最高,ダイエットには最低の炭水化物の理想形だと思われます。
 という流れに乗ったとこで,粥が来ました!
 艇[イ子]粥だ!
 実はこの後,この粥一碗について全く記録を残してません。闇鍋めいたこの絶品粥は,速やかに胃の腑の腸の上へと飲み込まれ,炭水化物の層を形作っていったものと予想されます。
 なので純粋に文化めいた立場から。
 闇鍋と書いた。そう,この香港粥とは一線を画すこの大陸粥は,おそらく長崎ちゃんぽんのお粥版です。白米版は沖縄の「ちゃんぽん」かもしれませんが,手当たり次第に出汁の出る余り物の切れ端を投げ込んで作った粥…という思想性が非常にクリアに予想できる碗。
 汁ものとしてもしかり。出汁でも旨味でもいい,とにかくあらゆる旨みを重ね塗りして味覚を描いていく油絵のような料理感。
 和食-福建・広東。
 水彩画-油絵。
 お?何かイメージになってきたか?こうなって来ると,昨日見送った龍津路の湯の店に俄然期待が高まっていくぞ?

▲六記腸粉の冬虫夏草鶏糸湯

 というわけで晩飯は,万を持して!昨日の風邪引きフラフラ歩きの奇幸,龍津路は六記に伺います。
 17時16分,六記腸粉。
鼓汁排骨飯 12元
冬虫夏草鶏糸湯 10元 550
 何はともあれ湯だ!
 冬虫夏草です!
 病身だからか物凄く滋養が強壮に感じました。誠に図太い味わい。
 鶏のガラに,棗ではない何か柑橘系の果片,それに問題の冬虫夏草らしき茸もほんの少し。汁のベースは漢方スパイスですが,鶏と茸の出汁に合わせてでしょう,控え目な使い方です。
 つるりとしているというのだろうか。鶏の脂を巧く出してるんだと思うけど,ひっかかりを感じない滑らかさのスープです。一陣の風の如くに吹き抜けるスープの跡に,新しい土の匂いがたつような。
 SEC上で比較してみるとさらに特異性が浮き立つ。──漢方ベース,多彩な出汁元という意味では福建に共通してるのに,これはハッキリと広東味です。
 福建と広東はおそらく技術的には似通ったものがあるのだ。けれど思想的な断絶が大きい。それは味覚の基本音階の高さというか,最もシンプルに言えば,出汁を媒体にするか否かなんだと思う。
 このスープは,福建の形式を採りながら,広東の思想に立っている。つまり,出汁というツールを捨ててる,この一点の踏み外し方が,広東の湯なんだと思う。軽やかな別の存在に成り得ているのはそれゆえでしょう。
 うん,分かりにくいな。「湯の形をあまり持たない広東があえて湯を作ってみました」みたいな湯だ,ってことです。ある意味,広東風福建
料理とでも言うべき湯。

▲ 六記腸粉の鼓汁排骨飯

 飯の方は,おそらくこれ単品で一食になる企画みたいです。沖縄風ですね。
 単に今炊きあげましたってだけやね。と思っていつも後悔するが,今回も…これはこれでインディカとして最高に美味いです。え?と見返すほどで,どちらかと言えば排骨とか料理の方が脇役。
 このご飯とこの汁が飲める。
 この店にはそれだけのためにまた来ると思う。

 かくして。
 六記の冬虫夏草鶏糸湯でもって,何となく今次サウスイーストコースト行,結果的にスープを訪ねることになった旅行は一応の締めとする気になりました。
 ただ,この流れは,翌月以降の 台湾沖縄韓国,そして日本各地へ続いていくことになりました。このSECで得た座標軸というかビジョンは,相当の有用性を備えたものに育っていきます。

2016.10 五次台湾(嘉義)
§嘉義の鶏肉粥と湯初見。
2016.11 沖縄F47
§骨汁の同根確認。
2016.12 京都,高知
§京・殿田ほか2店,高知・新富ほか4店のうどんだし初見。いわゆる乾物出汁ではない旨味の同根確認。
2016.12-2017.01 韓国全羅道(二次)
§コンナムルクッパブとジャンオタンの真味に震える。