外伝09♪~θ(^7+^ )Range(“香港入”).Activate Category:サウスイーストコート編(7.5次) Phaze:八日目

[前日日計]
支出1500/収入1290
     /負債 210
[前日累計]
     /負債 436
§
→9月23日(金)
0800[シ半]渓酒家
鉄観音?
[シ半]渓[虫下]餃皇
[サ/力力力]湾艇[イ子]粥 370
1130[シエ鳥]星金龍船海鮮酒家
プーアル茶
叉焼包
黄色い葱の餃子 370
1838三洋餐ティン
[王加][王利][月南]飯
[前日日計]
支出1500/収入1490
     /負債 10
[前日累計]
     /負債 446
§
→9月24日(土)

 7時43分。龍津路の勝手知ったる界隈を抜け,龍津西路と言われるエリアに歩を進めていきます。今,[シ半][土唐]站というバス停の前。
 この道もまたいい味出してます。絶妙の華やぎと落ち着き。行き交う人の言行もたおやかで,漢人圏にあることを忘れてしまいそう。
 というより,これが本来この大陸に在った漢人のくになのかもしれません。

 といった感傷は,しかし8時,早茶の店内に入るや吹っ飛ばさざるを得ないわけでした。
 [シ半]渓酒家。ガイドブックなどにはよく載ってますが,初めての店になります。何度か通り過ぎつつ,何度か入りそびれてた飲茶店。
鉄観音?
[シ半]渓[虫下]餃皇
[サ/力力力]湾艇[イ子]粥
 服務員のおばさんがた,席を示してくれたはいいが,ここなの?
 だってここ…8人掛けテーブルに,デカい声と態度の無法者おばあ様が一人居座る席ですよ?
 有名飲茶店にはときどきこーゆー方がおられるみたいです,経験上ですが。
 自分の両隣2席までは「後から来るんだ!」と座らせない。
 服務員が単子(小点を取ると判子押してくれるカード)をくれない。メニューすらくれない。「注文票は?」と聞いてもまともに答えないからそこらにあったのを勝手に取って使う。
 洗茶の湯を替えてくれない。自分で茶葉を入れて自分で湯を注ぐ。──ここは山里のセルフ飲茶か?
 何らかの理由でイジメられてるのかと思ったが,要するに,このおばあ様が煙たがられてて,それに巻き込まれてるという構図らしい。
 そのうちおばあ様は,服務員の誘導で他の席のお客様に招かれて行く形でお引っ越し。引越先の客は2人,席をキープしてた数名分にはほど遠いから,どうも店側が被害を極少にする方向で誘導したみたい。座っちゃいけない席に座ってしまった外国人への配慮もあって…なのかどうかは定かではないけど?
 そんなこんなのドロドロ中国はともかく,お料理はまあまあのものではありました。

▲[シ半]渓酒家の鉄観音?と[シ半]渓[虫下]餃皇

 [虫下]餃皇。
 皮はもちもちだけど薄目,餡はシンブルに蝦肉だけなのに…脂の作用だろうか? 蝦の味わいの残響がぬめったように続く。
 それ以外の部分では,普通においしい広東蝦餃子でした。この店の技量の力点ってえらく偏ってる感触がします。

▲[シ半]渓酒家の[サ/力力力]湾艇[イ子]粥

 [サ/力力力]湾艇[イ子]粥。
 淡味です。
 広東というより香港の感覚に思えました。
 粥は純白。西関ののように黄色く濁ってはいません。香港風と割り切って混ぜずに掬って食うと,滑らかに,しかしくっきりと鶏肉の出汁味。しかし他の出汁味も微妙にダブってる複雑な味わいです。
 表層には錦糸卵と油条。トッピングで花生と葱。
 この複雑な淡味がどう作られてるかと言えば──食べ進むと見えてきました。
 底には,少なくとも…鶏肉の筋,同臓物,白身魚の身,同肝,小蝦の5種の肉が現れます。この中では最も強い鶏の出汁が感じられるのは仕方ないでしょうが…これだけの具をどうやってコントロールしたら一つ味にまとめられるのか?
 何かの味がアクセントになってるとか突出してはいないわけです。あくまで一つの粥の調味になってる。それでいてそれぞれを感じようとすれば感じられるような独自性は持ち続けてる。和音というより声明です。
 とすると??

 分からなくなってきた。
 香港粥と決めつけて西関のと[シ半]渓のとどちらが広州的なんでしょうか?西関のものには福州との共通項を認めるのに,[シ半]渓のにはもはやそれはない。この微妙な転換が,福建と広東を分けているのでしょうが。
 それともう一点。この粥では,香港と福建との距離が,広州とのそれより近く感じられるんですが…ここは?福建の影響を受けた潮州料理の感覚は,香港に直輸入されてるということか?
 分からない。福建・広東・香港の三角関係はどうなってる?

 この[シ半]渓酒家は,広州三大飲茶に数えられたり数えられなかったりするらしい。
 広州酒家と陶陶記とかを数えるらしいが,この店,庭園の周囲に幾つもの(ランクの)部屋を用意してるのと,(最初はそれで行くまいかと悩んだんだけど)動物点心とで売ってるらしい。
 この類いの高級飲茶は,まあ一度で十分。日本人目当ての香港の飲茶店にも似たようなとこがあると思います。

 頭が痛くなってきた。[シ半]渓酒家の謎かけに,ではなくてどうもホントに頭痛がする。
 一昨日に続いて朦朧歩きになった。逢源社区という門から入ってうねうね歩く。
 あれれ?基督教十甫堂という門に出た?
 朦朧モードゆえの無謀か,あえてGoogleマップはオフにしてしばらくゆっくり迷うことにする。
 9時43分,恒宝広場公交站場の脇に出る。道は宝源路らしい。う~ん,どう歩いたんだろう,わし?
 最後になるであろう農夫山泉を買おうと小店によれば,店主がピースしてくる。
 なぜ?あ,二元ね。
 水分取りながら歩くと,頭痛が少し収まってきた。

 9時54分,[曜-日+光]華社区というところを横断。
 文唱北路をまたいでさらに東へ続いてる?とするとこれは古道です。文唱路との高低差の間の階段は最近ではないけどやや新しい。
 この廉王路には華林国際のAからE館が南から北へずらりと並んでるらしい。
 これらがほぼ翡翠売り場。翡翠ってそんなに売れるの?

▲[シエ鳥]星金龍船海鮮酒家のプーアル茶,叉焼包,黄色い葱の餃子

 クリーニングはちゃんと時間通りにできてた。どーんと衣類で膨らんだビニール袋を傍らに提げて11時半。ほぼ向かいにある[シエ鳥]星金龍船海鮮酒家へ。
 宿近くですがこれまでスルーしてきた飲茶店。調べるとチェーン店で市内のあちこちに出てる店らしい。
プーアル茶
叉焼包
黄色い葱の餃子 370
 席についても誰も来ない…のはさっきと同じだけど,手を振るとやって来たお姉ちゃん曰く「我用意茶,[イノホ]就点菜」(茶を用意しとくから,おかずを取ってらっしゃい)。
 属人的に太好。
 最後の広州飲茶だからと艇[イ子]粥を何とか頼みたかったのに「あっちだ」「こっちだ」と数メートルの間をたらい回しって図は共産的で思い出に残りましたが,蒸し物コーナーの兄ちゃんは「那是干蒸了」とかてきぱきと小まめに案内してくれて属人的に太好。
 とか属人的なとこでどうしても中国飲茶なのは否めませんが,味はなかなかにまあまあでした。
 叉焼包。
 漢方味と肉汁,包の滑らかさのバランスはしっかり計算されてます。その代わりにどうにも特徴のない味ではありますが,日常使いとしては飽きのこない味でしょう。少なし広州や[シ半]渓の味とは太刀打ちできるレベルです。
 というか,この包って肉汁や漢方とバランスをそう簡単に取れるもんなんでしょうか?長崎角煮饅頭と比較して,それが不思議でならないのですが。
 黄色い葱の餃子。
  具だけ見るとまさにチープそのもの。黄色い萎れたような葱の煮込みなんですが…これが,他の肉汁か何かの助けを得てるんでしょうか?包と物凄く合う!シャリシャリのふわふわというか…対比が面白いんでしょうか?何で旨いのか,どうも分からない旨さというか。
 正月の餅に,間違えてひなびた葱を載せたら意外に旨かった…みたいな味。
 すみません,あんまり解説になってないですが──チープでしかないのに奇妙に美味い。こういう広東味は初めてで,捨てたもんじゃない飲茶の一店でした。

 11時44分。時間はある。東站のスタバとかでまったりするかあるいは──。
 陳家祠のバス停で見ると233路の終点が広州東站となってる。まあ1時間以上はかからんだろ。程なくバスも来たんでフラりと乗ってみる。
 羊城[上/ト]が使えた。2元で行く広州遊覧バスである。
 やけくそモードな旅行もこれだからいいもんだ。

  中山路を東へ。六路,西門から公園前までの間にもかなり騎楼は残ってる。以前に一泊したホテルの辺りです。
 中山路の番号は西から東へ大きくなってる。11時52分,公園前の高架の前に到る。
 喉がキテる。のどヌールをシュッシュしっぱなし。
 11時55分。人民公園通過。地下にスタバがあるとこ。
 左の五月花商業広場の対面,また一つ大工事をしてる。
 北京路,11時57分。この辺の騎楼はどうもわざとらしくて趣がない。
 お?[人/已]辺路でまさかの左折?北へ向いたぞ?
 この辺の騎楼は狭いがなかなかいい。
 と書いてる間に──湾曲した高架に乗って降りたとこは…小北路?小北花[口>巻]站?
 そうか,北東へ斜めに入ってきたんやね。地鉄の小北辺りに出ました。清暉園のホテルまでいつも歩く道。左に魔の農業銀行も見える。
 えっ?ここでさらにまさかの…右折?南じゃないのか?AEON前通過。走ってるのは環市東路。
 12時8分,世界大シア。

 降ろされた。ひーん。
 どうやら臨時で途中までしか走らないバスだったらしい。
 ルートマップを睨む。これだな。280路に乗り換えて東站を目指す。正式には広州火車東站総站。バス停名,長げーよ。
 高架を登って天河路に出ました。
 12時22分,体育路の地下鉄駅の辺りらしい。東風日産のビルが見える。もうすぐ東站です。
 と安心しかけたら,ここで?まさかの左折?入った道は体育東路?国際貿易中心?左には広い公園。この辺りはまるでシンガポールです。
 この構造,割と汕頭に似てるな。
 30分ちょいか。広州東[火占]へ無事到着。

▲ 広州東のバスターミナルの暗がりに降り立つ。
 いつも饅頭と豆乳の早飯を喫すとこでした。

 12時53分。3階待車室。
 握りしめた票(チケット)はコレ。
Z809開1404広州東-紅[石勘](九竜)
 出国手続きが始まる。ここのラインにはイミグレカードが今回もない。自前のペンを用意して書きなぐっていく。
 14時2分,指定の席に着席。とうとうラスト・トレイルである。

 16時34分。香港の入国審査の列にて詠む。
紅鋤やいつもながらの蝸牛
 ここのイミグレ,絶対的速度は速いんだと思うけどいつもトロく感じてしまってすみません。この文章の分量くらいしかスマホを打つ時間はないほど,列はサクサク流れていきます。大陸モードからしたら画期的な処理スピードで,待たされながらもイミグレ職員の皆様には拍手喝采です。

 17時58分。領事という宿にチェックイン。湯沸かし外付け,対応が馬鹿丁寧で居心地には疑問。
 銀座という近所の宿に,明日の予約を入れました。
 とりあえず今夜のミッションは3点──一つ,栄養のある飯を食う。二つ,まともな風邪薬を買う。三つ,よく寝る。

▲三洋餐ティンの[王加][王利][月南]飯

 仕事は優先順位をつけて処理していかねばならない。ミッションが複数存する場合は,そうなると第一のものから片付けてゆくのが吉。ラッキーアイテムはカレーライス。
 ということで18時38分。三洋餐ティン,ここがまず浮上するのは論理的な帰結と言わざるを得ない。
[王加][王利][月南]飯
 店に入って「一個人」と空席を指差すと,チャキチャキした江戸っ娘みたいな給仕が,まあ~許してやろう,みたいなアメリカンなゼスチャアで注文を取りに来た。
 大陸とこの島のギャップって開いてるよね。「ビヨンド・アワ・ケン」※ってのは,彼女(筱蘭:香港人)と元カノ(阿貞:大陸人)の出身国をまたぐ国際的愛憎モノでもあります。
 表には夜メニューにあるのに中に入るとない…英語メニューにはマレーシアンとある。
 茶が付かない単品を頼む。
 煮込みにしては意外に早く出る。
 うんっ!やっぱり,この味です!日本のともインドのとも違う。やっぱりと言うのは,グラタン皿の系列でも御フランスや御イタリアじゃない泥臭さ,何かの粉もんめいた田舎臭さが感じられる味なんですが,このカレーにしても,前回の香港パキスタンカレーとも違う土着性がある。
 スパイス使いなんだろうか?それとも本当に,マレーシアンなんだろうか?あるいは宗主国ポルトガルをルーツに持つのか?
「香港カレー」というのはまだない。(この店のも,おそらく[火局]飯のを流用したんでしょう。)おそらく今まさに作られつつあるジャンルであろう。けれど,間違いなく何者かになろうとしてるジャンルなんだな,と我一人確信する。

 咳で眠れず目を覚ます。
 覚ますと言ってもまだ明日にはなってない。
 ポケットを探ると今日はいろいろ出てくる。
 健康工房(益気養血・潤膚美顔)黒木耳[月蓼-サ]原飲のレシート。
 同じく住元堂 (位元堂)清感茶58.0元。
 萬寧 幸福安泰敏8片装38.7元。
 ポケットティッシュの半切れ 。
 中医と西医の両面で攻め,栄養はインド(マレー)と御縁によりマカオ牛乳プリンまで。このABCD包囲網(アングロサクソン,バーラト(インド現地名),チャイナ,デマセック(シンガポール古名))に屈せぬ風邪のあ~る~べ~き~かあ~。
 …だから早く寝ろよ。敦盛舞ってどーする?

※ と調べてたら,割と真面目な映画評論プログに,副題が「カレと彼女と元カレと」と書かれてた。もしそういう話だったら…怖いわー。誰がって,彼氏の裸を撮っては別れる彼女がいたら,どこ撮るねん,ってことも含めて…怖いわー。