外伝04〓━━〓長月之講〓━━〓
ア・プレブレのタイとスズキのポワレ

Ψ 白露~秋分
δ 里芋の新小芋(落ち子),ずいきの酢の物,丹波栗,栗ご飯,丹波黒豆の枝豆
θ 着せ錦

「犯人は…アナタですねえ」なんて金田一耕助が宣告しそうな暗めの古い木造の部屋。
 重厚と言えばこんなに重厚感のある部屋もないだろな。
 町屋の土間から上がりこんだ居間に,どっかり据えたふかふかソファーに落ち着いて,料理を待っておるわけです。
 ここはア・プレブレ。烏丸線の五条駅からすぐだけど,あまりに普通の町屋なんでひとしきり迷いました。
 フランス料理。フルのコースだと2千円は超えるんだけど,ここは
メインのみ1200円
って頼み方ができる。もちろん前菜のみも可らしい。メインのみつってもパンと突き出し(フレンチで何てゆーの?)は付いてきた。これにエスプレッソを200円で追加。
 客は,わしの前に1人客,後にカップルと女のみの各2人客のみ。知る人ぞ知るって風情の,とことん落ち着ける店でした。
 前菜は2種盛。まずグズール。「チーズを練り込んでおりましてフランスの代表的なお菓子でございます。よろしければ手で摘んでお召し上がり下さい」…流石!部長島耕作では「シュークリームの皮だけ」と紹介されてたけど。
「あとこちらは」あっと,ゴメンネ。まだ続いてた!「自家製生ハムのマリネでございます。スプーンのままお召し上がり下さい」
 どっちもちょびっとだけ。けどどっちもこだわりは凄い。グズールはやっぱりシュークリームの皮だけだけど,くしゅくしゅ感がいい。
 メインは鯛とスズキのポワレ…みたいな名だったと思う。
 魚2種の蒸し焼きらしきものをニンジン,おくら,赤と黄色のピーマン,ナスなどの野菜が包囲した陣形。その外延をさらに取り巻いてるのは「青ジソのソースでございます」


▲ア・プレブレ メイン タイとスズキのポワレ

 スゴくアッサリ!
 これまで(つっても数える程だけど)経験のないあっさりフレンチ!魚肉は,うっすら塩味がかってる以外はほとんど素の状態。野菜も似たようなもんで素焼きのグリル状態だけど,こっちは青ジソのこれまた素の香りを微妙に纏ってて憎い味わい。
 こりゃ…ほとんど炊合せだぞ。
 いや!?しかしやっぱり,微妙かつ確実にフレンチだ。これまさに京風フレンチの精緻なり!
 デザートは300円でつくけど,初めての店だし付けなかった。けどエスプレッソには「お茶受けでございます」と2種の菓子が付く。
 ここならセットで2千円超でもお値打ちよ!!京都でしか味わえないフレンチだし!
 最後のトドメは──帰りに玄関の外まで見送ってくれたフレンチ屋ってのも初めてだったなあ…。

 東西線二条城前から三条会商店街方面に向かうと,つい立ち寄っちゃうキムチのミズノ。
 味はマイルドだけど変わり種,ってゆーか本場並みの多彩な品が多い。今回はイリコとコチュジャン買ってみました。


▲キムチのミズノ イリコの青唐辛子漬け

 おばちゃん曰く,青唐辛子だから赤くないんだって。イリコの渋い爽やかな磯臭さと青唐辛子の鋭い辛みが合わさってとてもシャープな味覚。
 コチュジャンは調味料じゃなくそのまま食べる系統。野菜と混ぜたらグッドでした。

 三条会商店街と四条大宮の間の分かりにくい場所だけど,もう迷わなくなったパン屋さん,キートン。
 入って右手は調理パン群,左手にややハード系の食事パン群。食事パンはやや大きめだけど,全部1/2カット出来るみたい。
 全粒粉パンとライ麦を購入。おそらく本場のハードさからは少し離れてんだろけど,いずれも自然な固さと味わいで,美味いってゆうより安心できる味。でも町のパン屋さんとは一線を画する微妙なスタンスがいい。


▲キートン ライ麦パンと全粒粉パン各1/2

「店長お」といつも店番してるいかにも京都娘っぽいチャキチャキ姉ちゃんが大声で「クーラーまた止まりましたよお」思わずニヤけるて解説しはじめる。「いやね,暑うなると止まるクーラーなんですわあ」
「そんな自己主張の強いクーラーありますかいな」こっちも完全に空気に飲まれて京都弁で突っ込むと姉ちゃんマジ顔で
「いやホントなんですわあ!涼しい時は大丈夫なんやけど」
 つ…使えねー!
 さてクーラーはともかく,ついでに買ったスポンジケーキといわしパン!これが以外にも!


▲キートン イワシパン

 スポンジケーキは…軽くアルコールの混じった水気たっぷりの奇態な食感?イタリアで言うババでもなかろし,ただの洋酒ケーキなんだろけど…妙に気に入った。
 いわしパン。チーズパンの上に,文字通りいわしが乗ってる。それだけなんだけどね。パンも普通だから,勇気があれば誰でもできるんだけど…今度わしも実験してみよ。
 いわしの渋い塩辛さが軽く塗ったチーズと妙にマッチしてんの。ヨーロッパのどっかに原型がありそうな気がするが…もし自己流の開発だったらキートンは天才だぞ!

 夕方の升形商店街に立ち寄ってみた。
 商店街東側出口脇の出町ふたばを通り過ぎよとして…目を疑った。
 行列が!
 奇跡的に短い!10人位しかいない!これは並べってか?いや,並ばずにおれようか?どーだどーだ!
「次にお待ちの方あ」
 3分も待たずに声がかかる。
「豆餅2つに栗餅とよもぎ団子を1つずつ!」
 こうして奇跡的に購入できたのがコレじゃ!


▲出町ふたば 豆餅,栗餅,よもぎ団子

 けどまあ…やっぱりこのふたばは豆餅食ってなんぼみたいね。栗餅は季節モノらしいし,よもぎ団子は沖縄以来よもぎにハマってる流れで買ったけど,そこそこでした。豆餅のあっさり小豆の比較じゃあない!
 それと。並んで分かったけど,皆さん2つとか3つとか割と少量買いみたいね。
 そこへ来ると,本来の目的のマツヤの阿闍利餅は違う。前のおばちゃんいきなり
「ばら20個ね」
 ええっ!そりゃちょっと食い過ぎちゃうのん!?太るで…
 味は変わらず。むっちりした皮がほとんど麻薬です。


▲升形商店街 マツヤの阿闍利餅売り場


▲本日の収穫 阿闍利餅3つ

 マツヤは升形商店街のほぼ中央。
 マツヤへの行きと帰りに通りかかって,ついに帰りに手を出してしまった漬け物店が出町なかにしでした。
 目を惹かれたのは季節モノの壬生菜!
旧壬生菜──「ふるみふな」って読むのね。「きゅうみぶな下さい」って頼んだら,おばあちゃんトーシロと思ったのか食べ方書いたパンフを山ほど入れてきました。
新壬生菜
男漬
「芦屋小雁さんがよう買いにきはるんですわコレ」ってのは旧壬生菜らしい。
 新壬生菜を,後で買って持ち帰った錦・鳥清の鳥ハムと一緒にパンのおかずに。


▲錦・鳥清の鳥ハムと升形商店街の新壬生菜

 鳥ハムは相も変わらず最高だったけど,新壬生菜はまあまあか?ただし,鮮烈な緑色が目に心地よく,シャキシャキ感が食事に与えるリズムはやはり凄い。
 けど…わし的には旧壬生に軍配でした!


▲出町なかにしの旧壬生菜

 まあ。この壬生菜って初めて食うから,なかにしが美味いのかどーかは知らん。ただねえ…菜っぱの緑がぬかの真っ黄色に染まったこの漬け物,その色彩のグラデーションと同じく,野菜味とぬか漬けの酸味が丁度良く混ざり合ってんの!!
 正直。そーは言ってもこちとら広島人だッ,いくら京都でも広島菜には勝てんじゃろ?とかナメてたんだけど…参りました。恐るべし壬生菜!


▲bonne volonte 夏日の軒先

 bone volonte。
 来るの何度目になるんだろ?ここの佇まいとパンの味に完全に沈没しちゃってます。今回の収穫は──
カボチャの種入りライ麦パン
くるみとチーズ入りカンパーニュ
パンプディング
の3品。


▲bonne volonte かぼちゃの種入りライ麦パンなど3品

 ライ麦パンをゲットできたのは初。この日もラストワンでした。広島のバッカライ・アインのライ麦パンの繊細さ,キートンのライ麦パンの自然なバサバサ感に比べて,ボロンテのライ麦パンはこしゃまくれた小技が決まってる。カボチャの種の塩気とポリポリ感に重厚なライ麦記事がマッチして軽く食べれる。
 すぐ近くなんでついでに寄ってしまう神宮丸太町ファーマーズ。二度目の陽光会いちぢくジャムでボロンテのパンを食す。
 至福…。


▲神宮丸太町ファーマーズで売ってる奈良陽光会 鶴田さんのいちじくジャム

 パン屋に通いがちになる一因は,京都ではまだ朝の名店を見つけられてないからです。
 朝イチから開店の西陣ほんやら堂は大宮通りで遠過ぎだし。
 今回も,予定もなく早起きしちまいまして,チェックアウトもしちゃって困ってたら。
 そうだ!北山紅茶館がある!!
 大宮通り並みに北だけど,烏丸線の神崎駅すぐだから四条までサッと出れるし。
 早速出向くと
モーニングセット(1050円)
ってメニューがありました。
 内容はサンドイッチの2チョイス。塩釜ローストポークに惹かれる。──自家製ローストポークにリンゴジャム・ミントをサンド?おっ,いーじゃん!
 紅茶は「北山紅茶館」は持ち帰ることにして,「キクユ」にした。──kikuyu。ケニアのキクユ地方で育った品質の高い紅茶。赤茶色の鮮やかな水色で,コクのある深い味わいです。北山紅茶館でしか飲めないキクユティーを,ミルクを入れてお楽しみ下さい。


▲北山紅茶館 塩釜ロースト豚のサンド

 紅茶はまあまあ。って初心者だから舌が肥えてないだけかもしれんけど…「北山紅茶館」ほどじゃなかった。
 ちなみに「北山紅茶館」の絶品ブレンドの正体は──カラフルな花が咲き乱れる花園をイメージした華やかなフレーバードティー。甘酸っぱいビーチを基調とし,バラやマリーゴールドのブーケをブレンドしています。…だって。
 ビックリだったのはサンドイッチ!ポークとジャム?…こんな取り合わせが,こんなにマッチするもんなの!?
 リンゴ&ミントの爽やかさな酸味。ローストされて脂っこさを抑えたポークの肉本来の旨味。とは言ってもいずれもそんな高尚でもない食材が…まだまだ知らない取り合わせがありまんなあ。

 さあさあ!9回目のいけまさ亭だがや!
 今月の献立は──
炊合せ
秋刀魚煮付
糸瓜の酢物
おばんざい三品盛と白ごはん 又はかき揚げ丼
お漬物


▲錦いけまさ亭 9月の定食

 けど…今回は完敗だったなあ。
 何がって?とにかく三品盛り。結局かき揚げ丼じゃなくこっちを選択したんだけど…。
 難解でした。
 ワンプレートに3つの小皿が載ってる新パターン。最初,どれも同じに見えた。見た目も同じ緑色の葉野菜。一通り食ってもまだ分からん。
 けど舌を尖らせると──これ…3種どれも似て非なる野菜を使ってあるぞ?
 そこの京都通ぶった旦さん…この違い,当たり前ですけど分かりまっしゃろ?──的な挑戦的一品。闘茶ならぬ,いわば「闘野菜」なわけ。
 左の小皿。湯葉と菜っぱを和えたもの。湯葉と菜っぱの取り合わせが斬新な歯応えとともにシミてくる。
 中央の小皿。菜っぱを貝と和えたもの。貝の種類はとうとう理解なかった。あさりや蛤じゃないけど…貝から出た自然な磯臭さをまとった菜っぱが存在感たっぷり。
 右手の小皿。からし菜をごまで和えたもの。味噌も僅かに入ってる?渋い辛みでご飯が進む。
 いやあ京都的!こんなイケズな一皿をサラッと出して来るとは。──6月頃からデビューのお姉さん,特に今月はメニューを覚えきれずに困ってたやないか!
 続いて秋刀魚も難解。一口目じゃ当たり前の秋刀魚の煮付けに思えた。しかし,京都的などす黒い粘った濃い後味を残してくる。
 今月はとにかくイケズなお膳でした。来月はもっと勉強して来ますです…。
 10月のレシピ。
炊合せ
秋野菜のかき揚げ
松茸のお吸物
松茸ご飯
お漬物
 逃し続けてきたかき揚げとついにご対面であります!

 錦・鳥清の鳥ハム。
 今月はブロック100g400円を購入してお土産に。1ブロックで約300g,大体1300円した。
 広島駅に帰りついて,前から狙ってた向洋駅前ちょい西のドリアンでカンパーニュを購入。こことキートンとボロンテのハードパンを,鳥ハムで食う。
 幸せ!