外伝05O・紹興其之一ヰ 安微浙江遠討編・星期五 ヰ
浙江茶都杭州に遊びて角煮食ってます

▲合肥[立占]近景。この駅前には,以前と同じくダフ屋がうろついてます。やはり合肥は全般に,旧共産中国を引きずってる感強し。そこがまさに面白いんだけど…わしの中国語と経験値からは,正直,少しレベル高すぎでした。
 バイクタクシーも初めて乗ったなあ。

 座れりゃあもう満足です…中国鉄道様。
 何が何だかって感じで合肥を後にして,南に向かう中国新幹線に揺られております。
 昨日見とれた多彩な大地は,大体南京辺りまで続いてました。ここから先はのっぺり大ぶり均一の人民中国風景に,一気に変わる。地盤の変化なのか,何か歴史的な経緯か?
 ひょっとしたら…と南京を列車が発したとこでケータイをつつきますと,チャンとプログが更新できました。
 つまり合肥は,ギリギリAU携帯の電波が届かないらしい。電波的辺境との境の街──合肥の現在の位置を象徴してる気がしました。まさに今,現代中国の変革の波が押し寄せてるエリアというとこだったんでしょう。
 ひょっとしたら,わしが目に出来た最後の共産中国になるのかも知れない。

▲(合肥)老郷鶏の老郷湯包+豆ジャン

 さて,この列車,[シ唯-ロ]南東[立占]発⇒温州南行きに乗ってわしがどこに行こうとしてるかと言いますと。
 あてにしてた安微省のお茶「黄山毛峰」は,小さいパッケージをついに見つけられず買ってない。けど,もう一つ探してた「安微鉄観音」は駅前茶荘で何とかゲットしました。
 そういう流れで発表しましょう,今まさに向かうは──茶都・杭州。さてかの地の茶はいかに?

▲緑[杓-木]の粥+@

 何となく後ろめたい南京(いや,でもわしは小虐殺論者)の次はlishui[シ栗]水に着いた。11時18分,追い山出走まで残り66時間。
 中国の大きな駅の動車駅は東西南北をつけた新駅が次々に作られている模様。けど[シ唯-ロ]南東[立占]なんかは「[シ唯-ロ]水の南側の街の東郊外」みたいな訳のわかんないネーミング。ほとんど魏志倭人伝の邪馬台国の方向推量の世界になってしまう。
 
 どーでもいーが…南京から隣席に乗ってきたスキンヘッドおやじの貧乏ゆすりとイビキが尋常じゃない。
 これは…やはり日本人への怨恨ゆえなのか?そうなのか?やはり歴史の真実なのか?

 12時38分,アナウンスが突如「維新じゃあ!」と響く。橋本代表大喜びです。
 …ではもちろんなくて,今着いた街の名前らしい。ピンイン:yising,宜興[立占]着。
 と!?
 南京の歴史的ハゲ親父,突如「ガオッ」と吠えて飛び起きる。自分のイビキが目覚まし時計,的な現象らしい。でも起きて時計を見て,目を閉じると…5秒で再びトド鼾を奏で始めました。
 こっ…このオヤジ,出来るな!スゴいぞ!テレビ局来てくれ!!──思わず写真撮りかけたけど,万一気づかれたら歴史的怨恨をぶつけられる危険があるので思い止まる。
 そうして歴史的真実に思いを馳せているうちに──。
 え!?今一体どこを通ってる?下一[立占](次の駅)は「徳清」,ピンインは「どー3ちん1」と何ともスケベな響きであります。
 地図で確認しても「どーちん」(赤面)がどこかは分からん。けども,どーやら昨日とかなり違うルートで安微と江浙の省境を越えて杭州との最短距離を走ってるらしい。動車専用の新しい線路なのか!?
 そもそも杭州東自体が昨年末に改修を終えたばかり,供用開始後半年ちょいの駅らしい。寧波─上海間に架かった新しい橋と合わせ,上海都市圏外延の新インフラ整備の結果なんだろう。
 中でも,恐らくこの辺りが難工事だったろう。長いトンネルがやたら増えた。この山塊が黄山まで続いてることになる。この鉄道ルートはなるほど人民中国には作れなかったろうな。
 ちなみに,外気温度が電光表示に出てる。38度。見なきゃよかった。

 12時20分,杭州東着。追い山出走まで64時間半。
 所要2時間半,昨日の上海-合肥間より速いのは,どゆこと?
 やはり何もない空疎な駅だが,ここは地下鉄に直結してます。つまり,都市作りに計画性が感じられます。
 地下鉄1号線の券売機にたどり着いた。車内に入ると,壁面に路線マップがある。後方は赤線に,前方は緑線にLED表示される仕組み。つまり変色可能なLED使用です。
 ちなみにケータイのアンテナは,もちろん常に立ってます。つまりwifi対応。
 システムの発想が他とレベルを違えてる感触です。
 あと,地下鉄内の人々のファッションが全く日本と同じ。合肥で半分以上いた農民顔が完全に皆無。これじゃあ,昨日散々日焼けしてるわしが一番農民顔かも?です。
 さて,動き出した車内で路線図をチェックすると──街とは逆方向に5駅にある客運中心というのがバスターミナルっぽい。ここから別れた支線の4駅目に余杭高鉄という駅もある。
 目的地の龍翔橋から2駅先の「城[立占]」は,恐らく古い杭州駅でしょう。
 しかしこの龍翔橋という駅名も…何ちゅう荘厳な地名であろうか!てゆーか龍とか翔んでて危なくないであろうか?
 色々考えさせられる駅まで6駅乗車,地上に出てと。
 龍翔駅から2ブロック先の如意に入る目処だったけど,駅から出てすぐに,前から泊まってみたかった7天連鎖酒店(杭州西湖龍翔地鉄[立占]店)を見つけたので飛び込む。
 268元と高めだけど,物価高めの杭州です。むしろこのアクセスなら文句無し…なんだけど,文句言いたいのは──部屋に知らない荷物があるんですけど?
 掃除のオバサンに言う。
 今,フロントの服務員が来て部屋を隣に変わってくれとのこと。ダブルブッキングらしい。これは,それなりに長い我が旅行人生で初めての経験だなあ。どうなったらそんなことが出来るシステムになるんだ?

 道の広告に「亜シ州美食節」とある。6月から7月末まで杭州で開催中らしい。…が,特にそれらしいイベントには出くわしませんでした。
 晴天。
 杭州の街は西湖の東沿岸に広がってます。
 20年前は火車[立占](鉄道駅)以外はかなり閑散としてたイメージでしたけど,今や全く違う。広い車道がまっすぐに何本も伸びてます。
 ただ小綺麗なだけでなく,その間にはいい雰囲気の小路が,こちらは程よく蛇行して続いてます。小さいセンスのいい店もいくつか確認できました。
 歩いて飽きない街です。飽きないんだけど…何しろ広い!夕方まで延々歩き尽くしてしまいました。
 ああしんど。按摩屋で一眠り出来んかなあ…と探してて,完全に認識間違いで入ってしまったのが「維多利亞水療會所」。
 按摩屋どころか,附属の個室でバスタイム付きのかなり本格的なスパでした。いかがわしい空気はないし,実際きちんとアロマテラピー&マッサージして頂けました。日本なら万は下らないんとちゃうか?
 ただゆっくりし過ぎて,また夜になっちゃったよ。しかも選り好みし過ぎて…結局,杭州でまだ食い物を口に入れてないよ。
 夕方6時を回る。追い山出走まで60時間を切りました。

▲外婆家の東[土皮]肉と西湖牛肉羹

 ううん…ポスト共産中国,なかなか食い歩きは難しいぞ,行き当たりばったりじゃあ。
 合肥の経験も合わせ,段々,そう実感出来てきました。
 これは外食事情の推移だと思われます。かつての貧乏な共産中国には,ひょいと入れる外食店が経済解放前後ともありました。解放前からある配給センターみたいなガラス囲いの公営店。それに加えて解放後は,一善飯屋みたいな路地裏の私設店。それから後者の宴会場版の中流店。
 経済成長に伴って,それらがどれも立ち行かなくなってきた。その代わりに増えてきた中華ファーストフード店も,まだ競争で淘汰されず玉石混交。要するにそういう状況みたい。
 こうなるとファーストフード店の質と,加えてそれが地場系かどうかの選定眼が求められるわけですが。
 杭州地場のファーストフードとして,唯一,事前に調べてきてた(っても歩き方にも載ってるけど)「外婆家」に行ってみました。
東[土皮]肉 12元
西湖牛肉羹 20元
600kcal(1500)
 システムは完全に日本のファミレス。メニューの中に「杭州特色」部門があったので,そこからお膳として成立しそうなのを選んだつもりだったのが──かなり貧弱な取り合わせになってしまいました。
 東[土皮]肉(⇒レポ)は長崎でお馴染みのアレです。
 ただ長崎のが概ね砂糖甘さが絡みついてくるのに対し,コレは…妖しい官能味というのは似てるけど,絡みついて来る味わいが砂糖甘さじゃなく芳しい酸味主体と軽い塩味。恐らくはコレが香酢の力なのか?安微のストレートな味使いの後だけに,その七色の変化球めいた妖しさがよりくっきりと感じられます。
 日本人はこの味を砂糖醤油漬けと解釈し,沖縄人は古酒漬けとして咀嚼したんだろうな,きっと。
 けども?この妖しさは,どうも酸味と塩と素材の味の軽妙さが混ざり合って生まれてる。広東みたいな深い出汁の重層感は感じられないんであります。安微に比べたら複合味なんだけど,その複合した味わいが層としてはあくまで単層というか…。一筆書きの味覚というか。
 信長が京で出された料理を「薄い!」と怒ったので,味付けを強めたら「旨い!」と喜んだのを,京の料理人が陰で田舎者よと笑ったという話があるけど──安微が日本の田舎料理なら,浙江は都料理に類比できるのかも知れない。
 西湖牛肉羹は,牛肉を筋状になるまで煮込んでコゴリにした料理みたい。ただ味付けは前者に似てる。よりしつこい味ながら,よりクッキリとした香酢テイスト。──だからチョイス的には大失敗だったんだけど,浙江の味覚の初手としてはわかりやすい二品でした。

▲茶樹[サ/古]老鴨

 宿近辺でもう一軒ファーストフード店に入ってみた。
茶樹[サ/古]老鴨 24.5ご飯2/3残し 400(1900)
 この茶樹というのは旨いんだけど硬い印象です。それでも噛み締めてると,渋い味わいが浙江のこの甘酸っぱい酢の味にいい絡み方をしてくる。ただ…何か,どうも飯を食ってる感じがしないんだよなあ。
 飯がパックに入った雰囲気で,全体的には何だかなあという印象でした。
 それで
Coco 芒果[ン令][シ水]8元100
日計2000kcal
累計▲1106kcal
を煽って帰還しました。追い山出走まで60時間を切った二泊目の夜。