6時行動開始。
MTR尖沙[ロ且]駅発中還行き地下鉄に乗り込んだのは,6時15分。
本日の香港出国便は13時25分発。十日間の香港どっぷり滞在も,残すところ7時間余。
ある意味最も難易度の高い最終日のタイムリミットまでの過ごし方。…まあ,最後まで欲を張るからってことではあるんだけど。
早朝から開いてて最終日…となりゃ,選択肢は限られて――やっぱり蓮香園でしょ?
帰国用のクリーニング済の服を着用。久しぶりに履くジーンズが…むむう,やっぱ少しキツい。まあ,こんな食生活してて太らなかったらビョーキか,内蔵にブラックホールがあるかだよな。けども,何kg太ろうと胃の許す限り食いたい香港なんである!。
って?あ…!?一応まだダイエット遊記掲載の文章やったかな?
ただ,言い訳のように聞こえるが,広東の食感覚を内部化するってのは,絶対に食生活の再構築にテキメンな効果を…ってのはやはり言い訳だな。
こんな土地に来て…食わずにおれるか!!
▲母の日セールのケーキ広告。香港では,日本と感覚が大分違うのみならず,ちょっとした金がかかるっぽい。
さて。今回は3回目になります蓮香園。
うずめ飯(鶏せせりと椎茸)
チャーシューまん
プーアル茶(碗)
37HK$
何度来てもこの空間は…深い!この朝も,ひょっとしたらとんでもない漢人の業のリアルな暗部を目撃したのかもしれなかった。
地下鉄で九龍・旺角へ向かう。
旺角に着いてからふとメトロカードの残金を機械で確認すると…!?
マイナス7HK$!!?
え!?マイナス立てれるの!?
まあ,考えたら最初に払ってるデポジットは確か50HK$。50HK$までは運営会社側に損はない。
じゃあ50HK$までマイナスを立てれるのか?…と言えば,改札抜けられなくて広東語でわーわー詰問されるのは怖いんで実験してない。けど調べてみた限り,初めてマイナスが立った乗車回の1回だけらしい。
ほお~優れものやんけ!!
と一瞬思ったけど,下車時の改札機で,初回のマイナスかどうか,なんて複雑なチェック機能を持たせてるとは思えないから,料金減額前のチェック機能だけ持たせてるわけで。
それはつまり…料金減額後のチェック機能がシステム上抜けてるだけじゃないの!?
「まあいいか…デポジットがあるんだし」と開き直ってしまったところが,香港らしい実利主義です。確かに50HK$の乗車区間なんてないし,デポジットなんてほぼ返金請求しないだろし,誰も商店では「残金足らない」と言われたことがあるからシステム違うんだろし。
理屈はそうでも日本なら,「マイナスは…ダメだろ!?」と直感的にダメ出しされそなシステムです。
朝飲茶は梯子するもんじゃない。朝の数口の美味の感動を愛でるゆえに,この食習慣は美しいんである。
それはともかく,旺角駅から向かった先は,今回2度目の龍門大酒店。
香芒[米需]米[米滋-シ]22(頂)
揚げ春巻き
ポーレイ茶
49.3HK$
堂々たる梯子飲茶である。最終日の未練が求めた行為なので,真にやむを得ないものとして認められよう。
ただ,こんな幸せなことやっちゃうと不必要にハイになっちゃうリスクが生じる。店を出た足がふらふらと,バスのステップを登ってしまってた。
ルートは全く確かめてない。先日の失敗もあるのに…。
てゆーより,先日と同じでした。ケネディタウン行きのバスは,しばらくはネイザンロードをそのまま走ってたけど,佐敦で先日と同じ左手の道に入った!
ケネディタウンは香港島行き。当然こっちの道なわけで。
当時は「土地カンの試しだ。この直線上は大体分かるはず」とかメモってるんだが…全然分かっちゃいません。最後まで迷子です。
迷子ついでに通った佐敦西貢道。「そう言えば西貢にも行きそびれたな。まだまだ行き先はたくさん残してる」とかメモってる。10日も滞在して全然未練たらたらな最終日です。
▲龍門店内。広い!…と言うより実際座ると思うのは…やかましい!静かに食えよ!
去年の最終日に初めて入ったロンドン粥麺家。
鮮[魚完]魚片粥 27HK$
油条 8HK$
旅行神のお導きというか,旅行者としての未熟の結果というか,佐敦に来てしまったんだから,ここに寄らん手はないでしょう!
とかノリノリで入店したけど,結果としては卒業試験みたいなことになってしまった。ここの粥は,やはり難解なんである。
試験結果は――留年決定だったみたい。まだまだ香港を食い尽くしました…なんて言えるレベルじゃねーやな,こりゃあ!ってゆーか,こんなスゴい食文化,食い尽くせる訳がない!
尖沙[ロ且]に帰る。もう時間も腹の余裕もないんだけど陳誠記を通りかかって…すでに2回も,しかも一昨日と昨日入ったばっかなのに…ふらふら入店してしまう。
朝飯を食ってないことに気づいた!というのが自分向けの理由だけど…まあ未練ですね。しかも3食目にして「朝食セット」。
精美早餐
A西冷猪[テヘン+八]配[月退]蛋
[女乃]茶付 23HK$
この食い納めもまた…美味かったあ!
尖沙[ロ且]駅からMTRに乗車したのは10時55分。テイクオフ2時間半前!
中還下車後,香港駅に早足で移動。人間やれば出来るもので,何と11時10分発の機場快線に乗車できた。途中の青衣を通過する頃に11時25分,本来はチェックインすべき離陸2時間前を迎える。GWの日本人がどのくらい帰国するかが問題だけど,まあこれなら乗り遅れはないでしょう。
まずまずの早業に自己満しつつ,車内でようやく荷物整理(多少目立った…)。えーと…機内及び日本用の長袖シャツを手持ちのバックに詰め変えて,代わりにこの先は要らないガイドブックや地図その他街歩きツールをバックパックへ移してと。
帰国モードが整った頃,エキスプレスは地上に出る。
青衣前の合葬の丘を通り過ぎる。やはりこの風光は荘厳。死がこれほどアケスケに見晴らしよく,日常に近い場所で平然と笑ってるのは,いかにも香港らしい。
進行方向右手,水面から丸太が何本も突き出た池を見る。養殖か?何の?
同じく右手に,海と屯門の高層アパート群。
さらに東の岬に火力発電所のような建物が見える。
車両溜まりを過ぎると,テイクオフの飛行機群が見えてきた。車内に空港着のアナウンス。まずは広東語,次が英語,最後が中国語。
ロンドン(粥屋)の壁に貼り紙があったんだけど,「ツァイツェンがよく行く店150」なる本が存在するらしい。
空港の本屋を探しまくる。
最新巻は「…行く店160」になってた。迷わずゲット!書名は「[サ/祭][シ門 おおっ!!第三次の最強ツールやんけ!
――帰国前から,既に次を考えてる自分の食欲に驚く。
プーアル茶も購入。雲南不知年普[シ耳],10年もの。
ちなみにこの店で貰った中国6名茶のパンフレットには,他に次の5種が挙げてありました。杭州明前龍井,複鼎銀針白[豪-家+毛],安渓極品鉄観音,祈門工夫紅茶,複鼎[サ/未][サ/利]毛峰。――それぞれ湯の温度や抽出時間も使い分けが必要。中国紅茶も捨て難いと聞くし,茶の世界はまだまだ深い。てゆーか…香港では広東語分からんのでほぼポーレイ(プーアル茶)しか飲めてないし。
34番ゲートにたどり着いた時点で,時計の針は12時40分。台北行きのボーディングタイムは12時55分。15分前でした。
ふう。じゃあ一旦帰って来ます。
15時05分。台北着。
前回位から耳に入る「台湾will tatch your huart」のテーマソング。機内画像に台湾の文物がテンポよく流れる。
何か…奇妙な「帰郷感」に不覚にも涙腺が熱くなる。――何だこれ?わしは一応日本人なんだが!?
つまりそれほど,香港は「地球」標準的な土地だったんだな。日本はもちろん,人間性のたおやかな台湾からすら文化的な距離感がある。少なしわしのニッポン人根性はそれを「遠い」と感じてたらしいことに,自分のことながら思い致りました。
確かに――台湾の触感は,香港よりははるかに日本に近い。システムも人あたりも風景も近い。香港独特のあの対人間の緊張がない。あれは異文化,異人種,その他諸々な尺度で本質的な意味でのストレンジャーが日常的に交差する生活の中にしか生まれない「作法」。隣人が何を考えてんのか感覚として理解不能なのに,最低限にはニッコリ笑ってギリギリの秩序を保つ社会空間。ニューヨークに似てる。
旅行回数の違いもあろうが,物凄く安堵して浮かれてる自分に気付いて驚いてます。
なので台北空港では多少浮かれ気分。タバコの「峰」を20箱,それと高山烏龍茶を香港ドルの残金で購入。JTタバコが1箱150円だ!
あと,機内のADシステムでチョイスして聴いてたら,藍短[ネ庫]という中国のオーディション番組のチャンピオンの声がモノすごかった。CDを見つけて購入。
定刻21時10分,広島空港に着陸。
バゲッジがかなり混乱してて,ソウル,上海の表示のままで出て来てました。
検疫はスルー。日焼けしてるから機械的にはサーモにかかるかと思ったが。
税関もスルー。後でよく考えたらタバコは400本持ってて,しかも紙袋に晒して入ってたんだが。
まあ,GWのカキイレ時で忙しいんでしょう…。
21時50分,広島駅行きリムジン乗車。
どっちも割と美味そうだったんで,香港-台北便,台北-広島便とも機内食は食った。
メインは,台北便では卵麺,広島便では中華丼。面白かった。
味のレベルはさておき,台北便のにはチャンと蝦味の深い出汁が効いてる。
広島便のも,もちろん調味料はチャンと効いててそれなりなんだが…何かポカンと空虚な感じが残った。
味覚の深い層がないんである。
台北便は,香港と台湾の人間の舌に合う味覚を,香港で作ったものだろう。広島便は台湾で作ってるはず。
美味い不味いじゃない。味覚の層が違う。広東のスープは,日本の出汁より一つ深い層に働いてる。
この「喪失感」を実感できた。実感できたのは,一定期間,広東の味覚にまみれた直後だったからだと思う。舌が新しい層を見つけ,それを脳が認識した瞬間だったらしい。
広東の味は分かりにくい。あれだけの国際都市でありながら,香港は味覚世界としては非常にローカルな次元を保ってる。
返す返すも――ムチャクチャ面白い状況の土地です。