ちゃんと宿題をやりなさい@ことばぐすい [写]

頭脳を鍛えておくしかない

「どの仕事も万全ということはありません。フラット化した世界で毎日のように生まれる新しいアイディアやコンセプト,ビジネスを手にできるかどうかです。YouTubeは2年前は全く無名でしたが,今や数億ドルのマーケットです。グーグルしかり,インフォシスしかりです。こうした新しいビジネスを手にするには,きちんと教育を受けて頭脳を鍛えておくしかないのです」

お前が将来就く仕事をお腹を空かして狙っている

「科学者や高度な技術を持つエンジニアを生み出すには15年はかかる。まずは小学生から科学や工学教育に無制限の緊急予算を組み,総員体制で動き始める必要がある。科学者やエンジニアはおいそれとは手に入らない。長いプロセスで教育しなければならず,そこに科学の奥深さがある。そうしたことをアメリカが怠ってきたこと自体が危機なのだ。こっそりと忍び寄る静かな,しかし今そこにある危機なのだ」
フリードマンは最後に私に言った。
「私は1950年代,ミネソタで少年時代を送りましたが,両親はいつも私にこう言いました。『トム,ご飯を残さず食べなさい。インドや中国の人はお腹を空かしているのですから』と。今,私は孫娘たちに言います。『ちゃんと宿題をやりなさい。インドや中国の人は,お前が将来就く仕事をお腹を空かして狙っているんだから』と」

NHKスペシャル取材班「インドの衝撃」文芸春秋,2007

運命ではなく目的を原動力とする

インドの週刊誌《アウトルック》は宣言した。ジッピーとは,インドが世界のサービス・センターに変わって,社会主義を離れ,世界貿易と情報革命にまっこうから飛び込んだ時代以降に成人した,第一世代のインドの若者のことだ。《アウトルック》はインドのジッピーを「解放政策の子供たち」と呼び,次のように定義している。「新しい町か郊外に住み,年齢は15歳から25歳で,活力に富み,ジェネレーションZに属する。男女いずれでも同じで,学生・職業人の差を問わない。野心や願望を前面に押し出す。冷静で,自信に満ち,創造的だ。みずからやりがいのある困難な仕事を求め,リスクを好み,怖れを知らない」インドのジッピーたちは,金を稼ぐことにも浪費することにも罪悪感を持たない。《アウトルック》の引用によると,あるインドのアナリストは,「ジッピーは定められた運命ではなく目的を原動力とする。内ではなく外に目を向け,現状にとどまらずに上昇する」。

トーマス・フリードマン「フラット化する世界〔増補改訂版〕」日本経済新聞出版社,2008