外伝02-1부산:《2日目》影島の日

 22時半,PIFF広場そばのスタバでエスプレッソを飲みながら,窓外の七色のイルミネーションを眺めております。
 この派手派手なランドマーク,昨年は確かなかったと思う。チャガルチからPIFF広場までの道が特にヒドい。道の上に虹状のイルミネーションが幾つも連なる下を通らなきゃならん。何か訳もなく恥ずかしくなる。…小林幸子じゃねえんだから…
 ただ。確かにこのさして大きくもない「映画の町」の未来志向的な意気込みはジンジン伝わってきまんな~。何か涙ぐましくなっちゃうね。
 日本の自治体で,ここまで自分の町の未来を信じてる!っつう誇りを剥き出しにした町作りしてるとこあるか?こんなに近い釜山がこんなに頑張ってんど?

 9時半に宿を出て,ソミョン駅とは逆方向,南へ歩き始める。
 博多でゲットしたパンフに載ってたナクチポックムの店を目指した。南へ地下鉄2駅。バックパック合わせても昨年より軽いんだから何とかならあ。
 …っつうか全く問題なく楽に着いてしまった。何年か前に死にそうになって歩いたのに…やっぱ旅行者は身軽さが命だね。今になってつくづく思うわ。
 ナクチ・コプチャン・ポックムってのを頼む。──ナクチはタコ,ポックムは炒め物。ナクチポックムと言えばソウルの仁寺洞(インサドン)が有名だけど,あれは噂通り辛くて死んだ。釜山のはまろやかで…要は日本人向き?
 コプチャンはホルモンだから,「タコとホルモンの炒め物韓国風」ってとこ。朝からこんな濃いもんを…っても結構満席近いぞな!そいでほとんど客が真っ赤に煮立つナクチポックム鍋をつついてんぞ。
 やがて真っ赤な鍋がわしの前にも来た。まさに地獄の血の海が沸騰してる感じ。けど箸を伸ばすと──辛~いけどコリコリでアッサリ!しかもこれは…真っ赤だからどれがどれだか分からんけど時々当たるホルモンから染み出す肉汁の重厚さが素晴らしいアクセント。最高だぎゃあ!
 ソミョンの中心街はこの駅(凡一洞:ベミルドン)位までは続いてるらしい。駅前でタバコふかしながら見渡すと,現代百貨店とか大型スーパーが林立する。
 ナンポドン方面は山が海に迫って瀬戸内沿岸都市に近い地勢だけど,ソミョンから東莱(トンネ)方面にはまだまだ平地が広がる。ビルの建設も盛んみたい。今後の町の発達方向なんでしょう。

 チャガルチからお久しぶりのPIFF広場へ。
 お気に入りのフェニックスに行くと空室有。荷物を置いてすぐに国際市場の奥を目指す。以前と足が違うのでやっぱり大分迷った。ここは市場の何気ない一角で分かりにくいんだ!
 けどとうとう再会,純豆腐(スンドゥブ)専門店トルゴレ!
 まだ11時。小さい店なのに「スンドゥブ!」と注文する客で一杯!わしも頼むと素早く出てきた小さい鍋。赤いスープの海中に純白プルプルのスンドゥブが浮き沈みしちょるんです。
 味は言うも愚かなり!昨年は帰国2日前に見つけて3回通ってしまった味です。恐らくスンドゥブに合わせてコチュジャンも何か工夫してある。そして…スンドゥブ本体は,これはもうスイーツと言っていい。舌触りに加えてガッチリした誇り高い豆の香り!

 12時,乾物市場辺りをうろつく。映画「チング」の撮影地,日本家屋が連なるエリア。
 影島(ヨンド)はナンポドンから橋渡ってすぐの島だけど,まだ行ってなかった。温泉に入ろとバスを探してんだけど…韓国の市内バスまだ乗ったことない。ガイドブックにはナンポドンから乗れるバスナンバーは書いてあるけど──どこから乗るの?
 橋を通るバスを逆に追うこと30分。チャガルチからの脇道にバス停発見。
 バスはすぐに来た。過疎バスだから便が少ないかと思ったが?──理由はすぐ分かった。橋を渡ったヨンドは市場の広がるかなり大きな町。ベッドタウンなのだ。
 奥に進んでも開発は相当に進んでる。海辺は本土側の全くの延長で造船所が連なってる。
 漁村らしき集落はない。あったとすれば橋のかかった辺りだったんだろけど,架橋後真っ先に無くなったと思われる。──この島は元々「牧島」と呼ばれた。日本側の山口県見島と同じく島全体が牧畑(放牧と耕作を繰り返す農牧法)地だったらしい。だから海辺の漁業集落もそれを結ぶ海岸の道もない。
 結果,近代になって敷かれた道路は山裾をアップダウンしながら縫うように走る。日本(ヤマト)には珍しい光景で,沖縄本島中部,コザ辺りの道を想起させる。道路を挟んで海から山手までコンクリート系の無表情な四角い家並みが駆け登ってるとこなんかそっくり。
 この島歩いたら面白いだろな。疲れると思うけどね。
 バスは幾つもの三叉路を右へ左へ折れてく。島を時計周りに回ってるらしいけど…歩き方の5cm四方のヨンドの地図しか持ってないわしはも~全然分かりましぇん。左手に海上保安の学校がある島が見えたんで適当に降りる。
 少し歩いて太宗台温泉に着く。すぐ向こうに太宗台のバス停。…何だ?終点まで行った方が早かったみたいね…
 5000W払って温泉で1時間ゆっくりする。広いし種類も多い。釜山一と言われるトンネの虚心亭にちょっと届かないかなって位の規模。
 韓国人の入浴法は日本と変わらないけど,やや賢い。半身浴を基本に長く浸かる人が多い。ただ,軍隊でそうなのか,体を洗う時はシャワー派が多いみたいッス。

 太宗台のバス停から帰路に着く。今度は太陽の方向を頼りにして,橋の島側辺りで下車。
 影島海水湯(ヨンドヘスタン)って言う汁もん料理みたいな名の温泉を目指す。
 やはりこの町は相当規模。市場はかなり盛況で,スレてない分チャガルチより面白かった。ベッドタウンってもここはここで独立した町になってるみたい。
 ヨンドヘスタンの場所は少し分かりにくい。歩き方で確認した青い看板とハングル文字でしか判別できん。しかも近寄ると駐車場にしか見えないぞ?あちこちで聞いたら,駐車場の2階に入口があった。分からんわい!
 でもお湯は良かった。小規模でひなびてるけど,塩辛い湯の温浴効果がジンジン来る。ここは1時間半粘ってしまった!
 あ?晩飯の時間がヤバくなってきたぞ!
 ちなみにヨンドへの橋は意外と短いから,時間があればナンポドンから歩いて遊びに行っても30分程度で着きます。

 晩飯は国際市場から北西に抜けた「セジンジュシッタン」を目指す。夕闇が迫ってて見つかるか不安だったけど,入口にどでかく書かれた「ビビンバ」のハングルですぐ分かった。向かいに明日のターゲット「ムルコンシッタン」の看板も視認。
 今回唯一のビビンバだったけど,なかなかでした!ユッケ入り。さらにスープが凄い!冷たいのの他にもう1碗,臓物系の汁が付くんだけどコレが最高!9000Wって値段でも全く損した気になりません。

 釜山の夜は意外に早い。10時を待って国際市場から竜頭山公園のブロックを時計周りに走ってみた。
 人影は少ないけど不安感はない。竜頭山公園東側のエリアが風俗的に治安悪そだったけど。
 PIFFに戻って屋台の辛煮とかホットック(ミニのホットケーキ?)をつつく。探してた「MintTakeOut」ってアイス屋も偶然見つけてパクつく。──ビックリした。こんなに美味かったっけ?
 ただ,昨年まであちこちにあったアイス屋「RedMango」は無いらしい。残念!