外伝03-FASE11@deflag.utina
まだ青い空 まだ青い海(続)

 ちょいはみ出してますけど…まだ日も高いのに「いちゃりば」の肉中心の煮付けで晩酌しちゃってます。ソーキ,テビチ,三枚肉の3点は入ってるけど,野菜はニンジン,ししとう,豆腐のみ。こりゃ大阪のおでん感覚だね。
 酔った衝動でメニューにあったフーチバージューシーに手を伸ばす。ツ~ンと鼻を突く薬草臭!本島並じゃないけどヤッパこれはたまらん!
 5時を回ったんで,いい加減に出来上がった足で本命の「やんばる」へ。唯一見つけた山羊料理専門店です。
 まだ客はいない。山羊汁1400円と残波(白)400円を注文。
「明日は沖縄行くから…正月のうちにヒージャー食べにおいで」って携帯で営業してる女将。良かった,明日から休みらしい。
 女将と話し込む。本部の北の古宇利島の出身で,お祖母ちゃんが85歳になるお祝いに明日から帰るんだって。
 ヒージャーは本格的。他の具はフーチバーとショウガだけなのにちゃんとガツンと来る。でもちょっとハムみたいな加工感が気になる。
「ヒージャーもフーチバーもナイチで手に入るの?」
「ダメ。どっちも島の親戚から送ってもらう」
「業者ルートじゃなくて?」
「今は島でもウルサいくらいだもの」
「あ~そーか!トサツの免許?」
「そうよ~。ヒージャーは昔は家でさばいてたけど。それに煮る時の脂が匂うからナイチじゃ苦情が出て調理できない。だから島の親戚が炊いてパックで送ってくるんさあ」
「フーチバーは?ナイチに生えてはいるけど」
「あんな犬のウンチまみれのは使えんさあ!!」とオバチャン,手にしたフーチバーを持ち上げて見せる。30cmもありそうな長い茎。とてもナイチの雑草じゃない。「これは島で食用に育てたもの。味もやっぱり苦さが違う。だから送ってもらうんさあ」
「へえ~土ですかねえ?」
「土と太陽みたいよ」でもオバチャン,そーゆー話はあんま興味無。「それよりさあ…この前まで店員で来てた娘が広島の娘なんさあ」
「へ?」って言うのも待たず,オバチャン速攻で携帯をピポパ…どーも携帯魔臭いぞ!
「あ~〇〇ちゃん,おめでとう!アンタ広島のどこ?えっ?三次?今広島の彼が来ているんだけど店に来ない?」何か妙な展開ですけど。「ああ水曜日?…ねえアナタ?」とわしに「水曜日来れる?」
「す…水曜日?」何だそりゃ?「…は流石に広島で仕事です…」超強引な見合いに引きずり込まれそーな展開?このオバチャン,どーも世話焼きババみたい…
 そのうちやって来た今日の定員さんとも会話を弾ませよーとするしで,早々に逃げ出してしまった山羊汁屋さん。でも旨かったよ!!


▲大正駅前のどて焼き屋。何で大阪人はそこまで二度漬けを嫌うのか!?

 さあやっと今日の話。朝9時にラブホ発(やっぱ絶対そーだ!)。
 地下鉄鶴見緑地線の心斎橋を経由して御堂筋線の動物園前へ。
 通天閣ッス。
 朝も早よからエラいハードなとこへ…って関西人なら感じるかもですけど,それもド真ん中,ジャンジャン横丁へ。
 わし,大学は関西っスけどここは久しぶり。
 雑誌で沖縄料理とカテゴライズされてた「丸徳」へ来てみたんだけど…ああ,この店!?テレビとかで以前から有名って聞いてた店でした。
 ココ,沖縄系だったの?
 まあ確かに,入ると沖縄民謡フルボリューム。オバチャン1人がデカい煮込み鍋を守護してる横に,泡盛の1升瓶ずらり。
 軽い朝飯気分でホルモンうどんを頼む。すぐ出てきたお椀には…ホルモンってより中味汁っぽい肉片がうどんの中にプカプカ。
 肉汁はまあ旨かった。けどうどんはそこらのモノ。――後から来た香ばしいオッサンが,
「瓶ビールと煮込み」
 うーん流石!そのチョイスがベターかな。
 ただ,このチョー大阪臭いエリアのド真ん中に朝からウチナンチュが沖縄看板掲げてる。今のわしにはそれだけでちょっとした感動。

 なんばは「えべっさん」の人出でごった返してます。
 ビックカメラすぐ南の「びわとも」に入る。昼定食の八百屋の野菜炒め定食をチョイス。小鉢でキノコの煮付けと山芋の和えもの,ご飯,味噌汁,香物付き。
 ここは沖縄系じゃないけど,野菜炒めはチャンプルーに近い濃い味。
 ちなみに日替り魚定食は,この日はカレイで高得点っぽい。出し巻・なす揚げ煮定食とか惣菜定食も魅力的。客の入りも良く,まあまあ流行ってる臭い。
 この店に来たのは,地元野菜が売りだったんで,大阪の野菜のレベルを試したろかい,って企画。東大阪の近郊農家の野菜らしいけど,味はボツボツでんな…。かなりイイ線行ってるけど…黒門市場が目と鼻のこの店でこうなら,大阪の食材はまあ広島レベル。松山や博多レベルにはとても届かん。
 京野菜が有名な京都でも同じくコレを試すのが,実は今回の大きな目的。
 批判的に書いてきた那覇は,この尺度では,そうは言っても少なし松山・博多レベル以上の実力だと思う。やんばるのオバチャンの言葉を借りれば…やはり土と太陽が違うんでしょね。

 道頓堀!!君はどこまで行くつもりだ!?年々ドハデになっちゃってからに…
 心斎橋通りを北上。北堀江一丁目の14…14…無いぞ?沖縄料理の「ポーポー屋」?
 ぐるぐる回ってると。カムジャタンを食わすコリアン家庭料理の店を発見。韓国で最もメジャーなのに日本で全く売れてないこのチゲ!よっぽど入りかけたけど…ふと見上げると,その小っこいビルの3階に「ポーポー屋」の手書き看板。
 でも…3階まで上がってみてもまるで人気がないぞ?真っ暗だし!
 一応ドアを押してみたら…開いた!?
「やってますか?」
「ああ…いいですよ」
 ちょっと変わった店っぽい。芯の強そうなオバチャン曰く「このビル,何か変わった店多くて。2階は時計修理専門店だし,4階は」ってこの幽霊屋敷っぽい雰囲気でまだ上に営業してる!?「貸本専門の喫茶店があるんです。ビルの探検に来る人もいますよ」
 ふーん…迂闊にエラいビルに来ちゃったか!?
 ぬちぐすい膳を注文。1500円といいお値段。
「沖縄料理と言ってもウチはちょっと変わってて」って言うだけあって。黒米ちまきに昆布煮付け,豆腐チャンプルーとジーマミー豆腐の小鉢,アーサーとゆし豆腐の汁の後,デザートに黒糖アイス――カウンターと10人掛けテーブル1つだけ,しかも客は一人も来ないけど…ここまでの大阪ウチナー料理でベストじゃど!!
 チャンプルーは豚の脂が程よく回ってちゃんとアジクーター。ゆしどうふの汁もさらさらと美味,ジーマミー豆腐のもっちり感もスイーツ並。
「豆腐は全部島から送ってもらってるんです」
「へえ。ナイチでも出来そうですけどねえ。特に関西なら」
「それがね」こだわりのオバチャンの眼がぎらつく。「ナイチと水が違うんですよ。こっちは軟水でしょ」
「?」
「沖縄は硬水だから,ナイチのニガリじゃ美味い豆腐がどうも出来ない。逆に島豆腐のニガリ使ってナイチの軟水で作った豆腐もイマイチ」
「あ…そうなんですか!」初めて合点が行った気がした。「だから大陸と同じさんぴん茶!」
「そう!」何かオバチャン嬉し気。「こだわって島で軟水作る人もいるけど」
「でも!」そこはわしが先を取った。「硬水は硬水で美味いですし!」
 オバチャン少し悔しそう。