本伝後記19[1年経過:総論-2]体系・維持段階]

2010-07-15 12:56
[[1年経過:総論-2]
体系・維持段階]

 はいはい痩せた痩せた!終わり終わり!
 …って感じには,全然ならんのです。
 わし自身も,体重降下の過程で「こりゃあ…痩せた後が大変なんじゃない?」と感づき始めたって位だから,体験のない方には――そもそも減量後なんて問題なの!?って思われましょう。
 現実には,むしろこのフェーズの難度が数段高い!
 先に,何がリスクなのか?という点に触れとくと。
 最悪,死にます。
 死ななくても,長く体調を崩したり,リバウンドの有無に関わらず減量前より健康や生活が悪化する恐れがあります。
 何でそんなに危険なのか?それは,この事実を考えるだけで理解できるはず。
 肥満そのものが,何億年の地球生物史上,この2~3千年に恐らく初めて起こった出来事。まして,自分の意志で痩せて健康になる――なんてDNAにとっては全く想定外です。DNAにとっちゃ,痩せることは飢えて死に近づく非常事態としか感知できん。当然,必死に回復を期す。その健全な機能が,リバウンド。
 なのに,意志の側で体重を維持しようとする。つまり,この段階でやろうとしてるのは,DNAへの真っ向勝負。大減量後の死亡記録が数多いのも,全然不思議はないわけで。

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▲2010夏 梅雨明けの京都の空

FASE2 維持段階
2-1 減量継続
〇 体重の測定は続ける。脂肪率の測定は必ず続け,必要な場合は目標値を設定する。
〇 過激な減量策を取らない。
〇 目標体重での食生活がカラダに完全に染み込んだことを,体重,体脂肪率及び摂取カロリーから数値的に確認

【ポイント】
 単に「慎重に」ではない。
 着地直後は不安定です。カラダもだけど,味覚,満腹中枢,体重維持のホルモン機能,体温調整とかの諸感覚が完成し切ってない。最終的にはそれらしか信じれるものはないにも関わらず,いずれもかなり気まぐれに働く。
 要は子どもと同じ。発達途上の感覚が試行錯誤を繰り返してるフェーズ。
 だから,適宜に客観的チェックをしながら,信頼できる部分から徐々に放任していくバランス感覚が必要になる。
 これは結構緻密な作業です。
 体重の数字そのものも,固定されるのを嫌がるかのように乱高下し続ける。一喜一憂せずに通貨レートみたいに長期トレンドを読みながら,短期の動きからも危険を察知しとかないとヤバい。
 例えば,上海で油ものを食いまくった後,8kg近い増量…ってゆうか正真正銘のリバウンドがありました。
 さすがにその時には――おおッ,ついに来たか!レプチン君,満を期しての呪いの発露,危うし半減プロジェクト!とか動転しちゃって短期的に減量体制へ戻そうかと思ったけど…結局思い止まりました。
 焦ることはないべ。自分の食生活センスを信じましょ。
 結果的に,目標値には3日で戻っちゃいました。
 こんな不安定状態で,再度「人工飢餓」の状況を作りだすのは危険過ぎる。追い詰められたカラダがどう反応するか?減量成功者にとっては簡単にカロリーセーブができるからこそ,厳に控えることにしないとヤバ過ぎる。
 カロリー管理自体も,自分の舌に自信が持てた時点で止める。これもかなり勇気が要るけど,長く続けるほど止めにくくなる。止めること自体は衝撃を伴わないから,今週は止めてみる,とかでもいい。
 管理体制が必要でなくなるのは,その食生活が自然体になったとき。元々それが究極目標なんだから,早く自然体を作って早く管理を止める。
 次はそのことに通ずるけど――

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▲2010夏 梅雨明けの金沢の空(以下同じ)

2-2 習慣化
〇 自然に生活して目標体重が維持できるかどうか最終チェック。
〇 まだ十分に自然体で維持できないなら,新陳代謝策と美味の快感をより一層掘り下げる。
【ポイント】
 にわかに漠然としてくる。なぜかと言えばこのフェーズ,もう自分の皮膚感覚と言うか,シックリ来るかどうか?みたいな内面のセンシティヴな問題だからです。
 ある行動パターンが,本当に身に付いたか?という確認。
 こんな自律的な段階を,他人様がワアワア言えるわけがない。ましてその他人様は,9割以上が減量成功した経験がないわけだから,他人様のワアワアで参考になる情報は,まあ有り得ない。医者や書籍も含めてだ。
 つまり,純粋に問題発見のステージ。
 と言っても,別に複雑でも高尚でもなくて,自分の感性に問い続けるだけ。自分にとって,例えば野菜食い,例えばウォーキングが,本当に快感なのかどうか?
 必要なら,もう一歩快感を深めるべき。よく味わえば味わうほどに,脳に快感は深まってく。この意味では,自分の快感設計の総仕上げとも言える。
 そう,快感は作れるんである。
 決して精神主義的にならない。過激にならない。繊細なナイーブさとバランス感覚で,最終調整する。
 まあ,この段階に至った方は,自分の快感と上手に付き合う術を体で覚えちゃってるはず。
 この術,単に体重維持だけじゃなく,その後の生活スタンスを変えてしまいます。

[MS→WP移行時破損]

2-3 体調管理
〇 細かい変調にまで最新の注意を払う。減量前の経験はほぼ参考にならないことに留意。
〇 体の痛みや違和感に応じ,整体や全身マッサージを多用。
〇 厚着,マスク着用,うがい,手洗いなど感染症対策を徹底する。
〇 不調時には,やや神経質に休息,睡眠を取る。
【ポイント】
 運転席のアイテムは同じなのに他人の車を運転する感覚と言えばいいんだろか?
 減量後のカラダは,スペックも癖も弱点も,全てが異なってきます。
 その違いの最大要因は,脂肪量。
 脂肪は,余ったからつくだけのもんじゃない。生命維持に必要だからつくもの。エネルギーのストックとしてだけじゃなく,細菌に対する抵抗力や保温性とかの多機能を有するらしい。
 脂肪量が多いのは,生物的に明瞭に優位な状態。そこに「適度に」って限定を学者はつけたがるけど――個人差もあろうが,わし自身の感覚では――動かない状態なら,3桁時代の方がカラダは高機能。
 その影響は具体的には,外科的には重心線,内科的には感染症への抵抗力に顕著に出ます。
 カラダの中で脂肪を貯める場所は,荒くだけど決まってるらしい。ラクダの場合はコブの中だけど,人間は腹と尻。動かないなら,この部位に脂肪のクッションは非常に快適。座布団も要らない,腰痛にもならない。あれは快適だったな,動きさえしなけりゃ。
 そんな極楽肥満ライフで,筋肉は衰えてしまってる方が多いでしょう。痩せてく過程で動けるカラダが音を立てて再構築されてく。それはむしろ安定期に入ってから本格化すると感じました。
 衣服は3LからMに。肺活量は1.5倍。靴のサイズは▲2cm。
 妙な箇所に突然痛みが出ては数日で消える。その繰り返しが来ると思います。わしは結局大事には至らなかったけど,調子を見ながら整体やスポーツ系のマッサージの頻用をお薦めします。
 体が軽くなると,歩ける,走れる,自転車に乗れる,とついハシャいで動き過ぎちゃうけど,これが再構築期のカラダに無理を強いてしまう。でも新陳代謝を損なうほど動かないと安定化を阻害するし,徐々に運動量を増やしてくバランス感覚が必要。
 突然ジョギングとか新しいスポーツを始めるのは,基本的には止めといた方が無難。おそらく,心臓にも負担がかかるはず。
 これが内科的には,さらにリスクが高くなります。
 結果的に半減後2年間,特に冬は,始終風邪をひいてる状態。ひいたら重い上に治らない。ちょうど新型インフルが流行った時期で,風邪をひくたびに病院で宣告を待ち…怖いったらありゃしまへん。
 朝晩必ずうがい手洗いって以外で,病状改善に一番即効性があったのは,眠ることだったかも?特に季節の変わり目には,睡眠薬飲んで食事以外はトコトン寝てたら変調が収まることが多かった。体内で切り替え作業が終わりました状態になる感じ。
 あと,ダメ元で微量栄養素のサプリも手当たり次第試した。経験的にはマルチミネラルみたいな多品種混合が良かった気がする。

[MS→WP移行時破損]

2-4 無理解対応
〇 自力で対応する覚悟を決める。医者を含めて,減量後ケアの困難性について理解が得られるとは思わないこと。
〇 上記を基本としつつ,配偶者や近親者,友人や直属上司には,折にふれ一応説明を繰り返しておく。
〇 社会人の場合,休暇などの福利制度は遠慮せずに使えるだけ使う。短期的に職場等に迷惑がかかることを恐れないこと。
【ポイント】
 わざわざ挙げるのは,最初に触れたように経験者率0.5%の減量成功者に関して共通認識なんかないから。学問的にすら何ら明らかにされてない世界だからです。
 大減量をやった医者や栄養学者,脳科学者がいれば,スゴく色んな知見が得られると思う。現に大病や減量を経て自然食の店を開業した例に相当出会いました。
 つまり,減量成功の過程と着地状態って,その位に社会通念では理解され難い場所みたい。自分が今言ってることだって,減量前のわしが聞いたら全く理解不能でしょう。
 医者や栄養士も「痩せろ」とは言うけど,痩せた後のケアは驚くほど誰も知りません。症例が希少なんだから当然ですが。
 ただ,ウチの会社の産業医曰く「1年は気をつけろ。変調があれば大事を取れ」。わしの実感では,2年間だと思う。減量過程の倍程度の期間は警戒体制を取り続けた方がいい。
 痩せる――意思的な飢餓ってのは,生き物にとってその程度に危険な行為。
 わし自身も軽~く始めて後で思い知ったけどね…今,目の前に減量しよって方がいたら,原則としてお止めする。無責任な事は,恐ろしくて口にできん。危険を冒してでも痩せる覚悟と目的がある方にだけ,この航海をお薦めする。でないと,失敗しても成功しても後悔する。
 コウカイで掛けてみました…。