外伝10 弗 弗the tenth day弗 Last&best crazy walking in NYC

 昨日のインド人御二人様,どーなったかな?
 今朝も6時半かっきりに発車したホテルの空港リムジンバスから,遠ざかる宿を眺めつつぼんやり考える。
 昨日,空港からリムジンを呼ぶ電話をかけてたら,「そのホテル,いい?」と声をかけられる。メガネに背広姿のインド人紳士。「良くはないけど安いよ」と正直に言うと,即決で同じリムジンに乗り込んで来た。宿予約なしでNWK空港に着いて,さてどうしようってとこだったんだと。
 今このEcono lodge,そんなアジア系の旅行者で一杯。同じく宿キープなしでフラッと来たらしき風情の方々。
 疲れて早く寝てるから早朝出勤にも慣れてきた。こうなると,ええ宿やがなこのEcono lodge。この程度の苦労を惜しんで1万以上するよな宿を足場にする必要ないやね。
 それに――やっぱ旅行は,行き当たりばったりでなきゃ!
 上空に霞。
 天空に淡くかかる満月。
 グラデーション鮮やかに染まる東天の朱。

 丸一日過ごせるNYはもう今日だけ。
 明日は14時JFKテイクオフ。初めての経路ってのを考慮すれば,11時にはPENNに入るべきだろう。
 ただ,連日の通勤で鉄道には大分慣れてきたな。
 なぜか本日の空港列車はシャトルバスで代行。こっちの鉄道では常套手段みたい。3分で着いたから特に支障はなく,昨日と同じ07時04分発のNJ tranjitに乗れた。
 ニューアークPENNを過ぎる。やはりかなり開けた町です。この駅前に安いホテルがあれば,十分いい滞在になりそうだが。
 この列車の車内,インド英語がやたら氾濫してる。インド便が着く空港だからとは思えんか,この付近にはえらく南アジア系が多いみたい。住居費が安いんだろか?

 マンハッタンPENNの鉄道駅には,一般鉄道とバス路線のほか,地下鉄も乗り入れてる。知れば知るほど,その集積度には驚かされる。
 地下鉄駅名は34st.。今日はこの駅からマンハッタン歩きをスタートします。
 Fトレインに乗ろうとホームで待つが,なかなか来ない。掲示板を見てると,どうやらウィークエンドはあれこれ特別ルールがあるみたい。しかも週ごとにルールが違う。今朝はFは少ないみたい。
 突然Eトレインが来る。ええ!?なぜにEが?通るはずないだろ?…怖いのでやり過ごす。20分待ってやっとFが来た。
 もーワケ分からんが,とにかくDerancy st.&Essex st.まで乗車。
 F車内には,この先の停車駅名が繰り上がってく電光表示があった。横軸に「Next stop」「2stops」「3stops」と印刷された液晶画面の駅名が,停車するごとに変わってく形。これは助かる!降り間違いはあり得ない。ただ,駅名まで表示するなら名称全部を出してくれ!!「2AV」の3文字で出されても…アダルトビデオかと思うじゃんか!

▲Kossar’s Bialysのベーグル

 さて今日も元気に朝飯じゃ!
 やっぱり朝ベーグルがいーな…ってことでGrand st.,今まで歩いてたのより東側,ピクルス・ガイズの近くのKossar’s Bialysへ。
 ガランとした店内。簡素なイートイン席も3人分ほどあるけど,基本は工場だぞって気配の中,カウンターにオバチャンが一人ぽつねんと立ってました。
 なのに?
 PlaneとWhole wheatを1つずつ買う。各$1.00。
 Chrystie st.の広い緑地帯にある公園スペースへ移動。夕方にはバスケットとハンドスカッシュに燃えるギャング系で賑わうコートが,朝は中華世界の定番風景,じいちゃんたちの太極拳の練習場になってました。
 そのコード脇のベンチは,朝食を取る中国人でほぼ一杯。やっぱ落ち着くスペースじゃのう。かろうじて空いてたベンチを確保し,おもむろにベーグルをパクリ。
 な…何じゃこりゃ!?
 これまで食ったベーグルと…全く,根底から違う!!――噛んだところでムワッとくるのは,焼き香でも調味料でも小麦臭でもなく…未知の味覚…何か軽い酸味と臭みみたいなものを帯びた生地の生々しさ。これはホールウィートでも同じだったけど,こちらはやや野性味を帯びる。
 これらの違和感は,後味でさらに顕著に現れる。これまで食べたことのない不思議な,そんなはずはないんだが青身魚みたいな臭気を残してく。これには最初ちょっと眉をしかめかけたけれど,かみ締め続けてくと…理解できない満足感がやってくる。脳はまだ認知不能のフリーズ状態なのに,舌と消化器は既に美味と認めてしまってる。
 ユダヤ系の主食であるベーグル,日本でもアメリカの大半でも大抵「パン」になっちゃってるけど…こーゆーのが原型なのか?
 そうだとすれば,これは――ヨーロッパ系のパンとは全く別の食世界です。
 中東から中央・南アジアのナン系とも違う。あえて近いものを挙げれば…中華饅頭か。何も入ってない北方タイプ。
 あれも奇妙な酸味と臭みを持ってることがあるけど,一番近い気がする。恐らく,麦の食べ方としてはかなり古い型なんじゃないか?チベットのツァンパの次位の段階の。
 昨日考えてたアメリカのマイノリティの食文化の一つ,ユダヤ系。今やニューヨーク名物みたいな扱いをされるベーグルも,まさにマイノリティのパワーフードなんだ!それを思い知るに十分な違和感あるベーグルでした。
 たっぷり30分は噛み締めてた。時計は9時を回る。行き交うチャイニーズの集団。往来がにわかに増えてきた。

 サイト情報では,なぜか日曜日はグリマが少ない。2つだけ見つけてるとこも,いずれも10時からと遅出。
 安息日の感覚なんだろか,それとも日曜朝の礼拝の時間を外してるのか?
 いずれにせよ時間が余るんで,チャイナタウンをうろついてたら…急に気になってきた。――ここまで完璧に中国化してんのなら,もしかして飲茶もあんじゃない?
 迂闊にも全くチェックしてなかった。急いで物陰で歩き方をめくると?あるじゃん!すぐ近くじゃん!しかも,玄関の貼り紙を確認してみりゃ,飲茶楼の例に漏れず朝から開いてるじゃん!

▲金豊大酒楼で飲茶

 金豊大酒楼。レベルはここだけ行ったんで知らん。
 知らんが,歩き方の評価ではムチャクチャ美味いとかオシャレとかじゃなく,まずまず普通の飲茶楼扱いで――それでいい,普通のニューヨーク飲茶へ行ってみたいわけで。
 開店とほぼ同時に入店したんで大丈夫だったけど,結婚式場並みの広さの赤絨毯にビッシリ配置丸席が見る間に埋まってく。そんなに人気店なのか?それとも日曜だからか?
 注文はオーダー用紙形式の外見だけど,香港と同じく用紙には特点が並んでて高いみたいなんで,ワゴンから適当に選ぶ。中・大点各1つ$7.70。蛯入りの水餅みたいなのと焼売でした。ふわりと染み出したあっさりとした,しかし深い滋味が…タマラン!
 茶は高山烏龍茶。これも本式!茶香に発酵臭が心地良いハーモニー。ただし,聞こえるのは広東語なんだけど,洗茶をしてる人はなし。とゆーか大杯と小杯自体が出てない。その辺はアメリカナイズされてる?
 悪いけど…ハッキリ言わせてもらうと,やっぱマカロニ&チーズの約12倍は美味い(当社比)ッス。
 白人もアフリカ系もかなり来てます。そりゃそーだろな。わしがニューヨーカーなら同じ金をここで食うぞ。

 Canal st.からQトレインに乗車。
 Times squ.で1番トレインに乗り換え。この駅,初めて使ったけどかなりデカい駅やね。乗り換えラインも多い。
 86 st.Broadwayへ…と思ったけど2番が来たから72st.で下車。
 少し歩いて自然史博物館前へ。
 W77th st.Columbus Ave.のIS144グリマへ伺う。
 かなり賑やかです。これで7勝4敗,もう優勝間違いなしだ。

▲Tree Licious OrchardのApple pie
 やはりパイ系は,とても日本じゃ食えない美味さ。脱帽!

[購入物]
■Tree Licious Orchard
Smork house×2
Apple pie
■Berkshire Berries
mini NYC Rooftop hanny
■Gajeski Produce
Red plum
Blackcerry tomato
■Milk thistle
Organic Milk(Whole milk quarter)
 瓶入りミルクだ。ムチャクチャ重い。この割れ物持って夕方まで歩くと思うと…許してくれ,もう持てん。持てんっちゅうのに――
■Ardith Mae
Farmstead goat cheese(Fresh Chevre)
 つい味見してしまったのが間違いで――死ぬほど美味い!
 思わず買ってバックに収めてから気付く――ああッ!これは…当たり前だがさらにズッシリ!

▲チーズ&トマト
 ビネガーもオリーブオイルもないが,まあイタリアンな感覚で。それでもチーズ臭だけで十分酔えました。

 W.86th st.Amsteldam Ave.のBarney Greengrasに寄ってみた。
 ここでも一つベーグルをゲットするつもりだったけど…ここはどうも違う。
 白人に超人気のお店らしくて,玄関口に日本語のも含めて紹介記事がガンガンだし,昼飯時で列も出来てたし,何より客層がエラくオシャレっぽい…こーゆーとこが美味い試しはないし,退却を決断。
 86st.の1番は改札自体が閉鎖中。1番は色々と絶不調らしい…。
 86st.からCトレインで14st.へ。「Lat end of mazzanine」との表示(mazzanineの意味が分からんが…少年マガジンか?)に従いずっと歩くとLの8av.駅に出たんで,昨日ぶち怒られた1av.へ。
 目的地トムキンズ公園手前に,クリスチャンスクールの校庭を使ったフリマが出来てた。古物,アクセサリーから古着…まではまあ分かるが,自転車とかチェス盤とか指輪まで打ってるぞ?
 懸案だったベルトとTシャツ入手。もう帰国するんだけどね。
 しかし驚くのは値段――$4と$7?結構モノはいーぞ?アメリカの物価ってムチャクチャ…安いのか高いのかワケ分かんねー!…けど,おそらくこんな感じだろう。
 つまり,生活ギリギリなら日本の半分程の物価レベルなのに,少し贅沢しようとすると日本の倍以上になる。つまり,クオリティの対価格価値が高いってわけで,そのクオリティってのが純粋なブツだけじゃなく社会的ステイタスとも通じてて…つまりその位,社会が経済的に分化してるわけだ。
 Ave.A,E7th st.に衝く。おっ,やっとるやっとる!!Tomkins squ.parkグリマ!
 8勝4敗。って?わし,もう12箇所も回ってんのか?
[購入物]
■Norwith Meadows Farm llc
Heirloom Tomatoes
Shallots
Cippolini Onions
 いかん…ホントに肩,千切れそ…つーかこのトートバックが破れたら,中身はミルク瓶と野菜がぶちまかれちゃうんですが…。

 8st.からRトレインで42st.タイムズスクウェアへ戻り,ポートオーソリティへ。
 Fort leeをバスで目指してみる。郊外の新興コリアンタウンと聞いてた。
 NJ tranjitの158番が行くはずだけど…日本の感覚で探したけど,全く分からんぞ?とりあえず往復チケット(Round trip:$8。この言葉もおととい覚えたばっか)を買って,お姉様に乗り場を聞くと?
「ツー・ジェロ・ツー」だって?158はどうなった?
 とにかく探すと,確かに「202」の表示がある。エスカレーターを上がってホームへ。
「No.158 Fort lee via River Rd」って標識に,コリアンがいっぱい並んでた。なるほど…ホームナンバーとルートナンバーが違うんやね。ってゆーか,何で使い分けるよ?
 ちなみにコリアン以外にアフリカ系,白人の他,日本人駐在員めいた一群もいる。
 1530発車。
 ターミナルからいきなりハイウェイに乗る。
 西行。すぐトンネルに入る。2車線。ダイハード3で水浸しになったトンネル…かもしれん。
 5分でトンネルを抜け,ホーボーケン行きと道が別れる。
 線路に沿って北へ,マンハッタンを右手に見ながら爆走。
 バス停のお知らせはないらしい。一応運転手が一声叫んでるが,まるで聞き取れん。こりゃ雰囲気で降りるしかないな。頭上の赤い降車ボタンを押すと「Stop Recuest Walk Alertly」って前方にランプが灯る仕組みらしい。
 真後ろ,恐怖のロシア人おばちゃんがロシア語で携帯にキレまくって怒鳴ってる。
 右手マンハッタンの高さが低めになってくるのに反比例するように,道沿いには高層マンション多数現れる。
 そろそろか?
 途中,三省堂の本屋とか日系店舗の多い区画があった。さっきの駐在員的一群はここで降車。日本人エリアらしい。
 Fort Leeの表示が現れる。適当に下車。

▲Novaのマッシュルームピザ

 結果的にかなり殺風景なエリアだったんで,ピザ食って帰る。
 って…帰りのバスが来ん。やっと来たのがGW Busst.だったんで乗る。
 今ハドソン川を渡ってます。かなり緑豊か。
 ただ…ブロンクス近くだぞ?

 気のせいか,やや荒れてる感じのGWバスターミナルから足早にAトレインに乗車。
 でもまあ割と客層まともそう。アジア系も大分いるし,ホントは割と安全だった?
 どーでもいーけど,すぐ隣で,車内に座り込んでタイコを叩き出したオバサンがいるんですけど?さらに,持ち込んだラジカセ大音量に乗って,踊り始めた兄ちゃんがいるんですけど?この場合,私は無視してていーんでしょか?それとも,一緒にリズムに乗ったフリでもすべきでしょか?

 日曜日のセントラルパークではダンスショーがあるってんで期待してたんだけど…もう18時を過ぎた。ちょっと遅過ぎるよな…と気弱にPENNへ引き上げることに。
 アナウンスがインド英語丸出し。あの喋り方って一発で分かるな。
 PENNで,気になってたピザ屋に入る。
Don Poli Pizza
Beef $3位
 かなりイケてた。ミラノ風とまでは行かないけど生地が分厚くないのにムッチリ。基本,ナポリ系よりミラノ系の方が好きなわしには…満足。
 ただニューヨークのピザ,美味いんだけど感動がない。日本で出るピザに似てるからか。美味い美味いと評判だったけど…腹持ちの良さが主目的っぽい傾向。軽やかな美味を追求するピザ,結局イタリア直輸入の日本の方に,わしは軍配を挙げるな。