[前日日計]
支出1500/収入1490
/負債 10
[前日累計]
/負債 446
§
→9月24日(土)
0746稲香超級漁港
(早[日/辰]添暖意)農家肉餅飯3.8元
([日/辰]光任[イノホ]点)野菊蒸滑鶏10元 370
1123大栄華酒楼
ソーメイ茶
(飽点)栄華白蓮包
(南北美点即叫即蒸)鼓汁蒸魚雲 370
1513生龍清湯[月南]
袖珍[ロ加][口里]羊肉飯750×.8=600
2125義順牛[女乃]公司
シュワンビーナイ100
[前日日計]
支出1500/収入1440
/負債 60
[前日累計]
/負債 506
§
→9月25日(日)
ここだけの話にして頂きたいのだが,この旅行には「我輩は猫である」を忍ばせてきてます。
精読中です。細かい目で読むとこの作は無茶苦茶に滋味ある著ですね。さらに恥ずかしいことを書くなら,これが初読です。何度かかじりはしたものの,これまでこれを面白いと思えたことがなかったんですが。
我知らず,何らか新しい感性が芽吹いてきてるんでしょうかね?
さて食べ歩きですが…前回の新しい店から潰して,謂わば己の退路を絶つ形から入ることにしました。
ということは,とりあえず本日向かうは即ち稲香と花園である。
※結果的に,花園は思い付きで後日回しにしましたが。
▲稲香超級漁港(旺角)のポーレイ,
(早[日/辰]添暖意)農家肉餅飯
とりあえず近場の稲香超級漁港(旺角)へ伺います。7時46分。
ポーレイ
(早[日/辰]添暖意)農家肉餅飯3.8元
([日/辰]光任[イノホ]点)野菊蒸滑鶏10元 370
まずは肉餅飯が来ました。
第一印象としては…値段なりに安っぽいシロモノだなあ。
金たらい,それも骨入れに使うようなというか百均で絶対売ってるけど誰一人買わないようなアルミの鉢に,ご飯が半分押し付けるようによそおわれてる。その上に,クチャッと肉餅。日本人の目でチラ見すれば納豆と見紛うばかりのグチャッさである。実際箸でつつくとミンチではない肉と肉が汁で密着してて,端的に言えばいかにも汚ならしいし,敵対的な表現をするなら食う気にならない。
けれどこれが──美味いから困ったものなわけです。
粉粉しい米粒の外皮がサリサリと口蓋に染みる。それが歯に馴染んだ頃,その間から滲み出て味蕾に到るは硬質の甘味。ちょうど日本茶に対する中国茶の如くです。
ジャポニカの柔らかな甘味にはない,インディカの魅力。
それがこの60円のアルミ皿の上に完璧に乗っかってる。
▲稲香超級漁港(旺角)の([日/辰]光任[イノホ]点)野菊蒸滑鶏
追ってやってきた肉餅。
こちらも,要するに佃煮のような作用でこのインディカの上から染み渡ってきてる。佃煮と書いてしまったが,醤油ではなく淡麗なオイスターソースに近いし,粘着力は極めて弱く匙でさくりと崩れる。見た目とは違いそぼろに近い穏やかな味覚です。
滷味のような漢方スパイスはほとんど感じられない。
蒸滑鶏の「野菊」は何かの暗喩なんだろうか?状況的に言えば,鶏肉(恐らく親鳥の胸肉)を上から茸(少なくとも2種),下から油揚げで挟んだものが,黄色い脂ぎった液体の海に浮きつ沈みつしてるという体なんだけど──野菊?
道理でどうやら民さんは。
今日は何だか純日本文学なのウフフな心地ですが,この店,稲香は純香港な味付けの極にあると評されてるようです。ではその独特な味わいは,新進という意味なのか非香港的という意味なのか?
今回で中国南部の主要な味を押さえ終えた気概で言えば,この海の味わいの官能的な味覚は,前者,つまり新しい香港の味なんだと思います。
脂ぎってはいるけれど鶏を主体とすら軽快さと潤滑さ。舌感としては濃厚にさえ感じられるけど,強い調味は何もない。ただあるのはムンと突く濃厚な香り。
横を向いてるような味です。
もちろん称賛の言です。稲香の飲茶は,こういうことしか言えない味だから困る。
あーあ。あんまり動転したものだから予定時間は大幅に過ぎて9時を回ってしまう。
これは花園は明日にすべきだな。前回見つけたもう一軒の大物を先に御参拝しよう。
富士洗衣にほぼ最終日相当の洗濯を出して,屋移りをする。
本日予約したお宿は──ややアブないロケーションを選んだ。でもそれだけのことはあって,湯沸かし,テーブル,窓付き,喫煙可で3百元。実質的な不便も危険度もエロ度もなし。年々清浄化されて行く返還後の香港の混乱,こういう隙間の美味しさを醸し出したホテルです。
ウェブ予約は今回も一泊だけ。実見後,オーナーも誠実,管理体制も堅かったから連泊にしました。──これで全10泊の最後。ちなみにうち半分の5泊が七天。黄・白・青のTシャツを見たら振り向くようになりました。
さてもう一軒の問題の飲茶とは,もちろん元朗大栄華です。
チェン湾線を美フォまで,西鉄に乗換えて北西へ。1055,元朗着。
この店のいいとこは,少なくとも初見の観光客は「こんなとこまで」来ようと思わないこと。実際は尖沙咀むからでも乗換込みで40分,早ければ30分強の距離しかないのに,尖沙咀の観光客からの見た目はかなり遠く見えることです。
とか言いながら,駅の出口を逆に出てしまい,少し時間をロスしました自分だって大概観光客ですけどね。
11時23分にオーダーをすませた大栄華酒楼。既に大にぎわいで,やっとありつけたこの席もカウンター脇のやや狭い席で,かつ空調の真下なんで最後にはやや寒くなりました。
ソーメイ茶
(飽点)栄華白蓮包
(南北美点即叫即蒸)鼓汁蒸魚雲
そういえば初めてのソーメイです。
美味い。
この臭みのコクというか,硬質な苦味の薫りというか,震えが来るような美味に感じる。とても中国滞在中に毛嫌いしてた茶種とは想起し難い。それともここのが特に美味いんか?
小点は2つ同時に来た。
白蓮包。
食後すぐ調べると「白蓮」とは蓮の実のことだという。けれど一口目に思い浮かべたのは薩摩芋でした。それも唐芋か,安奈芋か。
今までも蓮の実は台湾スイーツで何度か口にしたことがある。もう少し硬質,もう少し粉っぽい味覚だったと記憶する。それが正しければ,他の芋がブレンドしてあるか,あるいは何らかの未知の加工が施してある。
何という淡白でほくほくした餡!包の餡にするにはあまりに意外であまりに惜しい。
そういう謎めいた淡い甘味として,それはまず口の中に入ってきます。包の小麦香に纏いつくように口中に溶けたそれは,溶けきる前に驚くべき持続力で伸びやかに甘さを水平飛行させながら,ついにその姿を味覚の地平に隠すまで飛翔し続けた跡に,その振動のみを大気中に残し続けていく。
う~ん,これで伝わるとは思えんな。何が近いかと言えば,やっぱり熊本のいきなり饅頭。あれの中に蓮の実が入ってる。…う~ん,これもどう想像していいのか分からんでしょうな。
一口ごとに顔がニンマリしてしまう。と,これでは何も言ってないのと同じだな。
世に「荒炊き」というものがある。というか西日本が中心だと思うけれども,他では捨てられるか出汁取りに使われる頭などのアラの部分を煮るもので,美味いのは知られてても複雑な骨を取る手間の多さから,指や歯を使って骨を取るのに慣れてない地方又は育ちの御仁には,食べにくさ以上に汚ならしさから敬遠されてるはず。
そういう点で,この食方はさすがに瀬戸内を中心とする海辺にしかないものと思ってました。
前置きが長くなりました。 蒸魚雲です。
魚雲とは,魚の頭の煮つけの中国語です。今回のイーストコーストは魚料理が著名な地方なので他にもあるかもですが,広東には魚雲[保/火]という鍋煮込みも存在するようなので,少なくとも食べるらしい。
知ったげに書きよりますが,これを注文したのは,偶然です。それも完全無欠です。「南北美点即叫即蒸」の部の先頭にあったから,何か知らんけど,え~い!という投げ槍な注文をしたらど真ん中に的中したという──とんでもない大当たりでした。
魚は何なのか,ついに分かりませんでしたが(Y!知恵袋参照:ハクレン説)白身魚で脂の味が素晴らしい!この脂に醤油ではなくブラックビーンズの渋い苦味が絡み付いてるわけですから,これ以上味を解説する要はありますまい。
殊に…抵抗のある方には辛い文章になりますが,骨の外郭の内側に薄く付いた粘膜状の部位をしゃぶりとると,これは昇天の美味であります。
最高!
多少の軟骨は奥歯で潰しきって食べてしまうのであります。日本の魚以上に複雑な外郭構造なのですが,ここは中国,手は使わずにあくまで箸で一本一本骨を歯で選り分けながら僅かな身を残さず舐めへずっていく──給仕のおばさんが途中で皿を代えに来てくれました。自分が和寇の血を引くかどうかは知らんが…瀬戸内人の技術を賛嘆したというか,換言すればあまりにキチャナイから見るに見かねたというかだと思われるが──これだけ美味けりゃ構っちゃおられん。
そんでこれが,鼓汁だからなんだろうか,ソーメイ茶にビシッと合うんである。魚と茶?鮭茶漬けくらいしか他例を思いつきませんが,合うものもあるということは御理解頂けよう。何というかこの魚,旨みはあるのに妙に生臭くない。鶏肉のように食える魚料理,というと言い過ぎですが。
美味に浮かれて長々と書いてしまった。
14時を迎えようとしてる元朗。ここは福徳街16号,栄華を出てすぐ座り込んだ郵政局辺りの木漏れ日のベンチです。
▲大栄華酒楼の(飽点)栄華白蓮包と(南北美点即叫即蒸)鼓汁蒸魚雲
→両どアップ
※実はこの品「魚雲」,後からいくら調べても分かりません。一般的な中国語ではないようですし,一部に「魚頭」のことを言うとの記述もありますが,どの地域のどういうゲテモノなのか,確認できていません。もちろん日本国外で食べたのはここだけ。香港でもレアな,元郎らしい品だったのではないでしょうか?
なお,日本でも「あら炊き」というのは決して古くからあったものではなく,どちらかと言えば,正規に商品化できない「恥ずかしい」「貧しい」食べ物という印象の地域が多いと思います。日本でも決して自明の食品ではないわけです。食品学徒のどなたか,是非調べてみられては?
元朗の中心部の雑踏をひとしきり歩いてから15時13分,生龍清湯[月南]へ。
袖珍[ロ加][口里]羊肉飯750×.8=600
この店で牛[月南]以外を頼むのはモグリだぜ,とか声が聞こえてきそうだけど,ここのパキスタンカレーをあえてムスリムな本場の雰囲気にアレンジしてみたくなった。
羊でも美味い!やっぱりサッパリ大辛でガッポリ美味い!
ここのカリーはまんまパキスタンだと言っていい。この強烈さの中には流石に広東は両立させられない。しかし,この大きめにカットした肉の中に広東を宿してる。ここにはカリーではなく清湯が染み透ってて,恐らくカリーじゃない料理と同じものなんでしょう。この中,香港の地勢的に言えば「ウェイ」みたいなものとして,広東に磨かれた肉味が逞しく息づいてる。
と一度は結論づけた気になったんですが…そう,これはあくまで仮説として,ですね。
なぜこの清湯の店のパキスタンカレーがそれなりの定番化に至りうるのか?
パキスタンカレーは,純バーラトのスパイス文化(ラッサムのような)に肉汁を交えたもの。ただ肉汁とは言え実態は脂が主体。ここに香港の清湯が入り込む余地はないわけじゃない。
ここのカレーは,実は清湯を遠景に入れてるからこそスパイスがキリリと前景化しえているのではないか?
そういう予想は立つんですが…どうしてもそれが実感できない。ほとんど宇宙空間の背景放射のように,スパイスの光に隠れているはずですが,背景放射とは違い前景に根深いところで作用してると思う。思うんだけど…どうしても味覚するには至らないのはわしの力不足なんでしょう。
16時14分,元朗から帰路につく。
この街は,西側はすぐ街にはいるんだけど,折角だからと中心部をうろついて東側から帰ろうとするとすごい大回りになる。
いや正直なところを書こう。かなり間違った道を進んでしまってました。大分土地勘が出来たつもりでいざGoogleマップを開くと駅の反対側に3キロほど離れた場所にいた。もう次の駅に行こうかと迷ったくらいのとこまで行ってしまってたんである。
ただ,悲しいので自己フォローすると,そのくらいにこの街はうろついて和まされる。香港の好い田舎街のくせに割とセンスもよい。今回間違って入ったエリアには小さいながら日本人エリアもあるらしい。「彩」と幕を張った蕎麦屋らしき店に「午後の麺は完売しました」と日本語で書いてました。日本人のたまり場みたいな場所だろうか?
クリーニングの衣類を回収して一時帰宿。
うう~疲れたばい。病み上がりだからかのう。いや,病み上がる前じゃけえかのう。もとい,病み上がっちょる真ッ最中じゃけえじゃろのう。
昨日住元堂で買った感冒漢方茶に,今日のコンビニ買いの粉薬を溶かして一杯。う~,ま,不味いぞう。 でも効く!効くぞう~!(の,ような気がするぞう)
三思堂はギリギリで閉まってた。19時半が閉店で,やっと見つけて連成商業中心11階のドアが開いたのが19時20分。
この店は…まあ気分で閉めても文句言えんわな。明日は11時半オープンなので──今回は諦めることになる。
いつもの布吉特でタイマッサージを受けてると,やっぱり肩が痛い。左の肩だけ弱くして,と言うとそっちは何とかなってきたけど,今度は喉が痛くなってくる。
「あんた!熱があるよ」とアンマ師のおばちゃんより警告。「いやマッサージすると体温あがるでしょ」では当然ごまかしきれず。
うう~。帰って寝よう。
以下昨日と同じ。 明後日の帰国までには直さんと,とりあえず検疫で捕まると厄介なんで…。