肉を消費しない社会構造@ことばぐすい

紀元前300年のインドの人口は,すでに5000万人から1億人と推定されるという。だから,一戸あたりの農地も小さいものとならざるをえず,牛を食べてしまうようなことはタブーとなったのだとハリスは論を展開するのだが,私には逆に思われてしようがない。つまり,今まで述べたような様々な理由からであろうが,肉を消費しない社会構造ができあがっていったために,それだけの人口規模にも増えていったのではないか。日本列島でいうと,縄文末期であるが,その頃の人口は全体で10万前後,多く見積もっても20万人代とみられる時代である。その時期にそれだけの人口を許容する社会ができあがったのではないか,と思われるのである。

(森枝卓士「アジア菜食紀行」講談社現代新書,1998)