外伝06@(@_07_@) 早飯 (@_07_@)

 早飯と言えば,やはりインド人!
 席につくや,カリーとチャパティの皿がガン!と出る。ほとんど投げ出すばかりの早業!客もこれをちゃっちゃと右手でちぎり,口にパクパク運んでく。談笑なんか皆無。ほとんど鬼気迫るオーラを発してガツガツ行っちゃう。
 これが南の米文化圏だとさらにスゴい。米とカリーを右手3本指でちゃっちゃとまとめて連続的に口に運ぶ技は,皆さん人間国宝級。
 だからガイジンは,バスの飯時間なんか死に物狂い。20分位で食わないと置いて行かれかねん恐怖がある。
 さて台湾である。
 中国語の「早飯」は朝ご飯のことです。大陸でもだけど,これがかなり深い!台湾にはまた台湾の流儀があって面白いのよ!
 大変紛らわしく引っ張っちゃいましたけど,今回は台湾の朝飯のお話です。例えばこんな――


▲早餐屋の典型的な軒先メニュー

 右手から,小龍包,鍋貼と始まって,[酉未]や餅などの中華パンに繋いでますね。
 鍋貼は焼き餃子。元々縁起モノの小龍包や餃子も,経済力ゆえか,台湾ではかなり定番の朝食メニューみたい。
 も一つ見てみよう。今度は素食(ヴェジタリアン)系。ある朝の街角に開店してた「佛隣美亦美」。
漢[保/土]:ハンバーガー。頭の3文字を漢字にして「ハンポ」と読ませる。
三明治:サンドイッチ。発音の「サンミンチ」と見た目の彩りをかけてる。
 これらパン系の朝食は新しい食事と認識されてる。これに対し「古早味」って表示が伝統朝食です。
 古早味は店舗形式じゃなく,どっちかってえと屋台が多い。
 餅系なら――招牌紫米飯[米ロ+専],牛蒡紫米飯[米ロ+専],豆沙[酉+ノギヘン]餅,鮮肉[酉+ノギヘン]餅,黒胡椒蛋餅とか。
 粥系。香茹芋頭粥とか。
 飯系。養生油飯,寿司。「寿司」ってのはお握りに近い。
 麺系。紅麺線羹,涼麺。
 蒸物系。手工皮春巻,素菜包,梅干[テヘン+ロ]肉包。
 これらはある屋台のをざっと書いてみたもの。もっともっとスゴいバリエーションがある。日本人みたいに「ご飯とみそ汁」とか固定してない。時々,彼ら台湾人が今朝の食事をどう決めてんのか不思議になったりする。迷わないの?
 早飯の多彩さは,食文化の豊さそのもの。大陸はマントウと豆乳に固定だもんね。


▲陳家涼麺のメニュー書き

 4日目,陳家涼麺。
 24時間営業なんで,地下鉄が動き出すとすぐ忠孝敦化駅へ。朝の台北の町を徒歩で30分余り北上。
 市場の中の小さな店にたどり着く。
涼麺(小)(40元)
三合一湯(味噌貢丸湯加蛋)(45元)
 涼麺は大したことなかった。とゆーより,日本の冷麺の味。最近の朝鮮半島的なのじゃなく昔の中華料理屋のあのソース。肌色のドレッシングにゴマ油がキイてるやつね。麺も同じで,朝鮮半島の細くて噛み切れないシコシコ感の透明麺じゃなく,きしめんほど太くはないけどしっかりした粉味のする平たい小麦粉麺です。
 関西の人に分かりやすく言えば――京都の老舗,中華の「さかい」の味そのもの!
 「さかい」を含めて,昔から中華料理屋に冷麺があると「そんなん中華じゃねーよ!」って嘲ってきたけど。…勉強不足でした。
 この涼麺,台北の街中にわんさとあるメジャーな早飯の一つ。これは韓国とは別の,れっきとした中華料理のメニューなのね。
 あるいは――一緒に頼んだ三合一湯。別に書くけど,大分雰囲気は違いはせよ,これはまさに味噌汁!てことはひょっとして…日本の影響を受けた料理なの?台湾の涼麺っての自体が,日本風中華の冷麺が逆輸入されたものって可能性も?


▲陳家涼麺

 5日目,仁愛路の九如。朝9時。開店と同時に入店。
 ここも昼時には客が溢れ返ってる店だってのは,先日通りがかった時確認済。
 AからDまでセットがある。単品も頼めるけど,初心者としては,まずはセットメニューのバランス感を舌で覚えたい!ってことでセットをチェック。
Aセット:雪菜肉[糸糸]蛋炒飯+鮮肉饅[食屯]湯or苦瓜湯 160元
Bセット:蛋炒飯+元[中/皿]鶏湯or元[中/皿]牛肉湯 150元
Cセット:潮州鮮肉粽+蛯仁饅[食屯]湯 130元
Dセット:[火乍]醤麺or乾[テヘン+半]麺or麻醤涼麺+菜肉饅[食屯]湯 120元
 さあ…どれにするよオイ…
 Dセットはヴェジ専用らしい。でも麺より粽に惹かれる気分。となるとCだけど,蛯よりもっとオーソドックスな味を確認したいし…一応,Cセットの蛯仁饅[食屯]湯を菜肉の饅[食屯]湯(以下ワンタンと略す)に替えてくれと交渉してみましたが…「不信」(ダメ)の一言。やむなくCセットに決定。
 結構時間を置かずに来た。


▲仁愛路の九如 Cセット:潮州鮮肉粽+蛯仁饅[食屯]湯

 ここしばらく台北に来る度に桃源街のワンタンストリートでハシゴしてた。
 タップリの汁に具だくさんのワンタンが浮かぶ中華ワンタンは,餃子とも日本の皮だけワンタンとも違う,最上の満腹感に誘う。今回はまだ行ってないから,ワンタンは初ダッシュです。
 さあて。九如のはどんなランクか?海老ワンタンを口に運ぶ。
 汁のダシが濃い。微かに琥珀色の透明な汁です。醤や中華スパイスでではなく,ダシが強いの。ワンタンストリートのワンタンはどれもバクチーと漢方スパイスの香りだけだったけど。こーゆー味を中華でも出すんだなあ。ちょっと意外。
 さて粽です。
 日本の粽は肉お握りだけど,本場の粽は餅米がドロドロに粘り,粒と粒がくっついてほとんど餅状態になってる。その中から肉汁が染み出し,煮しめられながら中から全体に行き渡ってる。これは中国の街角でよくパクついたメニューです。
 九如のチマキは皮を取った中身だけの状態で出てきた。これだけじゃ炊き込みご飯のお握りと間違う感じ。
 でも箸を運ぶと全く違うことが分かる。
 肉汁が蒸されて立てる香りが鼻腔をくすぐる。歯当たりは柔らか。米粒同士は一体化するほどくっついてない。大陸でよく食ってたものみたいに具の脂でネチャネチャでもない。肉汁も五香粉も米の旨味を消さない程良い強さなのよ。
 ワンタンと同じで凄くバランスがいい。朝一過ぎて用意の途中だったけど,野菜の小皿も1皿50元で中央スペースから取れるらしいから,セット+小皿にすれば無敵の朝食でっせ!

 5日目,中山記念堂近くの赤肉胡椒餅。
 角地の作業場みたいな場所なんだけど,実は地下鉄駅から黒面祭へのルート近くでした。2~3度通りかかって常に客が群れてたんで,つい買っちゃいました。
 胡椒餅って店は近くに幾つかあった。早飯屋のメニューにも入ってるところがありまして,早飯にも昼の軽食としても食べられる便利なメニューみたい。
 街角で頬張ってみて納得!うん…朝飯にはやや重めの味だけど,昼飯には少な過ぎるしシンプル過ぎる。がっつり朝飯か軽めの昼飯だな。
 外はパン生地で中国古来タイプのバサバサのスカスカ。その中に分厚い肉と野菜が詰まってる。これがカレーならカレーパンだけど,カレーのスパイス系のあんじゃない。けども中華系の味付けでもないの。
 口にしてしばらくは,素材そのものの味しかしないの。味ねえじゃん…と思ってると。
 後から図太い胡椒が口内に染みてくる。染みて…どころの刺激じゃなくて爆発じゃき!黒胡椒の濃い味覚がジンジン満ちて,鼻孔まで刺激してくる。
 で…これ何料理なんだろ!?――中華世界にしか,ひょっとしたら台湾にしかないんだけど,調味料的には西洋的。カレーパンを真似たにしてはスパイスが全く使われてないし…
 おそらく。胡椒ってものが入ってきた時,既存の肉マンの文化と溶け合ってできた新興中華なんでしょね。
 いや~お見事!これが餃子のあんじゃ強すぎるし,ご飯でもマッチしない。カスカスの中華パンと出会って初めて実現する味!日本で食えるとこないかなあ…。


▲世界豆ジャン大王 塩豆ジャンと[米需]米飯園

 6日目の朝は,南に川を渡った頂渓駅まで行きました。駅からすぐの世界豆ジャン大王。
 シエン豆ジャンと一緒に頼んだ[米需]米飯園(35元)。
 「[米需]米」は餅米だろうと思う。「飯園」は,「飯」を「園」(≒円)くしたもの,つまりお握りか巻き物の意味だろう。
 ここの粽は,日本のコンビニの納豆巻きみたいな外観でした。ただし海苔は巻いてない。なんで形状を維持できるの!?って驚きがまずあるけど…必要ないのよ!外周の餅米がちゃんと餅状につながってる。けど飯粒は残ってる程度の微妙な状態。
 中には,かなり分厚くカツオの粉と…もう一つ,油揚みたいな食感だけど油っこくはない何かが入ってる。テンペか?少なし肉ではない。
 調味料は濃くはない。けど餅米の食感の中にアクセントとしてくっきり残る。
 逆に言えば,アクセント以上に出しゃばらない程度の薄さで,かつ存在感のある具なのね。
 シエン豆ジャンも凄かったんだけど,これは章を移します。

 9日目,最終日。盛園豆ジャン店。2回目の訪問です。
シエン豆ジャン(23元)
水煎包(15元)
焼餅(15元)
とやや欲張っちゃいました。
 水煎包は,普通の菜包でした。まあ台湾では標準クラス。
 焼餅の話です。
 先日の油ティアオと同じく封筒状の紙袋に入って出てきた。いかにも安っぽいんで期待してなかった。一口食ったら,中には何も入ってない。皮は中華菓子風にパサパサで,中身がないからほぼ8割がたがそのパサパサだけ。
 ふうん…と噛みしめてたら――あれ?結構美味い?
 素のチャパティとかホットケーキの美味さに近い。焼き上げたばかりのパサパサ薄皮が,口中で混ざると香ばしく粘りながら腹に落ちてく。
 何てさりげない美味さ!
 考えてみりゃ――この漢民族って民族,他と同等以上に小麦粉との付き合いは長い民族。だから中華麺であれだけヤレるんだし,胡椒餅みたいな工夫も編み出せる。
 最終日になって妙に慌ててしまった――中華パンって…ホントはフランスパンとかと並ぶ位美味いんじゃないの?